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2004/03/31

2002年の有害物質排出量を公表

いわゆるPRTR法(特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律」(化学物質排出把握管理促進法))によって集計された一昨年の有害物質の排出量が3/29に環境省から発表された。報道各社はあまり大きく扱っていない。Webで見られるニュースとしては、Mainichi INTERACTIVE(3/30)の記事、有害物質:排出量7%減 02年度、全国の工場など--環境省と経産省とEICニュースの記事、14年度PRTRデータ公表 届出排出・移動総量は約50万8,000トンなど。

環境省の発表は、平成14年度PRTRデータの概要等についてで見られる。

新聞記事では、トータルの排出量や発がん性物質の排出量や、その推移について簡単に触れただけだったが、この制度で公開されるデータは実はかなり膨大なもの。ウェブページからは、都道府県別や業種別に代表的な有害物質の排出量や移動量の集計値が見られるだけだが、所定の手続きを取れば有料で詳細データを開示してもらえる。例えば、ある特定の事業所から、どんな物質が、何処へ、どれだけ排出されているか、という情報まで入手できるようだ。

とは言え、一般人にとっては、そんな細かなデータは何がなんだか訳がわからないし、あんまり役に立つとも思えない。却って、有害物質が何十万トンも放出されているかと思うと、漠然とした危険を感じるだけかもしれない。

PRTR制度の概要については、環境省のパンフレット(pdf版)に書かれているが、まずは現状把握をきちんと行い、産業界に対してセルフコントロールを促すと同時に、種々の環境政策の根拠とするものと考えられる。更にそれに加えて、広く国民に対して開示することで、リスクコミュニケーションを図ることも狙いの一つと思われる。

毎日新聞の記事で、

◇浦野紘平・横浜国立大大学院教授(環境安全学)の話
 人口規模に比べて届け出事業所数が少ない都道府県があり、届け出漏れが減っていないのではないか。また物質によって毒性が異なるにもかかわらず、国のデータは量だけの比較になっている。毒性と量の両面からの分析が必要だ。一部の発がん性物質の量の増加も気になるデータだ。
とあるように、今はまだ、単純に集計した数値の公表に過ぎず、データの解析はそれなりの専門知識を持った者がそれぞれ行うしかない。

例えば産総研の化学物質リスク管理研究センターでは、こういったデータを使って、より具体的なリスク評価を行うツールの開発や、それを用いたリスク評価を行っているが、まだまだ一部の専門家や研究者向けであり、ここの評価結果をマスコミが一般向けに解説したりするまでには来ていないようだ。

ここの中西準子さん等が、最近出版した「演習 環境リスクを計算する」bk1amazonの第2章が「PRTRデータから大気経由の暴露とリスクを計算する」という演習になっているので、これも参考になる。

また、環境省が進めている、化学物質に関するリスクコミュニケーション活動の一つとして、化学物質アドバイザーという役割があり、PRTRデータの解釈とか解説を通じて、一般社会と産業界との、化学物質に関するコミュニケーションを推進することが大きな役割と位置づけられている。ということで、ここのサイトには、PRTRデータの解釈やリスクの考え方についてのテキストが公開されているので、興味ある人には参考となるだろう。

それにしても、現状ではほとんど具体的な解説がされていないから、新聞記事で「六価クロム、ヒ素など発がん性のある物質(12種)は約1万9940トン(前年度比1・6%増)だった。」などと書かれてしまうわけだ。約2万トンもの発がん物質が環境中に放出されているというのは、結構ショッキングじゃないだろうか? 何らかの解説が必要だと思うけど、今のところは誰の役割でもないってことなのかなあ。。

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227回目の献血

今日(3/31)、横浜駅西口の献血ルームにて、血漿成分献血をしてきた。2/20以来、やや間隔が開いて40日目ということになる。今回も、右腕で検査、左腕で採血。今日は前回のようなトラブルもなく、順調に終了。採血装置は、Hemonetics社のCCS

おみやげは、前回の鮭ごはんが思った以上においしかったので、今回も同じものにした。本当は献血Tシャツが欲しいけど、まだ在庫切れ状態が続いているようだ。

ちなみに、神奈川県赤十字血液センターは、薬事法違反で業務停止中なのだけど、献血ルームは通常通りの営業をしている。おわびの一つも掲げているかと思ったけど、何もなかった。(ま、献血する方にとってはあまり関係ないとも言えるけど、不祥事を起こしたなら、献血事業に協力してくれる人達に対して、もう少し何かあっても良いような。。。)

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2004/03/30

ガマの油の密輸

asahi.com(3/30)の記事。

冬眠中に「ガマの油」搾取 ロシア極東で大量密輸を摘発
 ロシア極東・沿海地方の税関でこのほど、トラックの積み荷から49キロにのぼるカエルの油が押収された。当局は中国市場を狙った「ガマの油密輸犯」の組織的犯罪とみて捜査している。

 イタル・タス通信によれば、これほど大量のカエルの油が国内で摘発されたのは初めて。専門家は約10万匹のカエルから搾り取られたとみている。おもにタイガ(針葉樹林帯)の沼地や樹木で生息するツチガエルらしい。

 同地方では、中国の業者の注文に応じ、カエル捕りで生計を立てるロシア人が少なくない。別の希少種のカエルの油なら、1キロあたり数千ドルの高値で取引されることもあるという。中国で薬などに用いられる。

 冬眠中のカエルに電気ショックを与えて大量に捕獲するという乱暴なやり方で、同地方の行政当局は「タイガの自然は取り返しのつかない損害を被りつつある」と警告している。 (03/30 14:43)

普通の日本人の感覚では、すぐには信じられない話だけど、もしも高価なカエルばかりをこれだけ捕獲したとすると、数千ドル/kg で 49kg として一千万円スケールの価値となる。10万匹で 49kg ということは 1匹当たり 0.49g、まあそんなものか? ロシアや中国の物価を考えると、確かに相当に割のいい話だろう。どこの国でも薬はいい商売なのかな。。

もっとも、冬眠中の蛙に電気ショックを与えて大量に捕獲するというけど、寒いタイガ地方で、土の中で寝てるカエルを見つけだして捕まえるというのも、これはこれで結構大変な仕事のような気もするが。。

このニュース、いつものように Google News や Yahoo! News で検索してみたけど、ソースとなる記事は見つからなかった。イタル・タス通信のホームページで検索してみたけど、それらしい記事はみつからなかった。(探し方が悪いのかな??)

さて、ガマの油の話は何となく記憶にはあるが、細かな点まで覚えていない。探してみると、あちこちに紹介する記事があったが、例えば、日本の民話を紹介するページの茨城や、時代屋武ちゃんのホームページの筑波山名物・ガマの油売りの記述などなど。

お話や口上にもいくつかのバリエーションがあるようだが、そもそもガマの油は、本当にガマガエルの分泌物を使っていたのかという点でもいろいろとあるようだ。そう言えば、昔うちの実家で飼っていた犬は、庭でヒキガエルを見つけては、ちょっかいを出すんだけど、あの液を口にするとすごく痺れるみたいで、悲惨な顔して戻って来てたな。

毒『動物』ガマガエルによると、確かにガマガエルの分泌物には薬効があるのだそうだ。ここで紹介されている、元祖ガマの油「陣中膏」を江戸時代から製造販売していた、山田屋薬局は残念ながら1999年に倒産したようだが。

かえるの学校の説明によれば、今、おみやげ屋で手にはいる「ガマの油」は、実はガマガエルの分泌物を含んではいない、単なるハンドクリームのようなものだとのこと。それでも、中国では、今でもガマガエルの分泌物を蟾酥(せんそ)という漢方薬にしているらしいから、これが、ロシアの蛙の密輸に繋がるのかな? (薬効成分の名前が先ほどのページと違うが。。)

さて、ツチガエルというのは、通称イボガエルと呼ばれている奴らしく、少なくとも日本には普通に生息していそうだ。でも、このカエルの分泌物にも、本当にガマガエルと同じような薬効があるのかどうか、ましてやロシアに住む希少種という奴については、探してみたが何も情報は得られなかった。

それにしても、野生のカエルを勝手に捕まえるだけでは罪にはなりそうもない(希少種は保護されているのかも知れないけど)から、今回の話は密輸が問題ということになるのかな? そもそもそんなに高値で売れるなら、養殖してみる価値はないのだろうか?(1匹あたり100円程度では、割に合わないかな? 油の抽出コストも掛かるわけだしな。。)

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2004/03/29

アサヒビールの新型缶

FujiSankei Business i(3/29)のニュースから、

アサヒビールが新しい飲口の缶容器を開発
 飲みやすく注ぎやすいビール缶登場。アサヒビールは、早稲田大学理工学部の棟近(むねちか)雅彦教授の研究グループと共同で、新しい飲み口の缶ビール容器「うまくち缶」を開発した。人間の商品に対する感性と商品の物理的な特性を踏まえ、工学的な商品設計を行う「感性工学」を取り入れた。飲み口の縦横の長さを変えて用意した缶の中から、モニター調査を経て選び出して採用した。

 同社は容器開発によって消費者の満足度を高めるため、2001年から「感性工学」の第一人者で、品質管理などを研究する棟近教授と、容器や外装に関して共同研究を進めてきた。4月から利用を開始することになった「うまくち缶」は、飲みやすさ、注ぎやすさに関して消費者が持っている感性イメージを、流入感やフィット感などから14項目に定義・分類。次に、容器の物理的な特性を、注ぐときの音、飲み口の面積など13項目をあげて、感性イメージと物理的特性の相関関係を研究して開発した。

 最終的に採用された缶は、従来品よりも飲み口が幅広く正円状になっている点が特徴。注ぎ出し流量が従来品より2割程度多く、飲み心地もいいという。

 新しい缶は、北海道工場(札幌市白石区)で製造する「アサヒスーパードライ」の500ミリリットル缶と350ミリリットル缶で4月下旬から販売。5月には北海道工場で製造する発泡酒、6月以降は東日本の3工場でも採用し、順次全国の工場に広げていく。

アサヒビールのニュースリリース(2004/03/26)は、こちら

それにしても、「感性工学」って何だろう? この記事にある、早稲田大学の棟近研究室のホームページに行くと、卒論や修論が見られるようだ。日本感性工学会という学会もあるし、感性工学科を設置している大学もあるようだ。信州大学広島国際大学(名前は少し違うが)。

それにしても、「感性」を定量的に扱いたいという要求はわかるけど、信州大学のカリキュラムを見ても、人文系、理数系の両方にわたる、相当に幅広い学際的な知識をを要求されるし、なかなか学問として成立させるのは難しそうな感じだ。入力側も出力側も数値化するのが難しい情報を扱うことになりそうだし、下手すりゃ単なるアンケート集計処理で終わる恐れもありそうだ。

今回のアサヒビールの飲み口についても、その成果が誰にでもはっきりとわかるものでもないだろうし、アサヒビールとしても、缶の設計を変えてまで追求するべきものなのかどうか、迷っただろうなあ。

とりあえず、従来型と新型の缶を手に入れて比較してみるか。まあ、二重盲検するまでもなく、少なくとも僕の場合には、違いがわからないだろうな。関東地方で売り出すのはいつからだろう?今のうちに旧型の缶を買い置きしておかなくてはいけないな。 (ということは、新旧の比較をしようとしても、製造年月日や保存期間が異なってしまうわけか。。)

#この話は知っていると、宴会のネタにはなりそうだ。。

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2004/03/28

自動回転ドアの存在意義

今更ではあるけれど、今回(3/26)の事故について触れてみたい。時間と共に、初期のヒステリックな対応が一段落して、色々な背景が明らかとなってきて、問題の本質がどこにあるのかも見えてきたように思う。

そもそも、今回の事故は何故これほど大きな騒ぎになったのだろう? 全国に約500もある自動回転ドアを、毎日多数の人が利用していて、恐らく初めての死者が出た事故である。初めてだから、というのが最も大きい理由なのだろうけど、事情が明らかになるにつれて、理不尽な部分も見えてきたことも大きいと思う。

例えば交通事故の場合には、毎日多くの人が犠牲になっているけれど、「ブレーキをかけてから数十メートルも走ってから止まるような車を作ることはけしからん。」という意見は聞かれない。他にも多くの問題点があるけれど、車社会の危険性はある範囲で受け入れよう、という社会的な合意がなされていると考えられる。

エレベータやエスカレータの場合にも、「巻き込まれ・挟まれ事故」は何度もあるし、過去に死者も出ているけれど、利用者側が慣れたためなのかあまり問題にはなってない。そもそも最近の地下鉄なんかを利用しようと思えば、エスカレータなしの駅は考えられない。

回転ドアを設置する理由は、例えばこのページに詳しいが、どうみても設置する側の都合によるものだ。利用する側からすれば、ほとんど何もメリットがないと思う。(遊園地のアトラクション的な楽しみがないではないが。)バリアフリー面や非常時を考えても、通常のスライド式の自動ドアが一番メリットが大きいのではないか?(エアカーテンのみで、ドアが常時開いているのが一番という話もあるが。。)

となると、車やエスカレータとは、利用者自身のメリットという点で大きな違いがあるのではないか? 回転ドアの場合は、設置者側の都合によって、利用者側が一方的に理不尽なリスクを負わされていると言えるのではないか?(設置者側のメリットは、最終的には利用者側に還元されるのかもしれないけど、それは目に見えない。)

新聞の論調では、このシノレスというドアの問題点として、安全装置に死角があったことや、緊急停止作動後の停止までの距離が長いこと、或いは挟まれた時に、通常の回転ドアは扉が衝撃を緩和するように逆方向に動くのに、シノレスの場合は全く衝撃を緩和する機構がなかったという点も指摘されている。それと共に、以前から同様の事故が起こっていたのに、有効な対策が打てていなかったのも非難されるべきだろう。

追記:「シノレス」へのリンクが切れちゃいました。三和タジマさんが、該当情報を削除してしまったようです。(3/29の朝の時点まではあったのですが。ウェイバックしてみたのですが、残念ながらシノレスの図面は見当たらず。関連会社のアメリカのホートン社に似た製品があるようだけど。。)

ということで、今は、自動回転ドア全般の話ではなく、あくまでも、この特定のドアが問題になっていると考えられる。このドア固有の問題点については、適切な対策を打つなり、他の安全な形式のドアに代えることで、ある程度は解決するだろう。

ところで、機械を扱う職場に勤めた経験のある人なら、「回転物には手を出すな!」という標語を耳にタコができるほど聞いていることだろう。安全装置が付いているからといって安心はできないことも、この世界では常識だ。自動回転ドアに頭を挟まれて死亡することは無くすことができても、手や指を挟んでしまう可能性までを完全に排除するのは恐らく非現実的だろう。特にこんなに大型の自動回転ドアともなると、一旦巻き込まれたり挟まれた時の被害が大きくなることも十分に予想できる。

さて、だとすると、一体どこで折り合いをつけるのが良いのだろうか? 一般論としては、リスクゼロを要求することは間違いである、と考えているけれど、それはあくまでもリスクとベネフィットのバランスの問題である。果たして、利用者にとって直接のメリットがない大型自動回転ドアが、リスクを抱えたままで社会で生き残れるのだろうか? だとすると、それはどういう損得勘定によるものなのか、興味深く見守っていきたい。

*回転ドアの歴史の長い欧米を見ても、今回のような大型の自動回転ドアというのはないのではないか? 結局は、欧米並みに小型の回転ドアを多数設置するのが妥当な落とし所かな。。

*何故子どもばかりが事故にあうのか? というのも実は議論すべき問題点かもしれない。普通の大人ならば怖いと直感的に感じる物に対して、子どもが無防備に走りこんでしまうことが問題ではないのか。子どもはそういう珍しいものに好奇心を持つのだから仕方ないのか、それとも本来備えているべき本能的な危険察知能力が欠如してしまっているのか、或いは後天的に身に付けるべき、危険を避ける知恵を教えることができていないことが問題なのか?

