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2004/02/12

ヒトクローン胚からES細胞

最先端の人クローン技術に関わるニュースということで、どこもそれなりに大きく取り扱っているが、内容が技術的にも倫理的にも難しいので、なかなか記事にする方も大変そうだ。現時点では、YOMIURI ON-LINE (2/12) が最も充実した記事になっている。

クローン技術で万能細胞…韓国で世界初の成功
 人間のさまざまな組織になることができ、“万能細胞”ともいわれる胚(はい)性幹細胞(ES細胞)を、体細胞クローン技術を使って作ることに、韓国ソウル大学などのグループが世界で初めて成功した。
今回の技術は、人を複製する「複製クローニング」ではなく、臓器移植等の治療に応用する「治療用クローニング」技術であるという断り付きだが、そのまま複製クローニングに応用が効くという点で、倫理的な問題については悩ましい。

 体細胞クローン技術でヒトES細胞を作った研究は、自分の細胞を使って失われた機能を取り戻す「夢の治療」に道を開くものだ。可能性の実証という面では大きな一歩だが、同じ女性の卵子と卵丘細胞を使う特別な条件で、242個の卵子から1株のES細胞を作ったにすぎない。ES細胞はマウスや、人間の受精卵から作られ研究が進められているが、安全性を含め未知な部分も多く、治療への応用はまだ先という点で、専門家の意見は一致する。
 クローン技術の人間への応用は、クローン人間作りにもつながるとの激しい反対がある。国連でも昨年12月、全面禁止を求める米国やカトリック諸国と、治療応用に含みを残す日本や英国、ドイツで意見が割れ、結論を1年先送りした。
 韓国では昨年末、クローン人間作りを禁止する生命倫理法が成立したが、難病研究目的のクローン胚作りは認めている。日本はクローン技術規制法の指針でクローン胚作りは当面禁止としているが、総合科学技術会議の生命倫理専門調査会の2年半に及ぶ検討作業の中でも、解禁派と慎重派の意見は平行線のままで、昨年末の中間報告は異例の両論併記となった。
 治療面での「恩恵」と、人間の尊厳を脅かしかねない「クローン人間作り」。これらを同時に可能とするクローン技術は、生命科学の進展が突き付ける重い課題だ。
と、応用までは少し時間が掛かりそうだが、倫理面を中心とした法的な枠組みがまだ整備されていない状況に警告を発する記事となっている。言ってみれば、様々な議論を技術が追い越してしまった状況だ。

関連情報については Yahoo! Newsのサイエンストピックスにリンクしておく。

一方、ざっと海外の反響を見たら、The New York Timesがかなり大きく扱っている。記事も2ページにわたるし(読むためには無料の登録が必要)、サイエンス誌に載ったも載せている。この中で印象的なのは、アメリカの科学者のコメントとして、"You now have the cookbook, you have a methodology that's publicly available"とか"It's a landmark paper"といった評価が載っていること。どうも日本の新聞よりも、極めて画期的な前進であると捉えているようだ。

ヒトの体細胞クローン技術でES細胞を作った、という成果が画期的進歩であると同時に、研究そのものがきちんとしていることが高く評価されているようだ。何しろ、242個もの卵子を入手して、系統だった実験を行ったことで達成できたとのことで、その卵子の入手の苦労話もNY Timesには出ている。

さて、この辺の技術については、先にここで紹介した「遺伝子時代の基礎知識」(東嶋和子 著)にも技術的な内容がわかりやすく書かれていてお薦めであるが、もう一冊、社会的側面から詳しく記載された本を紹介する。

 文春文庫 318
 隠すマスコミ、騙されるマスコミ
 小林 雅一 著 bk1amazon

この中の「第五章 クローン技術と呼ばないで」は、研究を進める企業側が良かれと思って行ったキャンペーンが逆に誤解や反対キャンペーンを生んだ例や、怪しげな宗教団体がクローンベイビーを誕生させた(?)話を軸に、報道の在り方によって政策や世論が変わってしまうことの怖さ等を教えてくれる。

確かに、複製クローニングと治療用クローニングは分けて議論したいけど、技術的には分けられないようなので、落とし所が見えないな。科学技術と倫理の問題は、クローン技術に限らず、とても難しいテーマだけど、いよいよ先送りできなくなったということだ。どうしましょ?

*日本の報道だと、「ソウル大学などのグループが」というように個人名が出てこないが、NY Timesの報道だと、"The work was led by Dr. Woo Suk Hwang and Dr. Shin Yong Moon of Seoul National University"と個人名が出てくる。お国柄と言ってしまえばそれまでだけど、つくづく日本は個人を表に出さない国だな。

*Mainichi INTERACTIVEの記事では、「クローン赤ちゃん」という言葉が出てきて、ちょっと笑えた。英語では確かに "clone baby" だけど、他紙はみんな「クローン人間」としているよ。用語統一の日は遠い?

