「伸長法」通信教育広告に排除命令
asahi.com(1/28)の記事「身長伸ばす通信教育ででっち上げ広告、通販会社に排除命令」によると、
若者をターゲットにした身長を伸ばす通信教育講座の販売広告に、実際には受講していない芸能人の成功体験をでっち上げたなどとして、公正取引委員会は28日、東京都千代田区の通信販売会社「日本通信教育連合会」に対し、景品表示法違反(優良誤認)で排除命令を出した。これを読むと、いかにも胡散臭そうだけど、全国で1年間で17000セットも売れるということ自体が信じられない。一体どんな広告だったんだ?という興味と共に、公取委は正式にはどういう判断でどういう命令を出したのか知りたくなったので、1次情報を見に行ってみた。これが、公正取引委員会の関連資料(PDF)。
公取委によると、同社は02年4月~03年5月の間、雑誌や新聞の折り込みチラシに、ヨガを取り入れた方法で身長を伸ばすという触れ込みで、ビデオと教本がセットになった「伸長法講座」の販売広告を掲載。
その中で、「受講生が芸能界で大活躍!」と銘打って歌手や女優を登場させ、「順風満帆の芸能生活も伸長法あってこそだと思います」などと、本人の承諾なしにうその体験談を載せた。ほかにも「受講生の約8割が5センチ以上も背を伸ばす」「世界各国のプロスポーツチームが採用」と、実際の調査に基づかないうその内容があった。
日本通信教育連合会は、昨年5月までの1年間で、この講座を約1万7000セット(1セット約3万円)売った。「指摘は真摯(しんし)に受け止め、チェック体制を強化する」としている。 (01/28 20:47)
問題となった宣伝そのものが添付されているが、やっぱり胡散臭い。
「脚の関節部の骨端軟骨を刺激し、『成長ホルモン』の分泌を活性化させ、直接骨を伸ばしていく。」,「成長期を過ぎても背が伸びる方法を特別大公開!」などと記載した上で「受講生はすでに50万人を突破!その内約8割が5cm以上も背を伸ばすことに成功しているのだ。」こんな記述を信じてしまうってのもすごいな。もしも本当だったら、どんな事になっているか?という想像力が不足しているのかね。もっとも、コンプレックスにつけこむ商法は悪知恵が働いているというか、値段も微妙なセンをつけているし、どうせ駄目もと、他人に相談するのもカッコ悪いし、っていう消費者心理に付け込むわけだ。
よく見ると、折込チラシの部数は592万部。売り上げとの比率は約0.3%ってことね。これって結構高い割合のような気がする。非常にニセ広告が有効に機能していたと言えそう。まあ法律違反になるような内容だからこそだろうけど。
排除命令の根拠となっているのは、不当景品類及び不当表示防止法という法律。今回、違反しているとされる条文は第4条の1「商品又は役務の品質、規格その他の内容について、一般消費者に対し、実際のものよりも著しく優良であると示し、又は事実に相違して当該事業者と競争関係にある他の事業者に係るものよりも著しく優良であると示すことにより、不当に顧客を誘引し、公正な競争を阻害するおそれがあると認められる表示」の部分らしい。
で、排除命令というのは、この商品を市場から排除する、ということでは全くなく、
ア 一般消費者に誤認される表示を行っていた旨を公示すること。ということらしい。あくまでも不当な表示はいけません、やめて下さい、ということで、商品そのものの可否を判断しているわけではないのですな。当たり前か。つまり「うそでした、ごめんなさい。本当はこうだったんです。」ということを公示すれば、引き続き販売しても良いことになる。(著しく優良であると表示しなければ良いってのも微妙だな。少々実際のものよりも良さそうに広告するのは許容されるようだ。)もっとも、そうなると今後この商品を販売し続けたとしても、さすがに買う人はいないか? 法律ギリギリの所で消費者をその気にさせるのが、宣伝広告屋さんの腕の見せ所と言えるのだろうけど。
イ 今後,一般消費者に対し,実際のものよりも著しく優良であると示す表示を行わないこと。
*問題の広告は朝日新聞にも折り込まれたらしいが、特に責任が発生するわけではなさそうだ。
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