「いちばん大事なこと」
「バカの壁」は比較的早い時期(まだ大騒ぎされる前)に読んでみたけど、正直言って、あまりピンと来なかった。その後大ヒットとなったけど、そんなに面白い本だったかな? と自分の読解力やセンスのなさを痛感する羽目になってしまった。で、たまたま本屋で、この本を見かけて、「養老教授の環境論」というサブタイトルにも惹かれ、「バカの壁」へのリベンジの想いも込めて、読んでみた。
集英社新書 0219B
いちばん大事なこと 養老教授の環境論
養老 孟司 著 bk1、amazon
結果として、やっぱり僕には養老先生の考えや本は合わないのかな、と思い知らされることになった。「バカの壁」もそうだったと思うけど、この本も口述筆記という形式で、どうも文章が冗長というか、論旨がはっきりしない印象で、読んでいてイライラすることが多いのが、原因の一つかもしれない。(話の論点がいつの間にか、すりかわったりすることもあるし。)
さて、肝心の内容であるが、「環境問題を都会の真中で机上の計算だけで論じていても、問題の本質を明らかにすることはできない。人間自身が自然の一部であることを認識するために、もっと不自由な暮らしをしてみたり、生態系や地球という複雑なシステムの中に身を置いて、自ら何をすべきかを考えなさい。」というような主旨だ(と思う)。
昆虫に魅せられ、解剖学を専攻し、数々の著書を持つ養老先生らしく、昆虫や動物、或いは植物等の生物に関わる、たくさんの興味深い、具体的な話が出てくる。自然というのは途方もなく複雑で、「ああすれば、こうなる」という科学の論理では、到底説明しつくせるものではない、ということを再三強調する。
しかし、だから町を出て野山で暮らしてみよう、という話に行っちゃうと、何だか騙されたような気になる。確かに、グリーンピースのような環境原理主義を切り捨てる一方で、環境を人間がコントロールしようとすることの愚かさを指摘することには同感できる。でも、僕は養老先生よりも、もっと科学の力を信じたい。
確かに人間は、生物を構成する、たった一つの細胞さえも、人工的に作ることはできない。でも、だから人間には複雑な生態系を理解することができない、という結論にいくのは違うでしょう。科学は、その複雑で巨大な世界を理解しようと、過去連綿と努力を積み重ねてきたのだし、実際に多くのものを手にしてきたのだ。
これからも、科学はその限界を念頭に置きながら、少しずつ、この世界を様々な方向からひも解いていくだろう。環境問題をどう定義するにしても、その解決は科学的なアプローチを抜きにしてはありえないだろう。(実施に当たって政治的な判断が重要であるにしても。)
本書は、過去に人間が環境をコントロールしようとして起こった、様々な問題を解説してくれるけど、今後の展望が何だか中途半端というか、スケールが小さい感じがする。結局、環境論とは言うけれど、数百年後の地球環境をどう捉えるのか、というような視点ではなく、身近な自然とのつきあい方をもっと見直そう、という話だったのか?? とんでもなく読み違えてなければいいんだけど。。
そういえば、本書の帯には、「大反響!養老流自然とのつきあい方。都市という頭、田舎という身体。」というコピーがあった。
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