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2004/01/21

「エネルギー 風と太陽へのソフトランディング」

環境問題系の科学的な理解を高めるのに、なかなかわかりやすく、しかも視点が独創的なので、とても好きなシリーズとして、日本評論社のシリーズ「地球と人間の環境を考える」というのがある。全6巻、今まで5巻が発行されており、この度最後に残った「エネルギー」が出たので、非常に期待して読んでみた。

 シリーズ 地球と人間の環境を考える 05
  エネルギー 風と太陽へのソフトランディング
  小島 紀徳 著  bk1amazon

ついでに、シリーズの他の本も紹介しておくと、以下のようになっている。

 01 地球温暖化 埋まってきたジグソーパズル
    伊藤 公紀 著 bk1amazon
 02 ダイオキシン 神話の終焉
    渡辺 正、林 俊郎 著 bk1amazon
 03 酸性雨 誰が森林を傷めているのか?
    畠山 史郎 著 bk1amazon
 04 環境ホルモン 人心を「攪乱」した物質
    西川 洋三 著 bk1amazon
 06 リサイクル 回るカラクリ止まる理由
    安井 至 著 bk1amazon

さて問題の「エネルギー」だが、残念ながら期待はずれだったようだ。

この本は終始「ぼくたち」を主語とした語り口で、高校生あたりを読者として意識したような書き方となっている。しかし、このシリーズの他の本から考えて、もっと上を狙っているように思えるのだが。まあ、高校生にもわかるように書こう、というのであればそれでも良い、わかりやすいことは悪いことではないから。(でもどうしてシリーズの他の本と対象が異なるんだろう?出版社とのすり合わせはやらなかったの??)

では、内容がわかりやすいか?というと残念ながらこれが駄目みたい。数式は使わない、という方針のようだが、図や表の説明が舌っ足らずになっていて、読んでもさっぱり言いたいことが伝わってこない。説明の論理が飛びすぎていて、直感的に理解しにくいところも多い。これは、読者の側の能力不足という問題かもしれないが、高校生相手ということを意識しすぎて逆にわかりにくくなっていやしないか?

副題が「風と太陽へのソフトランディング」ということで、現状の化石エネルギー主体の社会から再生可能自然エネルギー社会へのスムーズな移行に向けてのいくつかの具体的な道筋や考え方が示されているかと思いきや、これまた中途半端で、現状を多面的に眺めた後は、さてどうするか?各自で考えてね、という感じで放り出された印象が残る。

そもそも環境問題を理解していくには、かなり大局的な視点が必要で、いつの・どこの・だれを対象として考えるのか?によって答えは変わってくる筈である。このシリーズはそういう点が明確なので読みやすかったのだが、この本については結局最後までそこが明確にならなかったようだ。地球の資源と大気中のCO2と我々の暮らしをどうバランスさせるのか?がポイントであるならば、そこには自然科学の視点からだけでは解決不可能な領域があるはずで、この種の本にはその限界を明確に提示してもらいたい、と言ったら欲張りすぎだろうか?

ということで、僕としては期待が大きかっただけに今回の書評は激辛になってしまったけど、いろんな環境問題の中でもエネルギー問題が最も重要であろうと考えているので、個人的にはもっと勉強し続けていきたいと思うけど、もう少し突っ込んだ本の出版を期待したいところだ。

ちなみに、著者の小島先生だが、日本化学会編の「本音で語ろう 地球温暖化」 bk1amazonの中で「砂漠緑化とCO2とエネルギー資源」という章を担当されているが、こちらは大学生向けということで、スッキリと論旨明快、意図する中身も同意できるものだったのだけど。。

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