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2004/03/27

「いちばん大事なこと」

「バカの壁」は比較的早い時期(まだ大騒ぎされる前)に読んでみたけど、正直言って、あまりピンと来なかった。その後大ヒットとなったけど、そんなに面白い本だったかな? と自分の読解力やセンスのなさを痛感する羽目になってしまった。で、たまたま本屋で、この本を見かけて、「養老教授の環境論」というサブタイトルにも惹かれ、「バカの壁」へのリベンジの想いも込めて、読んでみた。

集英社新書 0219B
 いちばん大事なこと 養老教授の環境論
 養老 孟司 著 bk1amazon

結果として、やっぱり僕には養老先生の考えや本は合わないのかな、と思い知らされることになった。「バカの壁」もそうだったと思うけど、この本も口述筆記という形式で、どうも文章が冗長というか、論旨がはっきりしない印象で、読んでいてイライラすることが多いのが、原因の一つかもしれない。(話の論点がいつの間にか、すりかわったりすることもあるし。)

さて、肝心の内容であるが、「環境問題を都会の真中で机上の計算だけで論じていても、問題の本質を明らかにすることはできない。人間自身が自然の一部であることを認識するために、もっと不自由な暮らしをしてみたり、生態系や地球という複雑なシステムの中に身を置いて、自ら何をすべきかを考えなさい。」というような主旨だ(と思う)。

昆虫に魅せられ、解剖学を専攻し、数々の著書を持つ養老先生らしく、昆虫や動物、或いは植物等の生物に関わる、たくさんの興味深い、具体的な話が出てくる。自然というのは途方もなく複雑で、「ああすれば、こうなる」という科学の論理では、到底説明しつくせるものではない、ということを再三強調する。

しかし、だから町を出て野山で暮らしてみよう、という話に行っちゃうと、何だか騙されたような気になる。確かに、グリーンピースのような環境原理主義を切り捨てる一方で、環境を人間がコントロールしようとすることの愚かさを指摘することには同感できる。でも、僕は養老先生よりも、もっと科学の力を信じたい。

確かに人間は、生物を構成する、たった一つの細胞さえも、人工的に作ることはできない。でも、だから人間には複雑な生態系を理解することができない、という結論にいくのは違うでしょう。科学は、その複雑で巨大な世界を理解しようと、過去連綿と努力を積み重ねてきたのだし、実際に多くのものを手にしてきたのだ。

これからも、科学はその限界を念頭に置きながら、少しずつ、この世界を様々な方向からひも解いていくだろう。環境問題をどう定義するにしても、その解決は科学的なアプローチを抜きにしてはありえないだろう。(実施に当たって政治的な判断が重要であるにしても。)

本書は、過去に人間が環境をコントロールしようとして起こった、様々な問題を解説してくれるけど、今後の展望が何だか中途半端というか、スケールが小さい感じがする。結局、環境論とは言うけれど、数百年後の地球環境をどう捉えるのか、というような視点ではなく、身近な自然とのつきあい方をもっと見直そう、という話だったのか?? とんでもなく読み違えてなければいいんだけど。。

そういえば、本書の帯には、「大反響!養老流自然とのつきあい方。都市という頭、田舎という身体。」というコピーがあった。 

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2004/03/26

再生ペットボトルがもうすぐデビュー

Mainichi INTERACTIVE(3/25)の記事。

帝人:再生ペットボトル、4月から出荷 世界初の技術
 帝人グループは25日、使用済みペットボトルを同じペットボトルの原料樹脂に再生させる世界初のリサイクル技術を活用して、再生したペットボトル用の原料樹脂を4月初旬から出荷すると発表した。これを受けて、同月中旬には、完全循環型のペットボトルが店頭に並ぶが、消費者には区別がつかないという。

 これまでは、使用済みペットボトルは異物が混入するため、再生樹脂は、衣服などに使う通常のポリエステル繊維の原料として使うことはできたが、高い純度が求められるペットボトル用には活用できなかった。しかし、帝人は独自の化学的処理で課題を克服。内閣府の食品安全委員会が25日、再生された樹脂について「新品同様に使える」と評価したことから、国内出荷に踏み切ることにした。

 帝人グループは昨年11月、山口県内でリサイクル施設の操業を開始した。同施設は年間で500ミリリットルペットボトル約20億本から樹脂5万トンを再生する能力を持つ。従来のペットボトル用樹脂の生産施設を含めると、同樹脂の生産能力は年9万トンになる。再生樹脂は、既存樹脂と同価格で出荷される。【吉原宏樹】

これは、帝人が「ボトル to ボトル」と呼ぶ技術で、関連する帝人のニュースリリースがたくさん出ている。事業構想(2001/12/17)操業開始(2003/11/19)食品安全委員会評価終了(2004/03/25)。(話の筋とは関係ないけど、この設備、現時点では高圧ガス保安法違反で操業停止中ですね。)

実は、似たような技術で、やはり回収ペットボトルを化学的に再生して、ペットボトルにしようという会社がある。株式会社ペットリバースがそれ。(reverse かと思ったら rebirth なんだ。当然か。。)アイエス法と名付けられた技術を用いて、こちらも間もなく操業開始するという。背景や技術については株式会社アイエスのページも合わせて見る価値あり。こちらは「ケミカルリサイクル」と呼んでいるようだ。ペットリバースの操業に関して、神奈川新聞の3/25の記事が出ている。

川崎にペットボトル再生工場 ◆4月から本格稼動
 使用済みペットボトルを化学的に分解し、ペットボトルの原料となる樹脂に再生する工場のしゅん工式が二十四日、川崎市川崎区扇町の同工場で行われた。運営する「ペットリバース」(稲田修司社長、同所)によると、ペットボトルの完全循環型リサイクル事業は首都圏初。工場は四月から本格稼働する。
 工場は、川崎市が資源循環型の街づくり(エコタウン)を進めている地域にあり、広さは約五万三千平方メートル。建設費は、国が四十億円、市が四千万円を補助している。
 これまで使用済みペットボトルをリサイクルする場合、不純物を完全に取り除くことが難しいことから、繊維製品などに利用され、ボトルには再生されていなかった。同社は新技術を開発し、「品質的に新品のペットボトル用樹脂と同等のものに再生する」(同社)という。
 使用済みボトルは、色が付いていたり、ラベル、キャップなどが混在していたりしても再生可能。年間で、五〇〇ミリリットル用ペットボトルで約九億本に相当する使用済みボトル約二万七千五百トンを処理する計画だ。再生した樹脂は、ボトルメーカーなどに販売する。
 稲田社長は「川崎という場所は、首都圏という大消費地が控えている。循環型社会の構築に貢献したい」と述べた。また、阿部孝夫川崎市長も「世界の最先端を行く事業」と期待を寄せた。
 同社によると、同様のリサイクル工場は、別方式のものが山口県にあるという。
ということで、帝人とほとんど同じタイミングで操業することになるのか。帝人が山口県で、ペットリバースが川崎市ということで、回収ボトルの運搬を考えると、東西にそれぞれリサイクル工場があるのはバランスが良いのかもしれない。

帝人のリサイクル事業は、民活法の適用を受けているし、ペットリバースの工場建設には、かなり大きな金額を国と市が補助している、という具合にペットボトルのボトルへのリサイクルは、国や自治体のバックアップを受けて、積極的に進められているようだ。

ここで、両者の技術的な違いを見てみると、PET(ポリエチレンテレフタレート)は、原料のTPA(テレフタル酸)とEG(エチレングリコール)を縮重合させたものだが、帝人の技術は回収したPETを化学的に分解して、元の原料であるTPAとEGにまで戻し、それを再び縮重合させてPETにするもの。一方、アイエス法は回収したPETを化学的に分解するところは一緒だが、TPAとEGになる手前のBHET(ビスヒドロキシエチルテレフタレート:TPAとEGのエステルのモノマー)までで止め、それを再度重合してPETに戻す。単純に考えれば、アイエス法の方が工程も短く、効率が良さそうだが、品質制御や運転の容易さ(フレキシビリティ等)に関しては、帝人のやり方の方が優れているかもしれない。

さて、この技術、確かに画期的なものだと思う。従来の発想では、こんなことをやろうというアイデア自体が出てこないし、いかにも環境の世紀らしい技術だな、といった趣もある。ボトルにするためには、純度等の品質に関するハードルが相当に高い筈だが、回収品を原料として、高品質なものを作るのは大変だっただろうと思う。(だからこそ、従来は回収したペットボトルは繊維にしか戻せなかったわけだし。)

だけど、ではこれが夢の技術で、これでペットボトルのごみ問題が解決するのか? というと、何だか違う気がする。(これで本当にペイするのか?という疑問もあるのだが、それは置いておいてもだ。) その辺については、もう少し書きたいこともあるので、次回へ続く、ということで。。。

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2004/03/25

世界人口増加が減速?

何故か今のところ日本では報じられていないので、Independent.co.uk(3/24)の記事、Aids and fewer fertile women slow world population growthから。世界の人口増加のペースが少し落ちている、ということだが、その原因は先進国で女性が生む子供の数が減っていることと、エイズの蔓延によるものらしい。(fertileは出生率)

人口増加のペースについては、

The Bureau calculated that the world is currently adding population at a rate of 1.2 per cent per year. That means 74 million new human beings every 12 months, and the equivalent of the population of western Europe every five years.

There has, however, been a reversal in the rate of growth since population hit in the 6 billion mark in June 1999. It took just 12 years for the population to jump from 5 to 6 billion - the fastest billion ever. However, it is likely to take 14 years to reach 7 billion, a further 15 years to get to 8 billion, and another 20 years to reach 9 billion. The overall growth rate is expected to slow to 0.42 per cent by 2050.

ということで、50億人から60億人まで12年間しか掛からなかったのが、80億人から90億人になるのには20年間掛かるだろうと予想している。この数値を出したのは、アメリカの the US Census Bureau(米国勢調査局)なので、そのホームページに行ってみたら、それらしい資料が見つかった。グラフがいくつかあるので、それを見るだけでも何となく内容がわかる。この資料の図3を見ると、2050年には世界全体が随分と老齢化することが一目瞭然だ。

ただし、これは世界で極端な二極化が進んだ結果であり、先進国は出生率の低下と老齢化、及びそれに伴う労働力人口の減少に悩み、発展国は人口増加とAIDS/HIVでの短寿命に苦しむという、何だかとてもアンバランスな世界のようだ。

これに関して、同じタイミングで国連からもリリースが出ているようで、VOANews.com(3/25)が記事にしている。UN Looks at World Population, Migration Trendsには、このニュースのテキストと一緒に音声ファイル版も掲載されているので、英語のリスニングの勉強にもなる。(さすが Voice of America)

この元となった、国連のリリースは、POP/898POP/899。ここには、都市部への人口集中が進み、2007年には世界の過半数が都市部に住むことや、多くの国が人口問題(発展国では増えすぎること、先進国では労働力が減少していること等)の悩みを抱えていること等がレポートされている。

なお従来の世界人口予測については、国連の予測の日本語版が総務省統計局のサイトで手に入る。第2章 人口というページに、世界人口の推移というファイルがエクセル形式で載っている。確かにこの数字よりも、今回の米国勢調査局の数値はかなり控えめになっている。

まあ、これらの数値は相当に不確実性を含んだ仮定の下に計算して求められたものなので、数十年後を予測する精度は大して高くないとは思うけど、世の中に大きな変化が起こらない限り、全体傾向はおよそ正しいと言えるのだろう。

人口問題は、環境問題の一つと言えるし、重大な政治問題とも言える。世界人口の増加傾向に少しでもブレーキがかかるのは、うれしいことだけれど、それがAIDS/HIVによるものだったり、先進国の老齢化によるものだとすると、何だか悲しい。まして、世界の二極化が極端に進むことで、持てる国と持たざる国が正反対の悩みを持つのも皮肉なことだ。それは、益々問題を大きくしてしまうのか、それとも、どこかでうまく折り合いがつけられるのか?

とても大きな問題だから、たまには英文とじっくり格闘しながら考えるのも良いかもしれない。ということで今日のコメントは手抜きかも。。

*U.S. Census BureauのWorld POPClock Projectionでは、現時点での世界人口を示してくれます。きちんと毎秒2~3人増えているらしい。

*このニュースは日本では報じられないのだろうか? と思いきや、CNN.co.jp(3/25)が、報じているな。世界人口の半数超、07年に都市圏に集中と 国連統計。これは国連のレポート POP/899の内容についてのニュースだ。

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2004/03/24

ボトルの内容物の可燃性検査装置

産経新聞のニュース(3/24)から、

テロ防止へ液体検査、成田などに装置設置 国交省
 国土交通省は二十三日、テロ防止などのため、航空機に持ち込むペットボトル内の液体が可燃物かどうかを調べる検査装置を羽田、成田、名古屋の三空港に設置すると発表した。十月下旬まで試験運用し、同月末から新千歳や福岡など二十六空港で本格的に導入する。
 同省によると、こうした装置を空港に導入するのは世界初という。これまでは、液体の色を目で確認したり、開封してにおいを調べたりしていた。

 昨年二月の韓国大邱市の地下鉄放火事件や、テロに対する懸念の高まりを受け設置が決まった。ペットボトルを検知部に置くと、センサーから弱い電気が流れ、可燃性を感知。持ち込みが禁じられたガソリンや灯油なら赤ランプ、水や酒なら青ランプが点灯する。

ちょっと興味があったので、更に調べていたら、NHKニュースが取り上げていた。いつまでリンクが残っているか不明だが、今の時点では動画ニュースが見られる。ペットボトルを装置に置くと、数秒で、内容物が可燃物か否かを判定してくれるようだ。なかなかの優れもの。

検索してみると、昨年の11月に成田空港のNarita Airport Newsで取り上げられている。このニュースを元にして、開発元の東京ガスのニュース装置紹介が芋づる式にみつかった。また、共同開発元の(株)テックジャムという会社のホームページはこちら。(製品紹介で載せている情報は東京ガスのものと同一だが、多彩な計測機器や理化学装置を扱っている会社のようだ。)

さて、開発元の紹介を見ても、検知の原理が書かれていない。産経新聞の記事には、「センサーから弱い電気が流れ、可燃物を検知」とあり、NHKのビデオニュースでも「この装置は、液体の電気的な特性を利用してガソリンやシンナーなどの可燃物を判別するもの」と説明している。ところがビデオを見ても、本当にボトルを装置に置くだけ。ボトルに入っている液量も多かったり少なかったりするだろうし、装置の仕様によると、280から2000mlのペットボトルに対応するとある。さて、どうやって判別しているのだろう?

ボトルを斜めに置くのがポイントのように思えるのだが、これはボトル内の残液量が少ないときを想定したものかもしれない。いずれにしても、検知はボトルの底面と側面(下部)のあたりでしていそうだ。ペットボトルはそれぞれ(底面も側面も)形状が異なるし、胴体にはフィルムラベルが巻いてある。表面は結露したりこぼれたりで、水分や汚れが付着していることも前提としなくてはならないだろう。

となると、静電容量で判断することになるのだろうか? 水の比誘電率は20℃で80程度。エタノールは約25、ヘプタンは約2ということで、確かに水溶液系は誘電率が大きいので、区別は可能かもしれない。それにしても、どことどこの間で静電容量を測るのか?ということが問題になる。

他には、固有の赤外線を当てて吸収を見るという方法もありそうだが、ボトルのサイズや温度の影響もあるし、リファレンスとの比較ならともかくも、一発で○×の判定を下せるだろうか?

製品の型番でGoogle検索してみたところ、英文の製品紹介が見つかった。この資料には、センサーの出力のグラフが載っているが、やはりボトルサイズや中の液量で、センサーの出力が変化している。更に、検出に必要な最低液量はボトルサイズの1/3と書いてあるな。またボトルはPETではなく、ガラス瓶でも可能とも書いてある。ますます不思議だ、一体どうなっているんだろう??

