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2004/04/30

硫黄固化体

FujiSankei Business i(4/30)の記事。硫黄を漁礁の材料に 新日本石油が9月から実証実験

 新日本石油は、原油の精製工程で出る硫黄を石炭灰などと一緒に混ぜて固めた「改質硫黄固化体」を、魚のすみかとなる漁礁などの材料に活用する実証実験に乗り出す。約4億円を投じ、北海道室蘭市に試験製造プラントを建設、9月から生産を始める。

 試験プラントは、精製子会社の新日本石油精製の室蘭製油所(北海道室蘭市)に隣接する倉庫(総面積3626平方メートル)に建設。1時間あたり15トンの製造能力を持つ。

 改質硫黄固化体は、硫黄を約120~160度の高温でいったん溶かし、冷やすと固くなる性質を利用。石炭灰や製鉄くず(スラグ)などの産業廃棄物や帆立て貝、カキの貝殻などの水産廃棄物と一緒に混ぜ、漁礁や海藻が生息する藻礁などの海洋構造物の原料に加工して再利用を目指す。

 実証プラントでは、硫黄と細かい粒状の石炭灰などの一部を混合した中間資材をあらかじめ製造しておき、加工時に残りのスラグなどと混ぜる独自製法を採用。硫黄と他の原料を一度にまとめて長時間加工する従来法に比べ、時間短縮や品質向上にも役立つ。中間資材は消防法上の危険物に該当しないため、運搬や保管の取り扱いも容易。

 石油元売り各社は、排ガスの発生につながるガソリンや軽油の硫黄分の低減を進めており、精製工程で出る硫黄の量も年々増えている。一方で需要は肥料などの一部に限られているため、新たな受け皿となる用途開発を狙って実証実験に取り組む。今後は加工品の製造や耐久試験などを通じて採算性を検討する。

硫黄のかたまりを海に沈めちゃうの? 硫黄ってそんなに安定した物質だったかな? 結構派手に燃えるんじゃなかったか? 消防法の危険物だし。ということで、硫黄についての基礎知識は、Wikipedia、安全性については、国際化学物質安全性カードなど。やっぱり酸化されやすそうだけど、水への溶解度は低そうだし水中では安定なのかな?

調べてみると、この新日本石油の硫黄固化体利用は昨年の新聞記事になっていた。 JIJweb (2003/12/11) JIJweb (2003/12/12)。こちらの記事だと、

 そんな硫黄には、いくつかの特徴がある。特に注目されるのは「強度が高いこと」「遮水性が高いこと」「耐塩性があること」「中性で生物との親和性が良いこと」など。新日本石油の開発部開発2グループでは、こうした硫黄の特徴を生かした新事業の創出を目指している。中でも現実的で、相次ぎ実証試験に着手しているのが「硫黄固化体」だ。
とある。硫黄ってのはそんな性質があったとは知らなかった。新日本石油のプレスリリースを探すと、2003/9/122003/11/27などが見つかるが、やはり耐酸性が特徴ということらしい。ただし探してみた範囲では、具体的な強度や耐酸性のデータは見当たらなかったので、既存材料に対してどの程度優れているのかはわからない。何故か他に同じような検討をしているところもなさそうだ。

水産廃材と石油精製副産物の組み合わせってのが、なかなかキーワードとしても心地よいし、硫黄のそんな性質に目を付けて開発を進めたことにも感心するけど、そんなに大量の需要があるのかというと疑問かも。

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228回目の献血

今日(4/30)相模大野献血ルームにて、血漿成分献血を実施。前回は、3/31だったので、30日ぶり。今回も、右腕で検査、左腕で採血。いつもより少し返血速度が速かったのか、戻ってくる血が冷たく感じて心地良かった。検査結果を見ながら看護士さんに、「この結果から見ると随分血がサラサラでいいですね。」って言われたけど、単に血が薄いだけだろうに、物は言いようだ。(こんなこと言われたのは初めて。最近、血がサラサラとかドロドロとかが流行っているからか?)

おみやげには、待望のTシャツがラインアップされていたので、遠慮なくいただいてきた。

献血Tシャツ

以前は白地に赤と黒の2色だったのが、地味であっさりした黒文字で、"HUMANITY KANAGAWA RED CROSS BLOOD CENTER"と書いてある。今更、「ヒューマニティ」って言われてもなあ、って気分だけど、タダでもらっておいて文句言っちゃいかんか。

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2004/04/29

都道府県別死因分析

厚生労働省のサイトで、こんな記事を発見。都道府県別死因の分析結果について。(1)脳血管疾患(2)心疾患(3)糖尿病(4)胃がん(5)肺がん(6)大腸がん(7)子宮がん(8)乳がん(9)肝がん(10)前立腺がん(11)肺炎、の11の死因別の各都道府県の死亡率を(年齢構成分布を補正して)比較したもの。

各死因別に都道府県の死亡率ランキングが載っており、都道府県別に簡単なコメントも載っている。でもね、これって「分析結果」か?って突っ込みたくなるくらい、そっけないけどね。

でも、ざっと眺めただけでも、沖縄県は脳血管疾患、心疾患、肝がんでは日本一死亡率が低いのに、何故か肺がんと子宮がんの死亡率はトップクラスだとか、逆に秋田県は脳血管疾患や胃がんはトップなのに、肝がんや子宮がんの死亡率が低いなんてことがわかってそれなりに興味深い。他にも、糖尿病トップは徳島県だとか、肺がんの死亡率が最も低いのは長野県で、高いのは大阪府や兵庫県だとか、クイズの問題に出せそうなネタだけど、何故なのか解説があってもいいと思うのだが。。

それにしても、都道府県別に死因に傾向があるとしたら、それは何に起因しているんだろう? 気候や食事、生活習慣等の影響? 遺伝的な要因? でも、一生同じ都道府県で暮らす人ばかりではないので、僕のように秋田→東京→三重→神奈川→岡山→神奈川と移り住んできた人はどうなるんだ?(東京都の死因特性は比較的平均的なのは、そのせいだろうか?)

せっかくだから、都道府県別の死亡関係データを探してみると、同じ厚生労働省の統計で、都道府県別年齢調整死亡率年次推移なんて資料がみつかる。これは平成12年と昭和50年の主要な死因毎に都道府県の死亡率を比較したもの。こちらの統計だと、地方毎の特徴や死亡率の変化が見えてくる。分析している死因も、不慮の事故や自殺も扱っていて、眺めているといろんな仮説(単なる想像)が思い浮かんでくる。

全体の特徴をビジュアルに訴えようと工夫したのが、東京都健康安全研究センターの平均死亡率比行列。ここのサイトは死亡率の年次推移等についての解析結果も充実しているようだ。( SAGE(疾病動向予測システム)

ちなみに、生のデータが欲しいときは、厚生労働省の統計DBから、人口動態などで、死亡率や死因別年次推移等の生データが得られる。

こうやって死因のネタにつっこんでいるのは、東嶋和子さんのブルーバックス B-1309 「死因事典」(bk1amazon) を読んで考えさせられた影響だな。。

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2004/04/28

飛行機雲と温暖化

asahi.com(4/28)の記事。

飛行機雲が地球温暖化を「加速」 NASA研究結果発表
 青空に映える飛行機雲が地球温暖化を加速している。米航空宇宙局(NASA)は27日、過去20年間の北米の気温上昇の主な原因は旅客機だった、という研究結果を発表した。「化石燃料の消費増に伴う二酸化炭素(CO2)の増加が温暖化の元凶」とみる環境保護団体などの反発も招きそうだ。

 NASAラングレー研究センターのチームは、75~94年の米国上空の天候や雲の観測データを分析。航空機の増加と比例して、巻雲(絹雲)の量が増えていたことを突き止めた。

 ジェットエンジンの排気中の水蒸気が凍ると飛行機雲ができ、時間とともに上空に広がって巻雲になることがある。巻雲は地表を温める太陽光を通す一方で、地表からの熱の放射は遮る「温室効果」があるという。

 計算の結果、巻雲の増加による気温上昇は10年で0.2~0.3度と推定された。問題の20年間に米国では平均気温が約0.3度上昇しており、ほとんどが飛行機雲による巻雲の温室効果で説明できるという。

 研究チームは「飛行機雲の温室効果はCO2などの効果に加算される。温暖化シナリオに組み込んで考えるべきだ」と主張している。

NASAのニュースリリースは、こちら。オリジナルの論文は、Jounal of Climate の4/15号に載っているが、この論文を見るのは有料のようだ。

朝日の記事では地球温暖化への影響を調べたかのように読めるが、原文だとあくまでもアメリカへの影響について述べており、他の地域ではそれぞれ影響が異なると書かれている。(さらに朝日の記事では「この20年間に平均気温が約0.3℃上昇」と書かれており、観測された上昇の半分じゃないかと思ったけど、元記事では「この20年間の平均気温の上昇速度が約0.28℃/10年間」と書かれている。結構大きな間違いだ。)

さて、どこかで以前聞いたことがある話だと思ったので探してみると、岐阜大若井研のサイトで 1999/6/23のニュースとして載っているが、今回の発表では、飛行機雲の温暖化効果への寄与が従来よりも格段に大きくなっているようだ。比べてみると、今回のポイントは、飛行機雲が巻雲の形成を促進し、巻雲が温室効果を持つというところにあるようだ。元のニュースだとかなり控えめのニュアンスだけど、この数値だけが一人歩きすると、確かにアメリカの地球温暖化対策に影響を与えかねないかも。。

NASAのラングレー研究センターで探すと、飛行機雲の研究をしているグループがあり、パワーポイント版の、写真がとてもきれいな資料が載っている。(元々は軍事目的で、敵に飛行機雲で見つけられるのを防ぐための研究らしい。) Contrails(飛行機雲)1.1MB GLOBE SCIENCE Clouds and Contails 4.2MB

関連する話として面白いところでは、例の9.11テロの直後の飛行機がほとんど飛ばなかったアメリカの気候を観測した結果、飛行機の気候への影響が判明したなんて HOTWIREDニュース もある。

他にも、航空機の地球大気への影響についてのIPCCのシンポジウム資料が見つかった。これによると、飛行機雲と巻雲の関係やその温暖化への影響に加えて、飛行機の排ガスがオゾン層へ与える影響等、相当に複雑な話のようだ。

それにしても、地球の大きさに対して、飛んでいる飛行機の数を想像すると、地球全体の気候に%オーダーで影響を与えるなんて、予想外の複雑な話ではある。

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2004/04/27

バイオオーギュメンテーション

nikkeibp.jp(4/27)の記事、経済産業省と環境省、バイオオーギュメンテーション指針の検討開始

経済産業省、環境省は、遺伝子操作されていない微生物を培養して土壌に添加する汚染土壌の浄化法(バイオオーギュメンテーション)の統一した指針を作製するための合同会合を4月26日に開催した。

合同会合は、経済産業省の産業構造審議会化学・バイオ部会組換えDNA技術小委員会開放系利用技術指針作成ワーキンググループと、環境省の中央産業審議会水環境土壌農薬合同部会バイオレメディエーション小委員会によるもの。

