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2004/03/22

CO2濃度が急上昇?

昨日(3/21)、NHKがニュースで取り上げていたから、てっきり新聞も各紙大きく扱うかと思っていたら、日経新聞の紙面には載ったが、Web上ではどこの新聞社のサイトでも取り上げられていないようだ。日経新聞(3/22 朝刊)から引用すると、

二酸化炭素の大気中濃度 1年で大幅上昇
[AP] 温暖化ガスの二酸化炭素(CO2)の大気中濃度が、この一年間で大幅に増加し、379ppmに達したことが米ハワイ島にあるマウナロア観測所の調査で20日までに分かった。
 一年前の濃度は376ppmで、3ppm増加したことになる。過去十年間の平均年間増加濃度は1.8ppmだった。
中国やインドの急激な経済成長による燃料消費量の増加との関係を指摘する声も上がっているが、米海洋大気局(NOAA)の専門家は、急増した原因を慎重に分析する必要があり、結論を出すのは早計としている。
という記事。大気中の二酸化炭素の増加については、既に「国民の常識」に近いレベルの知名度だと思われるので、今更、大幅に増加しました、と言ってもニュースバリューがないのだろうな。まあ、この記事であまり大騒ぎするよりは、ひっそりと報道されるほうが好ましそうだが。。

それにしても、10年間の平均増加1.8ppm/年と比べて、この1年の増加3ppmは有意に大きいと言えるのか? 確か、大気中のCO2濃度は季節変動もあったと思うし、そもそも、いつのデータなの?(例えば2003年の年間平均値なのかどうかも記載されていない。)

ということで、APのニュースを探すと、例えばNewsMax.comなどが見つかる。これによると、

Average readings at the 11,141-foot Mauna Loa Observatory, where carbon dioxide density peaks each northern winter, hovered around 379 parts per million on Friday, compared with about 376 a year ago.

That year-to-year increase of about 3 parts per million is considerably higher than the average annual increase of 1.8 parts per million over the past decade, and markedly more accelerated than the 1-part-per-million annual increase recorded a half-century ago, when observations were first made here.

となっており、どうやら3/20(金)の測定値が379ppmだったようだ。376ppmというのは丁度1年前の数値なのかな? 毎年冬に数値が極大化するとあるが、それが3月に最大値を更新したことが問題なのか? 379ppmという数値が、従来の最高値を更新したということみたいだが。。

ということで元ネタを探してみた。NOAAのホームページを探してみたが、それらしいニュースやデータはなかった。しかし、ハワイのマウナロア観測所のデータというのは、この分野では有名らしく、二酸化炭素情報分析センター CDIACのホームページで、温暖化関連の様々なデータと共に公開されていることがわかった。

Atmospheric carbon dioxide record from Mauna Loaから、グラフと生データにアクセスできる。しかし、データは2002年12月迄のものしか公開されていないようだ。毎年、おおよそ5月に極大値を記録し、10月に極小値を記録している。年間の振れ幅は6~7ppm程度ある。これで、ある特定の1日の数値を持ってきて高い低いを議論するのも、何か違和感がある。何故、年間平均値とか、月間平均値で議論しないんだろう?

データを取り込んで調べてみると、例えば1998年はCO2増加が目立っており、6月~11月まで前年同月に比べて3ppm以上増加しており、年間平均でも2.9ppmも増加している。その代わり1997年は1.1ppmしか増加していない。ということで、いろんな要因での様々なバラツキを含んでおり、全体の傾向はともかくも、たまたま3/20は去年に比べて3ppm増加した、というのは、あまり精度のある話ではなさそうだ。計算してみると、1993~2002年の年間平均濃度の増加の平均値が1.67ppm、標準偏差は0.61ppmとなったから、3ppmの増加は平均値+2σ程度に収まってしまう。

ところで、アメリカの新聞記事の論調は、アメリカが京都議定書から離脱していることもあってか、何となく他人事のような感じだし、「中国とインドが原因か」みたいなコメントだけを載せているのも、何か意図的で嫌な感じ。で、アメリカはどうなのよ? っていうと、EICネットニュースによると、アメリカのCO2排出量は、1990年から2002年で13%増加したようだ。これには戦争による増加分は含まれていないんだろうな。。ちなみに、日本は1990年から2001年で4.5%増。(Mainichi INTERACTIVE


*3/22追記:タイミング良く、気象庁が最新データを発表した。測定場所によって数値もそれぞれだけど、全体の傾向はもちろん一緒。大気中のCO2濃度は順調に増大しているというべきか。朝日新聞さんは、早速これに反応した記事を書いてますね。 世界のCO2濃度、過去最高値を更新 気象庁発表。(過去最高を更新することは全然ニュースバリューない筈なのに。。)

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