こういった実地テスト段階まで来たということは、それなりの性能が発揮できているんだろうし、結構すごい技術かもしれない。装置のデザイン等はまだ改善の余地がありそうだが、そのうち、世界中の空港にこういう装置が置かれるようになりそうな予感。日本の技術はやっぱりすごいな。

*特許庁のホームページで関連特許を探してみたが、見つからなかった。

*3/30追記
東京ガスの研究所のサイトで非接触式の静電容量センサの記事をみつけた。この方式かもしれない。。

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2004/03/23

「ごみ問題とライフスタイル」

日本では一時期、ごみ問題が最大の環境問題と言われたが、その割には具体的なことはよく知らなかったりする。本書は、地球と人間の環境を考えるというシリーズの第8弾。このシリーズについては、このブログでも、No.5 エネルギーNo.7 水と健康を取り上げているが、わかりやすく、冷静で、科学的だという特徴がある。

日本評論社 シリーズ 地球と人間の環境を考える 8
 ごみ問題とライフスタイル こんな暮らしは続かない
 高月 紘 著 bk1amazon

本書は、ごみ処理の現状やその問題点についての解説本ではない。その代わりに、家庭から出る一般ごみを徹底的に調査・分析するという、非常にユニークな手法で、現在の我々のライフスタイルを浮き彫りにしている。そして最後には、地球全体として持続可能な社会を目指すときに、今の生活をどう変えていくべきか? を考えさせてくれる。

著者は、京都大学の教授であると同時に、日本漫画家協会の会員なのだそうで、本書にも、ペンネームの「High Moon」で沢山のイラストが載せられている。本書はともかく図表が豊富。何しろ全185ページのうち、図表が全く載っていない文章だけのページは約40ページしかない。難しい理論や数式もなく、説明が極めてわかりやすいこともあり、あっと言う間に読めてしまう。一方で豊富に掲載されている図表は、データとしても貴重なものが多く、後々も参考になりそうだ。内容は

はじめに
1章 現代のごみ事情
2章 日本のごみ処理
3章 ごみの内訳
4章 容器・包装材
5章 使い捨て商品
6章 食品ごみ
7章 自動車、家電、パソコン、携帯電話
8章 家庭から出る有害廃棄物
9章 産業廃棄物-豊島事件を中心に-
10章 3Rから2Rへ
おわりに
となっており、通常の生産量や廃棄物量といった統計数値をベースにしながらも、要所要所では、著者が率先して行った、京都の一般家庭ごみ調査の結果を有効に使用して、説得力のある「一般家庭の生活イメージ」が構築される。

何しろ、一般家庭から普通に出されるごみ袋を沢山集めてきて、中身を分類、軽量するという、大変な作業を継続的に続けることで明らかとなった結果は重みがある。もっとも、日本全体のライフスタイルを、京都のごく少数の家庭から出るごみから推定してしまっても良いのか? という疑問はあるけれど、でもこの(3Kで)地道な調査研究には素直に頭が下がる。

本書の最終的な結論でもあり、サブタイトルとなっている「こんな暮らしは続かない」という指摘自体は、誰もが何となく気付いていることだろうと思う。本書では、その結論を導く上で、食品包装材の製造エネルギーは食品自体のエネルギーを上回ることや、日本人は世界の中でも突出してティッシュを使う国民であること、或いは日本の農業・水産業生産額と日本人が廃棄する残飯の価値がほぼ同等であることや、最近のリサイクル促進は逆に廃棄物や資源消費量を増やしているのでは、といったことが次々と指摘される。

そして、我々が今のライフスタイルを見直して、大量消費型の生活と決別しない限り、地球の未来はない、ということになるのだが、著者自らが、

 さて、このように私がエコライフの必要性を強調すると必ず、
「みんなが先生の言われるようなライフスタイルをめざすと日本の経済はいったいどうなるのですか? 物は売れなくなり、経済は疲弊し、失業者が巷にあふれると思いますが・・・・」
との質問が来る。たしかに、今までの経済システムで、すなわち資源やエネルギーをたくさん使って製品をつくり、販売し、利潤をあげることによって経済を維持しようとすると、物の消費が減れば経済は破綻するだろう。
 しかし、この経済システムこそが今日の深刻な環境問題、資源問題、エネルギー問題を引き起こしてきたのであるから、根本的に今までの経済システムを変える必要がある。私は経済学者ではないから、どのように変えるかの明確な解決策を提示できないが、少なくとも内橋克人氏が提案しているように、資源・エネルギーを浪費しなくても経済が維持できる方法をめざすべきであろう。(p.184)
と書かれているが、社会が納得できるような、具体的なソフトランディングの道筋は、まだまだ誰にも見えていない。既にヨーロッパでは、その変化の方向が見え始めているのかもしれないが、アメリカや日本が何処に向かうのか。。 この問題の答えが見つかればノーベル賞ものじゃないのか?

でも、社会システム上の問題が解決できるとしても、果たして我々は、一度手に入れた「豊かさ」を手放すことができるのだろうか? やっぱり、わかっちゃいるけどやめられない、のかな??

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2004/03/22

CO2濃度が急上昇?

昨日(3/21)、NHKがニュースで取り上げていたから、てっきり新聞も各紙大きく扱うかと思っていたら、日経新聞の紙面には載ったが、Web上ではどこの新聞社のサイトでも取り上げられていないようだ。日経新聞(3/22 朝刊)から引用すると、

二酸化炭素の大気中濃度 1年で大幅上昇
[AP] 温暖化ガスの二酸化炭素(CO2)の大気中濃度が、この一年間で大幅に増加し、379ppmに達したことが米ハワイ島にあるマウナロア観測所の調査で20日までに分かった。
 一年前の濃度は376ppmで、3ppm増加したことになる。過去十年間の平均年間増加濃度は1.8ppmだった。
中国やインドの急激な経済成長による燃料消費量の増加との関係を指摘する声も上がっているが、米海洋大気局(NOAA)の専門家は、急増した原因を慎重に分析する必要があり、結論を出すのは早計としている。
という記事。大気中の二酸化炭素の増加については、既に「国民の常識」に近いレベルの知名度だと思われるので、今更、大幅に増加しました、と言ってもニュースバリューがないのだろうな。まあ、この記事であまり大騒ぎするよりは、ひっそりと報道されるほうが好ましそうだが。。

それにしても、10年間の平均増加1.8ppm/年と比べて、この1年の増加3ppmは有意に大きいと言えるのか? 確か、大気中のCO2濃度は季節変動もあったと思うし、そもそも、いつのデータなの?(例えば2003年の年間平均値なのかどうかも記載されていない。)

ということで、APのニュースを探すと、例えばNewsMax.comなどが見つかる。これによると、

Average readings at the 11,141-foot Mauna Loa Observatory, where carbon dioxide density peaks each northern winter, hovered around 379 parts per million on Friday, compared with about 376 a year ago.

That year-to-year increase of about 3 parts per million is considerably higher than the average annual increase of 1.8 parts per million over the past decade, and markedly more accelerated than the 1-part-per-million annual increase recorded a half-century ago, when observations were first made here.

となっており、どうやら3/20(金)の測定値が379ppmだったようだ。376ppmというのは丁度1年前の数値なのかな? 毎年冬に数値が極大化するとあるが、それが3月に最大値を更新したことが問題なのか? 379ppmという数値が、従来の最高値を更新したということみたいだが。。

ということで元ネタを探してみた。NOAAのホームページを探してみたが、それらしいニュースやデータはなかった。しかし、ハワイのマウナロア観測所のデータというのは、この分野では有名らしく、二酸化炭素情報分析センター CDIACのホームページで、温暖化関連の様々なデータと共に公開されていることがわかった。

Atmospheric carbon dioxide record from Mauna Loaから、グラフと生データにアクセスできる。しかし、データは2002年12月迄のものしか公開されていないようだ。毎年、おおよそ5月に極大値を記録し、10月に極小値を記録している。年間の振れ幅は6~7ppm程度ある。これで、ある特定の1日の数値を持ってきて高い低いを議論するのも、何か違和感がある。何故、年間平均値とか、月間平均値で議論しないんだろう?

データを取り込んで調べてみると、例えば1998年はCO2増加が目立っており、6月~11月まで前年同月に比べて3ppm以上増加しており、年間平均でも2.9ppmも増加している。その代わり1997年は1.1ppmしか増加していない。ということで、いろんな要因での様々なバラツキを含んでおり、全体の傾向はともかくも、たまたま3/20は去年に比べて3ppm増加した、というのは、あまり精度のある話ではなさそうだ。計算してみると、1993~2002年の年間平均濃度の増加の平均値が1.67ppm、標準偏差は0.61ppmとなったから、3ppmの増加は平均値+2σ程度に収まってしまう。

ところで、アメリカの新聞記事の論調は、アメリカが京都議定書から離脱していることもあってか、何となく他人事のような感じだし、「中国とインドが原因か」みたいなコメントだけを載せているのも、何か意図的で嫌な感じ。で、アメリカはどうなのよ? っていうと、EICネットニュースによると、アメリカのCO2排出量は、1990年から2002年で13%増加したようだ。これには戦争による増加分は含まれていないんだろうな。。ちなみに、日本は1990年から2001年で4.5%増。(Mainichi INTERACTIVE


*3/22追記:タイミング良く、気象庁が最新データを発表した。測定場所によって数値もそれぞれだけど、全体の傾向はもちろん一緒。大気中のCO2濃度は順調に増大しているというべきか。朝日新聞さんは、早速これに反応した記事を書いてますね。 世界のCO2濃度、過去最高値を更新 気象庁発表。(過去最高を更新することは全然ニュースバリューない筈なのに。。)

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2004/03/21

バイソンの肉がアメリカで人気

CNN.co.jp(3/21)の記事。

野牛の肉、米で人気急上昇 「安全でヘルシー」
カンザス州ウィチタ(AP) 北米一帯に群生し、西部劇などで知られるアメリカバイソン(野牛)が最近、米国人の間で食用として注目を浴びている。人気の背景には、脂肪の多い肉を避ける健康志向や、同国内で牛海綿状脳症(BSE、いわゆる狂牛病)の感染牛が見つかったことによる「牛肉離れ」などがあるとみられる。

米農務省によると、米国内で昨年食肉処理された野牛は3万4444頭。肉牛の3570万頭には遠く及ばないが、前年に比べて36%増加し、過去最高を記録した。今年はさらに増える勢いだという。

今はまだ、野牛の肉を食べたことがないという米国人も多い。しかし、健康や環境への関心が高い層を中心に、需要は確実に伸びている。野牛の肉は牛肉より脂肪が少なく、成長ホルモンや抗生物質を使わない「自然飼育」を売り物にしているからだ。今年6月からは、自然飼育を保証する農務省のラベル表示も始まる。

CNNテレビ創設者のテッド・ターナー氏が2年前から全米各地に展開している野牛料理専門のレストラン・チェーンも、普及に一役買っている。農務省も昨年、学校給食用に1000万ドル分の野牛肉を買い上げた。牛肉に比べて値段が高めなのが欠点だったが、昨年牛肉が記録的に高騰したため、大きな差はなくなったという。

全米バイソン協会のカーター会長によると、全米で飼育されている野牛は約27万頭。モンタナ州の3万8000頭を筆頭に、ノースダコタ、サウスダコタ、ネブラスカ、コロラド、カンザスなどの州に牧場が集中している。インターネットなどを通して、牧場直売の肉をまとめ買いするファンも多いという。

バイソンを食用に飼育しているのか! この元の英語記事は、DodgeGlobe.comなど。この記事の書き出しは、
More than 125 years after settlers eradicated millions of wild buffalo that once roamed the continent, modern-day consumers are developing a taste for the meat that nourished American Indians for centuries.
となっている。かつてアメリカンインディアンの貴重な食料であった野生のバッファローは、乱獲によって一時絶滅の危機に瀕していたのに、今や現代アメリカ人の食肉として復活するということらしい。ん? バッファロー? バイソンじゃなかったの?
Among the reasons for bison meat's resurgence is the popularity of high-protein diets and a growing consumer demand for more healthy foods. Buffalo, a red meat alternative, has less fat and fewer calories than beef. Bison are also raised naturally without growth hormones or antibiotics.
何だかバイソンとバッファローが出てきてややこしいが、調べてみると、夕刊河馬 雑記帖(この雑記帖の中にもバイソンの食肉用の牧畜の話が載っている。)や映画とネットの日々 9月のコラムなどが見つかる。どうやら、アメリカの野牛は、アメリカンバイソンと呼ぶべきだが、肝心のアメリカ人がバッファロー(本来はユーラシア等に住む水牛)と呼んでしまっているので、混乱しているようだ。この記事も混乱しているのか、意図的に使い分けているのか?

関連して大阪近鉄は水牛か野牛かを検証している本当はどっちだも楽しい。

バイソンの絶滅危機については、Mammo.tv Natural Modeeco being エコツアーなどが参考になる。絶滅寸前まで追い込んだけど、ようやく増え始め、どうにか天然に生き残ってくれたようだが、一方では食肉目的で、牧畜も始めちゃったということなのか。

DodgeGlobe.comの記事の最後に、

Kathy Jeffries, an Illinois environmental activist, bought 70 pounds of bison meat from Smoky Hill Bison in Kansas after searching the Internet for buffalo raised naturally by family farmers. Jeffries said she wanted a cleaner, grass-fed meat alternative."You are what you eat," she said.
とあるが、アメリカの環境活動家は、絶滅寸前に追い込んだバイソンを食べることについては、むしろ賛成しているのか?? 理解に苦しむ。 鯨は駄目だと言うくせに。。 そもそもヘルシー志向なら、もっと魚を食べる方がよっぽど健康に良いだろうに、最近は水銀が多いからあんまり食べるな、と言ってるらしい。(NY Timesの記事

人工的に栄養調整されたりした牛よりも、自然環境の中で育った野牛の方が、確かに「ナチュラル」な印象を与えるけど、だから健康に良いかどうか? 野生に近ければ近いほど、寄生虫だとか、色んな感染症の危険性が高いと思うのだが。。。(それ以前に、牧畜されているんじゃ、それ程ナチュラルでもないような。。)

記事に出てくるバイソン料理のレストラン、テッド・モンタナ・グリル。今のところはアメリカ国内だけのチェーンだけど、そのうち海外進出するかも。調べた限りでは、日本でバイソンの肉が食べられるレストランはなさそうだ。

ちなみに、バッファロー・ウイングというのは鶏の手羽先フライらしいが(バッファローは地名に由来)、バッファロー・モッツァレラというのは、バッファロー(水牛)の乳で作ったチーズらしい。

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2004/03/20

基準の170倍のヒ素検出

結構ローカルネタだけど、各紙が報じている。産経新聞が一番詳しかったので、代表して Sankei Web(3/19)の記事。

基準値173倍のヒ素検出 横浜市営地下鉄の建設現場
 横浜市都筑区川和町に建設している市営地下鉄4号線川和車両基地の工事現場の土壌から、国の環境基準値を約170倍上回る有害物質のヒ素が検出されていたことが19日、分かった。横浜市は過去2回の調査で汚染を確認していたが「健康被害がない」として公表していなかった。

 横浜市によると、地下水への汚染はない。現場は1970年ごろまで農薬工場があり、同市が関連を調べている。

 市によると、2002年3月と03年6月の調査で、敷地約5万9000平方メートルのうち、南側の約4400平方メートルの土壌で汚染を確認。最大で土壌汚染対策法が定める環境基準値(1キロ当たり150ミリグラム)を約173倍上回る2万6000ミリグラムを検出した。

 汚染土壌量はドラム缶6万5000本に相当する約1万3000立方メートル。市交通局は4月から汚染土をコンクリートで固め敷地の地下に封じ込める対策を始める。

 4号線は中山駅(同市緑区)から港北ニュータウンを通り日吉駅(同市港北区)までの13・1キロで、07年の開業を目指している。

これってウチの割と近く。調べてみたら、横浜市交通局のホームページに報道発表資料として載っている。

こんな地下鉄を作る計画があるってのも、初めて知ったけど、そう言えば中山駅の北側の道路を工事しているのは、この為かな? このヒ素が検出された所って、鶴見川のすぐ近くだけど、それは問題なかったのかな?