*時事通信 (2/12)には、

【シドニー12日時事】新興宗教系企業クローンエイドは12日までに声明を出し、オーストラリアのシドニーで世界6人目となるクローン赤ちゃんが誕生したと発表した。赤ちゃんは男児で、5日に生まれたという。しかし、同社が詳しい情報を一切開示していないことから、専門家などはこの発表を疑問視している。
なんて記事も載っているぞ。同じ日の新聞で、片や世界初で、こっちは世界で6人目かよ!こんな奴らがいるから、倫理問題がよけいにややこしくなっちゃうという面もあるな。

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コメント

イギリスに留学しているりょうといいます。
今、大学で日本でのクローン技術についてのリサーチをしていて色々助かりました。
ありがとうございました。
P.S. 『つくづく日本は個人を表に出さない国だな』に賛成です

投稿: りょう | 2004/03/08 00:16

りょうさん、はるか遠くイギリスから、ようこそ!
少しでも研究のお役に立てたなら、幸いです。

種々の成果を発表する際には、個人名が出る際にも、ほとんどの場合には組織名が先に来ますね。まあ、今はやりの特許の職務発明の議論にも通じるのかもしれないですが、個人が研究したといっても、所属する組織の設備やお金を使ったという側面もあるわけだし。一方で研究の確からしさを判断するのにも、所属組織名が影響してる傾向もありそうです。

投稿: tf2 | 2004/03/08 19:07

昨年末から、このソウル大学の黄禹錫(ファン・ウソク、Dr. Woo Suk Hwang)教授の論文捏造疑惑報道がされていたけど、結局、この2004年の論文もウソと断定された。

2006/1/10のasahi.comによると

「ES細胞論文すべて捏造」 ソウル大調査委が最終報告

 ソウル大・黄禹錫(ファン・ウソク)教授による胚(はい)性幹細胞(ES細胞)研究疑惑を検証している同大調査委員会(鄭明熙(チョン・ミョンヒ)委員長)は10日、最終調査報告を発表した。黄教授の研究チームは04年2月に発表した米科学誌サイエンスの論文で、再生医療への応用が期待されているES細胞を世界で初めてヒトのクローン胚から作製したとしたが、同委員会は「ES細胞は存在せず、データは捏造(ねつぞう)されていた」とした。これで、黄教授によるヒトのクローンES細胞の研究成果はすべて捏造だったと結論づけられたことになる。


 黄教授は05年発表の論文で、患者の体細胞を使ったクローン胚からES細胞11株を効率よく作ったとしたが、調査委は昨年末に捏造と断定。一方、04年論文は「ヒトのクローンES細胞作製の技術を実現可能にした」と宣言し、05年の研究の基になった論文だった。最終報告はその技術自体が確立していないことを示し、再生医療をめぐる研究は大きな打撃を受けることになる。

 調査報告によると、保存されていた04年論文のES細胞を外部専門機関に依頼してDNAを分析したが、論文に掲載されたデータと一致しなかった。

 作製された細胞は、実験の過程で、核が除去されずに残った卵子が自己分裂してクローン胚のように「突然変異」。そこから採取したES細胞である可能性が高いとした。

 調査委は、このES細胞が体細胞を提供した人のDNAと一致していないにもかかわらず論文で「一致した」としたことや、論文掲載の写真が協力病院の受精卵から作ったES細胞のものと判明したことから、論文捏造は「故意による」ものと断定した。

 黄教授は提供を受けた実験用卵子の数について04年論文では242個、05年論文では185個としていたが、調査委は、実際には2000個を超えていたと明らかにした。


 一方、昨年8月に公表された「世界初のクローン犬」についてはDNA分析などの結果、論文通り「体細胞クローンであることが確認された」とした。研究チームは一定の体細胞クローン技術は持っていることになる。 とある。最初に一つウソをついて、注目を浴び、後へは戻れなくなり、どんどんウソをつき続けるって話は、日本の考古学で「神の手」と呼ばれた件とよく似ている。