ふむ、読んでもさっぱりわからない記事だ。そもそも、バイオオーギュメンテーションという言葉を聞くのが初めてだから仕方ない。バイオレメディエーションは聞いたことがあるのだが。。

環境省のサイトに、この会議の資料が公表されている。主旨としては、微生物を用いた環境浄化技術の発展に伴い、ヒトや主要な動植物への影響が(たとえ遺伝子非組み換えであっても)懸念されるので、指針を作製したい、ということのようだ。

さて、バイオレメディエーション技術については、山科さんという方が個人で運営されている、環境バイオネットというサイトで非常に充実した資料がみつかった。バイオレメディエーションについてバイオレメディエーションプロセス

ここで、3つの用語が出てくる。せっかくの機会なので、お勉強しておこう。
 ・バイオレメディエーション bioremediation 微生物による環境修復技術全般を指す言葉。 remediation =修復・改善
 ・バイオスティミュレーション biostimulation 環境中の微生物に空気や栄養源或いは有機物を人為的に供給して浄化する手法。 stimulation =刺激・興奮
 ・バイオオーギュメンテーション bioaugmentation 汚染の浄化に効率的な微生物を人為的に導入して浄化する方法。 augmentation =増加・増大 (豊胸手術は breast augmentation というらしい)

時々、工場跡地などで土壌汚染が問題になるけれど、このバイオレメディエーションは正にそういう時が出番となる。本来は汚染しなければ、こんな浄化技術は不要だろうけど、現実には今後ますます需要が伸びると考えられており、だからこそ経済産業省が関係しているわけだ。

環境省の資料などを見ると、生物による有機物の分解というのは想像以上に速度が速く、1か月程度の時間で大部分が分解してしまう程度のようだ。(もちろん、物質やその濃度によって違うのだけど。) コストについてはよくわからないけど、確かに面白い技術だ。浄化を終えた後、その生物たちはどうなるの? なんてことも、今回の指針で議論される内容なのかな?

生物浄化なので、対象となる汚染は有機物に限るのかと思いきや、重金属でも可能性なのだそうだ。上記サイトでは、6価クロムを3価に還元して水酸化クロム(III)にする細菌や水銀を気化させる菌や、他にも金属濃縮能力を利用する方法等について紹介している。

また、農薬やPCB、ダイオキシン類等のように、大半の生物には有害そうで、しかも人工的に合成された物質であっても、世の中にはしっかりと分解してしまう生物がいるというのも、よく考えてみるとすごいことだ。もちろん効率よく分解するには、遺伝子組み換えが必要かもしれないが。。

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2004/04/26

17年ゼミ 食べるのかよ?

最近、ところどころで聞いていた話だけど、今年はアメリカで17年ゼミの大発生の年なのだそうだ。YOMIURI ON-LINE(4/26)の記事、脅威!?米東部で「17年ゼミ」大発生…食の楽しみもから。

 17年に1度だけ地上に出現し、ほかの年には姿を見せない不思議な「17年ゼミ」の羽化が、ワシントン近郊やニューヨーク州などの米東部で、5月から本格化するからだ。セミがエアコンなどを詰まらせたり、果樹などへの被害も予想され、今夏の米国は蝉(せみ)時雨ならぬセミ軍団に襲われそうだ。

 農務省昆虫分類研究所とメリーランド州当局者は、首都に近い同州モントゴメリー郡で25日までに、今年初めての周期ゼミの羽化が確認されたことを明らかにした。オハイオ州のマウント・セント・ジョセフ大は、今年の発生状況について、同州シンシナティ近郊だけで約50億匹以上の17年ゼミが押し寄せると試算している。
(中略)
 ワシントン・ジョージタウンのホテルでは、この時期に、セミを避けて屋内のラウンジに駆け込んだ人に「17年ゼミ・カクテル」と名付けた食前酒をサービスする。ワシントンなどの複数のレストランでは、羽化したての軟らかいセミをソフトシェル・クラブ(脱皮ガニ)のように揚げる伝統のセミ料理を、期間限定で提供するという。また、セミの歌声を聞きながらの野外コンサートや、博物館のセミ展も予定されている。
(中略)
 ◆周期ゼミ=米東部には、毎年羽化する日本などのセミと違い、17年か13年に1度だけまとまって羽化する「周期ゼミ」が生息している。羽化する年や生息範囲の違いで15の群に分けられ、今夏に羽化を迎える3つの種を「ブルード・テン(第10群)」(学名Magicicada)と呼んでいる。全長約4―5センチと最も大きく、生息域も最大の15州にまたがり、血のように赤い目を持つ。

50億匹というのはどんな様子なのだろう? このセミの写真は これ、ごく普通のセミだな。アメリカでは、結構大騒ぎになっているようだ。例えば、 Cicada Mania は、いろいろなニュースや情報へのリンクも豊富。

さて、周期ゼミのことについては、そのものズバリ、米国周期ゼミの部屋なんてサイトで勉強できる。何故17年とか13年といった素数の年間隔で大発生するのか?の説明がされているが、環境の変化と進化との関係や捕食者との関係など、なかなか興味深い話だ。かのグールドも「ダーウィン以来」(bk1amazon)という本で、このセミの話を取り扱っているようだ。

ところで、読売新聞の記事にセミを食べる話が載っているが、本当かな?と思いきや、ここなどの情報から見ると、本当にピザにトッピングしたりしてそうだ。セミではないけど、教育目的と称して昆虫食品なんてのを売っているところを見ると、意外とアメリカ人はこういう食物が平気なのかもしれない。

もっとも日本でも、虫食文化研究会なんてのがあって、様々な虫を調理して食べ、そのレポート、虫食文化通信なんてのを出している。昆虫は栄養豊富なのだそうだが、でもこれ、やっぱりかなり気持ち悪い。

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2004/04/25

「ウォーター・ビジネス」

水に関する本についての記事は、2/24の「水の環境戦略」2/27の「水と健康」に続いて3回目だが、以前の2冊が主として日本の飲料水に関する問題を主に人の健康という面から見たものであるのに対して、この本は世界で水(特に飲料水)を巡って起こっているビジネスの動きを中心に書かれたもののようだ。

岩波新書 878
 ウォーター・ビジネス
 中村 靖彦 著 bk1amazon

この本について、Webで読める記事としては、岩波書店の紹介記事や ViVa!ブックレビューの書評などがある。

山梨県のミネラルウォーター工場から始まり、アメリカ、フランス、中国の状況の取材を経て、最後は富山県の海洋深層水の話に終わるという具合に、取り扱う範囲は非常に幅広い。基本的に、元NHK解説委員という著者の経験を生かした、取材を中心としたドキュメンタリータッチの本という感じ。そのためか(岩波新書にしては)個々の話題に関しての突込み(特に科学的な視点からの)が足りないような印象が残る。

いわゆるミネラルウォーターを飲む習慣というのは、ヨーロッパからアメリカ、日本と広まってきたようだ。フランスでも50年前にはミネラルウォーターは薬局で売っているような貴重なものだったらしい。今では大手企業が世界の覇権を賭けて水源を奪い合うような状況になっているようで、ペリエ、ヴィッテル、コントレックスなどはネスレグループの、エビアン、ヴォルビックなどはダノングループのブランドなのだそうだ。

アメリカでは、地下水を大量に汲み上げることで、農業用の地下水が減っていく問題や、地上の湖の水位が下がることによる環境問題が顕在化し始めているようだ。中国では北京を始めとする北では水不足が深刻な状況となっており、比較的水の豊富な南から何本かの巨大運河で水を送り込むという大工事、「南水北調」が始まっているという。

世界を見渡せば、飲み水についても、農業・畜産用の水についても、今も不足している地方はたくさんあるし、今後益々厳しい状況となる地方も多い。しかし、ビジネスとして水を売っている大手の企業は、水を購入する能力のない貧困地帯には、どんなに多量の需要があっても水を供給することはないだろう。

一方で、日本は多くの食料を輸入しているが、その食料である穀物や肉などは、それぞれの原産国でたくさんの水を使って育てられたものであり、結果として日本は食料という形で多量の水を輸入しているとも言える。そういった食材を使って作った食事は、実に多量の水を使って作ったと見なすことができ、例えば牛丼一杯に水2トン、ハンバーガー1個に水1トンという計算になるのだそうだ。

結局、本書でも最後は「水は誰のものか?」という問いを発する。公共のものと考えるのか、ではその公共とはどのレベルで考えるのか? 元々天からの授かり物のようなものだが、世界的に見ると、とても不公平に配分され、お金でやり取りされている、様々な資源の一つとも言える。

ただ、本書では余り深く突っ込んでいないけど、水は地球規模で循環をし続けているわけで、川を流れている水は使わなければ、海に流れていってしまうものだし、日本で蒸発した水だって、回りまわって地球のどこかに雨として降り落ちるものであるという側面もある。(牛丼一杯が海外の水2トンを消費して作られたという側面はあるにしても、その2トンの水のほとんどは日本に運ばれたわけではなく、それぞれの国で蒸発したり、地下に浸透したり、廃水になったりしているはずだ。)

そういう意味では、単に降水量をベースに資源量と考えるのは、ちょっと違うと思う。一度使った水を、次にまた使うというような、多段階に有効に使うやり方や、世界的に見れば、使われずに海に流れている河川水を如何に有効に使うか、といったような様々な方法を考える必要がありそうだ。この本では触れられていないが、将来的には海水の淡水化ということになるのかな? そうなると水問題はエネルギー問題にもつながる訳だな。。

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2004/04/24

ビュッフェは食べ放題?

Sankei Web(4/24)の記事。

ビュッフェ形式なのに…ローストビーフ食べ過ぎ、追い出される
 米ユタ州にあるビュッフェ形式のレストランで、客の夫婦が「ローストビーフの食べ過ぎ」を理由に追い出された。

 この夫婦は、パンなど炭水化物の摂取を抑える一方で肉類は制限しない「低炭水化物ダイエット」を実践。この日、夫が12枚目のローストビーフを取ろうとしたところ「待った」がかかった。

 夫婦は「食べ放題のはずだ」と料金の払い戻しを求めたが、店側は「ビュッフェ形式は食事のスタイルの一つにすぎず、『食べ放題』と言った覚えはない」と突っぱねた。(AP)

ビュッフェ形式ってのは、いわゆるバイキング式の食事と同義で、食べ放題だと思っていた。そういえば最近はバイキングとはあまり言わなくなったような気もする。

元記事を探してみると、例えばオーストラリアのTHE AGEで見つかった。この記事だと、レストランの名前はもちろん、このカップルの氏名まで載っている。この程度の事件で氏名を公表されちゃうのも大変だ。それにしても、食べ放題じゃないなら金返せってのも、しっかり食べておいてよく言うよな。

ビュッフェのマナーについては、フランス・ツーリズム旅行情報局から朝食、ビュッフェなどを見ると、これはフランスの例だけど、やっぱりビュッフェは食べ放題ではない、って書いてるし、それ以外にも今まで意外とみっともないことをやってしまってたようだ。。 

食べ放題のことは、"all-you-can-eat establishment"と言うらしい。バイキングの語源や"all you can eat"の蘊蓄については、名古屋大学太陽地球環境研究所の上出所長のちょっと変わったエッセイ、All you can eat の科学-入門(pdf版)なんてどうだろう? これによるとバイキングというのは1959年に帝国ホテルのレストランで初めて使われた用語のようだが、そんなことより、all you can eat は基本的人権の一つだ!というのが楽しい。

それにしても、低炭水化物ダイエット(low-carb diet)って、炭水化物を取らなきゃ肉はいくら食べてもいいのだろうか? このニュースの主がやっていたのは、Atkins Diet という奴で、最近アメリカでパンなしのハンバーガーが売り出されているのも、この流れのようだ。試しに「アトキンスダイエット」でインターネット検索すると山ほどヒットするように、日本でも流行するかな? ご飯なしのおにぎりとかお寿司なんてパッとせんけどな。

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2004/04/23

黄砂が増加

やや話題としてはタイミングを失しているが、備忘録として残しておこう。(ネタ切れとも言う?)

