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2004/01/11

「感染症とたたかう」

今日(1/11)から台湾に遊びに行くことになっているので、最近やや気になるSARSに関する本を買って読んでみた。
 岩波新書 870 感染症とたたかう -インフルエンザとSARS-
  岡田 晴恵、田代 眞人 著   bk1amazon

正直に言って、SARSが従来のインフルエンザに比べて不当に怖い病気として恐れられすぎているような気がしていた。だってSARSで死んだ日本人は今のところ一人もいないし、世界的に見てもSARSで死んだ人は高々(極めて失礼だけど)7~800人。死亡率だってさほど高くはなかったはず。

ということで、今回の本を読んでみたところ、どうやらインフルエンザが実はとても怖い病気なのに、特に日本人は風邪との区別もせずに軽々しく取り扱っているのであって、SARSが特に怖いわけではないのだ、というような感じがしてきた。というか、この著者にとってSARSは、新型の感染症が一度起こると全世界に致命的な脅威を与えるのだ!ということを皆に広く思い知らせる、ある意味でとても良い警告だ、ということになるのかな。

実際、インフルエンザで日本だけでも毎年数千人規模で死亡しているという事実から考えると、やっぱりSARSで騒ぎすぎでは、と思えるし、一方で著者がいうように、日本人はインフルエンザに対して余りにも無防備すぎる、という指摘もうなづける。

それにしても、この著者は自分でもいたずらに恐怖心を煽るつもりはない、と書いている割には全編通して、いわゆる恐怖本になっているように感じるのはどうして?また、岩波新書ということで一般向けかと思いきや、本書の内容は用語にしても内容にしても、とても専門的で、到底入門書とは言えないレベルだろうと思う。むしろ一般人はこの本を読むと、詳しいことはよくわからないけど、感染症はとっても怖い、人類は感染症で滅びるのではないか?という漠然とした不安を感じる恐れさえあるような。

しかし、SARSに関していえば、なかなかまとまった知識を得るのはまだまだ難しいとてもホットな内容にも関わらず、本書では経緯、政治的な動き、医学的な知見等についてとてもよくまとまっている。さすがにSARSに関しての日本の第一人者の面目躍如といったところか。逆に言えば、この本は来年の今頃には大幅改訂せざるを得ない可能性が極めて高いわけで、よくぞ今出版してくれました!と言えるのでは。

もうひとつだけ、苦言を呈すると読者が読みたい・知りたいことではなく、著者が書きたいことを書き連ねた内容になっているように感じられ、そこが読後の欲求不満感につながっているように思える。

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