この手の報道でいつも思うのは、濃度が基準の何倍だ!って数値の大小を競うかのように取り上げるけど、総量が問題だろうに。(他紙もすべて、基準値の170倍、を見出しにしているのが、いかにもだ。) 最大濃度だけなら、汚染源の大元でピンポイントにサンプリングして分析すれば、いくらでも高くなりそうだし。(そんなに大きな数値が欲しければ、今回でもヒ素の濃度ではなく、溶出量で比較すれば、基準値の940倍なのにな。) 平均濃度でみると、基準の13倍。普通は基準値は安全係数を100倍ぐらいみているから、13倍だったらとりあえず、余り心配ないレベルと考えられる。

それにしても、横浜市の発表もまたそっけないものだ。どの位置から何点サンプリングして、どんな結果だったのか、もう少し詳しくデータを出してくれても良さそうなもの。平均値と最大値しか公表しないってのも困ったものだ。(そう言えば、産総研の中西準子さんも、お役所は自分たちの調査結果は平均値と最大値しか出してくれない。せっかく税金を使ってやった調査の結果を、他の研究者が有効に使えないのはおかしい、と嘆いておられた。)

ついでに言うと、単にヒ素ではよくわからないので、無機のヒ素なのか、有機ヒ素なのか、化合物名を明らかにすべきだと思うけど。だって、物質によって毒性は異なるわけだから。(和歌山カレー事件は無機のヒ素:亜ヒ酸だったし、茨城の地下水は有機ヒ素:アルシン酸化合物、どちらも有害だが有害性は異なる。)

汚染土が13,000m3で平均濃度が1,900mg/kg。土の比重を約1.25g/cm3(演習:環境リスクを計算する p106)とすると、ヒ素として全部で30.9kg になる。結構な量だが、一体どんな由来なのだろう? 農薬工場が原因だとすると、土壌中に廃棄したりしたのかな? それにしても多量だ。まあ工場があったのは30年以上前だから、今となっては問題はないのだろうけど、原因によってはもっと広範囲に汚染状況の調査が必要になるかも。

まあ、しっかりと不溶化処理をしてコンクリ詰めにして埋めるようなので、大丈夫と思うけど、13,000m3ってすごい量だ。たった2か月で処理を終えちゃうのか? 50日間として一日260m3、ドラム缶にして1,300本か。。 すぐ近くだし、そのうち様子を見に行ってこようかな。(周囲からは見えないようにカバーしてしまうだろうけど。)

おまけ:横浜市のページには、

なお、この土地は、土壌汚染対策法に規定する「人の健康被害が生じるおそれのある土地」には該当しませんが、より安全を確保するため処理を行うものです。
とある。何でと思って、土壌汚染対策法土壌汚染対策法施行令を読んでみると、現にその土地の汚染が原因で地下水の水質が悪化していたり、一般の人が自由に出入りできる土地が汚染している場合だけが該当するようだ。

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2004/03/19

「アミノ酸の科学」

最近アミノ酸ダイエットとか、アミノ酸飲料という言葉をよく耳にする。そう言えば知っているようで知らない気もするので、お手軽そうな、この本を読んでみた。

ブルーバックス B1435
 アミノ酸の科学 その効果を検証する
 櫻庭 雅文 著 bk1amazon

第1章 アミノ酸とは何か
第2章 スポーツの最前線が変わった
第3章 美容効果とアミノ酸
第4章 医療を変える力
第5章 食べ物とアミノ酸
第6章 アミノ酸と味覚
付録  アミノ酸製造法

著者は経済学部卒だけど、出版の仕事を通じて得た経験と知識でもって、科学の解説にも定評がある方らしい。読み物として書かれているので、仕方ないのかもしれないけれど、少なくとも新たな知見等を紹介する際には、ソースとなる情報源とか、裏付けデータや参考文献を示して欲しいと思ってしまう。

スポーツに関しては、僕自身が「アミノバイタル」を飲んだ時と飲まない時で、長距離を走った後の疲労回復が違う感覚を味わった記憶があるし、理論的にも説明がつきそうだけど、ここに出てくるデータを見る限りは、その効果ってのは結構微妙。血筋の悪い馬にアミノ酸添加飼料を与えたら、GIレースを勝っちゃった、というのが事実だとしても、因果関係の証明は難しいしなあ。まあでも、効果があるかもしれない位の気持ちで使用する分には、逆に精神的な効果も加わって効果的かも。

美容効果については、科学的な解析が進んで、お肌の調子とアミノ酸との関係が明らかになってきたようだけど、だからと言って、皮膚にアミノ酸を塗ることで本当に、適切な場所に適切な形で補給されて、効果があるのかとなると疑問ではある。(まあ飲み薬よりは、マシかもしれないけど。。)

医療の世界では、適切なアミノ酸を選択的に必要な部分に供給する、というような技術は今後とも進展しそうであるが、それ以上に期待される分野だな、と思わされたのが食料供給関連。

畜産動物の飼料は、おもにトウモロコシや小麦などの穀物に、大豆かすなどの植物性タンパク質を配合したものが用いられています。しかし前述したように、穀物に含まれるたんぱく質は、リジンやメチオニン、スレオニン、トリプトファンなどの必須アミノ酸が不足しています。とくに、大豆かすを除くほとんどの植物性飼料原料において、動物の成長に欠かせないリジンが不足しているのです。(本書 P130)
ということで、従来は植物性の飼料に魚かすを添加することでバランスをとっていたけれど、最近は漁獲資源量と畜肉生産量のバランスが崩れたこともあり、必要なアミノ酸を飼料に添加する技術が使われ始めているとのこと。

畜産飼料のアミノ酸バランスを、人工的に特定のアミノ酸を添加することで、最適にコントロールする。これにより、従来は余分のアミノ酸が排泄されていたのが、全てのアミノ酸を無駄なく使えるようになる。結果として、限られた資源を最大限に有効利用した食糧生産の道が拓ける、というストーリーだけど、理論的にはとても魅力的だと思う。人間が「自然の食物連鎖」に過剰介入することの危険性もあるかもしれないけど、遺伝子をいじるわけではないから、生態系全体のバランスに注意して進めれば、問題は小さそうだ。

なお、本書はアミノ酸ダイエットについては、現状では効果はないだろう、という立場だ。ただし近い将来、人間にも上に述べたアミノ酸バランス食を適用することで、不要なコレステロールやカロリーを摂取しないですむことになり、結果としてダイエット効果が期待できるかも、と述べている。要は、行き着く先は昔の宇宙食のようなもので、必要な栄養素のみを摂取すれば太らないってことだな。。

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2004/03/18

くさいスニーカーチャンピオン

ここの所、堅い話ばかり続くので、たまには軽いニュースから。CNN.co.jp(3/18)の記事。くさい靴大会、10歳少年が優勝 秘けつは「履くこと」

バーモント州モントピリア――当地で16日、全米一臭いスニーカーを決める毎年恒例のコンテストが開かれ、地元のデイガン・グッドマンくん(10)が優勝した。すさまじくボロボロで強烈に臭いスニーカーをひっさげて堂々優勝したデイガンくんは、秘けつを「ただ履くこと」と話している。

最終審査には、全米各地から選りすぐられた臭い靴のツワモノ9人が残った。審査は、スニーカーの臭さだけでなく、見た目や全体の状態、かかとや靴底のズタボロ具合もチェック対象に、厳正に行われた。

今回29回目を数えるこのコンテストは地元スポーツ用品店の売り上げ向上を目的に、1975年に始まった。88年からは、靴の消臭用品メーカー「オーダー・イーターズ(Odor-Eaters)」がスポンサーになった。出場できるのは、5~15歳の子供に限られている。

臭い靴チャンピオンとなったデイガンくんは、優勝の秘けつについて「ただ履いて、汗をかいて、運動するだけ」とコメント。トロフィーの金色スニーカーのほか、賞金として500ドル(約5万5000円)の貯蓄国債、新品スニーカーやオーダー・イーターズ製品を買うための100ドル(約1万1000円)が贈られた。

デイガンくんの臭い臭いスニーカーは、歴代の優勝スニーカーが待ち受ける、「オーダー・イーターズ においの殿堂」に保管されることになる。

アメリカってのは、こういうお遊びを真剣にやるから面白い。気になったのは、どうやって優勝者を決めるのか? 見つけたのは、FOXNews.comの記事
Smell alone is not the only quality the shoes are judged on. Appearance, "overall condition," heels and soles also count, qualities that require the presence of four other judges.

But in the end it is Aldrich who assumes the hardest responsibility. His job in Montpelier doesn't get easier even though he's conducted hundreds of smell tests for NASA (search)space shuttle missions.

"The stench sometimes stays with me for days," said Aldrich. "It's like a flashback."

Despite the sour smells, Aldrich said he'd come back for his sixth time next year if he's asked.

ということで、ジャッジは5人いて、最終判断は Aldrichさん(48歳)が、臭いを嗅いで決めるみたいだ。数日間は臭いが鼻に残るらしいし、大変な仕事だな。。

優勝したこの子は、沢山の商品を貰うだけでなく、

He'll also get plenty of attention along the way. Daegan is already scheduled for appearances on cable television shows, and organizers said he'll get similar requests throughout the year.
という具合に、TV等にタレント並に出られるらしい。(でも臭い足チャンピオンって紹介されるのもなあ。。アメリカ人のノリはわからん!)

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無触媒でアンモニア合成?

asahi.com(3/18)の記事。

高温高圧なし触媒も不要でアンモニア合成 京大など開発
 窒素からアンモニアを作るのに高い熱や圧力を加えず、金属の触媒も要らない省エネ合成法を京都大の植村栄教授と近畿大のチームが開発した。60個の炭素原子がサッカーボールのようにつながった分子「フラーレン」を使うのが特色だ。18日付の英科学誌ネイチャーに掲載される。

 窒素は日常的な温度や圧力では反応しにくい。肥料やプラスチックなどの原料になるアンモニアを工業的に作るには、100~250気圧、400~600度の条件で、酸化鉄などの触媒を使って窒素と水素を反応させている。エネルギーを多く使うので効率的な合成法が求められている。

 植村教授らはフラーレンと炭水化物を組み合わせ、「サッカーボール」に、底に穴が開いた「おわん」を二つかぶせたような形にした。これと還元剤を水に溶かして温度60度の液を作り、光を当てながらかきまぜて1気圧の窒素とふれさせるとアンモニアができた。

 「おわん」の穴に乗った窒素が、液の電子と光のエネルギーで反応しやすくなったらしい。ただ、現段階ではフラーレンの半数ほどでしかアンモニアが作れず、大量生産は難しいという。 (03/18 09:13)

何回読んでも、よくわからない記事だ。「触媒も不要」? この場合フラーレンが触媒なんじゃないの?? 「底に穴が開いた『おわん』を二つかぶせたような形」? なんだそれ?? 窒素と反応する相手の水素はどこからくるんだ?? 「フラーレンの半数ほどでしかアンモニアが作れず」も意味不明だ。

こちらの読解力が不足しているだけ、と言われるのもシャクなので、元ネタを探してみた。Natureを購読していないと、無料では要約(登録必要)だけしか読めない。

バッキーボールが窒素を固定する
アンモニアは、肥料製造の出発物質であるため、食糧生産にとって重要な化学物質である。植村榮らは、2個のシクロデキストリン分子に包まれた炭素分子C60を利用して、窒素と水を結合させ、アンモニアを合成した。
多くの植物は、空気中から窒素を「固定」してアンモニアを合成し、それを利用してタンパク質を合成している。工業的なアンモニア合成は、高温・高圧プロセスを用いている。しかし両者とも、不活性な窒素分子を活性化させるために金属触媒の助けを必要とする。植村たちの合成戦略は、温和な条件下で同じアンモニア合成を行うのに、非金属系の炭素分子によっているのである。
ということで、だいぶ謎が解けた。フラーレンとシクロデキストリンの触媒系で、窒素と水を直接反応させて、アンモニアが生成したということらしい。それにしても、常圧で水と窒素ガスが反応するのか、すごい話だ。 (でも多くの植物が、金属触媒の助けを借りて、空気中の窒素を固定してアンモニアを合成してる、というのは間違いだと思うな。。多くの植物は空気中の窒素を直接固定しないからこそ、肥料原料としてアンモニアが必要なんじゃないの??)

英文は

Nature vol.428, 279-280 (18 March 2004)
Buckminsterfullerenes: A non-metal system for nitrogen fixation
In all nitrogen-fixation processes known so far - including the industrial Haber-Bosch process, biological fixation by nitrogenase enzymes and previously described homogeneous synthetic systems - the direct transformation of the stable, inert dinitrogen molecule (N2) into ammonia (NH3) relies on the powerful redox properties of metals. Here we show that nitrogen fixation can also be achieved by using a non-metallic buckminsterfullerene (C60) molecule, in the form of a water-soluble C60:-cyclodextrin (1:2) complex, and light under nitrogen at atmospheric pressure. This metal-free system efficiently fixes nitrogen under mild conditions by making use of the redox properties of the fullerene derivative.
となっている。確かにNatureに載るレベルだと思える。(反応速度というか、どれだけのアンモニアが出来たのかによるんだけど。) フラーレンがこんな形で実用レベルで有用だとすると、今後いろんな反応への応用が出てきそうだな。

朝日の記事はここに書かれていない内容も含んでいるので、未だに意味不明な部分もある。これってもしかすると結構すごい発明のような気がするんだが。。新聞記者さん、もう少し内容を理解してから、本当にすごいところを、わかりやすーく紹介していただけるとありがたいんですけど。。 

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2004/03/17

旭化成の生分解性ラップ

FujiSankei Business iの3/17の記事

土になるサランラップ とうもろこし原料に旭化成が世界初
 旭化成は16日、使ったあと廃棄しても土や水中で分解されて自然に戻る性質をもつ生分解性の食品包装用ラップフィルムを世界で初めて開発したことを明らかにした。
 とうもろこしに含まれる糖分を原料にして製造するため、現在の石油からつくられている「サランラップ」に代表される食品フィルムに比べて環境への負担が極めて小さくなる。
 2005年末にも鈴鹿工場(三重県鈴鹿市)に量産設備を建設し、環境意識が高い欧米で先行発売する。市場動向を見極めたうえで、日本での販売も検討する。
<中略>
 新フィルムは、開発名「EFW」で、「サランラップ」の生産・販売子会社である旭化成ライフ&リビング(東京都千代田区)が開発した。とうもろこしの糖分からつくられるポリ乳酸と呼ばれる生分解性の物質を原料にする。ポリ乳酸に軟化剤などを配合する独自技術を使って製品化。ポリ乳酸を薄いフィルムにしても柔軟性や密着性を損なわないため、「ほぼ実用化レベルにある」(能村(のうむら)義廣旭化成ライフ&リビング社長)という。
 来年末にも鈴鹿工場に新設する量産設備の投資額は十数億円。生産規模などは今後詰める。原料となるポリ乳酸は、米化学会社、カーギル・ダウから供給を受ける。
 価格は、幅30センチ、長さ20メートルの標準タイプの製品で、既存のサランラップよりも4割程度高くなる見通し。しかし、最近は欧米を中心に主婦層でも環境配慮をステータスの一種としてとらえる傾向が強まっており、旭化成は価格が高くても新フィルムの需要はあるとみている。
最近は生分解プラスチックと言っても、非石油原料由来であることによる、地球温暖化対策面がクローズアップされているが、ラップの場合には、生ゴミと一緒に捨てられることが想定されるから、生分解性が意味を持ちそうだ。

ラップといえば、ダイオキシン騒動の時には、ポリ塩化ビニリデン樹脂であるサランラップも槍玉に上がった記憶があるから、むしろ欧米よりも日本で環境対応が高く評価されて売れるのではないだろうか?(塩素フリーということでは、既にポリオレフィン系のラップが各社から出ているが。。)それとも、使い心地が今一なので、余り細かなことを気にしない欧米を相手にするとか?

生分解性プラスチックやポリ乳酸については、とてもよくまとまった資料があったので、リンクしておく。日本政策投資銀行の2003/9の調査資料だ。

旭化成がポリ乳酸をカーギル・ダウから購入するというのも、やや意外。上記資料中にもあるが、コストを考えるとアメリカでとうもろこしを原料に大量に生産するカーギル・ダウ社が圧倒的に優位に立つため、互いに競合するメーカー同士が同じ原料を購入せざるを得ない状況になっているようだ。日本の各社との契約関係がどのような内容なのかが興味のあるところ。

ポリ乳酸といえば、NTTドコモの窓付き封筒の宛名欄の透明プラスチックシートに採用されているもの(三菱樹脂製のエコロージュ)で、どちらかというと硬い印象がある。これをラップにするために、いろいろな成分を添加しているものと思うが、これら添加剤の安全性情報も積極的にアピールして欲しいもの。今の段階では旭化成のホームページには、本件関連の情報は掲載されていない。

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2004/03/16

風力発電とオジロワシ

Mainichi INTERACTIVE(3/16)の記事。

<オジロワシ死因>風力発電風車への衝突 北海道苫前
 環境省は16日までに、北海道苫前町の風力発電施設近くで死がいで見つかった国の天然記念物のオジロワシの死因について、「風力発電施設の風車への衝突の可能性が高いと考えられる」と発表した。風車のブレード(羽根)衝突によるオジロワシの死が確認されたのは初めて。

 オジロワシの死がいは先月5日、同町の国道沿いで、腰のあたりで切断された状態で見つかった。死がい発見場所から約50メートルのところでは、風力発電用の風車を運転していた。死がい発見当時は吹雪で視界が悪かったという。

 解剖を担当した浅川満彦・酪農学園大助教授(野生動物学)は、「感染症や有害物質中毒の症状、銃創はなく、急激かつ強力な力で体を切断され、急死したとみられる。切断した物体は刃物のように鋭利なものではない」と分析している。

もともとのオジロワシの事故の記事は、毎日新聞の記事に、その他の関連記事については、Yahoo!ニュースの野生生物保護にリンクしておく。

風力発電は言うまでもなく、地球温暖化対策として期待されている新エネルギーの一つであり、最近は日本でも積極的に建設が進んでいる。最近は環境省にて国立・国定公園内における風力発電施設設置のあり方に関する検討会というのが行われている。

この検討会の位置づけは次のようなものだ。自然エネルギーの導入は、地球温暖化防止対策の一環として積極的に推進したい、しかし一方で生物多様性を確保すると同時に自然景観の保護も重要。この板ばさみの中で、国立・国定公園内における風力発電施設の設置に係る審査基準を具体的に決めるということ。(自然環境保護も地球温暖化防止も共に環境省の管轄だから、省内の調整も難航してるんじゃないだろうか?)

