« 続:ゴミから2800万円 | トップページ | 二酸化炭素吸収証書 »

2004/02/26

続:BSE検査の科学的根拠

1/28のブログで取り上げて以来ご無沙汰のBSEネタ。最後の牛丼騒ぎで異常な盛り上がりを見せた、アメリカ産牛肉の輸入禁止措置をめぐる攻防も、何となくネタ切れというか、水面下での交渉にステージが移ったのかもしれない。牛肉の安全について、とことん議論してコンセンサスを目指すのには、絶好の機会だと思うのだけど、「科学的」根拠はうやむやにしたまま決着させようというのだろうか? 

Mainichi INTERACTIVEの2/21の記事によると

 米国のBSE(牛海綿状脳症)発生で米国産牛肉の輸入がストップして約2カ月。その影響を受けて、日本各地の港で税関を通過できない米国産牛肉約1万3000トン、約100億円分が滞留している。行く当てもなく、このままだと焼却処分しかない状況に追い込まれ、全部焼却すると費用が13億円という。
 BSEの発生で日本政府が米国産牛肉の輸入を止めたのは12月24日。それ以前に税関を通った牛肉の流通は認められたが、それ以降の牛肉はたとえ港のコンテナや倉庫に入った後でも、検疫を受けることができなくなり、コンテナに眠ったままになった。
 協会は厚生労働省に対し「滞留している牛肉は、輸入禁止直前に通関を済ませた肉と同じものだ」と再三にわたり輸入の許可を求めているが、同省監視安全課は「米国でBSEが発生した以上、安全性が確保されるまでは輸入を認めるわけにはいかない」と禁止時点で輸入を止めることは当然の措置だと話す。
とある。輸入禁止を決めた以上、どこかで線を引かなくてはいけないので、こういう問題も仕方ないか? と思うのだが、一方でギリギリセーフになった牛肉は、最後の牛丼を求めて行列を作った人達に喜んで食べられたってわけだ。ちょっと割り切れない思いもしないではない。

厚生労働省のホームページで米国におけるBSE発生への対応について(Q&A)を読むと、結構おもしろい事が書いてある。

Q4:すでに輸入され、国内に流通している米国産牛肉等は安全ですか?

A4
 BSEの原因とされている異常プリオン蛋白は特定部位等に分布することから、特定部位等を含まない牛肉及び牛肉等を用いた加工品は安全性に問題はありません。
 ※  なお、国際獣疫事務局(OIE)の基準では、筋肉は特定部位ではないとされており、牛肉の安全性には問題がないとされています。

昨年12月の時点のものなので、国民に不安を与えないように配慮してだと思うけれど、これだと今アメリカに要求している全頭検査の論理と明らかに矛盾している。(早いところ消した方が良くないか?)

特定部位を含まなければ、たとえBSEに感染した牛の肉であっても安全である、という論理は、このQ&Aの他の部分でも使われてるし、農林水産省のホームページのQ&Aでも出てくるから、現時点では公式見解とみてよさそうだし、(科学的にも)限りなく正しいとみるべきだろう。では、全頭検査というのは何なのか? やっぱりわからない。(安全な特定部位を得るためというのであれば、わかるのだが。。)

特定部位を含まなければ安全であるという論理で、禁輸直前に税関をすり抜けた牛肉の安全性が説明され、禁輸直後に税関に止められた牛肉は「安全性が確保されるまで輸入を認めるわけにはいかない」ってのもなあ。もしかして将来的には税関を通る可能性があるのか? だからこそ、業者はコストが掛かっても冷凍庫に保管しているんだろうか? 変なの。

では、全頭検査とか抜取り検査というのは、一体何を議論しているのか? 学術的な意味で、BSEの原因や発症の程度を知るのには有意義だとは思うけど、安全性にどんな意味があるのか?