EICネットの4/19の記事。北東アジア地域からの黄砂、増加傾向に

北東アジア地域からの黄砂、増加傾向に
 世界環境大臣フォーラム及び第8回UNEP管理理事会特別会合の会場で、北東アジア地域からの黄砂が、1950年代と比較して5倍近くになっていることが明らかにされた。黄砂は、中国北部やモンゴルの乾燥地域で発生するが、朝鮮半島や日本にも達して、年々ひどくなってきている。黄砂によって、通信障害、呼吸器系疾患の増加や、農作物及び家畜への被害等の問題も生じている。韓国の大学及び研究機関の研究者は、大気中の煤などの汚染物質と、黄砂が混ざることを懸念している。
50年前に比べて5倍に増加というのは、予想外にすごい増加と言えそうだ。国連のニュースリリースはこちら。黄砂の増加の原因については、
In China nearly 30 percent of its land area is affected by desertification due to over farming and grazing and cutting of forest, driven by population growth, and changing weather patterns, with annual direct economic losses of around US$6500 million.
と書かれており、人為的なものと考えて良さそうだ。被害額の推定値も載っているが、どんどん増加しているとすると、問題は深刻だ。

黄砂というと、日本では歌のタイトルにもなるくらいで、何となくエキゾチックで、東日本の人にとっては年に何度か春先にやってくるお客さんというイメージだけど、西日本などではかなり深刻な問題になっているようだ。(例えば、GIS NEXT EXPRESSのニュース等。)

まして発生源に近い中国や韓国では、更に激しい被害を及ぼすようで、中国では沙塵暴と呼んで、気象災害の一種と位置づけられているし、韓国でも学校が休みになったりしているようだ。

黄砂についての一般的な解説としては、長崎県衛生公害研究所のページがわかりやすい。

黄砂の地球規模での影響はなかなか複雑で、例えば、畠山 史郎さんの「酸性雨 誰が森林を傷めているのか?」(bk1amazon)に、

 環境化学的に見ると黄砂には二つの側面があって、一つは黄砂粒子が中国で放出された酸性物質を吸着し日本まで運んで来るという側面である。もう一つはアルカリ成分を含む黄砂が酸性物質を中和するという側面である。(p.155)
とあるが、更には黄砂が太陽光を遮ることによる寒冷化効果もあったり、3/4のブログで書いたように、アジアからの黄砂が太平洋に落ちて、これが海洋光合成に寄与しているのではないか? という話もある。

なお、気象庁の黄砂情報のページでは、ほぼリアルタイムで黄砂実況図と予想図が見られる。

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2004/04/22

かぐや姫マウス

単為生殖という言葉が今日の新聞各紙に載った。最近はクローンの話は結構ポピュラーになったけど、単為生殖って何だ?状態なので、ちょっと新聞を読んでもなかなか理解が難しい。ということで、今日は消化不良気味なので情報の羅列で終わってしまいそう。

NIKKEI NET 卵子だけでマウス誕生・東京農大など
MSN-Mainichi INTERACTIVE 卵子だけでマウス誕生 東農大、ほ乳類で世界初
asahi.com マウス妊娠にオス不要? 卵子2つでメス誕生 東京農大
YOMIURI ON-LINE 卵子だけでのマウス誕生に成功…東農大チーム

各紙の説明はそれぞれ少しずつ切り口が違うので、全部読んでようやく全体像が見えてくる。でも、英語のニュースの方が、やっぱり詳しいんだな。例えば National Geographic News 。日本語では「刷り込み」というのが "inprinting" なんだろうな。大人のマウスの卵子からではうまくいかないこと、及びその理由、遺伝子操作をするというよりも化学的な処理を施すらしいこと、それやこれやでそのまま人間に適用するのは到底無理らしいことなどがわかる。

この記事のマウスの写真、何だかよくわからなかったけど、よく見ると竹の中に入っているのね、ふーむ、かぐや姫だからか。。外人にはさっぱりわからないだろうな。

Natureの論文の概要はこちら。Nature Science Updateの 記事 も参考になる。

個体の発生の詳細については、生命科学Cの個体の発生と分化Ⅰあたりから勉強すると良いのかな? ちょっと専門的だけど、絵も多くて眺めているだけで楽しいかも。 (マウスの単為生殖実験については何となくわかったけど、細かな点では疑問でいっぱい状態だし、このページあたりをベースにもっと基礎からの勉強が必要だなこれは。。)

*読売の説明の中で、「アリやミツバチは単為発生でオス」って書いてるけど、単為生殖ってメスしかできないんじゃないの? と思って ゲノムインプリンティングとは?を探してきて読んでみると、ふーんそうなの、という感じだけど、ややこしい例を持ってきたもんだ。

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2004/04/21

超リアルなプラネタリウム

ITmediaニュース(4/21) 恒星500万個の新プラネ「メガスター」、日本科学未来館に登場という記事。

 日本科学未来館(東京都江東区)と、プラネタリウム「メガスター」の開発者・大平貴之氏は4月21日、約500万個と世界最多の恒星を映し出せるプラネタリウム「MEGASTAR-II cosmos」を共同開発したと発表した。7月11日から同館内の全天周映像シアター「ドームシアターガイア」で公開、常設上映する。
500万個がどの程度すごいのか、よくわからないけど、世界最高でギネスブック申請中とのこと。調べてみると、このメガスターというプラネタリウムは知る人は皆知っていると言う(?)有名なものらしい。それにしても、この世界一のプラネタリウムを開発したのが大平さんという一個人だというのがすごい。日本科学未来館のニュースリリースには、スペック等が載っている。

大平さんのホームページスーパーリアル・プラネタリウムを読むと、このプラネタリウムのすごさと共に、この人のすごさが伝わってくる。

大平さんの記事は、日経BPエキスパートの大平さんのインタビューや NIYONIYOのインタビューで読むことができるが、確かにマスコミが取り上げたくなる話だ。

さて、このメガスターのすごい所は、星の数そのものよりも、何と言っても星空のリアルさにあるようだ。通常のプラネタリウムは肉眼で見える限界の6等級あるいは7等級の星までを映し出す。天の川は一つ一つの星を再現するのでなく、光のもやもやを映すことでそれらしく見せているのだそうだ。

しかし新しいメガスターは何と12等級までの星を映し出す。天の川も肉眼では見えない星を一つひとつ正確に再現している。だから星の数が数百万個になってしまう。

ところが肉眼でメガスターが映し出すプラネタリウムを見ても、やっぱり6等級程度の星までしか見えないらしい。(もし全部が見えたら夜空がほとんど真っ白になってしまうだろう。) 目には見えないけど、実際には存在する星を正確に投影することで、星空の「奥行き」が再現され、天の川も本当にリアルに見えるんだとか。なるほどねぇ。(でも大平さんのサイトでこの原理をCDオーディオのサンプリング周波数に例えていたけど、これは少し違うと思うんだけど?)

結果として、従来のプラネタリウムとは全然次元の違うリアリティを持つ世界のようだ。目が慣れてくると、徐々に見えてくる星が増えてきたり、双眼鏡を使うとより多くの星が見えるというから、本当にリアルなんだろうなあ。

今では手の込んだCGで何でもリアルに再現できそうだけど、この世界ではまだまだ機械的なプラネタリウムにはかなわないような気がする。(実際デジタルプラネタリウムというのもあるようだ。)

おまけに、このメガスターは軽量でコンパクト。簡単に移動できるので、全国あちこちで移動公演をしているらしい。考えてみると、もう何十年もプラネタリウムを見ていないけど、これは是非一度見に行かなくてはという気にさせてくれる。

*参考サイト
日本プラネタリウム協会ホームページ
プラネタリウムのホームページリンク

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2004/04/20

骨まで食べられる魚

NIKKEI NET(4/19)の記事。

ニチレイ、骨まで食べられる冷凍魚を販売
 ニチレイは骨まで食べられる冷凍魚の販売を始める。骨に含まれるカルシウムなどの栄養分を摂取できるのが特徴。市販のほか、病院食など業務用にも販売する。今月中に試験的に発売し、8月から本格的に販売して初年度10億円、3年後に50億円の売上高を目指す。

 現在は外部への委託で月間生産能力は30トンだが、生産子会社の小名浜マルイチ加工(福島県いわき市)に約1億円を投じて月産70トンの設備を導入、8月から稼働させる。

 骨ごと食べられる魚は既にマルハが今月から販売している。あらかじめ骨を除いた「骨なし魚」と並び、水産物需要回復のきっかけとして期待が高まっている。

他の記事によると、当面はサバとカレイから始め、順次、太刀魚、アジ、サンマ、イワシなども加えていく方針らしい。値段は1尾 200~250円程度。ニチレイの「骨まで丸ごとシリーズ」のニュースリリースはこちら。発売前から既に問い合わせが殺到とか。。

ニュースでは、既にマルハが販売しているとあるが、マルハの「骨までおいしい魚」のニュースリリースはこちら(pdf版)。これについては、日経産業新聞の特集記事、ヒットの予感が読める。

食べやすい、安全(老人・子ども等)、手軽、ゴミが出ない、栄養が豊富、と結構いいことだらけみたいだけど、難を言えば、値段が高いことや、味付けや調理法にバリエーションが乏しいということだろうか。

各社、食感、香りや味を通常の魚料理に近づけるために技術的に苦労しているようだけど、逆に従来の魚料理とは全く異なる新たな食品という捉え方のものもあっていいのかもしれない。(子どもの時から、魚料理は全部これだけで育ってしまうと、大人になって大変なことになるかもしれないけど。。)

インターネットを検索してみると、他にも骨ごと食べられる魚加工食品を売っているところはいくつかみつかる。例えば、埼玉県の(株)鯉平の骨までやわらか事業の鯉や、広島県の(有)鮮魚うちうら骨○シリーズの鯛や太刀魚やアジなどがある。うーむ、鯉を頭から丸ごと食べられるというのも、ちょっと違和感があるなあ。それにしても、アジサンドはどんなもんだろうか?