現時点の考え方は、まずは国立・国定公園以外の場所での可能性を十分検討した上で、必然性と公益性がなくては駄目、更に発電施設を設置した場合の影響評価を多面的にきちんとやりなさいということらしい。具体的には、特別に保護が必要な地域以外であって、計画性や外観、工事方法、或いは環境影響等について問題がないものについてのみ許可する、ということのようだ。

まあ、わざわざ手付かずの自然環境が残る貴重な土地に、敢えて風力発電施設を作る必然性があるのかどうか、何だか色々な思惑がありそうだが。。そこに今回のオジロワシの事故があり、丁度良いタイミングで取り上げられたようだ。第6回の検討会議事録の中で、

2月7日の毎日新聞で、風車への衝突死の可能性を指摘する、北海道苫前町におけるオジロワシの幼鳥の死亡記事が報道された。希少な野生生物への評価を考える際、たとえ一個体でも悪影響があれば、その地域個体群にとって重大なダメージとなる可能性に留意すべき。
という意見が述べられている。本当にたった1羽の鳥の死亡が、仮にも公共の利益に関わる発電所の設置可否を左右しても良いのだろうか? 少し大げさ過ぎるのではないかと思うのだが。

この手の問題に関して、産総研の中西準子さんは、最新の本「演習 環境リスクを計算する」bk1amazonの第0章の中で、

生態リスクと言ったとき、我々はどの階層のリスクを評価すればいいのだろうか? それは、どのように自然とつきあいたいかによる。特別な貴重種とか、絶滅危惧種、人間に近い種などの場合は、個体レベルのリスク管理(生物個体を一つも殺さないこと)が目標になるだろう。しかし、一般の生物種に対しては、個体レベルのリスク管理は目標にならない。
と書かれている。この立場からは、今回のオジロワシの死亡事故は十分に考慮に値することになる。もっとも、オジロワシに対する保護という意味では、何も風力発電施設を建設しないという選択肢以外にも、扇風機のようにブレード全体をネットで覆うという対策だって検討されてもいいような気もするが。。(非現実的かな?)

ちなみに、現在の風力発電設備、近くで見ると結構迫力がある。でも鳥がブレードに切断されちゃうってのもすごい話で、一体どの程度のスピードでブレードが回っているのか調べてみた。一例として三菱重工の風力発電プラント:仕様を見ると、1000kW型でブレードの直径61.4mで19.8rpmとある。これだと、ブレードの先端の線速度は何と64m/sになる! 600kW型だと、直径45mで最高34rpmだから80m/sにも達する。時速220~290kmだ! うーむ、確かにこれだけ速いとさすがのワシも逃げ切れないかもしれない。。

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2004/03/15

伊方原発その後

世の中はアテネオリンピックの女子マラソン選手選考のニュース一辺倒で、それはそれで、言いたいこともないではないけど、今日は、3/9のブログで取り上げた四国電力伊方原発のポンプトラブルの件の続報。

朝日新聞の記事が少しおかしいんじゃないの、と書いたけど、その後の記事ではきちんとした内容に変わっていたので、ここで紹介しておく。前回の記事と比較してみるのもおもしろい。asahi.com(3/9)

伊方原発3号機で1次冷却水漏れ 愛媛
 9日午前9時57分ごろ、運転中の四国電力伊方原発3号機(愛媛県伊方町、加圧水型軽水炉、出力89万キロワット)で、放射能を帯びた1次冷却水が原子炉補助建屋内に漏れているのが見つかった。漏れた1次冷却水は約1.6トンで、蒸発した放射性物質を含むガスが排気筒から外部に流出した。四国電力によると、発電所周囲の放射線量を測定するモニタリングポストに異常はなく、周辺の環境に影響はないという。

 冷却水が漏れたのは、補助建屋内にある1次冷却水の充填(じゅうてん)ポンプ3台のうち1台。モーターからの動力をポンプに伝えるステンレス製の軸と超硬合金製の軸受け部分の間から漏れていた。漏れた水は、補助建屋の地下にある液体廃棄物の処理タンクに流れ込んだ。

 補助建屋の排気筒の放射線モニター値が一時、通常値の1.5倍に上がったことから、微量の放射性物質が20~30分間、大気中に出たとみられる。

 四国電力によると、運転員が午前7時半にパトロールした際には漏水は見つからなかった。午前9時57分に、この充填ポンプから原子炉格納容器内にある1次冷却材ポンプに水を注入するための配管の流量が減ったため、異常が判明。4分後に充填ポンプを止め、予備のポンプに切り替え、通常運転を続けた。 (03/09 16:25)

ということで、前回指摘していた「放射能もれ」「放射性物質を帯びたガス」「放射能を測定するモニタリングポスト」という表記は、全て適切な用語に改められている。きちんとチェックが入ったみたい。さすがですね。(「放射能を帯びた1次冷却水」という表現は、ギリギリセーフだろう。)

この記事だと、漏れた1次冷却水が補助建屋の地下のタンクに入ったけど、気化した放射性物質が微量だけど建屋外に漏れたということのようだ。意外と簡単に外に出してしまう構造みたいだな。放射性物質が外に漏れないように、何重にも防護壁が用意されている、と理解していたけど、今回のように補助建屋で漏れちゃうとどうしようもないのかな?

そして今日、その原因についての記事が出ている。asahi.com(3/15)

四電・伊方原発の冷却水漏れ、ポンプ軸折れ原因 保安院
 経済産業省原子力安全・保安院は15日、四国電力伊方原発3号機(愛媛県伊方町、出力89万キロワット)で、1次冷却系のポンプの主軸が折れていたと発表した。9日に同ポンプから約1.6トンの冷却水が漏れているのが見つかり、原因を調べていた。1次冷却水を取り込んで浄化し、戻す系統にあり、主軸は直径約8センチのステンレス製。金属疲労や加工不良などがなかったか今後調査する。

 保安院によると、同様の系統のポンプ主軸折損は、関西電力高浜原発(福井県)などでも過去にあった。原子炉の安全にすぐ影響するものではないと見ている。伊方原発3号機は水漏れ発見後も運転を続けている。

ということで、開けてみたら意外にも、ポンプの主軸の折損が原因だったようだ。四国電力のリリースはこちら原子力安全・保安院のホームページには未だ関連情報は載っていない。

それにしても、ポンプの主軸が折れるというのもなあ。。まあ、折れたからといって、それ程致命的な重大トラブルにつながる可能性は低そうだけど、ポンプの主軸って普通はそう簡単に折れるか? しかも過去にも同様のことがあったというのだから、何だか頼りない感じがするけど。ともかくきちんと原因を明らかにしてくださいね。

四国電力のリリース内容と朝日新聞の記事を比べると、9日の記事も15日の記事も新聞記事の方が詳しい。マスコミが詳しく報道してくれるのはありがたいが、必ずしも常に正しい情報が報道されるとは限らないわけで、今回のケースでは原発側から、もっと詳細な情報を積極的に公開するべきだと思うな。(漏れた放射性物質の化学種、その量等)

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2004/03/14

「新聞と現代日本語」

最近本を読んでいて、時々とても気になる表記に出会うことがある。漢字とひらがなの使い分けだとか、違和感の残る言い回し等々。もちろん、こちらも自信があるわけではないのだけど。まして、こうやって他人様の目の届く場所に自分の文章を載せるとなると、結構細かなことでも気になるけど、厳密な基準で採点したら、ボロボロの点数になってしまうことは間違いないだろう。

ということで、最近は日本語ブームとかで日本語関連書が多く出ているけど、今回のものは、日本語の書き方に的を絞った解説書というか蘊蓄書というか。

文春新書 366
 新聞と現代日本語
 金武 伸弥 著 bk1amazon

非常に細かなルールが沢山出てくるので、到底覚えきれないんだけど、読んでいる最中は、目から鱗、へぇ~の連発。今まで中途半端に覚えてたけど、こういうルールがあったのか! というスッキリ感がある。大昔に学校で習ったルールと結構違っているような気もするけど、時と共にルールは変わるし、記憶はあいまいだし。改めて覚え直すしかないかな。

あくまでも新聞の表記法を解説するような位置づけで書かれているようだけど、実際には日本語で文章を書くことが多い人には、とても有用な解説書だと思う。

目次だけでも、すごい分量になってしまうが、一部を抜き出すと、

序章 新聞と戦後の国語改革

第一章 漢字の使い方
 「高根の花」か「高嶺の花」か
 「委縮」「貫録」「風光明美」は誤りか
 「醵出」か「拠出」か
 「ら致」から「拉致」へ
 電車が「込む」?「混む」?
 新聞は「順守」し、教科書は「遵守」する
 「箇所」か「個所」か
 「偏頭痛」か「片頭痛」か

第二章 字体の扱い方
 櫻井さんは桜井さん
 長「嶋」茂雄は不滅か
 朝日、産経は「龍太郎」、他紙は「竜太郎」だった

第三章 漢字の使い分け
 「拘置」「拘留」「勾留」
 「怪気炎」と「快気炎」
 「召集」と「招集」
 「引き際」と「引け際」

第四章 漢字の読み方
 「他人事」の読み方は?
 「御用達」-タツかタシか
 「初体験」-ハツタイケンかショタイケンか

第五章 慣用句などの誤り
 「感動して鳥肌が立つ」は正しいか
 「交渉が煮詰まった」の意味は?
 「耳ざわりがいい」は誤りか
 「とんでもございません」は誤りか

第六章 文法的な誤り
 「ら抜き言葉」は誤りか
 「さ入れ言葉」
 「れ足す言葉」
 「打てなすぎる」か「打てなさすぎる」か
 「完成しだい」か「完成ししだい」か

第七章 外国語の表記
 「バイオリン」か「ヴァイオリン」か
 「トルーマン」か「トゥルーマン」か
 「コンピューター」か「コンピュータ」か
 誤用しやすい外国語

第八章 辞書でもわからない書き方など
 「槍ヶ岳」「茅ヶ崎」の「ケ」は大きいか小さいか
 「一カ月」か「一か月」か「一ヶ月」か
 深夜と未明
 「三年ぶり」と「三年目」の違いは
 「角から三軒目」と「角の家から三軒目」の違い

付録 現代表記の基準

これを見ると、正解を知りたくなるのが人情というもの。でもインターネットで調べても、正解にはたどり着かないかもしれない。結局、この本を見るのが一番早いんじゃないだろうか。何しろ、国語辞典によって結構違うことが書いてあったりするみたいだから。(結局、正解はないって場合もあるし。。)本書中には、この何倍もの豊富な例が載っているので、かなり楽しめると思う。

しかも、単に実例を載せているだけでなく、表記の基準が、歴史的な経緯も含めて明確にされているので、これをきちんと覚えられれば(多分)完璧だ。ただし、言葉は生き物で、時代と共に変化し続けているので、あくまでも今の時点ではこう表記するのが好ましい、という取り決めごとに過ぎないのだが。

それにしても、こうやって多くの事例を見せられると、新聞社によって表記が違うこと、教科書と新聞では表記ルールが異なること、更には辞書によっても解釈や説明が違っていることに驚きを覚える。所詮、正しい日本語なんてものを、そんなに簡単に定義できないってことだ。

新聞というのはこんなに厳密なルールでもって書かれていたとは、恐るべしですねえ。(内容はともかく、表記についてのルールとチェックはすごい。)そう言われると、確かに新聞で文法や表記で違和感を覚えることはほとんどないし、プロの技ということか。

自分がこういう場所に書く文章も、少なくとも、表記や文法の間違いは避けたいと思うけど、この本を読んでしまうと、かえって道が遠いなあ、と思ってしまう。せめて文章内の表記の統一ぐらいはしたいけど、それには、プログラムとかマクロでの表記チェックが有効だろうと思う。(Wordには文書校正機能があるけれど、個人的には使いづらいと思うし。)ということで、ちょっと探してみたけど、これだ!というものは、ありそうでなさそうだ。

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2004/03/13

アメリカ:肥満との戦い

時事ドットコム(3/13)の記事。

肥満防止で食品の表示改善要請=飲食店はカロリー情報提供を-米国
【ワシントン12日時事】トンプソン米厚生長官は12日、国民の肥満防止を目的として、食品メーカーが製品の表示を明確化するよう要請した。飲食店に対しても、顧客が注文した商品のカロリーなどの情報提供を求めた。同省はこうした措置を自主的に実施するよう勧告したが、米国では国民の30%以上が肥満とみられており、将来は立法化の可能性もありそうだ。
アメリカでは肥満が社会問題化しているようだ。"obesity epidemic"という言葉が向こうの新聞のヘッドラインになっている。("epidemic"は病気の流行というニュアンスのようだ。)そういえば、最近チーズバーガー法案が可決されたというニュースがあったな。asahi.com(3/12)の記事。
米下院、チーズバーガー法案を可決 業界に肥満訴訟禁止
 米連邦下院は10日、肥満の人が、肥満になった責任はファストフード業者にあるとして起こす訴訟を禁止する法案を、276対139の賛成多数で可決した。「チーズバーガー法案」の別称で呼ばれ、法案を提出した共和党議員は、非常識でばかげた訴訟に網をかけるのを狙っている。

 一方で議会には、法律で訴訟を一律禁止することへの反論も多い。法案は今後、上院に送られるが、論争は必至と見られている。

 米メディアによれば、提案者の一人ケラー下院議員は「たばこ業界に次ぐ標的として弁護士はファストフード業界を狙っている。恥ずべき責任転嫁をし、犠牲者のように訴訟を起こすのではなく、常識と自己責任に立ち戻る必要がある」と主張する。

 一方、民主党議員の中には「訴訟がばかげているのなら、取り扱うか否かの判断は裁判所がすればいい」などと反対する声が多い。ファストフード業界に後押しされ、ブッシュ政権も支持する同法案を、「くず」呼ばわりする消費者団体寄りの議員もいる。

 ファストフードをめぐる米の訴訟には、毎日のようにマクドナルドでハンバーガーを食べて肥満し、糖尿病など健康被害を受けたと訴えた10代の女性らに対し、ニューヨーク連邦地裁が昨年、「自己責任による健康被害の救済を法廷に持ち込むのはお門違い」として棄却した例などがある。

まあ、いかにもイカレタ訴訟社会らしい法案だけど、アメリカの肥満が本当に深刻なことの表れだろう。一方の外食産業は、それでも沢山食べてもらわねばならないから必死だ。CNN.co.jp(3/13)には、こんな記事が載っている。
ヘルシー志向受け、「低糖ドーナツ」を販売
ノースカロライナ州ウィンストン―セーラム(AP) パンなしピザの次は「低糖ドーナツ」?――米ドーナツチェーンのクリスピー・クリームは11日、米国民の健康重視の高まりをにらみ、砂糖の量を抑えたヘルシードーナツを製造、販売する計画を発表した。

砂糖の量をどの程度減らすのかは、「まだ開発段階」(クリスピー・クリーム広報担当)なため、明らかにはされなかったが、今年末までには販売を開始できる見込みだという。

同チェーンのドーナツは、シュガーシロップを表面に塗ったシンプルなものでも1つ200カロリー、砂糖10グラム、脂肪分12グラムと、ダイエット重視の消費者にとってはまさに「大敵」。そうした人々の「ドーナツ離れ」を防ごうと、チェーン側も必死だ。

だが、新商品の開発に関して「良いアイデアだと思うけれど、やっぱり今までの甘いドーナツが食べたい」との意見や、「もともと高カロリーのものなのに、無理矢理ヘルシーにしようとするなんて変」との冷ややかな意見も出ている。

アメリカの肥満の原因を経済学の目で解析し、日本の現状と将来にも言及した、最新の資料をみつけた。大阪大学社会経済研究所の大竹さんの資料。これによると、技術革新によって、いつでも簡単に安く食べられる社会が出現したことが、アメリカ人に食べ過ぎる生活習慣をもたらしたことが原因としている。(日本人から見たら、奴ら単なる食べ過ぎではなくて、甘ーいものの食べ過ぎだと思うけどねえ。)

