献血とHIV感染
昨年末に話題になった以下の事件の続報
読売新聞記事(2003/12/30)
佐賀新聞1面(2003/12/30)、佐賀新聞3面(2003/12/30)
*読売新聞の記事はリンク切れの可能性あり、佐賀新聞は今のところ国内で唯一全記事を永久保存するらしい。(佐賀新聞は記事への直リンは禁止しているけど。。)
厚生労働省が1/20、感染した患者の血液と問題の献血血液の双方から検出したHIVウィルスの遺伝子タイプが一致した、と発表したとのこと。(朝日新聞、日経新聞等) これで、1999年に日赤が高感度検査を導入して以来初めての輸血によるHIV感染が確認されたことになる。
少し気になったのは、献血血液の全数についてHIV検査を行っているにも関わらず、いわゆる「すり抜け」が起こってしまう理由である。感染初期には検査では引っかからない時期(空白期間:HIVでは11日間)がある、と聞いていたのでそのせいだと思っていたら、今回のケースではさかのぼって5月の献血血液サンプルを精密分析したらHIVが検出された、とある。
どうやら、全数検査の時には50検体をまとめてNAT(核酸増幅検査)するので低濃度HIVは検出できなかったが、今回の再検査では個別にNATしたのでみつかったということらしい。そこで、今後は50人分をまとめて検査する体制から20人分をまとめて検査する体制に変えるとのことだが、なんだかなあ。(確かに「すり抜け」確率が従来の2/5になるのだろうけど)
本件の経緯・事情・問題点等は、上記佐賀新聞の3面の記事に詳しいが、献血愛好家であるところの僕としての意見をまとめると、
・いかに検査を厳しくしたり献血を制限しても、感染の初期問題、検査精度やコスト等を考えると、この種の感染症リスクはゼロにはならないだろうこと
・献血によって救われた命や伸びた寿命が沢山あることとの対比の必要性。特に輸血や血液製剤の使用は何らかの治療の目的で使用されることから、使用しなかったケースとのリスク・ベネフィットを考える必要性
・国内の献血を厳しく制限する方向になった時、ただでさえ血液の国内自給ができない現状を考えると、海外から血液or血液製剤の輸入を増やすことになり、そのリスクとのトレードオフにならないか?
なんてところか?
感染者が出ないにこしたことはないが、何らかのリスクが残る以上は今後とも同様の感染が発生することは防げないと思う一方で、それでも献血を制限する方向にもっていくのは間違った方向だと思うし、献血が一部の愛好家(マニア)に支えられているような現状を打破するためには、もっと門戸を広げる方向に持っていくべきだと思うけどな。
ただし、主要先進国でHIV感染者が増えているのは日本だけだ、という指摘もあるように、対策が必要なのは献血の検査体制と同時にHIV感染防止にあることは間違いない。
エイズ関係の情報は、JHC NET PLAZAがよくまとまっているようだ。
ちなみに、この近辺の情報については日本赤十字社のホームページには何も記載されていない。この辺りにも献血事業が何となく胡散臭く見られる一因があるような気がするんだけど?
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