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2004/03/26

再生ペットボトルがもうすぐデビュー

Mainichi INTERACTIVE(3/25)の記事。

帝人:再生ペットボトル、4月から出荷 世界初の技術
 帝人グループは25日、使用済みペットボトルを同じペットボトルの原料樹脂に再生させる世界初のリサイクル技術を活用して、再生したペットボトル用の原料樹脂を4月初旬から出荷すると発表した。これを受けて、同月中旬には、完全循環型のペットボトルが店頭に並ぶが、消費者には区別がつかないという。

 これまでは、使用済みペットボトルは異物が混入するため、再生樹脂は、衣服などに使う通常のポリエステル繊維の原料として使うことはできたが、高い純度が求められるペットボトル用には活用できなかった。しかし、帝人は独自の化学的処理で課題を克服。内閣府の食品安全委員会が25日、再生された樹脂について「新品同様に使える」と評価したことから、国内出荷に踏み切ることにした。

 帝人グループは昨年11月、山口県内でリサイクル施設の操業を開始した。同施設は年間で500ミリリットルペットボトル約20億本から樹脂5万トンを再生する能力を持つ。従来のペットボトル用樹脂の生産施設を含めると、同樹脂の生産能力は年9万トンになる。再生樹脂は、既存樹脂と同価格で出荷される。【吉原宏樹】

これは、帝人が「ボトル to ボトル」と呼ぶ技術で、関連する帝人のニュースリリースがたくさん出ている。事業構想(2001/12/17)操業開始(2003/11/19)食品安全委員会評価終了(2004/03/25)。(話の筋とは関係ないけど、この設備、現時点では高圧ガス保安法違反で操業停止中ですね。)

実は、似たような技術で、やはり回収ペットボトルを化学的に再生して、ペットボトルにしようという会社がある。株式会社ペットリバースがそれ。(reverse かと思ったら rebirth なんだ。当然か。。)アイエス法と名付けられた技術を用いて、こちらも間もなく操業開始するという。背景や技術については株式会社アイエスのページも合わせて見る価値あり。こちらは「ケミカルリサイクル」と呼んでいるようだ。ペットリバースの操業に関して、神奈川新聞の3/25の記事が出ている。

川崎にペットボトル再生工場 ◆4月から本格稼動
 使用済みペットボトルを化学的に分解し、ペットボトルの原料となる樹脂に再生する工場のしゅん工式が二十四日、川崎市川崎区扇町の同工場で行われた。運営する「ペットリバース」(稲田修司社長、同所)によると、ペットボトルの完全循環型リサイクル事業は首都圏初。工場は四月から本格稼働する。
 工場は、川崎市が資源循環型の街づくり(エコタウン)を進めている地域にあり、広さは約五万三千平方メートル。建設費は、国が四十億円、市が四千万円を補助している。
 これまで使用済みペットボトルをリサイクルする場合、不純物を完全に取り除くことが難しいことから、繊維製品などに利用され、ボトルには再生されていなかった。同社は新技術を開発し、「品質的に新品のペットボトル用樹脂と同等のものに再生する」(同社)という。
 使用済みボトルは、色が付いていたり、ラベル、キャップなどが混在していたりしても再生可能。年間で、五〇〇ミリリットル用ペットボトルで約九億本に相当する使用済みボトル約二万七千五百トンを処理する計画だ。再生した樹脂は、ボトルメーカーなどに販売する。
 稲田社長は「川崎という場所は、首都圏という大消費地が控えている。循環型社会の構築に貢献したい」と述べた。また、阿部孝夫川崎市長も「世界の最先端を行く事業」と期待を寄せた。
 同社によると、同様のリサイクル工場は、別方式のものが山口県にあるという。
ということで、帝人とほとんど同じタイミングで操業することになるのか。帝人が山口県で、ペットリバースが川崎市ということで、回収ボトルの運搬を考えると、東西にそれぞれリサイクル工場があるのはバランスが良いのかもしれない。

帝人のリサイクル事業は、民活法の適用を受けているし、ペットリバースの工場建設には、かなり大きな金額を国と市が補助している、という具合にペットボトルのボトルへのリサイクルは、国や自治体のバックアップを受けて、積極的に進められているようだ。

ここで、両者の技術的な違いを見てみると、PET(ポリエチレンテレフタレート)は、原料のTPA(テレフタル酸)とEG(エチレングリコール)を縮重合させたものだが、帝人の技術は回収したPETを化学的に分解して、元の原料であるTPAとEGにまで戻し、それを再び縮重合させてPETにするもの。一方、アイエス法は回収したPETを化学的に分解するところは一緒だが、TPAとEGになる手前のBHET(ビスヒドロキシエチルテレフタレート:TPAとEGのエステルのモノマー)までで止め、それを再度重合してPETに戻す。単純に考えれば、アイエス法の方が工程も短く、効率が良さそうだが、品質制御や運転の容易さ(フレキシビリティ等)に関しては、帝人のやり方の方が優れているかもしれない。

さて、この技術、確かに画期的なものだと思う。従来の発想では、こんなことをやろうというアイデア自体が出てこないし、いかにも環境の世紀らしい技術だな、といった趣もある。ボトルにするためには、純度等の品質に関するハードルが相当に高い筈だが、回収品を原料として、高品質なものを作るのは大変だっただろうと思う。(だからこそ、従来は回収したペットボトルは繊維にしか戻せなかったわけだし。)

だけど、ではこれが夢の技術で、これでペットボトルのごみ問題が解決するのか? というと、何だか違う気がする。(これで本当にペイするのか?という疑問もあるのだが、それは置いておいてもだ。) その辺については、もう少し書きたいこともあるので、次回へ続く、ということで。。。

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