こちらには、日米の食生活比較が載っているが、日本人の摂取エネルギーが平均2645kcal/日に対してアメリカ人は3600kcal/日だそうだ。1.4倍近くだ。これは体格の違いを考慮しても、確かに太りそうだな。

そういえば、NHKスペシャルでも、アメリカでは病的な肥満の治療として胃のバイパス手術までする人が出ているのに対して、アフリカ・シエラレオネでは栄養失調で死んでいく子供たちが沢山いるという現実が対照的に描かれていた。

世界全体にバランスよく食料品が行き渡るような、そんな社会が成立するようなビジネスモデルができないものだろうか? それとも国際的な約束事や規制によって、世の中の枠組みを強制的に変える必要があるのだろうか?(アメリカ人が金を払ってでも肥満を解決しようとするなら、その金をアフリカに回せる可能性があるかも。アメリカ人がそれで自己満足に浸ってくれると益々いいのだけど。)

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2004/03/12

森林の癒し効果調査

林野庁がおもしろい調査結果を発表している。「森林の健康と癒し効果に関する科学的実証調査」の結果について

健康な男女20人に、岐阜県内の都市環境と森林環境で1日ずつ、できるだけ同一条件で過ごしてもらい、血液検査と各人のフィーリングを調査したら、森林環境では都市環境に比べて有意に、免疫機能が高まったりやストレスホルモンが減少したり、リラックス状態になることが認められた、というもの。

調査の方法の詳細は、岐阜県農山村政策課ニュースに詳しく載っている。都市環境というのは岐阜県庁前公園、森林環境というのは岐阜県馬瀬村美輝の里心林公園という場所。実はそれぞれの公園で1.5時間滞在し、その間に2100mのウォーキングをしている。で、それぞれ公園滞在の前後で心理テストを行ったり、公園滞在中に採血したりしている。

最初の林野庁のページから報告書の要旨を見てみると、まあ確かに統計的に有意な差が出たんだね、という結果が棒グラフで載っているんだが、圧倒的な差があるわけでもない。そもそも、このテスト、いわゆる二重盲検にはなってないから(こういう場合はどうすれば良いのだろう?)プラセボ効果が十分に疑われる。どういうオリエンテーションをしたのかわからないけど、「街の真中の公園に行きましょう」と言われただけで憂鬱になったり、「森林公園に行きますよ」と言われただけで心安らかになる人もいそうだし。

少し考えてみても、気象条件(温度・湿度・日照・風等)も異なれば、音や景色も全然違うだろうし、一体何を比較したことになるんだか、たった1回の20人のテストではよくわからない。森林環境の方が落ち着くという答えは、いわゆる常識を否定するものではないから、やっぱりそうだったのか、というだけだ。

実は、調査の際には同時に大気の成分分析やフィトンチッド類の分析をしている筈だけど、この調査結果には全くその点が触れられていない。うがった見方をすれば、フィトンチッド類とリラックス結果との相関を仮定していたが、その仮説が否定されたとかいうことじゃないの?

まあ、これで終わるならば、お疲れ様でしたってなことなんだけど、この調査は実はこれから始まる「森林セラピー研究会」という研究のプロローグなので、ちょっと要注意。要は森林の人間に与える効果を科学的・医学的に解明して、有効に活用したいということらしいが、詳細は林野庁の「森林セラピー効果」の医学的解明へ向けた新たな取り組み 参照。

この件については、asahi.com(2/28)に記事が載っている。

 林野庁の今回の研究は、一卵性の双子の人たちに協力してもらって進める。双子のうち一人だけに森林浴を繰り返してもらい、免疫力の向上やストレス軽減にどう影響するかを調べる。また、樹木が揺れたり、小鳥がさえずったりする音や自然の香りが人の五感にもたらす効果や、脳に与える反応なども研究する。

 それを踏まえ、どんな樹木の森でどのような運動を、どれくらいしたらいいかといった療法を確立させる。国内で森林保養地の適地を選び、運動などの自然療法を体験できる道をセラピーロード(森林療法道)として整備する計画だ。

 このほか、森林の音や映像、木材がもつ温感などを活用したCDやDVD、森の香り成分を含んだ食品など、さまざまな関連商品の研究・開発を企業とともに進める。

 また、森林療法を広く普及、実践させるため、新たに「森林療法資格」を作って専門的な人材育成を目指すほか、将来的には健康保険制度が適用できるかどうかも検討する。

 医療関係者や大学教授らでつくる「森林セラピー研究会」を3月に立ち上げる。メンバーの大阪大医学部の森本兼曩(かねひさ)教授(環境医学)は「病気になった人を治療するだけでなく、今後は予防や健康増進の医療がより重要になる。森林はそれに最適な場所。研究を重ね、『森林医学』を確立させたい」と話している。

「森林浴」という用語は林野庁が1982年に発明した言葉らしく、林野庁主導で過去にもフィトンチッドと健康との関係に関する研究等は何度も行われてきたようだ。しかし、結局不十分な結果しか得られていないものだから、今度は「森林セラピー」という新たな用語を持ち出して、また研究会を作ってやろうとしているんじゃないかと邪推したくなる。本当に科学的に解明されるのだろうか? 研究の意義は全く否定するつもりはないんだけど、研究手法の開発そのものが相当にハードル高そうだから、頑張ってくださいね。

参考リンク:林野庁クリップボード中央森林審議会議事要旨(平成10年)

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塾教材で著作権侵害

YOMIURI ON-LINE(3/11)の記事。

「塾教材で著作権侵害」作家ら33人が仮処分申請
 ねじめ正一さんや灰谷(はいたに)健次郎さんら計33人の作家や詩人が、大手の中学進学塾やインターネット配信会社計5社を相手に、「市販もされている塾教材やインターネット上の問題集で作品を無断使用され、著作権を侵害された」として、塾教材などの出版、販売、送信の停止を求める仮処分を11日、東京地裁に申し立てた。

 塾教材の著作権侵害が問われるのは初めて。学習教材会社による著作権侵害が訴訟に発展して5年になるが、作家側は進学塾やネット上では依然として著作権侵害が続いている、として裁判所に判断を求めた。

 塾教材の出版、販売、譲渡の停止を求められたのは▽首都圏を中心に中学進学教室を経営している「株式会社日能研」(横浜市)と、その教材を制作、販売する「みくに出版」(東京都渋谷区)▽関東一円に中学進学塾を運営する「株式会社四谷大塚」(同中野区)と系列の「四谷大塚出版」(同杉並区)の2グループ。

 送信停止を求められたのは、「みくに出版」と受験教育情報の配信事業を手がける「インターエデュ・ドットコム」(同新宿区)。

 申立書などによると、2つの進学塾グループは独自に教材を作成し、一部は市販もしているが、計40の塾教材の中で、ねじめさんの「鳩を飛ばす日」、灰谷さんの「兎の目」など70作品を92か所にわたって無断使用しているという。

 また、ネット配信会社2社は、作家の作品が引用された中・高校の入試問題や解答、解説をホームページに掲載したり、作品を引用した模擬試験問題を作成したりしていた。無断使用は25作品、32か所に及ぶという。インターエデュ社は閲覧無料だが、みくに出版は登録者から1校あたり50円から80円の閲覧料金を取っている。

 作品の無断掲載が訴訟に発展した例としては学校用教材があるが、学習教材会社が作家への損害賠償や副教材の出版差し止めを命じられるケースが相次いでいる。

asahi.com(3/11)にも同じ記事が載ったが、少し情報内容が異なっていておもしろい。

日能研・四谷大塚に出版禁止の仮処分申請 作家ら19人
 谷川俊太郎さんや三木卓さんら19人の作家や詩人が、大手の中学進学塾「日能研」(横浜市)、「四谷大塚」(東京都中野区)を相手に、「塾教材で作品を無断利用され、著作権を侵害された」として、教材の出版、販売差し止めを求める仮処分を11日、東京地裁に申し立てた。

 これまでも、作家らが小学校の副教材などについて仮処分申請したり訴訟を起こしたりした例はあるが、塾教材の著作権が争われるのは初めて。

 また、同時に大岡信さんら14人の作家や詩人が、インターネット上に問題集を掲載する「みくに出版」(渋谷区)、「インターエデュ・ドットコム」(新宿区)に、送信差し止めを求める仮処分を申請した。インターエデュ社はネット上での閲覧を無料にしているが、みくに出版は閲覧料金を取っている。

 〈日能研の話〉 争うつもりはなく、著作権料についても、支払う意思はある。
 〈四谷大塚の出版部門を担当する四谷大塚出版の話〉 申し立ての書面が届いたら検討する。

出てくる作家名が異なるし、朝日のタイトルが19人で読売のタイトルが33人なのも、それぞれ何か意図があるのだろうか?

この記事、少し気になったのは、試験問題や教科書への引用は著作権が及ばないんじゃなかったかな? という点。調べてみると、文化庁がとてもわかりやすい資料を用意してくれている。「学校における教育活動と著作権」

まず、塾は営利を目的としない教育機関に該当しないとされている。となると第35条第1項(資料の3頁)が適用できないので、授業で使うコピーは全部アウトかもしれない。塾の教材中に引用して市販するのは、これまでの市販の教材が著作権侵害とされているようだし、明らかにアウトだろう。

塾で実施するテストについてはどうだろう? 第36条(資料の5頁)は学習塾でも適用できるのかな? そうだとするとセーフかな、と思いきや、資料9頁の条文読むと、第36条第2項では、営利を目的とする場合には使用料に相当する補償金を支払う、とあるのでやっぱりアウトか。

更に、中学・高校・大学等の入試問題をホームページに載せる行為も、資料の5頁の例ではアウトになっている。YOMIURI ON-LINE等でも大学入試速報では、入試問題や解答を載せている。多分、きちんと許諾を得てるんだろう、って全部の関係する著作権者の許諾を得るのは大変だと思うんだけど?

それにしても、試験問題への引用について、高校や大学は私立でもオーケーで、進学塾は駄目ってのも、あまり納得できるルールではないような気もする。市販教材はさすがに駄目だと思うけど、模擬試験問題や市販していない教材なんかは、争われるのは初めてだって言うし、最高裁まで行ったら面白いかも。

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2004/03/11

メガネフレームに光触媒

FujiSankei Business i (3/10)で見つけた、ニコンの光触媒メガネフレーム

 可視光反応タイプ光触媒の採用で、光が当たれば汚れ防止、抗菌、防臭の効果が働き、「いつでもきれいなメガネフレーム」を実現する。テンプル(つる)の素材には「スーパーβチタン」を採用。しなやかな装用感が得られる。価格はオープン。3月25日発売。
光触媒は今はやりだし、色んな応用があって楽しみだけど、これって効果あるのか? 

ニコンのサイトで探してみると、プレスリリースニコンメガネフレーム「プローグ・ネクシア」の発売について がみつかった。僕もメガネを常に装着しているので、防汚、抗菌、防臭という三つの効果はありがたいかなと思うけど。でもね、光触媒ってのは、光が当たらないとこういう機能を発揮しないわけだ。で、この場合の汚れってのは、大部分は光が当たらない場所、つまり自分の身体と接している部分じゃないかと思うんだけど。。

逆に、いつも肌に触れる部分に光触媒が接することになるけど、それは大丈夫かな? 物質としては酸化チタンだから、問題はなさそうだけど、光触媒で肌表面が酸化されると、どうなるんだろう? 今はやりの活性酸素がお肌を老化させなければいいが。。 そうでなくとも、抗菌作用のあるものを肌に密着させるのは気持ち悪くないか?

メガネはやっぱり洗剤を軽くつけて、水洗いするのが一番。レンズもきれいになるし、フレームも一緒に洗えばきれいになる。

ということで、僕はあまり欲しくないな、このメガネフレーム。

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2004/03/10

「だからあなたは騙される」

科学を批判する反科学や、一見科学を装ったニセ科学や擬似科学が世の中に広まっている。そんな問題意識で、たまたま見つけた本書を読んでみた。でも、この本はオカルトに騙されない方法について書かれたものだった。

角川oneテーマ21 C-10
 だからあなたは騙される
 安斎 育郎 著 bk1amazon

著者は工学博士。超能力批判やオウム真理教批判の本を数多く書かれている。Japan Skeptics(「超自然現象」を批判的・科学的に究明する会)の会長でもあるようだ。

本書で扱っているのは、「ライフ・スペース事件」「法の華三法行」「心霊手術」「サイ・ババ」「霊感商法」「こっくりさん」「ユリ・ゲラー」「心霊写真」「ポルターガイスト事件」「超能力」などなど。いわゆるオカルト系を主な題材として、何故多くの人々が、歴史的に見れば繰り返し、同じようなものに騙されるのかについて考える。更に、宗教と科学の関係に迫り、人生をどう生きていくのか、にまで言及している。

前半は、これらの事例について詳しく紹介し、どうやってインチキがばれたのか、という点(トリックの種明かし)も説明されている。やや古典的な題材が多い印象もあるが、これを読んでみると確かに歴史は繰り返すというか、人間はちっとも賢くなっていないのではないか、とも思う。もっとも、それだけ人を騙せるウソってのは、人間の本質を本当にうまく突いているのだろうけど。いずれにしても、過去に学ぶことが大切なのは確かだろうし、それと共に、登場する人物の人生も垣間見えたりして、違った意味でも楽しめた。

おもしろかったエピソードとしては、明治時代にはやっていた「こっくりさん占い」がでたらめであることを見抜き、明治20年に本を書いた浄土真宗の僧侶、井上円了の話。

円了のキリスト教批判は、「キリスト教の教えは近代科学の成果である地動説や進化論に反する」というものであり、「西洋の合理主義的な近代哲学に最もよく適合する宗教は仏教である」ことを確信していた。そして、「近代的な哲学や科学を普及することこそが、仏教を守り育てる」という考えのもとに、仏教の世界から合理主義的な西洋哲学や近代科学と相反する「妖怪」や「迷信」を徹底的に取り除くことに全力を上げたのである。
今から100年以上も前の日本に、すごいお坊さんがいたんだねえ。

本書の後半は、若い人達に人生を説くかのような内容になっており、第三章の「騙されないための六か条」、第四章の「人生、どう生きるか」の辺りは、比較的常識的な話を説教くさく語っており、何だか読むのが少し恥ずかしいような内容だ。

少し気になるのは、著者が、世の中には主観的命題と客観的命題があり、客観的命題は、事実を調べれば確実に白黒が決着するが、主観的命題は科学からは自動的に結論は導かれないのだ、と何度か繰り返して書いているくだり。客観的な命題であろうとも、世の中は白と黒にきれいに二分することのできる命題ばかりではなく、むしろ実際に人々が頭を悩ます問題のほとんどは、白でも黒でもない所に答えがあるんじゃないかと思うのだが。この手の問題に対してまで、無理やり白黒をはっきりさせようとする所に、オカルトや疑似科学がはびこる温床があるのではなかろうか?