投稿: tf2 | 2006/01/10 22:34

分かりやすく解説、ありがとう。
でも、細胞分裂で一つの受精卵の分割は4分割までしか、逆行は出来ない、だから、一卵性は4つ子が最大。
以前、不妊治療で発表されたNHK記者の五つ児ちゃんたちは、一卵性ではない。。
彼らももう親の世代、祖父母になってるかもしれない?
私が知ってるソックリで耳の傷でしか見分けられなかった一卵性双子の方達は、互いに相手の大学の実験にすり替わって出席されても誰も気づかなかったそうだが、でも考え方が全然、正反対だった。
片方は割り切り屋さんで、他方は昔への執着を持ってらした。。
私と同級生の友人は、見分けがついた。。それまでの生活習慣から、
表情も変わり、でも姉妹であることはすぐに分かった。。
ソックリだけど、性格が違う、、それも、互いに意識するからか?正反対に感じられる傾向は無いだろうか?
マナカナちゃんのように、一緒に同じことを言い出そうとする双子って珍しいのではないだろうか。。?
堺雅人さんが4弾目の「パンドラ」をするそうだが、
クローン。。。命に対しての価値観が診える。。
愛が命に対する反応の極限だとすると、、
愛とは何か?という考え方?生き方を問うテーマを扱うドラマなんだろうか?
実は、社会的な動物は大抵、愛を持ってる。と私は子供時分からの体験で体感してきた。
一方、愛は人間の崇高な特性であるとする、人間が人間たる資格のように愛を語られることが、この2000年間のイエス以降の世界的な共通認識だったように思う。
仏教の命へのはっきりとした階層付けの生命感の影響ではないかと思うのですが、、笑、、
でも、イエス以前のユダヤ教や他方仏教でもそもそもの姿は、
生き物を食べない菜食主義、独身という文化の中で、
実は命に階層をつけない思想、価値観として、輪廻の思想を信者に諭し他のではないだろうか。
私の実感として、、社会的な動物で人類と長く仲間、パートナーとして暮らすことになった犬や猫など動物は、
私の体験では、むき出しの自分の命を投げ出す母の愛を見せられた。。
見返りのない無条件の子供への愛。。
母の子への愛は、生命体として本能として自分が生きようとする力と同じ線上に、自分のコピーを切腹するくらいの苦しみの後、生命を胸に抱く。
人類は10ヶ月間、自分の体の一部として別の生命体の存在に体調を狂わせられる。。
でも、子供のために、好きなものもやめ、嫌いなものも吐き気を抑えて食べる努力をする。。
子供の命のために自分の感情や感性や体調を抑え、すでに、自分が自分以外の命のために生き始める。。
これは猫でもあることで、出産前になると、心細くなるのか、相談にやってくるように足にゴロゴロ喉を鳴らし体を摺り寄せ、私の周囲の隠れた場所を探し出す。。
ボディーアクションで私の近くで、隠れた安心できる場所を探して欲しい、、、と言ってる。。
また、子供を他所の人から隠すために、壁と押入の背板との間に子猫を落としてしまい、その間に挟まって、宙吊りになってSOSを発信、、助けてもまた、飛び込んで行こうとする。。子猫の元へ行こうとする。。
子猫をくわえて引越ししようとしてる時に、私について来て物干しの塀の上に何時ものように歩いてて、うっかり、口を離した時に子猫を地面へ落っことしてしまい、
突然消えた子猫を気が狂ったように子猫への鳴き声で呼びかけ続け、くる日も来る日も探し続ける母猫。。
それ以降、母性を絶たれたように、すっかり人柄が変わってしまった母猫。。子育ては私がする羽目になった。。
人類で言うと、精神病になってしまったのだと思う。。
愛を見失った病気が精神病なのかもしれない?
また、お猿でも死んでミイラになってしまった小猿を抱いたままの母ザル、、寝てるのだと思い起こそうとし続けては抱いて場所を移る。。
犬でも大好きな公園でも同居してる猫と同じ種族である全くの無関係な猫の遺体があると、匂いで察知して、怖がり、テコでも行こうとしない。
友達の犬が亡くなり子供のように愛し照らした飼主の葬儀が終わっても、二ヶ月以上、その周辺を怖れ、近づこうとしなかった。。
陽だまりに年寄りの病気猫が養生してると、驚かさないように道の反対側の端っこを静かに歩き去る。。
ある日、スズメのさえずりにしては鋭く長く続くので、出てみると、、
道で動けなくなってる子雀の周囲で鳴きまわってる母スズメがいて、
どうしてやればいいのだろう?どこに巣があるんだろう?
人の視覚から離れた塀に置いてやる他なかった。。

