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2004/02/15

「化学物質過敏症」最新情報

「化学物質過敏症」という言葉を聞いたことがあるだろうか? どこかのTVニュースで結構大きく取り扱っていたような記憶もある。たまたま1年半位前に、本屋で見つけた

文春新書 230
 化学物質過敏症
 柳沢 幸雄、石川 哲、宮田 幹夫 著 bk1amazon

を読んで、正直驚いた。こんな病気があるのか?! 化学会社に長年勤め、その間研究に携わってきたので、自分でも様々な薬品や「化学物質」に触れてきたし、長年触れてきた多くの人たちも見てきた。その経験からして、この本に書かれているような、超低濃度の、多種多様な物質への曝露で、通常の日常生活を送ることが全く不可能になるような、そんな悲惨な症状になるとは、直感的には納得できなかったし、どう考えるべきか、しばらく情報集めをしたりしていた。

ちなみに、最近話題になる「シックハウス症候群」というのは、ホルムアルデヒド等の特定の物質が原因で起こることが明らかとなっている症状であり、ここで言う「化学物質過敏症」というものとは明確に区別されるべきものだと考える。

さて、環境省が2/13に「本態性多種化学物質過敏状態の調査研究報告書」という資料を発表した。この長ったらしい名前は、よく見ると「症候群」でも「過敏症」でもなく、「状態」となっている。要するに、ちまたで問題になっている「症状」は本当にあるのか?という調査である。なお、「本態性」とは原因不明という意味だとのことで、なかなか微妙な表現を選んで使っているみたいだ。過去分の報告書はこちら

興味のある方は、調査報告の詳細を読んでもらいたいが、結論だけを引用すると、

 これらの結果から、今回の二重盲検法による低濃度曝露研究では、ごく微量(指針値の半分以下)のホルムアルデヒドの曝露と被験者の症状誘発との間に関連は見出せなかった。
となっている。3年間掛けて、かなり念入りに行った、極めて「科学的」な研究の結果、いわゆる「過敏症」といわれる有意な症状は認められなかったということだ。

調査対象は、実際に従来の所見で「過敏症」と診断された人なので、全部で38名とサンプル数が少ないのが弱みかとは思うが、今まで因果関係が必ずしも明確ではないのに「化学物質」が原因とされてきた症状について、とりあえずは相関関係も認められなかったというのが現時点での公式見解ということになる。

実は、この調査のメンバーを見ると、先に紹介した本の著者である、宮田先生を始め、「化学物質過敏症」を広める役目をした北里研究所のメンバーが多数含まれている。おまけにこの調査研究は北里研究所の施設を使って行われたとある。ということは、同じ施設で同じ患者さんを相手にした調査で、方法が異なった(二重盲検の有無等)だけで、結論が異なったということになるのかな?

「化学物質過敏症」関連については、何と言っても「進化論と創造論」のサイトにある化学物質過敏症に関する覚え書きが信頼できる情報が充実していて必見。

誤解のないように付け加えると、決してこの症状の存在そのもの(や患者さんの苦痛)を否定するものではなく、その症状の原因が、不特定の多種類の超微量化学物質への曝露だと判断するべきではない、ということである。

一方、マウスを用いた動物実験では何らかの異常が観察されたようだが、詳細が明らかとなっておらず、今後の課題という位置付けのようだ。(ちなみに平成13年報告では、低濃度では影響なしとなっている。)

「化学物質過敏症」の存在を肯定的に捉えている団体化学物質過敏症支援センターのサイトも紹介する。シックハウスと区別せずに、同根であるというスタンスのようだ。今回の環境省の調査報告をどのように取り扱うのか興味のあるところ。

*何故か、環境省が調査結果を発表したというこのニュース、全然報道されない。所詮センセーショナルな結果が出ないとニュースバリューがないのだろうが、普通の人は環境省のサイトの新着情報なんかウォッチしてないからなあ。唯一、環境ニュースというサイト(EICネット)で報道された。

結局「化学物質過敏症」という怖い病気が広まってますよ、という恐怖報道のみが行われ、みんなの記憶に刻まれてしまい、それに対してネガティブな研究成果は誰にも届かないということだ。環境ホルモン騒ぎと似ている流れだ。

*化学屋から見ると「化学物質過敏症」なんて名前を付けるセンスが既におかしい。じゃあ酸素は? 窒素は? 水は? 化学物質じゃない物質って何なんだ??

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コメント

シックハウス症候群(SHS)発病から十数年経過し今は多種類化学物質過敏症(MCS)になった。未だに日本国では病態の研究がされず[外国では化学物質過敏症を認めない]等と言って苦しむ患者達を放置いる。日本国の国土事情を考えて欲しい。列島の海縁りの僅かな平地に多くの国民が集結し生活をし、生活環境での空気汚染が濃厚になっているのが気付かないのかと考える。農地に公園樹木にと高濃度の農薬を度々散布、国民は農薬被害に喘いでいる。国政・行政携わる者は国民の健康を考えドイツ等欧州諸国様な、化学物質被害の研究をする国の政治を見習って欲しい。健康被害者の救済住問題は急務だ。

投稿: 東京イングリット | 2011/01/03 16:46

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