健康志向とお手軽志向から考えると、一般家庭でも結構ヒットするんじゃないかと思える。多分、いろんなメーカーが多種多様なバリエーションで参入してくるような気がするし。個人的には興味しんしんだけど、どうだろう?

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2004/04/19

温暖化対策税そろそろ出番か?

環境省のサイトの新着情報から。中央環境審議会・総合政策・地球環境合同部会施策総合企画小委員会 第5回議事次第・資料 という長いタイトル。

地球温暖化防止のための二酸化炭素排出削減に関して、温暖化対策税制のあり方の議論を行った際に関係団体が提示した資料が掲載されている。温暖化対策税は、一般的には環境税と呼ばれ、もっと直接的には炭素税といわれているものと同義。

今回の会議の議事録はいずれ出てくるのだろうけど、関連する会議の資料や議事録は、こちらのページにまとめられている。もう2年半も議論が続いているようだ。少しだけ見てみたが、結構充実した資料集となっている。

温室効果ガスの排出削減については、京都議定書と呼ばれている以上、アメリカが離脱しようが、いつ発効するか不明であろうが、日本は自らに課した目標を達成できないと、相当に格好悪いことになるのは目に見えている。(色んな事情があるにせよ、ヨーロッパは目標達成しそうだし。)

各分野毎の省エネルギー推進については、同じく環境省の地球温暖化対策技術検討会の 平成16年第1回資料 によると、それぞれの分野の現状分析と目指すべき方向性について検討されている。しかしながら、定量的な目標は明確ではないし、それぞれの部門が対策を進めた結果として、日本全体としてどうなるのか? についても言及されていないようだ。

既に現状は、当初の環境省の目論見とは大きく変わってしまっており、MSN-Mainichi INTERACTIVE(4/16)の記事によると、

温室効果ガス:2010年で最大4.6%増加 環境省試算
 環境省は2010年の温室効果ガスの排出量を90年比で最大4.6%増加と試算し、16日の中央環境審議会地球環境部会に報告した。京都議定書では温室効果ガスの排出量を08~12年に90年比で6%削減を目標としており、このままでは達成は厳しい見通しとなった。

 試算は、日本エネルギー経済研究所と日本経団連の自主行動計画による生産予測に基づき2通り出した。その結果、温室効果ガスの10年の排出量は12億8586万~9173万トンになると予測。基準年の90年の12億3532万トンに比べ4.1~4.6%増える見通しとなった。

 温室効果ガスの増加は、エネルギー消費によって発生する二酸化炭素(CO2)の増加が原因だ。各部門の増減は、事務所やコンビニエンスストアなどの「業務部門」が28.3%増▽「家庭部門」21.2%増▽「運輸部門」19.2%増▽工場などの「産業部門」3.1~4.4%減(いずれも90年比)--としている。

 02年決定の政府の地球温暖化対策推進大綱は、京都議定書の目標達成のため原発の増設、新エネルギーへの転換、各部門での省エネ対策の強化、代替フロンの抑制などを掲げた。試算はこうした対策が実行された場合を想定した。今後、経済産業省や国土交通省など関係省庁が出す推計データに基づいて精度を高め、京都議定書の目標達成に必要な追加対策を講じる。

という具合で、どう見たって自主的な取り組みだけでは到底達成不可能な状況になっている。

となれば、やはり規制的な措置を持ち込むしかないのではなかろうか? 環境税の効果を経済学的に理解するには、4/13 に紹介した Webラーニングプラザの講座がよさそうだ。(分野別教材/環境/環境概論-環境と調和した化学コース/「環境問題の解決と環境税の機能」)

環境税関係のリンク集としては、例えば広島大学地球資源論研究室の 環境税関連リンク集 がある。

冒頭に紹介した環境省のページには、炭素税導入推進側として炭素税研究会(JACSESホームページ)、反対派として日本物流団体連合会の資料が載っている。

推進派の主張は、かなりきめ細かなケーススタディや様々な分野に対するアセスメントがなされており、反対派の意見に対してもひとつひとつ議論していく姿勢が見えるのに対し、反対派の主張はやや定性的であり、更には自分たちの不利益を語るだけで全体像を語ることができていないきらいがある点で、この二つを見ると推進派の勝ちに見える。とは言え、環境税を導入するにしても、影響する範囲が極めて広いので、その具体的な中身や実施方法等、なかなか難しい問題が山積してそうだ。最後は政治判断だろうけど。。

しかし環境税問題は、こんなに長い期間議論してきている割には、あまりにも表舞台に出てきていない。消費税や年金問題も大事だけど、地球の問題、国際問題としての温室効果ガス問題をもっと議論してもいいのではないだろうか? (環境省の力が弱いんだろうなぁ?)

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2004/04/18

ボトルtoボトルリサイクルする?

3/26のブログの続き。

さて、帝人やペットリバースの技術(「ボトルtoボトル」とか「ケミカルリサイクル」とか呼ばれている)によって、ついにペットボトルは、化学的な処理をされた後に、再びペットボトルにリサイクルされて、何度でも循環使用されるようになる。確かにとても良い印象を与える技術かもしれない。

しかしながら、ペットボトルリサイクルを巡っては、色々と問題もあるようだ。例えば、asahi.com be on Saturday(2004/01/24)の特集記事、仕組み充実。でも「原料不足」に業者悲鳴 ペットボトル再生の謎、はペットボトルのリサイクルに関連して、主としてペットボトルを回収する際の問題点に焦点を当てている。そもそもの法律が抱える問題点が、様々な歪を生み出していると言えそうだ。

自分の身の回りを見渡してみてもすぐに気付くが、ここ数年のペットボトルの増え方は驚くべきペースだ。PETボトルリサイクル推進協議会のホームページには、種々の統計データが載っているが、これを見ても、ペットボトルのリサイクル率は上昇しているものの、生産量もどんどん増えており、廃棄される量は、ほとんど減っていないと考えられる。

それとは別次元の、より本質的な問題点として、回収したペットボトルを化学的に分解して元々の原料化合物まで戻し、それを再びボトルにするのは、如何にも手間が掛かるし、効率が悪そうだ。石油原料から作るよりは、省資源、省エネルギーでCO2排出も少ない、と言うけれど本当のところはどうなんだ?

帝人がLCAに関するニュースリリースで公表したデータによると、石油資源から作るのに比べて、エネルギー消費が84%減、CO2排出が77%削減とあり、大幅に環境負荷が削減されるように書かれている。しかし(恐らく同じ技術について)NEDOが行った評価では、エネルギー消費は3割減となっており、数値は大きく異なっているけど、どうしてだろう?

一方、ペットリバースが採用したアイエス法の消費エネルギーについては、約半分という日経BPの記事が出ているが、あくまでもこれはメーカー側の言い値だ。

この辺の事情について、飲料容器のLCAにも詳しい国連大学の安井さんは、環境問題の変質2の中で、帝人のLCA評価を「余りにも自分たちに有利なシナリオになっている」と指摘している。ただし、具体的なデータをまな板に載せて議論しているわけではないので、我々は判断のしようがない。。

まあ、メーカーの数値は話半分程度と受け止めるとしても、石油資源から製造するよりはケミカルリサイクルの方が、多少とも省資源・省エネルギーだと言えるのだろう。しかし、他の選択肢はないのか? ということは考えるべきだろう。

環境文明研究所の加藤さんは、プレジデント誌の特集で、リサイクルも良いが、リターナブル瓶の採用やデポジット制の導入を考えることを勧めている。

安井さんのサイトでペットボトルに関係する記事は結構多く、
 PETのリターナブル化と飲料容器LCA 1999/05/01
 飲料容器環境負荷比較その1 1999/12/19
 飲料容器環境負荷比較その2 1999/12/26
 ペットボトルはやはりやめよう 2000/02/20
 ペットボトルのリサイクル 2002/10/27
 リサイクル直感教材2 2003/02/01
 容器包装リサイクルの政策評価 2003/02/16
といったものが見つかる。基本的には、リサイクルのループはできるだけ短く、直前に戻すのが有利ということで、化学原料まで戻してしまうリサイクルは、やらないよりマシかもしれないが、最も効率の悪いリサイクルと言えそうだ。

もっとも、メーカー側としても、ペットボトルのリユースが増えると、当然ボトル用のペット樹脂や新たなペットボトルの生産量は減ってしまうことになり、それはそれで困ることになるわけだ。生き残りのための次善策としてケミカルリサイクルに目を付けて、技術開発に成功したことには素直に感心するが、この技術が環境にやさしい決定的なものであるかのように主張することは控えた方が良いのではないだろうか? これを免罪符にして、大量生産・大量消費に拍車が掛かるのでは、どう見たって本末転倒だ。

*ペットボトルのLCAについては、LCAお役立ち情報 CRESTにも、関連情報へのリンクがある。ただし、ケミカルリサイクルによるボトルtoボトルについては触れられていないようだ。

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2004/04/17

「ロケットと深海艇の挑戦者」

シリーズ「メタルカラーの時代」は、週刊ポストに連載された記事をまとめて、ハードカバー版で出版されてきているが、その文庫版は第5巻が1998年に出版された後、何故か発行が止まっていた。どうやら今回シリーズ再開のようだ。今回の宇宙と深海探査に関する話を集めた第6巻に続き、今後第12巻までの発行予定も発表されている。

小学館文庫
 文庫版 メタルカラーの時代 6
 ロケットと深海艇の挑戦者
 山根 一眞 著 bk1amazon

この文庫版「メタルカラーの時代」シリーズは、ちょっとした時間で一話ずつ読めるし、色んな技術分野の最先端や内輪話がわかりやすく書かれているので、5巻まで欠かさずに読んでいた。ようやくシリーズ再開ということで早速読んでみたのだが、この間にTVで「プロジェクトX」が有名になり、ちょっと切り口は違うけど日垣隆さんの「サイエンス・サイトーク」なんていうシリーズも出てきたので、正直に言って、やや色褪せたというか古さを感じてしまった。

内容的にも文庫版の出版が遅れているうちに、時代遅れになってしまったというか、鮮度が落ちてしまったみたいだ。特にタイミングが悪いなあと思ったのは、H-II ロケット開発の話が続くのだけど、この前のH-IIA ロケットの打ち上げ失敗が非難された後に読むと、何だか素直に感動できなかったりするわけだ。

しかし、このシリーズが長続きしているのも頷けるものがある。山根さんのインタビューは一種不思議な雰囲気で、対談の途中で山根さんが口を挟むのは、大抵とても短い言葉だけだし、本当にわかっているのか? と思いきや、とても鋭いような的外れのような変な比喩を繰り出してみたりする。でも、その結果として、技術者の皆さんがその当時を思い出しながら、素人さんにわかってもらえるように気を使いながら、とても気持ちよく語っているなあという印象。

「プロジェクトX」も、このシリーズを相当に意識して作られているようだけど、一技術者として見ると、やや大げさなドラマが必ずあるし、時にお涙頂戴になってしまって、素直に見られなかったりする。その点「メタルカラーの時代」のある種の軽さの方が好感が持てる。

淡々とした軽さと共に、読んでいるこちら側もいつの間にか、ロケットエンジンの色々だとか、レーザージャイロ慣性航法装置だとかの様々な先端技術の中身に触れ、何となくわかったような気にさせてくれる。このシリーズは、「プロジェクトX」よりは、(人間よりも)技術側に重心を置いていると言えるのかもしれない。

本書のテーマである宇宙開発と深海探査については、その学問的位置付けと共に社会的な位置付けについても色々と議論がある。本書では敢えてそういう点には踏み込まずに、純粋に現場の苦労や喜びに焦点を当てているように見える。しかしながら、本書の対談が行われたのが10年~4年前であり、個々のインタビューには、その時代の背景が反映されているとも言えるわけで、そういう目で読むと、当時はまだ良かったというか、逆説的だけど、何だか今は先端科学技術にとっても閉塞的な時代なのかな、という気がしてくる。たまには週刊誌に連載されている生の対談も読むべきかな?