asahi.com(2/25)には、

特定部位除去「優先実施を」 BSE対策で専門委員試算
 牛海綿状脳症(BSE)について、食品安全委員会の専門委員が安全対策の効果を計数化して試算したところ、病原体がたまりやすい特定危険部位の除去や再利用禁止の効果が大きく、全頭検査の実施より優先すべきだとの結論が出た。同委員会は牛肉輸入再開の条件を最終的に判断する立場にあり、追加対策をめぐる今後の対米交渉にも影響を与えそうだ。
 試算したのは、同委員会でBSE対策を議論するプリオン専門調査会の座長を務める吉川泰弘・東大大学院教授。病原体が食肉に含まれる危険性を指標化し、国際基準とされる検査体制と比べ、日本で実施されている全頭検査でどれだけ安全性が上がるかを「上積み効果」として算出。個々の安全対策を比較した。
 それによると、特定部位対策で脊柱(せきちゅう)を除去する効果は、全頭検査の上積み効果の約20倍だった。脊髄(せきずい)が飛び散らない処理方法や特定部位を飼料などに再利用しないことの効果も、全頭検査の上積み効果より大きいか同程度だった。
 また米国では、世界で初めてBSEが発生した英国からの牛の輸入や肉骨粉の規制状況などからみて、過去10年間に300~400頭の感染牛が発生したと試算した。このうち、まだ若い牛や他の病気で死ぬ牛などを除き、計20頭は処理時に検査で発見できたはずだと推計。起立不能などの症状牛からBSEを発見するには、年間数万頭にとどまっている検査対象を10倍以上に拡大することが必要と結論づけた。
 吉川教授は「科学的な議論を進めるたたき台として試算した。米国は特定危険部位の除去を徹底し、検査対象を大幅に増やすべきだ。ただ、全頭検査の必要はないだろう」と指摘している。
という記事が載った。ようやく科学的で定量的な議論が始まるのだろうか? というか、これで全頭検査問題に幕引きをしようという作戦か?

食品安全委員会のホームページから関連情報を探したが、米国におけるBSEの発生についてというページにも、残念ながらそれらしい資料は未だ載っていない。こんな中途半端な新聞記事ではなくて、きちんとした数字が載った資料を早く見せてもらいたいものだ。

日本が騒いだせいなのか、アメリカにも心配になった人がいるようで、全頭検査を要求している。2/19には、アメリカの消費者団体パブリック・シチズンが、米農務省長官に検査体制が不十分だという書簡を送っている。日本語に訳してくれているので、衆議院議員の笹山さんのページの記事にリンクしておく。その前の記事、オーストラリア産の肉が安全だという科学的根拠はないよ、という話も説得力がある。

*それにしても、農林水産省のBSE関係の情報公開はお粗末。厚生労働省のホームページは、結構まじめに更新しているし、公開しようという意思が感じられるのに対して、農林水産省のホームページを探しても、アメリカでのBSE発生に対して、何故全頭検査を要求するのかといった説明が全く見当たらない。

|

« 続:ゴミから2800万円 | トップページ | 二酸化炭素吸収証書 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/12612/234449

この記事へのトラックバック一覧です: 続:BSE検査の科学的根拠:

» ジュンとヨネ [HOME★9(ほめく)]
ヨネ“ネエ、あんた、ウチのボスに、去年の10月に牛肉輸入を再開するって、約束した [続きを読む]

受信: 2005/03/22 12:57

» 複数の生きた牛の末梢神経からもプリオンが検出されていた [BSE&食と感染症 つぶやきブログ]
■「OIE/BSEコード改正に関する専門家会合」を傍聴しての情報 4月8日、金曜日に傍聴してきました。まとめる時間がなく、一つだけトピックを。。(私は聞いて仰天しましたが) http://www.mhlw.go.jp/houdou/2005/03/h0330-3.html 向かって、横山先生の左隣におられた先生(お名前未確認、食安委委員ではない方)の発言です。品川先生が、死亡牛の末梢神経からプリオンの話をされたときに以下のような�... [続きを読む]

受信: 2005/04/22 07:35

» 検証:普通の生活で、vCJD=人型BSE(狂牛病)が感染しないとは本当か?その1 歯科編 [BSE&食と感染症 つぶやきブログ]
先日、OIEという、世界の動物感染症対策を推進する機関の先生がフランスから来日、食安委主催でリスクコミュニケーションが開かれましたので、行ってみました。そこで驚いたのは、OIEの「BSE問題は公衆衛生的にリスクが低いと思われる」という見解と、世論をリード、問題提起すべき立場の新聞記者さん(公衆衛生ご担当?)の「○○菌よりBSE問題は公衆衛生リスクが低い云々」という認識です。 BSEから始まって�... [続きを読む]

受信: 2005/04/22 07:35

» 農水省:「BSEに感染した牛は、骨を取り除いても食肉処理の過程で肉が汚染される可能性がある」 [BSE&食と感染症 つぶやきブログ]
結局、「危険部位除去」だけでは、BSE対策の要にはなり得ないことがよくわかる記事をUPします。飼料管理がなっていない牛など食べられませんね。20ヶ月以下なら輸入OK、などと適当な回答を作成した「日米実務者会合?」のメンバー個人個人が責任を持って尻拭いをしていただきたいものです。罷免請求とかできないのかな? ■農水省:「BSEに感染した牛は、骨を取り除いても食肉処理の過程で肉が汚染される可能性がある」 農水省、OIEに牛肉輸入条件緩和�... [続きを読む]

受信: 2005/05/12 22:33

« 続:ゴミから2800万円 | トップページ | 二酸化炭素吸収証書 »