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2004/02/28

室内空気質健康影響研究会

2/15のブログで紹介した「化学物質過敏症」に関連して、今度は厚生労働省のホームページに記事が載った。報告書の名前は「室内空気質健康影響研究会報告書:~シックハウス症候群に関する医学的知見の整理~」という長いもの。

 近年のシックハウス症候群を始めとする室内空気質による健康影響への関心の高まりを受け、厚生労働省健康局生活衛生課では、有識者からなる「室内空気質健康影響研究会」を平成15年5月から3回にわたり開催し、室内空気質の健康影響について、厚生労働科学研究等を通じてこれまでに得られた医学的知見の整理をお願いしてきた。今般、その報告書が取りまとめられたので公表することとする。
 室内空気質健康影響研究会は、室内空気質の健康影響について、これまでに実施されてきた調査研究で得られた医学的知見を整理することを目的として開催されたものであり、主として「シックハウス症候群」及び「MCS(Multiple Chemical Sensitivity:多種化学物質過敏状態)/化学物質過敏症」の2つの論点について議論を行ってきた。
ということだが、先の記事で紹介した、環境省が2/13に発表した「本態性多種化学物質過敏状態の調査研究報告書」という資料と比べてみるのもまた、味わい深い。

そもそも、似たような調査・研究を、二つの省庁で別々に行っているのも、いかにもなんだけど、当然だけど「化学物質過敏症」の捉え方も微妙に異なるように見える。

環境省の調査では、「今回の二重盲検法による低濃度曝露研究では、ごく微量(指針値の半分以下)のホルムアルデヒドの曝露と被験者の症状誘発との間に関連は見出せなかった。」という結論を得た。つまり、調査した範囲では、因果関係は見られなかったとしている。症状の名称としては、原因不明という意味を込めて、「本態性多種化学物質過敏状態」と名付けている。

今回の厚生労働省の調査では、「シックハウス症候群」については、基準値をやや下回る濃度のホルムアルデヒドやクロルピリホスの曝露に対して、特に感受性の高い人の場合に健康影響が生じる可能性は否定できないとした上で、化学物質以外の種々の環境因子(温度・湿度・気流・照度・騒音・振動等)や生物因子、或いは精神的ストレスの影響も排除できないしている。何だか歯切れが悪い表現だ。

また、「化学物質過敏症」についても、「環境中の種々の低濃度化学物質に反応し、非アレルギー性の過敏状態の発現により、精神・身体症状を示す患者が存在する可能性は否定できない」とした上で、「中毒やアレルギーといった既存の疾病概念で把握可能な患者が少なからず含まれており、MCSと化学物質過敏症は異なる概念であると考えられる。そのため、既存の疾病概念で病態の把握が可能な患者に対して、「化学物質過敏症」という診断名を付与する積極的な理由を見いだすことは困難であり、また、化学物質の関与が明確ではないにも関わらず、臨床症状と検査所見の組み合わせのみから「化学物質過敏症」と診断される傾向がある」としている。これまた何も結論していない表現。

今回の厚生労働省の調査は、過去の研究報告の調査とまとめを行ったものであり、新たな知見が得られるというよりも、厚生労働省としての見解をまとめるためのものと考えるべきだろうが、結論も今後の課題も中途半端な両論併記で、一体誰に対して何を期待したものなのかがよくわからない。

ちなみに、厚生労働省の調査と環境省の調査のメンバーの内の数人は両方兼任している。ならば、もう少し統一感のあるまとめ方はできないものなのだろうか? 少なくとも、呼び名ぐらい統一して欲しいな。

たまたま、共同通信の2/26配信の記事で

シックハウスの謎解明へ 厚労省が初の調査
 新築やリフォームした家で頭痛やのどの痛みなどを感じる「シックハウス症候群」の原因を探るため、厚生労働省は26日までに、症状を訴える人たちの自宅に出向いて実際に室内汚染状況を測定する大規模な調査に乗り出した。
 住宅内の化学物質濃度を調べる全国調査はあるが、症状との関連を調べる全国的な調査は初めて。化学物質だけでなくダニやカビなどの原因物質を総合的に分析するほか、温度、湿度の違いによる地域差も検討、謎に包まれたシックハウス症候群の実態把握を目指す。
 調査は岸玲子・北海道大大学院教授を主任とする研究班が実施。全国的な傾向をつかむため、札幌、福島、名古屋、大阪、岡山、北九州の6市を選んで調査を進めている。
 現在は自治体に提出された建築確認申請書類を閲覧して計4000軒程度の新築・リフォーム住宅を無作為抽出し、住民に自覚症状の有無、具体的な換気方法などをアンケートしている。
というのを見つけた。岸さんは、厚生労働省の今回の調査報告のメンバーでもある。これまでに得られた知見を踏まえた、化学物質以外の要因もきちんと抑えた調査であれば、何かがわかるかもしれない。できれば同時に、同様の環境に住んでいて、症状の出ていない人との違いを明らかにするような調査ができるといいのだけど。

それにしてもこうしてみると、環境省と厚生労働省のそれぞれが、多くの時間と人を使って、大々的な調査を同時並行して行っているんだねぇ。これらの調査そのものは必要なものだと思うけど、やり方は考えてね。

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コメント

シックハウス関連の記事にコメント頂きありがとうございました。

厚生労働省資料ですが
ホルムアルデヒドについては、0.08ppmという基準値がある
健康な者は基準値をわずかに上回った濃度の暴露を受けても影響が生じることはない
皮膚・粘膜の防御機能に障害がある者は、基準値を上回る濃度での暴露が持続した場合、皮膚や粘膜の症状が増悪するおそれがある
ただし化学物質が係る症状の関連因子であると判断するためには、十分な除外診断が必要である

という流れですので、シックハウスに関しては明瞭ではないかと思います。

化学物質過敏症に関しては、政策決定の立場からは、ああいった表現しかできないだろうなあ、という印象ですけど。
化学物質過敏症については両論併記なのはシックハウスについての報告書なので仕方ないかなと。

投稿: chem@u | 2005/12/06 22:41

コメントとトラックバックありがとうございます。

シックハウス症候群もホルムアルデヒドだけが原因物質であればわかりやすいのですが、さまざまな物質や微生物、あるいはその他の室内環境までが複雑に関与しているようですから、その境界線はやっぱり曖昧なのではないかと。。

それにしても、シックハウスと化学物質過敏症は別の概念であるということは、もっとアピールされる必要があるように思います。

投稿: tf2 | 2005/12/06 23:30

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