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2004/04/16

三種の神器:食器洗い乾燥機

一昨日昨日に続き、白物家電・三種の神器の三つ目、食器洗い乾燥機について。

例によって、まずは松下電器産業のニュースリリースから。技術的に進歩した、という宣伝だけど、逆に言うとまだまだ発展途上の製品という印象もある。需要動向のところに

デフレ経済の中でさまざまな家電製品の需要が低迷していますが、食器洗い乾燥機は毎年2桁成長を遂げている数少ない家電製品のひとつです。それは有職主婦の増加や高齢社会の到来で、衛生志向・家事の合理化志向が高まっているとともに、手洗いに比べて大幅に節水できることが支持されている要因です。
と書かれているが、今年の総需要は100万台を越え、普及率も16%という予想のようだ。家電の場合、一般的には普及率が10%を越えると急激に需要が拡大すると言われているから、そのレベルに来ているのか? でも、この表の普及率と台数の関係がおかしくないか? 日本の世帯数は4千数百万だから、10%普及すると4百万台以上の筈だが。。

さて、製品紹介を読むと、やはりメリットとしては、手洗いに比べて圧倒的な節水効果を強調している。1回の洗浄で、手洗いが約150Lの水を使うのに対し、機械では11Lで済むのだそうだ。構造や仕組みがよくわからなかったのが、Q&Aを読むと大体理解できる。洗浄・すすぎ(数回)・乾燥の各段階に分かれていて、洗濯乾燥機と動作イメージは似ている。効果については、ランニングコストが、手洗いで年間 112,700円に対して食器洗い乾燥機だと 31,700円と安いだけでなく、CO2発生量は55.3%削減されると書かれているが、計算前提や詳細データは見当たらない。

電機工業会の解説食器洗い乾燥機の上手な使い方だと、節水の程度は手洗いの1/5と書かれているが、省エネのために、ちょっとした工夫をすることを薦めている。

All About Japan でコスト徹底比較!食洗機vs手洗いという特集があるが、環境負荷では圧倒的に食器洗い機が有利という結果が出ている。

国民生活センターのテストは1998年と古いものしか見当たらなかった。コメントの中に「手洗いと比べた場合、食器洗い乾燥機は人手がかからないが洗浄性では劣っており、環境性という点では使用水量は少なく、炭酸ガス排出量は多めという特徴を持っていた。」という記述があるが、データは見当たらなかった。

LCAについては、伊藤健司さんのエコちゃんとトークのサイトにて詳細な調査結果が公表されている。結果は、水の使用量は確かに食器洗い乾燥機が優れているが、それ以外の環境負荷は手洗いが優れており、総合評価も手洗いが上。ただし、手洗い時の水の使用量や食器洗い乾燥機の進歩によって逆転の可能性あり、というもの。

それにしても、ここでの水使用量の前提は、手洗い:31L、食器洗い乾燥機:5L であり、冒頭の松下の広告の使用量(手洗い:140L、食器洗い乾燥機:11L)とは大違い。どうなってるんだ?? 伊藤さんのサイトでもこの点は気になったようで、わずか8人だけどアンケート結果に従って使用量を見積もっている。メーカーの採用している数値は、相当に自分たちに有利な前提となっているようだ。。

他にRUPISUの環境志向のページでも食器洗い機と手洗いを体験的に詳細に比較していて、大変面白い。結論はほぼ一緒だけど、ここでは少しでも効率的に洗浄するためのアイデアも紹介されている。

*こういうデータに対するメーカーからのきちんとした反論のようなものはみつからなかった。言われっぱなしということは、認めたってことになりかねないけど。。(少なくともメーカー側も、これと同等程度に詳細なデータを示す必要はあるのでは?)

*温風乾燥せずに、ただの送風乾燥とか自然乾燥にすれば、経済的になりそう(冒頭の製品はヒーター容量は900Wだ!)だけど、駄目なのだろうか?


さて、松下さんの提唱する白物家電の三種の神器だが、それぞれ改良を加えて魅力あるものになっていることは理解できる。しかしこれらは、やっぱり誰もが数年後に使用するのが当然、というようなものでもなく、個々のライフスタイルや置かれている状況に応じて選択されるべきもののように思える。

ただ、いずれの製品でもメーカーの宣伝だけを一方的に信じるわけにはいかない、という大きな問題がありそうだ。今はこうやって、インターネットから様々な情報が比較的容易に手に入るのだし、ユーザー側がきちんと情報を入手して判断することも可能ではある。でも、やっぱりメーカーがメリットもデメリットも正直に全部出して、その上で顧客の判断をあおぐような姿勢があってもいいと思うのだけど。

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2004/04/15

三種の神器:IHクッキングヒーター

昨日の続き。今日はIHクッキングヒーターのお勉強をしようと思う。

まずは、松下電器産業のニュースリリース。うーむ、従来のIHクッキングヒーターと比較しての改良点を結構詳しく説明してくれてるんだけど、僕には、ちんぷんかんぷんだ。これは、IHクッキングヒーターって何だっけ? というところから勉強しないと駄目だな。

松下のIHクッキングヒーターの説明はこちら。効率もランニングコストもガスと同等以上らしい。コストについては、関西電力のページでも似たような数値になっているようだ。

より一般的知識は、電機工業会の解説IHクッキングヒータ 使いこなし知っとくガイドで得られる。この辺まで読むと、IHクッキングヒーターの基礎知識は大体OKかな。

さて、売り込み側の情報以外も見てみることにする。国民生活センターでのテスト結果はこちら。この記事は安全性の観点からのテストレポートで、注意事項を守らないと場合によっては危険だよ、ということらしい。

ライバルであるガス屋さんのコメントを読むと、他にもいろいろと欠点らしきものも出ている。

さて、環境への負荷という点ではどうだろう? IHヒーターの場合、電気から熱への変換効率は非常に高いようだし、コスト面でも有利のようだけど、もともとの発電効率まで考えて、トータルでどうか? ということになる。同じガス屋さんがまとめてくれたLCA資料がある。これは(財)地球環境産業技術研究機構(RITE)が2002年に発表した値のようだが、オリジナルデータはみつからなかった。他には日経エコロジーの2003年4月号で、安井さんが評価記事を書いているようだけど、これはWebでは読むことができない。

この計算は、電気のCO2排出原単位として火力発電を採用しているので、かなりガスに有利になってそうだけど、IHヒーターの方がCO2排出量が多いという結果になっている。最新式のIHヒーターは無駄な加熱を防ぐ工夫もされているようだし、実際には結構いい線行っているのかもしれない。

もっとも、ちょうど今日(4/15)環境省が家庭部門における省エネ技術導入の方向性(pdf)という資料を公開しているが、これによると、一般家庭の消費エネルギーのうち厨房用は6.5%に過ぎないので、ここでのCO2発生量に余り目くじら立てても仕方ないかも。。

むしろ、IH式ならではの長所短所と合わせて総合的に判断しなさいってことだろうな。(個人的には、土鍋が使えないのは悲しいけど、夏場にキッチンが暑くならないのと、メンテナンスが楽なのはありがたそうだ。)

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2004/04/14

三種の神器?:生ゴミ処理機

FujiSankei Business iの4/11の記事

白物家電にも「三種の神器」 松下が一挙に新製品
 松下電器産業は、キッチンに置く白物家電製品もデジタル家電のように「三種の神器」をキーワードにして成長分野へと変える販売戦略を展開することになった。これまで薄型テレビ、DVD(デジタル多用途ディスク)レコーダー、デジタルカメラの「デジタル三種の神器」ばかりが注目を集めてきたが白物家電も新しい使い方や独自技術で復活を目指す。具体的にはIH(電磁式)ヒーター、食器洗い乾燥機、生ごみ処理機を「キッチン三種の神器」と位置付け、13日に一挙に新製品を発表した。6月から順次売り出す。

 松下電器は、女性の社会進出が急増し共働き世帯が増えるなど、家事の負担を軽くする家電製品のニーズが大きいとみて開発に力を入れる。新技術によって、白物家電にこれまでにない利用方法や便利さをとり込み、国内やアジア各国のライバルメーカーに差をつける白物家電の新しいビジネスモデルを作り上げる考えだ。

 三種の神器は、どんな種類の鍋も使えるIHクッキングヒーター(本体希望小売価格31万5000-33万6000円)、独自の汚れ落とし機能をもつ食器洗い乾燥機(同14万4900-16万650円=キッチン組み込み型)、業界最小の設置面積の生ごみ処理機(店頭想定価格5万円)など。

台所まわりの「三種の神器」だそうだが、どれも利便性はともかく、何やら環境にやさしくないような印象を持つのは気のせいだろうか? 正直言ってよくわからないので、調べてみることにした。今回は、生ごみ処理機について。

松下電器産業の生ごみ処理機の紹介は商品カタログ 家庭用生ごみ処理機。要するに、生ごみをかき混ぜながら熱風乾燥して、減量化する装置。排気は脱臭触媒で処理をする、というものらしい。今回の新製品も、特に新たな技術を導入したというよりも、コンパクトで使いやすくしたということのようだ。

松下の生ごみ処理機についての特集サイトがnama53.net。使用者の声やバイオ処理方式と熱風乾燥方式の比較、堆肥としての使用の話、そして助成金の申請法などの情報が得られる。

関連電気メーカーが共同で運営している家庭用電気生ごみ処理機のサイトでも、各方式の比較や助成金の情報が得られる。でも、環境に対する負荷という点については書かれていない。

使う側からの情報としては、国民生活センターでの商品テスト結果がある。3年半前のレポートであり、商品は少しは改良されているかもしれないが、

生ごみ処理機は、使用者が手間とかなりのコストを負担し、エネルギーを使って生ごみの水分除去などにより生ごみを減量化するものである。このように処理したものが、堆肥として園芸や家庭菜園などに利用され、家庭内で生ごみが循環処理されることが望ましいが、可燃ごみとして出された場合、収集・運搬・焼却とさらにエネルギーとコストが消費されることとなり、環境にやさしい使い方とは言えないものとなる。
(中略)
生ごみ処理機を「台所の生ごみのにおいがなくなる」などのメリットで使用している人もいるが、エネルギーとコスト、手間をかけて、生ごみを家庭で堆肥化するなら良いが、可燃ごみとして処理することが本当にごみ問題の解決に寄与することになるか考えてはどうであろうか。
という厳しいコメントがある。