*最近の本には珍しく、紙質を少し落としているせいか、価格も控えめの571円。

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2004/03/09

伊方原発で放射能漏れ?

asahi.com(3/9)の記事。

伊方原発3号機で放射能もれ 1次冷却水1.6トン
 四国電力は9日、伊方原発3号機(愛媛県伊方町、加圧水型軽水炉、出力89万キロワット)で、放射能を帯びた1次冷却水を配管に戻すポンプから1次冷却水約1.6トンが漏れ、排気筒から通常の約1.5倍の放射性物質を帯びたガスが外部に流出した、と発表した。発電所周囲の放射能を測定するモニタリングポストには異常はないという。
幸いにも外部へは全く影響がなかったようだが、「放射能もれ」、「放射性物質を帯びたガス」、「放射能を測定する」という用語の使い方が気になる記事だ。YOMIURI ON-LINE(3/9)だと、
愛媛・伊方原発で1次冷却水1・6トン漏れる
 9日午前9時55分ごろ、運転中の愛媛県伊方町、四国電力伊方原発3号機(加圧水型、89万キロ・ワット)の原子炉補助建屋で、充てんポンプから1次冷却水が漏れているのを運転員が見つけた。約4分後にポンプを止めたが、1・6トンが漏出した。
 四国電力によると、環境への影響はないという。
とあり、放射能という言葉そのものが出てこない。記事全体の印象も全然違う。

四国電力のホームページを見ると、ニュースリリースが早速出ている。これによると、予備ポンプに切り替えて運転を継続している程度の「不具合」のようだ。朝日新聞の「放射性物質を帯びたガス」が外部に流出したというのは本当かな? 少なくとも四国電力のリリースには書かれていないし。そもそも「放射性物質を帯びたガス」って「放射性物質を含むガス」という意味なのかな? 今回の場合には放射性物質って何だろ? 外に出るのはせいぜい水蒸気だろうけど。外部に放出される放射線が通常レベルよりやや高くなっただけで、放射性物質は出てないと思うのだが。

放射線と放射能については、ついでだから伊方原発の解説ページ。随分前から、マスコミ関係の原子力関係用語の使い方がおかしいことは指摘されているにも関わらず、全然改善されてないみたいだ。「放射能もれ」も「放射性物質を帯びたガス」も「放射能を測定する」も表現として正しくないですよ、朝日新聞さん。

伊方原発のページを見ると、放射線モニターの測定値がリアルタイムで公表されている。確かにこのように情報公開をしていれば、問題が起こった時も隠すのは難しそうだ。(測定装置の出力を直接流しているわけではないかも。だとすると、必ずしも信用できない?)今回の「不具合」現象もしっかり認められる。

ikt732-1.gif

*四国電力のニュースリリースには、漏れた水量が1.6トンとか、放射線が通常の約1.5倍とか、4分後にポンプを停止、という記載はない。ということで、我々が事実を知ろうとした時には、大元の情報だけでなく、マスコミ報道も色々かき集めて判断する必要があるということだ。逆に言うと、四国電力の発表は、まだまだ内容が不十分だということになる。

*3/15追記。朝日新聞の記事はその後に訂正されて、指摘した問題点はなくなった。それも含めて、3/15のブログに書いた。

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2004/03/08

高齢でも脳内に新たな回路

Mainichi INTERACTIVE(3/8)に載った記事

高齢者の脳:中程度障害を改善「衰えるのみ」従来の概念覆す
 脳こうそくなどを起こした高齢者の脳でも、成長する子どものように脳の神経回路を新たに形成して障害を改善する柔軟性を持つことを、東京警察病院と国際医療福祉大などの共同研究グループが発見した。脳こうそく患者らが歩行訓練などのリハビリで機能を回復する仕組みはこれまでよく分かっていなかった。「高齢者の脳は衰えるのみ」とする従来の概念を覆す成果として、注目を集めそうだ。
 研究グループは、命に別条はないが、機能障害が起きる中程度の脳こうそくや脳内出血患者を対象にした。会話や読み書きなど言語機能に障害の出た16人(40~74歳)と、手足の動きや感覚がまひした16人(56~83歳)で、機能的MRI(磁気共鳴画像化装置)などを使い、脳の活動場所や働きを調べた。
 言語機能は左脳の側頭葉が、右半身の感覚は左脳の前頭葉後部などがになっている。
 ところが、言語障害の患者では16人中4人が機能を回復し、それにあわせて右脳の側頭葉の活動が活発になっていた。
 運動や感覚機能がまひした患者の半数は機能を回復したが、これらの患者の脳も、出血などを起こした場所とは別の部分の働きが活発化した。
非常に興味ある話。言語機能は本来左脳が担っているのに、いざとなれば右脳でまかなっちゃったりするわけだ。本当に柔軟にできている。

ところで、この記事は毎日新聞さんのスクープのようで、今のところ他のどこも報道していない。このブログでは、ある新聞記事だけで判断することは極力避けているけど、今回は、このニュースのソースも見つからないし、どうしようもない。別に疑うわけではないが、せめて、論文発表とか学会発表とかされてから報道して欲しいものだ。(研究者が研究成果を新聞発表しただけでは、科学的には事実として認められない。)

面白いのは、記事に載っているコメント。

 研究グループの小泉英明・日立製作所技師長(解析脳科学)は「高齢者の脳に第2の敏感期が現れた可能性がある。脳こうそくなどでは、リハビリを早期に始める重要性を示している」と話す。

 脳科学に基づく教育プログラムを開発するトム・シュラー経済協力開発機構部長の話 高齢化の進む先進国にとって非常に意義深い成果で驚いている。効果的な生涯学習の開発にも役立つかもしれない。

ここで急に日立製作所が出てくるのは、MRI装置がらみなのか? それと、経済協力開発機構の部長さんが出てくるのも唐突なんだけど? 普通は、脳の専門家とか医者とかのコメントを求めると思うんだけど。。

それはともかく、人間の脳は実際に使われていない部分がかなりあるようなので、そこをうまく活用する方法がみつかれば、なんて想像も膨らんでくる。治療面での進歩と共に、夢のある話。将来の可能性を含めて、もう少し詳しい情報が知りたいところ。


*長嶋さんですっかり有名になってしまった「脳こうそく」。毎日新聞はひらがなで表記しているが、朝日新聞は「脳梗塞(こうそく)」、読売新聞は「脳梗塞」とそれぞれ表記は異なるようだ。

*「命に別条」も何かひっかかる。「命に別状」が普通かと思いきや、調べてみると同じ新聞社の記事でも、どちらの表記もありのようだけど、どちらかというと「別条」が優勢のようだ。

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2004/03/07

ココログ2ヶ月

ココログを始めて丁度2ヶ月が経過。カウンターは4500を越えた。1ヶ月前は900だったから、この1ヶ月は随分多くの方々に訪問していただいたことになる。ありがとうございます。さて、この1ヶ月のアクセス解析結果の一部だが、

(1)どこから来たの?
 1位 http://search.yahoo.co.jp (ご存知ヤフーサーチ)
 2位 bookmark (お気に入りに入れてくれた方ありがとう)
 3位 http://www.google.co.jp(ご存知グーグル)
 4位 http://www.cocolog-nifty.com(ココログの新着情報から)
 5位 http://www.google.com(グーグルの本家アメリカ版)

(2)検索キーワード
 1位 ボスプレッソ
 2位 リシン
 3位 ベンタ
 4位 伸長法
 5位 献血

という結果。検索エンジンは Yahoo!、Google の次は goo、更に MSN となっている。しかし、MSNの場合には、検索結果がトップページにリンクされるために、探したいキーワード・記事を見つけるのが恐らく困難だろうと思われる。googleの場合はほとんどの場合に個々の記事の固定リンクに飛ばしてくれるようだ。

それにしても、ボスプレッソが2ヶ月連続でトップキーワードとはねえ。特に2/17にボスプレッソが発売になったのが効いたようだ。依然としてGoogleでの検索だと、ボスプレッソはトップ、でも BOSSPRESSO はかなり下に落ちたみたい。

ベスト5には入らなかったけど、BSE関連の記事と放射線診断による発がんの記事を探して来ていただいた方も結構多かった。

アクセス解析の是非が議論されたりしているようだが、僕個人としては、来てくれる方の興味の傾向がわかるし、それに対応してフォロー記事を書こうという動機付けになったり、無責任な記事は書けないなというプレッシャーになったりで、総じて励みになっている部分が多い。あと、キーワードの組み合わせ方なども結構参考になるし、結果として自分の記事と関連のあるページをみつけることもできたりするのもメリットだと思う。

さて、この1ヶ月は、かなり意識して毎日更新するようにしてきた。おかげで、自分がここで書き貯めていきたい方向性も見えてきたし、それにどの程度の負荷が掛かるかも見えてきた。今後は、必ずしも毎日の更新にはこだわらずに、少し新しい試みも取り入れながら、マイペースで進めていくことにする。

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2004/03/06

「合意形成とルールの倫理学」

理科系の本を読むことが多いけど、たまには社会科学系の本も読んで勉強しなくちゃな、と思っている。最近は科学者の倫理についての議論も多いし、最新のバイオ技術や地球環境問題を考える時、「倫理」というキーワードは避けて通れないと思う。ということで、今回は応用倫理学の入門書に挑戦。

丸善ライブラリー 360
 合意形成とルールの倫理学 応用倫理学のすすめIII
 加藤 尚武 著 bk1amazon

著者は京都大学を定年退職され、2001年4月から鳥取環境大学の学長をされている。もともとの専門は哲学だが、先端のバイオ技術や環境問題に精通しており、生命倫理や環境倫理においては国内の第一人者といってよいだろう。

本書は以下の6部からなる構成。

 第1部 生体利用の安全性
 第2部 生殖補助医療と幸福追求権
 第3部 身体の金銭化とドーピング
 第4部 国際公共財と世代間倫理
 第5部 正義と合意形成
 第6部 刑罰の根拠

各部が2~5の章からなっており、全部で21章。各部の終わりに、その部の要約と展望が簡潔にまとめられている点が特徴。基本的に各章が独立しているので、興味のある部分から読むもよし、先に各部の要約を読んでから詳細な内容に入るもよし。そういう意味では読みやすい本だ。

これらの問題、特に個人の人権を考える際の基本になる考え方として、著者が何度か述べているのが、

 法的規制のもっとも厳しい限界は、「他者危害を防止する目的のみが法的規制を正当化する」という自由至上主義の原則である。この原則では「自己危害の防止のための法的な規制」が正当化できないので、自殺、麻薬の濫用、売春、賭博などを規制することができない。だから、この考え方はそのままでは採用できない。
 ゆるやかな自由主義の原則では「他者危害を防止する目的と、過度の自己危害を防止する目的によって法的規制は正当化される」と考えられる。
ということ。出発点はとりあえず合意できるのだが、もちろんこの基準のみでは、クローンを始めとする生命倫理についてはスッキリと答えがでるわけではない。そして、環境問題のような世代間や人間以外の生物の権利との調整問題となると、話は途端に難しくなる。

その意味で前半の生殖補助医療やドーピングの話については、著者なりの答えも用意されているので、読んでいて理解が進むのだが、後半の環境問題以降は、著者の答えも今ひとつ明確ではなく、読んでいてもすっきりとしないものを感じる。

ということで、全体を通してみると正直言って難解。特に哲学や倫理学の基礎的な素養のない読者にとっては、歯ごたえがありすぎるのかも。(だって、応用倫理学っていうシリーズなんだし。。)それに、丸善のこのシリーズは他の一般向けの新書と比べると、やや想定読者レベルが高いように感じるし。まあ、いずれの問題も、誰もが容易に合意に至るような簡単なものではないので、本書を手がかりに自分なりにじっくり考えてみるしかないのだろうな。

著者名で検索すると、かなり多くの本を書かれており、読者レビューを読むと、もっとわかりやすいものや、正に合意形成の方法について書かれたもの等、もう少し初心者向けの本もありそうだ。また出直してくるか。。(タイトルだけを見ると興味が湧く本が多いんだけど、いざ読み込むとなると手強いんだよな、この手の本は。 同じことが、理科系の本を文科系の読者が読む時にも言えるのかもしれないが。。)

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2004/03/05

富士山の噴気は不法投棄由来

時事通信の3/5の記事。

噴気、実は木材の発酵=富士山の活動と勘違い-山梨
 山梨県富士吉田市の富士山中腹で見つかった噴気について、同県は5日、土中に埋められた木材が水分や微生物によって発酵し、発熱して発生したとの調査結果を明らかにした。気象庁は昨年9月、噴気の確認を発表。「富士山では珍しいが、他の火山ではよく見られる」などとしていたが、火山活動とは無関係だった。
何だ? 木材の発酵? 更に探したら、あれれ、共同通信の3/5の記事によると、
富士山噴気は木材の発酵 建設業者が不法処理
 昨年9月、富士山の斜面で見つかった弱い噴気について、山梨県は5日、建設業者(同県山中湖村)が林道工事の際に地中に不法処理した木材が発酵して発生したのが原因と発表した。
 噴気は気象庁が昨年9月26日に発表していた。同庁火山課の山里平火山対策官は「結果的にお騒がせしたが、火山活動ではなくてほっとした」と話している。
 同県消防防災課によると富士山の東北東斜面、標高約1530メートル付近でこれまで、大小17カ所の陥没が見つかり、うち4カ所からごく弱い噴気が見つかっていた。
 山梨県と学識者が合同で掘削調査を実施。その結果、噴気があった地点となかった地点の2カ所で木材を埋設した痕跡を発見。建設業者が2002年1月ごろ、林道工事をした際、邪魔な木を伐採し埋設していたことが分かった。
ということで、埋められた木材というのは工事廃材だったのか。

昨年9月の富士山での噴気の話は記憶に残っていたけど、詳細を調べてみると、富士山ネットの記事が時系列でまとまっている。更に気象庁の報道発表資料 第1報第2報には図面や写真も豊富に載っている。しかし、今回の最終結論はまだ何処にも出ていないようだ。相当大掛かりな調査が行われたようだが、今頃はっきりするってのはどうしてだろう?冬の間は積雪だってあっただろうに。。(その建設業者が見つかったってことかな?)

富士山ネットに載っている最初の記事(9/27)によると、

 富士山の東北東斜面で陥没と噴気が見つかったことについて、気象庁の山里平・火山対策官は二十六日、陥没は「林道工事の影響で表れた可能性もある」と述べ、噴火活動とは無関係との見解を示した。専門家からは地下水が地下の熱源で温められて蒸発し、地表が陥没したとの見方も出ている。同庁は三十日、再度現地調査を行い、噴気の温度変化などを調べる。
となっていて、ガス分析もされていない最初の見解の割には、林道工事に関係あるという点で、結構いい線ついていたみたいだ。しかし結局、今回の噴気の熱源は地熱ではなく、微生物による発酵によるものらしい。発酵であんなに広範囲に発熱してガスを発生させるとは、ちょっと驚き。それに生物発酵なら、なんらかの臭気がしてそうなものだし。

それにしても、正に大山鳴動して、、、って奴だね。

追記:asahi.com(3/5)に載った記事によると

2月24日に県と日本大学文理学部の宮地直道・助教授(地質学)の調査班が重機を使い、噴気が出ていた陥没地点3カ所を約5メートル掘り返したところ、大量の水蒸気とともに発酵した木などが出てきた。
 県は地熱の上昇が発酵に影響した可能性もあるとして周辺の地熱も調べたが、地熱は10度程度と低く、火山活動とは無関係であることもわかった。
 県が林道工事を請け負った山中湖村内の業者から事情を聴いたところ、01年11月から02年10月にかけて周辺の倒木や伐採した枝を埋めていたことが判明。県は4日、業者に対し、埋めた木を取り除くよう勧告を出した。
ということで、2月に現地調査をしてはっきりしたみたいだ。

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2004/03/04

鉄と海と光合成

先日送られてきた、化学と工業(日本化学会の雑誌)を眺めていて見つけた記事(57(3), 235 (2004))。元ネタはアメリカ化学会発行の雑誌C&ENに載った記事のようだが、

環境汚染が海洋光合成を促進
ジョージア工科大学とNASAの研究グループは、中国北部のゴビ砂漠で発生した砂嵐によって、北太平洋の遠く離れた海域まで鉄が運ばれ、植物プランクトンの光合成やCO2吸収が促進されることを知っていた。しかし、砂漠の塵に含まれる鉄は水に不溶なヘマタイトであるため、プランクトンはこのままではこれを利用することができない。そこで、上海の上空を通過する塵を分析した結果、塵は高い酸性を示し、異常な濃度の硫黄酸化物を含んでいることがわかった。彼らは、この硫黄酸化物の酸化によって塵のpHが2未満になり、このpHではヘマタイトが溶解するため、プランクトンの成長が活発になると考えた。
という内容である。元となった論文は、Geophys. Res. Lett., 30, 2085(2003)

地球温暖化は、非常に複雑な要素が絡み合った現象であり、それゆえにシミュレーションモデルの精度が必ずしも満足のいくものではないとして、今現在も色々な議論のあるところ。こういう研究をみると、なるほどややこしい話があるものだな、と納得したくなる。

さて、海洋光合成と鉄、硫酸の関係とは何だ?ということで、少し調べてみたら、わかりやすくまとまった資料がみつかった。電力中央研究所が2001年11月に発行した電中研レビュー45号。この特集の第2章には、