などなど以上の体験から、愛とは実は人間の特性ではなく、反対に、人類こそ、愛を持たない人もいることを思う、、ゴメン。。
良い夫婦、良い家族に見える実は、成りすましの関係って、昨今、多いように思える悲劇が隠されてる、というのが、私の認識。。
また、クローンという、自分の命をもう一つ欲しいという欲望は、
本来、命を掛け替えのない存在としない認識があった上で、承認が可能な行為、欲望に思える。。?し、
かつ、人類だからこその、論理立てで、理屈づけで、
クローン生命の必然性を立ち上げ照るように思える。。
クローン研究のお題目に病気克服の研究で必要とする手段があるようだが、時に人工臓器のかわりで純正を求めるために、もう一つの自分の生命を利用するという昭和期までのカトリック社会では、タブーとされていた選択。。
手足、臓器など、一部だけが出来上がると、人命尊重のタブーから解き放たれ、堂々と代替医療まかり通る技術だという発想。。
でも、都合が悪い先天性でも、もし?天が人類に叡智や啓蒙を授ける目的でたまに決断された先天性疾患だと受け入れるなら、、
人類全体でその運命を有難く受け入れるべきではないだろうか、というのが昭和期までのカトリック?私の尊敬する神父様や同志社の止揚学園の福井牧師さんがたの姿勢だったように思える。。
病気から生命を守ろうとするなら、
人為的に大自然が作り得ない細菌、伝染病を開発しなければいい。。
クローン研究者と背中合わせの研究であっても、つまりは表裏一体のもの。。いつ、反転するか、半ハーフ状態の危機性は、大抵、最初の開発までの時には良心で、開発後は、資本主義に乗っけられ、脅威になってしまう理わり。。
それでターゲット対象の命だけを奪おうとする勢力の資本主義力で、大自然が生み出した命を狩とろうとしたり、
たわめ様とする技術が開発される。。
不老不死の欲望は同じ線上に他者の命を人為的に操作、コントロールしようとする。。
目の前の命を救おうとする為に別の命を転用しようとすることは本来、人間がすべきことでないように思える。。?
ライオンが牛を食べることはあっても、ライオンがライオンを食べることは人為性で狂わされていない自然界にはあり得ない。
資本目的で研究開発されるものが実に地球上を汚染拡大させてきたか?
昔から「蚊」モスキート、蝿っていなかったのではないか?
ゴキブリの原型?は居たようだが。。

私的には、、大自然の掟に従わず、人間という地球上の一生命体でありながら、神や大自然の権限を持とうとする野望を欲しいままにする人たちが
サバイバルし増殖する地球なら、すでに病原菌に侵された生命社会であり、
本来は、矛盾を無限大に増殖させていく生命社会でもあり、
表向き、平和であっても、どんどん濃縮、矛盾が爆発的に増殖し、おそらく、リスクヘッジになってる個体差のバリエーションにも幅が狭くなり、
大自然が危機に瀕した時期に生み出す天才?新種?が生まれにくくなっていくのではないか?


投稿: ヨシベーヨッピー | 2014/04/28 03:32

今、確認すると、すでに十年前のテーマのようですが、、
しかも私の前のコメントが2006年に終わってるということ。。
2006(S12)........
2004(S10)........
阪神大震災からすでに政財界、医療の暴走が堂々とされ、3年経ってる時に立てられたテーマだったのですね。。
当時、仲間内言葉のような若者が力を持って、
人海戦術網と精神医学や心理学上、根本的にその人の精神状態を根本的に壊してしまうような組織的なイジメ問題、事件が頻発し、
かつ、メールが普及し、
目の前で遭っていても、会話をデジタル情報でするというスパイ社会のような習慣が流行っていたようで、我が家でも弟たちのお嫁さんがしていました。。
昭和期には嫁イジメが話題になりましたが、
当時は年寄りイジメというよりも、
気がつけば、息子が妻や子供達の指示で、親を施設に通院と騙して入れてしまうという話しを耳にし始めた時期でもあり、野犬への異常なホロコーストが始まった時期でもあります。
カラスが山の開発で巣を奪われ、人里に下りて来て街中に大発生した時期でもあります。。

矛盾を抑えごまかし続け、根本的に間違った方向を認めて突き進むより、
矛盾を吹き出させ、クローン的に都合のいい偽善で誤魔化した摂理やモラル論で必然性や価値を作られたモノや人に対し、
自覚を促す意味でも、矛盾をむき出しにすべきではないだろうか。。
イエス以降のキリスト教では、終末論になるが、、
それでも、終わった方がいい世界もあるということで、
宇宙全体が終わるのではないという意味で、
生命史はきっと、宇宙や大自然の奇跡的な力で続けられるのだと思う。。
クローン時代に命への執着自体が命の矛盾を大きくするから。
命を支える人の出来ることは、
せめて、ライオンになって鹿や牛を食べ、牛や鹿になって草の命を食べることしか自然は許さないのでは?

投稿: ヨシベーヨッピー | 2014/04/28 04:05

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