それにしても、ネットを調べると、生ごみ処理機に関する考察類がすごく多いことに驚く。例えば串本高校のごみ処理に関する考察は、とってもよく調べているし、よくまとまっている部類かな。ここの結論は、消費電力がごみ1kgあたり1.5kWh以下であれば、トータルとしては環境にやさしいと言えるというもの。大抵の装置はクリアしているようだ。

一方、LCAの専門家である、早稲田大学の中村愼一郎さんの家庭用生ごみ処理機は何のため?家庭用生ごみ処理機は何のため:後日談良い技術と駄目な技術は、読み応えがあるが、これによると、どうも結論が異なる。

少なくとも電気乾燥式の家庭用生ごみ処理機は、トータルのCO2排出量としてはむしろ通常の生ごみ収集焼却よりも悪化するという結果になっているし、自治体の見解としても、それでも環境意識の啓発の観点から助成金を出している、ってなニュアンスのようだ。

他には、EICネットのQ&Aにも、いろいろな資料へのリンクがあるが、結論はそんなに簡単ではなさそうだ。結局、生ごみを処理した残渣をどうするのか、或いはそれぞれの地区のごみや下水処理のやり方はどうなっているのか、等の状況によって結論が異なってきそうだ。(それでも各家庭ごとにこういう装置を設置するのがベストな方法とは思えないのだが。)

こういった情報を全部提示された上で、各自の事情や好みによって判断するのであれば良いのだが、未だにメーカーからは都合の良い話しか出てこないし、マスコミも無批判に宣伝の片棒担いじゃってるからなあ。。

IHクッキングヒーターと食器洗い機については、(調べて記事にできれば)また次回ということで。

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2004/04/13

Webラーニングプラザ

たまたま科学技術振興機構(JST)がやっている無料の技術者向けのWeb学習システム、Webラーニングプラザを見つけた。面白そうだったので、体験してみた。

調べてみると2002/10/1から一般公開されている。全然知らなかった。もっと宣伝すれば良いのに。(お金取るわけでもないから、独立行政法人的には、登録ユーザー数はどうでもいいってことのかなぁ?)

内容は現時点で、分野別教材が、科学技術史:1コース/3レッスン、環境:9コース/57レッスン、ナノテクノロジー:9コース/47レッスン、ライフサイエンス:7コース/31レッスン、機会:14コース/133レッスン、化学:8コース/73レッスン、社会基盤:4コース/28レッスン、安全:1コース/3レッスン、総合技術監理:19コース/113レッスンの合計:72コース/488レッスンと、映像型教材が14コースが用意されている。これだけでもかなりの分量だけど、まだまだ科学技術体系全体のほんの一部だけにすぎないとも言える。

1レッスンが約15分の音声+画像(アニメ)+テキストからなる講座で、少し見た感じでは、レベルは高いものから低いものまで様々。それでも、用語集やFAQもしっかりしているし、比較的わかりやすく、なかなか使える印象。特に、自分の専門以外の分野の概要を簡単に知るのには結構役に立ちそうだ。

各レッスンの最後に自己診断テストがあり、内容の理解度チェックもできる。登録しなくても無料で全部受講できるが、登録すると過去の学習履歴が残せるようだ。

まだ、カリキュラムが十分に網羅的には完備されていないけれど、少しずつ充実してきているようだし、今後とも多くの人がユーザー登録することで応援してあげないと、そのうち中途半端で終わる恐れもあるかも。。(科学技術立国がらみでかなりのお金が注ぎ込まれているようだし、コストパフォーマンスはやや疑問だけど、使わなきゃ損だ。)

同じJST(科学技術振興機構)のWebコンテンツで、失敗知識データベースというのもあるんだけど、こちらは使いにくいし、内容的にもまだまだかな? やっぱりこの手の情報ってのは、多くは企業が握っているだろうし、本質の部分は企業秘密も多いだろうから、なかなか共通の場所には出てこないんだろうな。

子供向けだけど、国際的な試みとして、サイエンスラーニングネットワークの科学の玉手箱も面白い。英語版を選べば、英語の学習教材にもなるし。。

Webラーニングとか eラーニングと呼ばれる分野は、ブロードバンドの普及で本当に使い物になるものになってきた感じがする。通信教育とも教育放送とも異なるメリットが確かに感じられるし、まだまだ面白くなりそうだ。

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2004/04/12

「確率的発想法」

NHKブックスは時々読み応えのある面白い本があるけど、今回は帯の宣伝文句「予想的中! 天気予報からリスク論まで、先行きを見通す推論のテクニック」に興味を持って購入した。

NHKブックス 991
 確率的発想法 数学を日常に活かす
 小島 寛之 著 bk1amazon

著者は数学科出身の経済学博士、現在は帝京大学経済学部の環境ビジネス学科におられる方。著書を探すと、大学教養課程向けの数学の入門書を出したりしている。まえがきによると、

 確率的発想法とは何か。それは、不確実性をコントロールするための推論のテクニックです。不慮の事故や災害、失業や倒産など、自分に降りかかってくる不確実なできごとをはっきりと対象化し、それに適切な戦略をもつことなのです。武器となるのは何か。もちろん「確率」です。
(中略)
 本書が取り扱うのは、学校の確率とは別種の確率です。それは、世の中をとりまき誰も逃れることのできない不確実性という荒波に立ち向かう、そういう知恵を集大成したものなのです。そしてそれこそが確率的発想法に他なりません。
 本書は数学をベースにして、日常のできごとから、経済、はたまた環境問題や社会設計の話題まで足をのばす、たいへん欲張りな本です。股にかける分野は、数学、統計学、経済学、論理学、社会思想と幅広く、また基本中の基本からここ10年ほどの最先端の研究まで縦横無尽に取り入れてあります。
とある。なるほど、確率的発想法のエッセンスが満載って感じだけど、サブタイトルや帯の宣伝文句よりは、もっとずっとずっと学問的(で非実用的)な内容だ。

第1部「日常の確率」と第2部「確率を社会に活かす」に分かれており、第1部は、ごく普通の確率論から始まり、フィッシャーの統計的推定、ベイズ推定、ノイマン&モルゲンシュタインの期待効用論と展開するが、何とかついていくことができたかな。しかし第2部になると、ナイトの不確実性、コモンノレッジ、ロールズの正義論、マックスミン原理、帰納的推論、過程法過去完了としての確率論、、といった具合に話が広がり、いつの間にか別世界に連れて行かれたような不思議な感覚を味わえる。数学的に難解なわけではないが、この世界まで来ちゃうと頭が付いて来られなかったような。

さて、本書が扱う確率論という奴は、いわゆる学校で習った確率を拡張したもので、扱う対象が、いわゆる不確実な事象だったり、人間の心理だったり、社会のあり方だったりする。何で、確率論で社会システムが論じられるのか? どうやら、人間が不確実な現象をどう認識しそれにどう対応するか、という問題を突き詰めていくと、社会がどうあることが最も受け入れられるか、という問いに応えられるということらしい。ある意味で、人間の思考や行動を数学的に取り扱う学問としての確率論といった位置づけで捉えるべきなのか。

第1部では、日常の確率の実例のひとつとして、中西準子さんの「環境リスク論」を取り上げている。中西さんのリスクベネフィット論は、人に対するリスクを損失余命という統一尺度を用いて算出し、リスク削減のための費用やリスクを許容することで得られる利益との比率で優先順位を見積もる手法として、野心的な試みと高く評価できるとしながらも、経済学の立場から次の二つの視点で批判している。

ひとつは、物の価値は市場が決めるのであって、リスクのある物の価格は市場がそれをどう評価するかで決まるという視点が欠けているというもの。具体的な例も出して説明してくれているが、本質的な批判というよりは、こういう見方も組み込んで改良すべき余地がある、という程度に思えるのだけど。。

もうひとつは、確率で求めたリスクがたとえどんなに小さくとも、人間はそのリスクを甘んじて受け入れる必然性はないので、代替手段があれば、積極的に回避するだろう、という点。例えば、日本のどこかのチョコレートに青酸カリが入っているという予告があれば、確率はゼロに近くても、誰も積極的に食べようとはしないだろうということを例に挙げている。 それはその通りだけど、この話と、例えばダイオキシン汚染された野菜を怖がる話は全然違うと思うけどね。(青酸入りチョコとダイオキシン汚染野菜では食べた時の被害の程度が全く異なる話で、これを同じ確率的リスクで議論すると明らかにおかしな結論にたどり着く。)

人間を対象としているという点では、例えばインフォームド・コンセントの例も出てくる。手術が成功する確率が90%と説明されて、納得の上で手術を受けたが失敗した時、それは患者の自己責任で片付けられる問題ではないと指摘する。つまり医者の側からは、多数の手術を行えば確率90%で成功するという客観的な意味かもしれないが、患者にとってはただ1度の手術が成功する確率は主観的な意味で受け取られ、ここにすり替えが起こるということらしい。

もっと簡単な例では、降水確率と傘を持って出るかどうか、の関係も似た話かもしれない。こういう具合に、人間の側が客観的数値をどう受け入れるかという問題は、既に確率論の枠組みを超えている問題だろうけど。敢えてそれを取り扱う試みのようだが、そこに無理があるように思えるのだが。

どう受け止めるかは別としても、このような立場での不確実性の取り扱い方は、いわゆる従来型の確率論や期待値でリスクを論じている人たちが、一度は立ち止まって考えてみるべき点かもしれない。もっとも、僕が読む限りは、あまりに人間の心理や内面に入り込みすぎて、科学的な論理として未完成なままのように思えるのだけど。

本書第2部の社会学方面への確率論の応用編については、ここで論じられている内容は確かに最先端の学問の一端なのかもしれないが、更にナイーブな話というか、前提の危うい学問だなあという印象が免れない。そもそもの前提となる人間の選好についても、既に僕には納得できない点も多いし、って僕が内容に付いていけなかっただけかも知れないけど。。 でも、新鮮な話が読めたし、知らなかった話にもたくさん出会えたから、満足。

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2004/04/11

ペットのクローンビジネス

NIKKEI NET(4/11)のニュース。

米社、ペットの猫のクローン作りを初の商業化
 【サンフランシスコ=西山彰彦】愛猫のクローンつくります――。米国でペットの猫のクローンづくりを請け負うビジネスが始まり、今年11月にも商業化初のクローン猫が誕生する予定となった。

 米バイオベンチャーのジェネティック・セイビングズ・アンド・クローン社のルー・ホーソン最高経営責任者(CEO)が明らかにした。

 同社は2002年2月、テキサスA&M大学と共同で世界初のクローン猫を生ませるのに成功したと発表。この技術をもとに一般のペット用猫のクローンづくりに乗り出した。年内に9匹のクローン猫をつくる計画で、うち5匹は米国や英国の愛猫家から1匹5万ドルの料金でクローンづくりを請け負ったという。9月ごろに飼い猫の体細胞の核を別の雌猫の卵子に移植して胎内に入れ、11月か12月ごろにクローンが誕生する予定という。 (16:02)

