難燃性バイオプラPC
これは内容はともかく、うたい文句の「生分解性」がちょっと気に入らないなあという記事。
YOMIURI ON-LINE (1/25)の記事。
NECは24日、パソコンやテレビなど家電製品に使える安全で燃えにくいバイオプラスチックの開発に成功したことを明らかにした。2006年までに、このバイオプラスチックを使ったパソコンの商品化を目指す。
バイオプラスチックは、トウモロコシなど植物原料が成分で、土中では水と2酸化炭素に分解されることから、環境にやさしい新素材として注目され、食品容器など一部で実用化されている。
バイオプラスチックをパソコン本体に使うには燃えにくくする必要がある。NECは、無機材料の吸熱剤(金属水酸化物)などの新素材を組み合わせることによって、世界で初めて従来のハロゲンやリンを成分とする有害な難燃剤を用いずに家電製品の難燃性の国際基準をクリアした。 (2004/1/25/09:48)
2003年秋から、パソコンのリサイクルが義務付けられたのはよく知られていると思う。例えば、パソコン3Rのページによると
2003年10月1日より、「資源有効利用促進法」に基づいて、メーカーとお客様が協力しあって、家庭のパソコンを再資源化するPCリサイクルがスタートします。となっている。
使用済パソコンはこれまで、自治体が回収・処理していましたが、PCリサイクルがスタートすると、パソコンメーカーが回収し、部品や材料をより有効に再資源化していきます。
つまり、昨年秋以降に購入したパソコンは、原則として全て使用後はメーカーが回収するのである。だとすると、パソコンの本体を「土中では水と2酸化炭素に分解される」状態にする必要性がどこにあるんだ? NECさんはご丁寧にも不法投棄された場合も考慮して、それでも環境にやさしいなんてことを主張しているのだろうか? それとも、輸出対応? むしろ単にイメージを良くするだけなのかもしれないけど、どうなんだろうね、こういう中途半端な環境対応って?<ここの段落については、本記事最後の1/29追記参照のこと>
実は臭素(ハロゲン)系やリン系の難燃剤が有害だ、と簡単に切って捨てるような表現にも、いちゃもんはつけたいところだが、ここではいわゆる「バイオプラスチック」が未だに、土中で分解するので「環境にやさしい」という論理に対して異論と疑問を呈しておきたい。土壌中で生物により容易に分解するのも悪くはないが、どうせCO2にしちゃうなら、むしろエネルギー回収ができるような焼却炉で燃やした方が、その酸化反応熱をいくらかでも有効に活用できる点で有利ではないの? 何でも土中に埋め立ててしまえ、という一昔前の廃棄物処理と比べればともかくも、現時点で本当に生分解することが環境にやさしいのかどうか、説得力のある説明に出会ったことがないような気がする。
むしろこのプラスチックは、原料が植物であり「再生可能性資源」であることを強調すべきであろう。使い終わった後は焼却しようと生物が分解しようが、発生するCO2の量には変わりない。しかしそのCO2は、元々大気中にあったものを植物が光合成で固定したもので、それが回りまわったものだということが重要なのだ。もっとも、プラスチックを作る工程で必要なエネルギーや出てくる廃棄物が、従来の石油原料の場合と比べて大きくないということもチェック必要だけどね。それともう1点、世の中には食料が足りずに飢えで苦しんでいる人が沢山いるのに、貴重な畑を工業原料製造用に使用しても良いのか?というのは、また別の次元で考えるべき問題かも。
ちなみに、NECは昨年こんな発表をしているので、今回のプラスチックもケナフ繊維強化ポリ乳酸系なのかもしれない。
*バイオプラスチックの定義も曖昧。原料がバイオ(トウモロコシ、イモ、サトウキビ等)であること、製造工程に微生物反応等のバイオ反応工程を取り入れていること、製品が易生分解性であること、のいずれかの条件が関係していそうだが、全ての条件を満たす必要があるのかないのか、不明確。
バイオプラスチックで検索して見つけたのが、トヨタ自動車のページ。こちらは、同じポリ乳酸だが、さすがに「植物由来」を前面に出している。でも年間何千万トンものバイオプラスチックを作るとなると、その原料の植物の供給はどう考えるのか?については残念ながら触れられてないな。
*1/29追記
NECのホームページに正式なプレスリリースが載っている。これによると、なんと、生分解性については一切触れられていない。バイオプラスチックについては、
バイオプラスチックとポリ乳酸: バイオプラスチックは、植物資源を原料としたプラスチックであり、石油枯渇対策や、地球温暖化の要因とされている炭酸ガスの固定化対策を実現できる。中でも、トウモロコシ等の発酵で作った乳酸を重合させたポリ乳酸がバイオプラスチチックとして初めて量産化されている。しかし、電子機器用としては、難燃性、耐熱性などが不十分であった。このため、これらの特性の改良が行われているが、特に難燃性の達成が大きな課題であった。と解説されており、植物由来ということがポイントとなっている。
ということは、「土中では水と2酸化炭素に分解される」ことがポイントだと認識していたのは、読売新聞の記者さんだったみたい。NECさん、ごめんなさい。
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