2002年の有害物質排出量を公表
いわゆるPRTR法(特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律」(化学物質排出把握管理促進法))によって集計された一昨年の有害物質の排出量が3/29に環境省から発表された。報道各社はあまり大きく扱っていない。Webで見られるニュースとしては、Mainichi INTERACTIVE(3/30)の記事、有害物質:排出量7%減 02年度、全国の工場など--環境省と経産省とEICニュースの記事、14年度PRTRデータ公表 届出排出・移動総量は約50万8,000トンなど。
環境省の発表は、平成14年度PRTRデータの概要等についてで見られる。
新聞記事では、トータルの排出量や発がん性物質の排出量や、その推移について簡単に触れただけだったが、この制度で公開されるデータは実はかなり膨大なもの。ウェブページからは、都道府県別や業種別に代表的な有害物質の排出量や移動量の集計値が見られるだけだが、所定の手続きを取れば有料で詳細データを開示してもらえる。例えば、ある特定の事業所から、どんな物質が、何処へ、どれだけ排出されているか、という情報まで入手できるようだ。
とは言え、一般人にとっては、そんな細かなデータは何がなんだか訳がわからないし、あんまり役に立つとも思えない。却って、有害物質が何十万トンも放出されているかと思うと、漠然とした危険を感じるだけかもしれない。
PRTR制度の概要については、環境省のパンフレット(pdf版)に書かれているが、まずは現状把握をきちんと行い、産業界に対してセルフコントロールを促すと同時に、種々の環境政策の根拠とするものと考えられる。更にそれに加えて、広く国民に対して開示することで、リスクコミュニケーションを図ることも狙いの一つと思われる。
毎日新聞の記事で、
◇浦野紘平・横浜国立大大学院教授(環境安全学)の話とあるように、今はまだ、単純に集計した数値の公表に過ぎず、データの解析はそれなりの専門知識を持った者がそれぞれ行うしかない。
人口規模に比べて届け出事業所数が少ない都道府県があり、届け出漏れが減っていないのではないか。また物質によって毒性が異なるにもかかわらず、国のデータは量だけの比較になっている。毒性と量の両面からの分析が必要だ。一部の発がん性物質の量の増加も気になるデータだ。
例えば産総研の化学物質リスク管理研究センターでは、こういったデータを使って、より具体的なリスク評価を行うツールの開発や、それを用いたリスク評価を行っているが、まだまだ一部の専門家や研究者向けであり、ここの評価結果をマスコミが一般向けに解説したりするまでには来ていないようだ。
ここの中西準子さん等が、最近出版した「演習 環境リスクを計算する」bk1、amazonの第2章が「PRTRデータから大気経由の暴露とリスクを計算する」という演習になっているので、これも参考になる。
また、環境省が進めている、化学物質に関するリスクコミュニケーション活動の一つとして、化学物質アドバイザーという役割があり、PRTRデータの解釈とか解説を通じて、一般社会と産業界との、化学物質に関するコミュニケーションを推進することが大きな役割と位置づけられている。ということで、ここのサイトには、PRTRデータの解釈やリスクの考え方についてのテキストが公開されているので、興味ある人には参考となるだろう。
それにしても、現状ではほとんど具体的な解説がされていないから、新聞記事で「六価クロム、ヒ素など発がん性のある物質(12種)は約1万9940トン(前年度比1・6%増)だった。」などと書かれてしまうわけだ。約2万トンもの発がん物質が環境中に放出されているというのは、結構ショッキングじゃないだろうか? 何らかの解説が必要だと思うけど、今のところは誰の役割でもないってことなのかなあ。。
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