この話は以前にもネコのクローニング等で話題になった会社に関するもののようだ。WIRED NEWSで探してみると、2000/2/28の最愛のペットをクローン再生、2003/1/21のクローン猫、外見も性格もオリジナルとは「別の猫」というニュースが見つかった。ふむ、クローンといっても、見た目も性格も一緒にはならないってのも、まあそんなものなのかもしれない。ちなみに、三毛猫のようなケースでは、からだの模様は遺伝的な要素と共にランダムな過程が関わって決まるものらしい。

さて、問題の Genetic Savings and Clone,Inc. のサイトに行ってみると、今回の猫のクローンキャンペーンについての募集が載っている。The First Nine Lives Extravaganzaがそれ。今年は9匹だけに限定。来年は数を増やすと共に、犬のクローニングも開始するとある。

あの、クローン人間を作った!という怪しいニュースで有名になったクローンエイド社でもペットのクローニング商売(CLONAPET)を開始する予定のようだ。(ホームページ見ると、いかにも怪しい会社だな。)

さて、アメリカではペット動物のクローニングを禁止する法律はないようだけど、どう考えるべきなんだろう? 今のところ、倫理面を含めて感情的な問題はあるだろうけど、このビジネスを禁止はできないようだ。いずれ日本でも始まるだろうか? まあ、ヒトクローンの倫理問題さえも決着がついてないのに、ペットのことまで考えてられないってこともありそうだし。

この辺の倫理面については、ちょっと古いけど、第5回科学技術会議生命倫理委員会クローン小委員会議事録が見つかった。(長文なので、"ペット"でページ内検索するとよい。) これを見ると、動物のクローンといっても、「希少動物」「実験動物」「家畜」「ペット」というのは分けて考えるべきということのようだ。確かに、ペットは家族の一員という感覚を考慮すると、ヒトクローンを禁止する動きとの整合性も考えるべきということになる。結局は人が決めるルールだから、人間の都合の良いものになるわけだろうけど、むずかしい。。

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2004/04/10

中国の交通事故

FujiSankei Business iの 4/9の記事

中国の交通事故は米の8倍 経済的損失430億円
 中国で交通事故が激増している。昨年の交通事故は約77万件以上発生し、死亡者は10万4000人、負傷は56万人に上る。毎日284人が交通事故死していることになる。

 死亡者の半数以上は16歳から45歳の若年から中年層に集中しており、経済的損失は全体で33億元(約430億円)にも達する計算だ。

 中国衛生省の発表によると、中国の交通死亡事故は自動車1000台につき約2人の割合で発生しており、これは米国の8倍で、死亡者数とともに世界一となっている。

 中国の交通事故発生件数は1951年に約6000件だったのが、2001年には75万件と、125倍に達している。とりわけ近年、自動車台数の急増に伴い毎年約10%ずつ増えている。

(中略)

 世界保健機関(WHO)の02年の統計によると、全世界で毎日14万人が交通事故にあい、3000人以上が死亡、年間の交通事故死亡者数は118万人に上る。

少し統計を探してみると、総務省統計局のページに、世界の交通事故のデータがある。この表には何故か中国が含まれていないが、中国の人口を13億人とすると、人口10万人当たりの死亡者数は8.0人となる。日本が7.1、アメリカが15.3だけど、これは人口当たりで比べるからで、自動車保有台数とか道路総延長距離とか自動車の総走行距離当たり等の数値で比べると随分違ってくる。

この記事の「アメリカの8倍」というのは自動車保有台数当たりの数字のようで、同じ総務省統計局の世界の自動車保有台数のデータを使って計算してみると、日本はアメリカの6割程度で、中国の12分の1程度となる。

当然だけど、まだ自動車社会になっていないところは交通事故も少ない(ex.エチオピア等)。一方で日本は交通事故の多い状況を何とか抜け出して、交通事故死者が減少し始めているが、これはヨーロッパのイギリスや北欧諸国も似た状況かもしれない。(人口当たりの死者数が適当な指標かどうかは議論ありそうだが、結論は大きく変わらないように思える。)

これって、国連大学の安井さんがよく述べている、クズネッツ曲線に当てはまりそうだ。モータリゼーションの発展と共に事故が増え続け、対策は後手後手に回りながらも、いずれはハード・ソフト両面からの対策が効き始め、ゆっくりと減少しながら適当なところに落ち着く、というシナリオだろう。

記事の最後で、「WHOの統計によると」と書いてあるが、WHOと交通事故って直接結びつかなかったので、WHOのサイトで検索してみたら、こんな資料 "World report on road traffic injury prevention" が出てきた。

ちょっと眺めただけだけど、今後世界で交通事故が死因のベスト3に入ることが懸念されており、どうやって交通事故を減らすのか? という観点からまとめられているようだ。確かに交通事故というのは、世界的に克服すべき大きな問題となりそうだ。(ある程度の解決策はありそうだが、民族性まで考慮するとどうなるやら。。) 交通問題というのは、大気汚染、エネルギー、それにCO2の問題以外にも、交通事故による損失という点でも、ある意味では環境問題と考えられるわけだ。

ちなみに、現在の中国の交通事情だが、現代中国放大鏡のコラムを読むと、結構大変なことになってるようだ。しかも、あの広大な中国全体を考えると、当面は悲惨な状況が続くような気がする。NIKKEI NETの2003/10の記事でも、今後3-5年は事故は増加するだろうって観測を載せているが、甘すぎるような気がする。。

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2004/04/09

XYZ

4/6にSONYが発表した新しいカーナビ、名前は"XYZ"。30GBのハードディスクを積んで、リアルな3D画像表示をするんだそうで、正確にはカーナビではなく、AVナビシステムと呼ぶらしい。で、この名前「XYZ」の読み方は「ジーゼット」。

一方4/9にセイコーウオッチはネット販売専用ウオッチの販売をアナウンス。名前は、こちらも"XYZ"。相当にデザイン性が高いものみたいで、ターゲットは10~20歳代。こちらの名前「XYZ」の読み方は「ザイズ」。

さて、アメリカ人に読ませたら、ザイズと読むかな? ジーゼットというのは何語読みなんだろう? カーナビと時計では全く別のカテゴリーの商品だから、同じ名前をつけても構わない(それぞれ商標登録が可能と思われる)けど、両者ともにメジャーな商品になってくれると、読み方が違うのはちょっと面白い状況かも。

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2004/04/08

日本国内の物質フロー

EICネットの4/8のニュース。2001年度の日本国内の物質フローの集計結果が公表されたというもの。環境省の発表資料はこちら。2000年(平成12年)度に比べて、資源生産性と循環利用率がやや悪化し、最終処分量は順調に減少した、ということのようだ。添付資料は図表が多くてわかり易い。もっとも全部で資源投入量が21億トンと言われても全然ピンとは来ないけど。。

この資料を見ると、循環型社会形成基本計画というのがあって、その目標と比較した形になっているが、この計画は、2001年に施行された循環型社会形成推進基本法というのに則って、昨年策定されたものらしい。(EICニュース環境省資料)

この計画、目立たない割には、とても志が高く、「非持続的な20世紀型の活動様式を改め、天然資源の消費の抑制と環境負荷の低減のため、循環を基調とする社会経済システムの実現・廃棄物問題の解決を図ること」を目指しているようだ。

そこで、2010年度の目標として、2000年度と比べ、資源生産性と循環利用率を約4割向上させ、廃棄物の最終処分量を半減させる、という数値目標を定めている。

また、取り組み目標として、国民1人1日あたりのごみの排出量を20%削減し、循環型社会ビジネスの市場・雇用規模を倍増させる、というのも掲げられている。ごみの排出量の削減目標なんか、誰も知らないんじゃなかろうか? 

そもそも、この手の目標の数値というのは、具体的な計画の積み上げで決まったものなのだろうか? 或いは、別の要求から決まった目標で、これを達成するための具体的な計画が進んでいるのだろうか? 

目標と実績の対比だけではなく、具体的な計画と実績の対比という形で見せてもらわないと、何が原因なのかよくわからない気がする。それに、2001年度の数値が今頃出てきて、このままじゃ目標到達が苦しいかもと言ったって、もう既に2004年度に入っているわけで、少し集計が遅すぎるんじゃないのかな?

そういえば、NIKKEI NET(4/7)の記事、

「植林でCO2吸収」誤算、京都議定書達成難しく
 地球温暖化を防ぐため政府が主要対策に掲げる植林による二酸化炭素(CO2)の吸収が、当初予想より大幅に少なくなることが、環境省の試算で6日わかった。林野事業の人手不足で国有林や民有林の保全が進まないのが理由。温暖化防止を目指す京都議定書の達成が難しくなり、同省は見込み違いに頭を痛めている。
 試算では、京都議定書で定めている2008―12年に、国内の森林がCO2を吸収する量は約3780万トン(年平均)と予測。02年3月時点の見通しより約1000万トン少なくなる。
も、成り行きまかせと言うか、目標はあるけど実行計画がないんじゃないかと疑いたくなる話だ。

環境問題の解決には、いろんな利害が絡むから、そう簡単ではないのもわかるけど、国会や閣議で決めたんだったら、もう少し計画的であって欲しい気がする。「計画倒れ」という言葉はあるけど、日本の環境問題への取り組みの現状は「目標倒れ」という感じだものな。

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2004/04/07

新手の化学兵器

CNN.co.jpの 4/7の記事

英国内で化学テロ計画を摘発
ロンドン(CNN) 英米の治安当局筋によると、両国当局は6日までに、英国をねらった化学爆弾テロを未然に摘発した。逮捕者の有無や計画の詳細は明らかにされていないが、テロ計画は四酸化オスミウムという物質を使った化学爆弾を作ろうとしていた模様。

消息筋によると、人混みで爆弾を爆発させて四酸化オスミウムを四散させることが目的だったとされる。四酸化オスミウムは化学工業で反応速度を速める触媒などとして使われる。人体に対する毒性が強く、ガス状のものは皮膚や粘膜、呼吸器を強く刺激する。

BBCは、化学爆弾テロは国際テロ組織アルカイダの支持者が計画したもので、ロンドンなど英国内で民間人の多く集まる場所を標的に想定していたと伝えている。英米情報機関による通信傍受で、計画が発覚したという。計画者が実際に、四酸化オスミウムを入手した形跡はないという。 (後略)

オスミウムとはまた珍しい物質を選んだものだ。オスミウムの基礎知識は、Wikipediaで見られる。同じニュースを扱った YOMIURI ON-LINE(4/7)の記事では、
 四酸化オスミウムは、研究目的で合法的に入手できるが、密室で拡散すると人の肺や皮膚に致命的な障害を引き起こすという。テロ計画はロンドン市内の地下鉄のほか、空港などが標的になっていたという。計画がいつ実行される予定だったかなどは明らかでない。

 ◆四酸化オスミウム=化学工業で反応速度を速める触媒としての用途がある。刺激臭があり、吸い込んだり皮膚に触れると危険。放射性物質と異なり、環境中にまき散らされても、除去はそれほど難しくない。

とあるが、確かに試薬で購入できるかもしれないが、日本だとこの手の試薬を買おうと思えば、結構面倒くさいはずだ。
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四酸化オスミウムは確かに試薬で手に入りそうだ。しかし、製品評価技術基盤機構のDBで調べた限りでは、何故か四酸化オスミウム(CAS No.=20816-12-0)は毒劇物取締法でも化学兵器禁止法でも特に規制対象になっていないみたいだけど大丈夫か?

