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2004/03/10

「だからあなたは騙される」

科学を批判する反科学や、一見科学を装ったニセ科学や擬似科学が世の中に広まっている。そんな問題意識で、たまたま見つけた本書を読んでみた。でも、この本はオカルトに騙されない方法について書かれたものだった。

角川oneテーマ21 C-10
 だからあなたは騙される
 安斎 育郎 著 bk1amazon

著者は工学博士。超能力批判やオウム真理教批判の本を数多く書かれている。Japan Skeptics(「超自然現象」を批判的・科学的に究明する会)の会長でもあるようだ。

本書で扱っているのは、「ライフ・スペース事件」「法の華三法行」「心霊手術」「サイ・ババ」「霊感商法」「こっくりさん」「ユリ・ゲラー」「心霊写真」「ポルターガイスト事件」「超能力」などなど。いわゆるオカルト系を主な題材として、何故多くの人々が、歴史的に見れば繰り返し、同じようなものに騙されるのかについて考える。更に、宗教と科学の関係に迫り、人生をどう生きていくのか、にまで言及している。

前半は、これらの事例について詳しく紹介し、どうやってインチキがばれたのか、という点(トリックの種明かし)も説明されている。やや古典的な題材が多い印象もあるが、これを読んでみると確かに歴史は繰り返すというか、人間はちっとも賢くなっていないのではないか、とも思う。もっとも、それだけ人を騙せるウソってのは、人間の本質を本当にうまく突いているのだろうけど。いずれにしても、過去に学ぶことが大切なのは確かだろうし、それと共に、登場する人物の人生も垣間見えたりして、違った意味でも楽しめた。

おもしろかったエピソードとしては、明治時代にはやっていた「こっくりさん占い」がでたらめであることを見抜き、明治20年に本を書いた浄土真宗の僧侶、井上円了の話。

円了のキリスト教批判は、「キリスト教の教えは近代科学の成果である地動説や進化論に反する」というものであり、「西洋の合理主義的な近代哲学に最もよく適合する宗教は仏教である」ことを確信していた。そして、「近代的な哲学や科学を普及することこそが、仏教を守り育てる」という考えのもとに、仏教の世界から合理主義的な西洋哲学や近代科学と相反する「妖怪」や「迷信」を徹底的に取り除くことに全力を上げたのである。
今から100年以上も前の日本に、すごいお坊さんがいたんだねえ。

本書の後半は、若い人達に人生を説くかのような内容になっており、第三章の「騙されないための六か条」、第四章の「人生、どう生きるか」の辺りは、比較的常識的な話を説教くさく語っており、何だか読むのが少し恥ずかしいような内容だ。

少し気になるのは、著者が、世の中には主観的命題と客観的命題があり、客観的命題は、事実を調べれば確実に白黒が決着するが、主観的命題は科学からは自動的に結論は導かれないのだ、と何度か繰り返して書いているくだり。客観的な命題であろうとも、世の中は白と黒にきれいに二分することのできる命題ばかりではなく、むしろ実際に人々が頭を悩ます問題のほとんどは、白でも黒でもない所に答えがあるんじゃないかと思うのだが。この手の問題に対してまで、無理やり白黒をはっきりさせようとする所に、オカルトや疑似科学がはびこる温床があるのではなかろうか?

*最近の本には珍しく、紙質を少し落としているせいか、価格も控えめの571円。

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