「遺伝子時代の基礎知識」
今のバイオ関係の色々なトピックには、さすがに学校で習ったような大昔の中途半端な知識では対応できない。だから、最新のバイオ関係知識をどこかで入手する必要を感じるけれど、余りにもホットな内容だけに、意外とうまくまとまった教科書的な本がない。今回は、ブルーバックスを読んでみた。
講談社ブルーバックス B-1424
遺伝子時代の基礎知識
東嶋 和子 著 bk1、amazon
同じ著者のブルーバックスでの前著、B-1309 「死因事典」bk1、amazonが結構いけてる視点で書かれていたのと、本書で取り扱っている個々のテーマが興味あったので迷わず購入した。
「ワコさん」という本書の著者と「チビ」という名の飼いネコが、いろんなゲノムに関わる最新知識に触れながら、学んでいくというストーリー形式となっていて、主人公は「チビ」という立場で書かれている。難しそうな話への導入を、スムーズに進める効果は確かにあったのだろうと思うけど、敢えてネコが主人公なんて小細工を使わなくても、とてもわかりやすくておもしろい本なのにな、と思ってしまう。
テーマは、遺伝子組み換え作物、DNA鑑定、クローン技術、遺伝子診断と治療、再生医療等の、正にゲノムを巡るホットな話題に、真正面から科学的にアプローチしたもので、非常に好感が持てる。僕は生物関係の専門知識は持っていないので、内容の正しさ加減は保証できないけど、きちんと参考文献があげられているので、そんなにいい加減な内容ではなさそうだ。
著者は科学分野を専攻した方ではないだけに、専門的にはやや突っ込み不足の感もあるが、逆に科学的な側面と社会的な側面をうまくバランスさせることができているように見える。ややもすると、生命倫理等のデリケートな議論の中では、この二つの視点を混同してしまうことが多い中で、その点も好感が持てる。何でだろうな? 多分、遺伝子組み換え作物や遺伝子治療といった微妙な問題に対して、変な先入観とかを持たずに疑問を解決していく、というスタンスに共感できるのかな?
さて、この分野(ゲノム応用)はこの先どこまで行くのだろう? 人類の持続的発展のためには、病気との闘いに勝つことも大事だろうし、食料問題だって大事だけど、人間が生きていくための環境・エネルギーの維持もとても大事だ。ゲノムという、とても魅力的で、限りない可能性を持っていそうなものの秘密が徐々に明らかとなってきた今、我々人類はその知識をどう使いこなしていくべきなのだろう?
あまりに大きすぎるテーマなので、考えだすと頭が痛くなりそうだけど、やっぱり考えていかないと、って "Think for the future" というこのサイトのタイトルテーマに通じるよ、ってことでどうでしょ?
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コメント
読みましたよ、私も。
図書館で借りました。
投稿: KIRI | 2004/10/19 03:40
KIRIさん、ようこそ。
コメントありがとうございます。読んでみていかがでした?
最新の「基礎知識」がまとまっているので、私は時々必要に応じて読み返したりしています。おっと、図書館で借りたのだと、そういうわけにもいかないですね。
今後ともよろしくお願いします。
投稿: tf2 | 2004/10/19 22:03