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2004/03/20

基準の170倍のヒ素検出

結構ローカルネタだけど、各紙が報じている。産経新聞が一番詳しかったので、代表して Sankei Web(3/19)の記事。

基準値173倍のヒ素検出 横浜市営地下鉄の建設現場
 横浜市都筑区川和町に建設している市営地下鉄4号線川和車両基地の工事現場の土壌から、国の環境基準値を約170倍上回る有害物質のヒ素が検出されていたことが19日、分かった。横浜市は過去2回の調査で汚染を確認していたが「健康被害がない」として公表していなかった。

 横浜市によると、地下水への汚染はない。現場は1970年ごろまで農薬工場があり、同市が関連を調べている。

 市によると、2002年3月と03年6月の調査で、敷地約5万9000平方メートルのうち、南側の約4400平方メートルの土壌で汚染を確認。最大で土壌汚染対策法が定める環境基準値(1キロ当たり150ミリグラム)を約173倍上回る2万6000ミリグラムを検出した。

 汚染土壌量はドラム缶6万5000本に相当する約1万3000立方メートル。市交通局は4月から汚染土をコンクリートで固め敷地の地下に封じ込める対策を始める。

 4号線は中山駅(同市緑区)から港北ニュータウンを通り日吉駅(同市港北区)までの13・1キロで、07年の開業を目指している。

これってウチの割と近く。調べてみたら、横浜市交通局のホームページに報道発表資料として載っている。

こんな地下鉄を作る計画があるってのも、初めて知ったけど、そう言えば中山駅の北側の道路を工事しているのは、この為かな? このヒ素が検出された所って、鶴見川のすぐ近くだけど、それは問題なかったのかな?

この手の報道でいつも思うのは、濃度が基準の何倍だ!って数値の大小を競うかのように取り上げるけど、総量が問題だろうに。(他紙もすべて、基準値の170倍、を見出しにしているのが、いかにもだ。) 最大濃度だけなら、汚染源の大元でピンポイントにサンプリングして分析すれば、いくらでも高くなりそうだし。(そんなに大きな数値が欲しければ、今回でもヒ素の濃度ではなく、溶出量で比較すれば、基準値の940倍なのにな。) 平均濃度でみると、基準の13倍。普通は基準値は安全係数を100倍ぐらいみているから、13倍だったらとりあえず、余り心配ないレベルと考えられる。

それにしても、横浜市の発表もまたそっけないものだ。どの位置から何点サンプリングして、どんな結果だったのか、もう少し詳しくデータを出してくれても良さそうなもの。平均値と最大値しか公表しないってのも困ったものだ。(そう言えば、産総研の中西準子さんも、お役所は自分たちの調査結果は平均値と最大値しか出してくれない。せっかく税金を使ってやった調査の結果を、他の研究者が有効に使えないのはおかしい、と嘆いておられた。)

ついでに言うと、単にヒ素ではよくわからないので、無機のヒ素なのか、有機ヒ素なのか、化合物名を明らかにすべきだと思うけど。だって、物質によって毒性は異なるわけだから。(和歌山カレー事件は無機のヒ素:亜ヒ酸だったし、茨城の地下水は有機ヒ素:アルシン酸化合物、どちらも有害だが有害性は異なる。)

汚染土が13,000m3で平均濃度が1,900mg/kg。土の比重を約1.25g/cm3(演習:環境リスクを計算する p106)とすると、ヒ素として全部で30.9kg になる。結構な量だが、一体どんな由来なのだろう? 農薬工場が原因だとすると、土壌中に廃棄したりしたのかな? それにしても多量だ。まあ工場があったのは30年以上前だから、今となっては問題はないのだろうけど、原因によってはもっと広範囲に汚染状況の調査が必要になるかも。

まあ、しっかりと不溶化処理をしてコンクリ詰めにして埋めるようなので、大丈夫と思うけど、13,000m3ってすごい量だ。たった2か月で処理を終えちゃうのか? 50日間として一日260m3、ドラム缶にして1,300本か。。 すぐ近くだし、そのうち様子を見に行ってこようかな。(周囲からは見えないようにカバーしてしまうだろうけど。)

おまけ:横浜市のページには、

なお、この土地は、土壌汚染対策法に規定する「人の健康被害が生じるおそれのある土地」には該当しませんが、より安全を確保するため処理を行うものです。
とある。何でと思って、土壌汚染対策法土壌汚染対策法施行令を読んでみると、現にその土地の汚染が原因で地下水の水質が悪化していたり、一般の人が自由に出入りできる土地が汚染している場合だけが該当するようだ。

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