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2004/03/12

森林の癒し効果調査

林野庁がおもしろい調査結果を発表している。「森林の健康と癒し効果に関する科学的実証調査」の結果について

健康な男女20人に、岐阜県内の都市環境と森林環境で1日ずつ、できるだけ同一条件で過ごしてもらい、血液検査と各人のフィーリングを調査したら、森林環境では都市環境に比べて有意に、免疫機能が高まったりやストレスホルモンが減少したり、リラックス状態になることが認められた、というもの。

調査の方法の詳細は、岐阜県農山村政策課ニュースに詳しく載っている。都市環境というのは岐阜県庁前公園、森林環境というのは岐阜県馬瀬村美輝の里心林公園という場所。実はそれぞれの公園で1.5時間滞在し、その間に2100mのウォーキングをしている。で、それぞれ公園滞在の前後で心理テストを行ったり、公園滞在中に採血したりしている。

最初の林野庁のページから報告書の要旨を見てみると、まあ確かに統計的に有意な差が出たんだね、という結果が棒グラフで載っているんだが、圧倒的な差があるわけでもない。そもそも、このテスト、いわゆる二重盲検にはなってないから(こういう場合はどうすれば良いのだろう?)プラセボ効果が十分に疑われる。どういうオリエンテーションをしたのかわからないけど、「街の真中の公園に行きましょう」と言われただけで憂鬱になったり、「森林公園に行きますよ」と言われただけで心安らかになる人もいそうだし。

少し考えてみても、気象条件(温度・湿度・日照・風等)も異なれば、音や景色も全然違うだろうし、一体何を比較したことになるんだか、たった1回の20人のテストではよくわからない。森林環境の方が落ち着くという答えは、いわゆる常識を否定するものではないから、やっぱりそうだったのか、というだけだ。

実は、調査の際には同時に大気の成分分析やフィトンチッド類の分析をしている筈だけど、この調査結果には全くその点が触れられていない。うがった見方をすれば、フィトンチッド類とリラックス結果との相関を仮定していたが、その仮説が否定されたとかいうことじゃないの?

まあ、これで終わるならば、お疲れ様でしたってなことなんだけど、この調査は実はこれから始まる「森林セラピー研究会」という研究のプロローグなので、ちょっと要注意。要は森林の人間に与える効果を科学的・医学的に解明して、有効に活用したいということらしいが、詳細は林野庁の「森林セラピー効果」の医学的解明へ向けた新たな取り組み 参照。

この件については、asahi.com(2/28)に記事が載っている。

 林野庁の今回の研究は、一卵性の双子の人たちに協力してもらって進める。双子のうち一人だけに森林浴を繰り返してもらい、免疫力の向上やストレス軽減にどう影響するかを調べる。また、樹木が揺れたり、小鳥がさえずったりする音や自然の香りが人の五感にもたらす効果や、脳に与える反応なども研究する。

 それを踏まえ、どんな樹木の森でどのような運動を、どれくらいしたらいいかといった療法を確立させる。国内で森林保養地の適地を選び、運動などの自然療法を体験できる道をセラピーロード(森林療法道)として整備する計画だ。

 このほか、森林の音や映像、木材がもつ温感などを活用したCDやDVD、森の香り成分を含んだ食品など、さまざまな関連商品の研究・開発を企業とともに進める。

 また、森林療法を広く普及、実践させるため、新たに「森林療法資格」を作って専門的な人材育成を目指すほか、将来的には健康保険制度が適用できるかどうかも検討する。

 医療関係者や大学教授らでつくる「森林セラピー研究会」を3月に立ち上げる。メンバーの大阪大医学部の森本兼曩(かねひさ)教授(環境医学)は「病気になった人を治療するだけでなく、今後は予防や健康増進の医療がより重要になる。森林はそれに最適な場所。研究を重ね、『森林医学』を確立させたい」と話している。

「森林浴」という用語は林野庁が1982年に発明した言葉らしく、林野庁主導で過去にもフィトンチッドと健康との関係に関する研究等は何度も行われてきたようだ。しかし、結局不十分な結果しか得られていないものだから、今度は「森林セラピー」という新たな用語を持ち出して、また研究会を作ってやろうとしているんじゃないかと邪推したくなる。本当に科学的に解明されるのだろうか? 研究の意義は全く否定するつもりはないんだけど、研究手法の開発そのものが相当にハードル高そうだから、頑張ってくださいね。

参考リンク:林野庁クリップボード中央森林審議会議事要旨(平成10年)

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コメント

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投稿: みゆ | 2014/11/04 00:24

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