東部北太平洋亜寒帯域や南極海、東部太平洋赤道域などでは、植物プランクトンの増殖に必要な硝酸塩、リン酸塩、珪酸塩など主要な栄養塩が高い濃度で残存しているにもかかわらず、植物プランクトンの増殖は低く抑えられていることが知られている。これらの海域では、大陸から大気を通して供給される鉄分の量が少ないため、鉄不足となって植物プランクトンの増殖が生理的に制限される結果、栄養塩が残存すると考えられている。このような海域では、天然の鉄分の供給が植物プランクトンの増殖を大きく変化させ、生物ポンプの効率に大きな影響を与える。海洋への鉄の供給量の変動が、過去の海洋炭素循環および、地球全体の気候を大きく変動させていた可能性もある。近年、生物海洋学、化学海洋学、さらには海洋炭素循環モデルの研究者の間では、鉄とプランクトン生態系の関係を明らかにすることは、海洋の生物的な炭素循環を解明する上で無視できない重要な課題となっている。また、地球温暖化対策の一つとして、このような特徴を持つ海域に鉄を散布することで、植物プランクトンの光合成による有機炭素生成量を増やし、生物ポンプの効率を上げることが提案されている。この、鉄散布については、炭素固定の経済的効率などを含めた賛否両論が交わされ、現在においても大きな議論を呼んでいる。
ということで、何と海に鉄を散布するということも真剣に考えられているのだそうだ。一方で、SO2や硫酸による大気汚染の影響については、第3章で触れられており、
東アジアは、ヨーロッパ、北アメリカ東部と並んで二酸化硫黄(SO2)の人為的な排出量が多い地域であり、結果として、硫酸塩(SO4 2-)エアロゾルも多く存在している。21 世紀の東アジアにおける気候変化を予測するためには、硫酸塩エアロゾルの放射効果を、気候変化の予測モデルに取り入る必要がある。硫酸塩エアロゾルの放射効果には、直接放射効果(エアロゾル自体が太陽放射を散乱する効果)と間接放射効果(雲凝結核としてはたらいて、雲の放射特性を変える効果)の2種類がある。
とあり、それ自身に気温を下げる側の効果があるようだ。温暖化効果ガスに対して、冷却効果ガスという言い方もあるようだ。一方、今回の論文のポイントは、砂漠から運ばれる酸化鉄粒子が硫酸に溶解し、海に溶け込んでプランクトンが生育し、光合成が活発化するという新たな関係を見出したことらしい。

もちろん、これが中国の大気汚染の免罪符になるわけではないが、地球規模で起こる現象は確かに複雑だなあということ。そういえば、この時期に飛んでくる黄砂のおかげで酸性雨が中和されているという話もあるし。今後中国の大気汚染が改善されていくと、思わぬところに別の影響が及んだりすることもあるというわけだ。

それにしても、たとえ海に鉄を人為的に放り込んで、海洋光合成を活発化することが可能だとしても、大気中のCO2の吸収には効果があるのだろうけど、その他への影響はどこまで予想できるのだろうか? 当然植物を食べる動物も増えるだろうから、海の生態系が撹乱されるのは当然にしても、回りまわってどんな影響が地球全体に現れるのだろうか? 或いは、どこまでの影響が確認できれば、人がこういう対策に着手することが許されるのだろうか? 道は遠いなあ。。

ちょうど環境省のサイトに、第3回地球温暖化対策技術検討会の議事録が載ったので、リンクしておく。まだ軽く目を通しただけだが、現状認識(地球温暖化は緊急を要する課題)の切実さと対策(省エネ、再生可能エネルギー、資源の徹底利用、天然ガス利用)の悠長さとが、絶妙のアンバランスさを醸し出していて、えっ本当にこれでいいのか? って思わせる。まだ最終結論ではないし、途中の段階では色んな提案があっていいと思うけど、この検討会、今後に注目かもしれない。

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2004/03/03

ベンタ ハイジェン液代替その後

2/16のブログに続いて、ベンタ エアウォッシャー関連記事の第3弾。純正のハイジェン液の替わりに、大胆にも洗濯用柔軟剤「ハミング」を入れてから約2週間。そろそろ交換時期が来た。

まあ、1日おき程度の頻度で蓋を開けて、蒸発した水を補充しているので、別にアッと驚くようなことは何もないんだけど、改めてばらして見ると、前回よりもきれいかも。前回は、

確かに、水の中に汚れが貯まる方式なので、水はやや汚くなっていたが、それよりも目立ったのは空間部の汚れ。下部ハウジングの水面より上の部分や、上部のファンの羽などが、黄色っぽい油の様なものでベタッと汚れている。何だ、これは??

部屋の汚れ成分が付着した可能性もあるが、ちょっと考えにくいな。ハイジェン液由来ではないのか? でもハイジェン液はライトブルーのサラッとした液なので、こんなベタベタの黄色い汚れとは無縁のようにも見える。

と書いているが、今回もまたハウジング内側の水面上の部分やファンはベタついている。ただベタつき方が前回よりもあっさりしているような。それと羽根の汚れが前回は黄色っぽかったのに対して、今回はやや青みを帯びた緑色。

加湿能力については、前回と室温や湿度といった使用条件が同じではないので、何とも言えないが、水の補給頻度は今回の方が多かった。少なくとも著しい能力の低下がなかったのは確実。

ハイジェン液の効能は、水垢付着防止、臭いの発生防止、ローラーディスク上への水膜形成ということらしいが、少なくともこの3点は全て「ハミング」で達成できている。気になるのが、水を注ぎ足しながらといいながらも2週間も溜め込んでおくことの衛生面。しかし、少なくとも外観上は異常は見られない。まあ、水道水なので残留塩素があるし、ハミングは抗菌成分入りだし、大丈夫だろうとは思ってるんだけど。

きちんとした実験をしようと思えば、使用条件をきちんと合わせて比較する必要がある。当然、ハイジェン液も「ハミング」も添加しない、ただの水だけを使用するケースとの比較も必要。比較する項目としては、加湿能力、装置内の汚れ(細菌数他)、部屋の空気の分析等が必要となるだろう。当然、ここではそこまではできないので、これは実験ではなく、単なる体験記と言える。僕の部屋でうまくいったから、他のお部屋で同様な効果が出るのかどうか、は全く保証の限りではないし、他の誰かに積極的にお勧めするつもりはない。

とは言え、個人的には今後も「ハミング」をハイジェン液の替わりに使用していくことにする。実は、汚れが少ないということは、部屋の空気中の汚れを取り除く能力が少ないという解釈も成り立つのが、ちと悲しいものもあるのだが。。

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2004/03/02

アレルギー成分ゼロ?の機内食

YOMIURI ON-LINE(3/2)の記事。

アレルギー成分ゼロの機内食、全日空が提供開始
 全日空は、5大アレルギー成分(小麦、そば、乳製品、卵、落花生)を一切使わない世界初の特別機内食を国際線全線で提供し始めた。子ども向けで、重度の食物アレルギーでも安心して空の旅を楽しんでもらうのが狙い。出発4日前までに予約してもらう。

 通常、小麦粉を使うパンは米粉製、ハンバーグはつなぎに卵を使わず、豚ももの赤身に食塩やでんぷんなどで仕上げている。デザートはケーキなど生クリームを使うものは避けた。食品衛生法上の表示義務がない原材料表示も自社のホームページで公開している。

何と言っても、タイトルが気になる。本当にアレルギー成分ゼロなのか? 記事の中では、5大アレルギー成分ゼロとなっているし。全日空のホームページで見つけたのが、5大アレルギー成分除去ミール。(世界初とはどこにも書いていないけどね。)よく見ると、1/17搭乗分から開始、となっていて、何でまた今頃になって新聞記事になるのだろう?(asahi.comを検索すると、1/18に記事になっていた。YOMIURIさんはどうして今頃記事にしたのだろう? 結構不思議。)

それにしても、疑問は色々あって、大人はアレルギー成分を含まない食事の必要ないのか?とか、5大アレルギー成分に限定していいのか?とか、他社はどうしているのか?とか。

全日空の国際線の機内特別食のメニューはこちら。宗教関係やベジタリアン向け、糖尿病向け、低塩、低コレステロール、低カロリーと色々と用意されているが、大人向けのアレルギー成分除去ミールはないみたいだ。もっとも事前に相談すれば何とかなるのかもしれないが。

対する日本航空の機内特別食のメニューはこちら。確かに、アレルギー成分除去という食事はないが、宗教関係や特定の病気関係のメニューの種類はこちらの方が豊富だ。こちらも可能な限り、要望に応えるようなので、事前に相談すれば何とかなるかもしれない。

それにしても、「5大アレルギー成分」をキーワードにしてGoogleで検索すると、なんと、ヒットするのは全部このニュースを取り上げた記事ばかり。つまり「5大アレルギー成分」という用語は全日空が発明したものではないか?と推定される。(これらは成分というよりも食品とか食材というべきものだし。)

そこで「5大アレルギー食品」で検索してみると、いくつかのページで「米・小麦・卵・牛乳・大豆」がリストアップされている。(例:タケヤみそのページM&Tきょうと)これだと、全日空のメニューは小麦に変えて米を使ったパン等を用意しているので、ちょっとどうかなということになる。

一方、厚生労働省で探してみるとアレルギー物質を含む食品に関する表示についてという資料がみつかった。これによると

アレルギー物質を含む食品については、特定のアレルギー体質を持つ方の健康危害の発生を防止する観点から、食物アレルギーを引き起こすことが明らかになった食品のうち、特に発症数、重篤度から勘案して表示する必要性の高い小麦、そば、卵、乳及び落花生の5品目(以下「特定原材料」という。)を食品衛生法施行規則(昭和23年厚生省令第23号。以下「規則」という。)別表第5の2に掲げ、これらを含む加工食品については、規則第5条に定めるところにより当該特定原材料を含む旨を記載しなければならないとしたこと。

アレルギー物質を含む食品として、規則では5品目が列挙されているところであるが、食物アレルギーの実態及びアレルギー誘発物質の解明に関する研究から、あわび、いか、いくら、えび、オレンジ、かに、キウイフルーツ、牛肉、くるみ、さけ、さば、大豆、鶏肉、豚肉、まつたけ、もも、やまいも、りんご、ゼラチンの19品目についても、特定のアレルギー体質を持つ方に、過去に一定の頻度で重篤な健康危害が見られていることから、これらを原材料として含む加工食品については、当該食品を原材料として含む旨を可能な限り表示するよう努めるよう推奨していること。

となっており、全日空のメニューは「特定原材料」を使用しないようにした、ということになるが、その他にも19種類もの食品が、それに準ずるとしてリストアップされている。

最大公約数的な意味で、これらの特定原材料を含まないメニューを用意することには、確かに意味があるのだろう。しかし、読売新聞のタイトルだけを真に受けて、アレルギー成分がゼロの食事があるんだ、とあいまいに思い込んでしまったら危険だね。特定原材料以外にもアレルギーとなる食材は多数あるわけだし、「5大」にも諸説ありそうだ。もう少し誤解を招かないような注意が必要じゃないのか。もっとも、自覚症状のある人は、きちんとチェックするから大丈夫だと思うけど。。

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2004/03/01

陳水扁台湾総統グッズのコピー

よく見ていた日刊工業新聞のサイトが FujiSankei Business i に模様替えしていた。そこで見かけた、ちょっと気になるニュース。台湾で陳総統グッズのコピーを押収

 台湾の台中関税局は29日までに、中国の上海周辺から密輸されたとみられる「陳水扁総統ぬいぐるみ」のコピー商品2万4000個を著作権法違反の疑いで押収した。市場価格は約600万台湾元(約2000万円)にのぼるという。台湾紙「中国時報」によると、3月20日の台湾総統選投票日を控え、急増している総統候補のキャラクターグッズの売行きに目をつけた中台密輸グループが背後にいた。キャラクターグッズの中では、野球のユニホームを着た陳総統のぬいぐるみ(1個約800円)が陳総統ファンの間で人気を集め、品切れの状態。中国のおもちゃメーカーがそうした人気にあやかり、台湾の業者と組んでコピー商品の密輸を計画したという。
この1月に台湾に旅行に行ってたこともあるし、1/27のブログで「著作権の考え方」という本を紹介したこともあるが、実は現在、知的財産権について少し勉強中でもある。

さて、この記事を読んでみて気になったのは、本当に著作権の問題なのか? という点である。そもそも「陳水扁総統ぬいぐるみ」とはどんなものなのだろうか? このニュースの元ネタを探したが、中国語サイトは言語の壁があって、うまく探せなかった。

台湾の選挙運動についてというページによれば、

 選挙グッズ量産も特色の一つである。キャラクターグッズで候補者をアピールする作戦も盛んだ。特に若いスタッフが多い民進党の陳水扁の陣営は力を入れている。最近も「へんぼう(扁帽)」と名付けた冬物の帽子や陳氏の人形などの新商品の発表会をひらいた。陳氏のキャラクターグッズは帽子やTシャツ、ネクタイなどの衣服から人形、貯金箱、バッグ、傘までざっと80種類以上ある。支持者だけでなく、あまり政治に関心がないひ人もファッションとして愛用している。グッズを通して、支持者と陳氏の間に一体感が生まれる。陳氏が若者に絶大な人気があるのは、グッズの効果が大きい。各陣営以外からも、候補者を登場人物にしたゲームソフトや、各候補のイラストいりの腕時計が売り出されるなど。選挙は商売のタネにもなっている。色々な選挙グッズはあまりにもかわいいので、私も買ってしまった。
とあるように、台湾の選挙運動ではキャラクターグッズが大人気になるようだ。日本の標準的な感覚とはずれがありそうだが、小泉さんが最初に首相になった時には、小泉グッズが売られて大人気という話を聞いたような気もするから、どこも一緒なのか? 調べてみたら、まだ色々と売ってるぞ。

その他、少し頑張って探してみたが、残念ながら陳総統のぬいぐるみの写真等は、過去のものについても、みつけることができなかった。従って、ぬいぐるみが写実的なものなのか、それとも芸術性に富んだものなのか、が不明。

さて、台湾の話なので日本の法律とは状況も異なるだろうが、もしも日本で同じことをした時に、著作権侵害となるのだろうか? 例えば、著作権ビジネスQ&Aというページでは

Q:ぬいぐるみは著作権の対象にならないのですか?
ぬいぐるみでキャラクターを創りましたが、それだと著作権法は適用されないと言われました。

A:残念ながら、現在の日本では「ぬいぐるみ」には著作権が認められていません。
 絵や彫刻で表現されたものには、著作権は認められるのに、ぬいぐるみで表現されたものは認めないと言うのは、創造という行為を国が理解していないということを示しています。
 絵で著作権が認められたキャラクター等を、ぬいぐるみで作った場合、キャラクターの著作権はみとめられて保護されるのですが、ぬいぐるみで新しいキャラクター等を作った場合、それは著作物として認められないのです。
そのぬいぐるみを「絵」にすると、その絵に対して著作権が認められるので、創作されたイメージが表現方法によって除外されると言うおかしなことになっています。
 これはぬいぐるみの業界が、売れたものを次々に真似して販売してきたことと関係しているようです。「ティディベア」は商標ですが、おなじようなぬいぐるみは、いくら作っても著作権法上の問題になっていないようです。
ぬいぐるみは工業製品と言う判断が根拠になっているようですが、最初のパターンを創ると言うことは創造的行為であり、著作権が適応されるべきだと思いますが、ぬいぐるみ業界は過去のいきさつから国に働きかけようとしていないのです。

という説明がある。日本の著作権法では、著作物とは「思想または感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術または音楽の範囲に属するもの」となっている。具体的には、言語、音楽、振付、美術、建築、図形、映画、写真、プログラムの各著作物が例示されている。

他の本も見てみたが、今回のケースでは、陳総統のぬいぐるみ自体が美術品と認められるようなもの(ex.博多人形は著作物として認められたケースあり)であれば、たとえ量産品であっても、美術の著作物と認められる可能性がありうるか。或いは、別にイラストや漫画等の原作(美術品としての著作物)があり、そのキャラクターをぬいぐるみにしたようなケースであれば著作物として認められる可能性がある。(上のQ&Aにあるとおり。キティちゃん人形のような場合が該当。ただし実在の人物をモデルにしたキャラクターのケースではどうだろう?)

著作権が認められない場合には、名称や形状については商標権(立体商標というのもある)、デザインについては意匠権で保護するということになるだろうか? 著作権は、特に出願や登録といった手続きが不要なのに対して、商標権も意匠権も出願・審査・登録という手続きを必要とする権利なので、陳総統のぬいぐるみも、業者が手続きを行って、登録されていれば、権利を主張できるということになるわけだ。

なお、自民党のキャラクタグッズのページにも著作権や商標権の表記は特にされていなかった。(シシローのTシャツやマグカップは著作権主張できそうだが、キーホルダーは駄目だろうというのが、僕の見解なのだが。確かに微妙だな。。)

以上、勉強中の身でもあり、自信がないままに考え方を書いたものなので、法の解釈には責任持てません(^_^;)

間違っていたら是非指摘してください。

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