無触媒でアンモニア合成?
asahi.com(3/18)の記事。
高温高圧なし触媒も不要でアンモニア合成 京大など開発何回読んでも、よくわからない記事だ。「触媒も不要」? この場合フラーレンが触媒なんじゃないの?? 「底に穴が開いた『おわん』を二つかぶせたような形」? なんだそれ?? 窒素と反応する相手の水素はどこからくるんだ?? 「フラーレンの半数ほどでしかアンモニアが作れず」も意味不明だ。
窒素からアンモニアを作るのに高い熱や圧力を加えず、金属の触媒も要らない省エネ合成法を京都大の植村栄教授と近畿大のチームが開発した。60個の炭素原子がサッカーボールのようにつながった分子「フラーレン」を使うのが特色だ。18日付の英科学誌ネイチャーに掲載される。窒素は日常的な温度や圧力では反応しにくい。肥料やプラスチックなどの原料になるアンモニアを工業的に作るには、100~250気圧、400~600度の条件で、酸化鉄などの触媒を使って窒素と水素を反応させている。エネルギーを多く使うので効率的な合成法が求められている。
植村教授らはフラーレンと炭水化物を組み合わせ、「サッカーボール」に、底に穴が開いた「おわん」を二つかぶせたような形にした。これと還元剤を水に溶かして温度60度の液を作り、光を当てながらかきまぜて1気圧の窒素とふれさせるとアンモニアができた。
「おわん」の穴に乗った窒素が、液の電子と光のエネルギーで反応しやすくなったらしい。ただ、現段階ではフラーレンの半数ほどでしかアンモニアが作れず、大量生産は難しいという。 (03/18 09:13)
こちらの読解力が不足しているだけ、と言われるのもシャクなので、元ネタを探してみた。Natureを購読していないと、無料では要約(登録必要)だけしか読めない。
バッキーボールが窒素を固定するということで、だいぶ謎が解けた。フラーレンとシクロデキストリンの触媒系で、窒素と水を直接反応させて、アンモニアが生成したということらしい。それにしても、常圧で水と窒素ガスが反応するのか、すごい話だ。 (でも多くの植物が、金属触媒の助けを借りて、空気中の窒素を固定してアンモニアを合成してる、というのは間違いだと思うな。。多くの植物は空気中の窒素を直接固定しないからこそ、肥料原料としてアンモニアが必要なんじゃないの??)
アンモニアは、肥料製造の出発物質であるため、食糧生産にとって重要な化学物質である。植村榮らは、2個のシクロデキストリン分子に包まれた炭素分子C60を利用して、窒素と水を結合させ、アンモニアを合成した。
多くの植物は、空気中から窒素を「固定」してアンモニアを合成し、それを利用してタンパク質を合成している。工業的なアンモニア合成は、高温・高圧プロセスを用いている。しかし両者とも、不活性な窒素分子を活性化させるために金属触媒の助けを必要とする。植村たちの合成戦略は、温和な条件下で同じアンモニア合成を行うのに、非金属系の炭素分子によっているのである。
英文は
Nature vol.428, 279-280 (18 March 2004)となっている。確かにNatureに載るレベルだと思える。(反応速度というか、どれだけのアンモニアが出来たのかによるんだけど。) フラーレンがこんな形で実用レベルで有用だとすると、今後いろんな反応への応用が出てきそうだな。
Buckminsterfullerenes: A non-metal system for nitrogen fixation
In all nitrogen-fixation processes known so far - including the industrial Haber-Bosch process, biological fixation by nitrogenase enzymes and previously described homogeneous synthetic systems - the direct transformation of the stable, inert dinitrogen molecule (N2) into ammonia (NH3) relies on the powerful redox properties of metals. Here we show that nitrogen fixation can also be achieved by using a non-metallic buckminsterfullerene (C60) molecule, in the form of a water-soluble C60:-cyclodextrin (1:2) complex, and light under nitrogen at atmospheric pressure. This metal-free system efficiently fixes nitrogen under mild conditions by making use of the redox properties of the fullerene derivative.
朝日の記事はここに書かれていない内容も含んでいるので、未だに意味不明な部分もある。これってもしかすると結構すごい発明のような気がするんだが。。新聞記者さん、もう少し内容を理解してから、本当にすごいところを、わかりやすーく紹介していただけるとありがたいんですけど。。
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