性質は、国際化学物質安全性カードで見ると、常温で固体だけど、融点42℃で沸点130℃、非常に揮発しやすそうで、酸化物のくせしてかなり嫌らしい。毒性については、WebKis-Plusで検索できるが、マウス経口LD50が162mg/kgとなっている(劇物に相当する毒性レベル)。しかし皮膚についただけでも薬傷がひどそうだし、取り扱いも大変そうだ。致死量はそれ程でもないにしても、加熱して撒き散らすと容易に気化するから、確かに悲惨なことになりそうな物質だ。

化学兵器でインターネットを検索してみてもオスミウムなんて引っ掛かってこないので、このテロ組織が新たに思いついたのかもしれない、今後は世界的に規制が強化されるのかな? しかし、その気になって探せば、リストアップされていない候補物質なんかいくらでもありそうだし、所詮イタチゴッコということなのかも知れないな。

*読売新聞の四酸化オスミウムの説明部分は、Wikipediaの四酸化オスミウムの説明をそのまま転載したように見えるけど、「著作権にうるさい」読売新聞さんとしては問題ないと考えているのかな? Wikipediaの著作権の説明には

ウィキペディアの目標は自由に利用可能な百科事典形式の情報源を作成することです。我々が使うライセンスは、フリーソフトウェアのフリーライセンスと同じ意味で、コンテンツへの自由なアクセスを許可するものです。つまりウィキペディアのコンテンツは、他の人々に対して同様の自由を認め、ウィキペディアがそのソースであることを知らせる限りにおいて、複製、改変、再配布することができます。それゆえにウィキペディアの記事は、永遠にフリーであり続けるでしょう。改変や再配布などの利用に際して多少の制約条件はありますが、そのほとんどは、このような自由を保証するためのものです。
とあるから、出所表示をすればOKのようだけど。。。

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ココログ3か月

ココログを始めて丁度3か月目。

カウンターは、1か月目:900、2か月目:4500、3か月目:11700と予想を上回る伸び。この1か月は7000カウント(コンスタントに200~300カウント/日)。それぞれの事情でここに来られた方、ようこそ、ありがとう、です。これも何かの縁かもしれません。もし気に入られたら、またお越しください。

さて、この1ヶ月のアクセス解析結果の一部だが、

(1)どこから来たの?
 1位 http://search.yahoo.co.jp (ご存知ヤフーサーチ) 全体の14%
 2位 bookmark (お気に入りに入れてくれた方ありがとう) 全体の9%
 3位 http://www.google.co.jp(ご存知グーグル日本版) 全体の6%
 4位 http://www.google.com(グーグルの本家アメリカ版) 全体の2%
 5位 http://www.cocolog-nifty.com(ココログの新着情報から) 全体の2%
 6位 http://newsch.net/(トラックバック&リンクありがとう) 全体の1%

(2)検索キーワード
 1位 春分の日(意外!)
 2位 回転ドア
 3位 シノレス(六本木ヒルズ事故のドアの銘柄ですね)
 4位 ボスプレッソ(遂に首位から陥落、旬は過ぎたか?)
 5位 伸長法(随分前に書いた記事だけど息が長い)
 6位 自動回転ドア
 7位 肥満
 8位 背が伸びる方法
 9位 2004(春分の日との組み合わせ?)
10位 アメリカ(肥満との組み合わせが多そう)

という結果。この1か月の訪問者が多かった理由として、「春分の日」や「回転ドア」といった旬なネタが、特定のキーワードとの組み合わせで、検索エンジンの上位に来たことが考えられる。

例えば「回転ドア」ではGoogleでベスト100にも入ってないが、「回転ドア 意義」だと2位に来るし、「回転ドア 歴史」だとトップに来る。ということで、キーワードの組み合わせが、SEOの秘訣かもしれない??

#それにしても「アンモニア合成」でトップに来てしまうのは勘弁して欲しい。これって、晒し者になってるみたいで逆に嫌だぞ。。

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2004/04/06

屋久島の水素プロジェクト

NIKKEI NETの4/5記事。

ホンダなど、水力利用し燃料電池車燃料を製造
 ホンダ、太平洋セメントグループ、昭和電工と鹿児島大、国連大学などの産学グループは、鹿児島県屋久島に水素ステーションを建設し、水力で製造した水素を燃料電池車に供給する実験を月内に始める。地球温暖化の原因となる化石燃料を一切使わずに燃料電池用水素燃料を生産する国内初の試みで、世界的にも異例。石油資源に乏しい日本が水素燃料を産業化する動きとしても関心を集めそうだ。

 屋久島ではすでに太平洋セメント関連会社の屋久島電工(東京・千代田)が水力発電を手がけている。実験ではこの電力を活用して水を電気分解。取り出した水素エネルギーをいったん水素ステーションに蓄積し、燃料電池車燃料として使う。

 燃料電池車は水素を燃料に電気を起こして走る。排出物質も水だけのため、次世代の無公害車として世界の自動車メーカーが開発を競っている。しかし水素製造時に石油や天然ガスなどの化石燃料を使うため、温暖化ガスである二酸化炭素(CO2)の発生が避けられず、燃料電池車を普及させるうえでの大きな壁になっている。

第一印象は「ん?」という感じ。色々と突っ込みどころのある記事のように見える。YOMIURI ON-LINE(4/5)でも記事になっているが、
水力発電を活用した実験は国内では初めてで、実用化されれば、燃料生産から走行まで、地球温暖化の原因となる二酸化炭素を排出しないシステムとなる。
というのも何だか違和感あるなあ。(車や水素の製造装置を作る際にも資源・エネルギーを使うだろうに。) そもそも、自分の使用した電気が水力発電で得られた電気かどうかってシンボリックだけれど、実質的には意味あるのかなあ?

nikkeibpでも記事になっており、こちらは結構詳しい。ホンダのニュースリリースにもあるが、「屋久島ゼロエミッションプロジェクト」という、屋久島での循環型社会システムモデル事業が進められているということらしい。

屋久島電工のホームページには、Y-CEP(Yakushima Clean Energy Partners)というプロジェクトの構想や事業内容の説明がある。なかなか面白そうなプロジェクトである。

屋久島はもともと多雨で有名だし、その水を利用して既に何十年も前から水力発電を行ってきた。現在は島の一般電力需要に対して発電能力が大幅に上回っており、余剰分を産業利用している状態。従来から、日本機械学会レポート(2001/03)(pdf版)にあるように、電気自動車の導入を進めてきたようだが、今後は燃料電池車にターゲットを移すということみたいだ。

このプロジェクト、2002/5/28の日経新聞で紹介されていたようで、熊さんBBSで記事が引用されている。島全体を水素エネルギー社会のモデル地区としようということらしい。水素製造電力だが、従来からある産業用の電気需要が減らないとすれば、新たに発電する必要があるわけで、今回のプロジェクトでも、小型の水力発電装置を多数新設するようだ。(日経の記事では既存の電力を使うみたいに読めるけど違うようだ。)

屋久島のゼロエミッションプロジェクトについては、この5月に行われる国連大学の講演会でも最近の話が聞けるようだ。

日経の記事では、クリーンなイメージだけを狙った話かな、という印象もあったけど、調べてみると、中々スケールの大きな夢のある話なのかもしれない。水素を燃料とした燃料電池車というのは、いずれ主流になるだろう技術だし、モデル事業でいろんな問題を解決していくことも悪くない。(でも燃料電池車1台だけなのかな? なんか淋しい。もっとも現時点では1台数億円もするらしいけど。)

もっとも、日経には世界的に異例と書いてあるが、アイスランドが既に水素社会プロジェクトを進めているのは有名で、それの小規模版という感じではある。国連大学基調講演資料drivingFutre.comなど。

屋久島だけで考えると、車を含めて消費するエネルギーを完全に自然エネルギーで自給自足できるのかもしれないが、日本全体ではどうなるのだろう? 燃料電池や水素エネルギー社会の話は聞くけれど、資源やエネルギーの問題についてきちんと説明した資料が意外と見つからない。電池の素材となる貴金属や希少金属の資源量や、必要な水素を再生可能エネルギーから作り出そうとしたら、どれだけのエネルギーが必要なのか?等。これらについては、いずれまた調べて書くことにしたい。

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2004/04/05

東大学長のあいさつ

今日(4/5)に東京大学の大学院の入学式が行われたということで、佐々木毅学長の式辞が各紙に載っているのだが、asahi.comの記事だと、

「法科大学院の入学者の皆さんには特に大きな声で歓迎の言葉をかけたい」と呼びかけた。そのうえで「社会では知識の自己主張を喜ばない勢力の抵抗が行われるのは必至。皆さんは知識の担い手として現実に対面し、時には対決しなければならない」と、大学院で学ぶうえでの「覚悟」を求めた。
とある。何だか変なあいさつだな? 「知識の自己主張を喜ばない勢力の抵抗」って何だろう? NIKKEI NETでは、
佐々木毅学長は「法人化を契機に新しい研究領域を開拓する仕組みも準備している。皆さんもこれにこたえ、思い切り挑戦してほしい」と呼びかけた。
 同学長は「専門的・先端的知識の役割を積極的に主張することも必要」と指摘。「特に(新設の)法科大学院や公共政策大学院は戦略的視点を養わなければならない」と述べた。
と普通のあいさつだ。Sankei Webでは、
 佐々木毅学長は「知的階段を一歩一歩踏みしめ、日本はもとより世界に冠たる水準に到達することがあなた方に期待されている。限りなき挑戦におくすることなく、あらゆる精力を傾注してほしい」と激励した。
と、これまた少し違う。MSN-Mainichi INTERACTIVEでは、
佐々木学長は式辞で「今年から新たに設けられた法科大学院と公共政策大学院の入学者の皆さんには、特に大きな声で歓迎の言葉をかけたい」と述べた。そして「知の担い手は批判的精神と戦略的視点の持ち主にならざるを得ない。数年間の研鑚(けんさん)によりたくましい存在に成長すること、それを通して大学の持つ潜在可能性の大きさを多くの人に印象づけられるようになることを期待する」と呼びかけた。
とある。これが最も式辞らしい感じだな。

どれだけの分量の式辞だったか不明だが、各社共に微妙に違うところを記事にしたようだ。それなりに新聞社の意思が反映されているのだろうか? それにしても、朝日の内容はどういう文脈で出てきたのか? 原文を読んでみたいものだ。そのうち東京大学 総長からに載るだろうと思うが。(あれ、東大は学長ではなくて総長だよね。各社そろって学長になってるな?)

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ニュースサイトのリニューアル

4月になり、いくつかのインターネットのニュースサイトもデザインの変更が行われている。情報源として一番頻繁に使うところなので、その使い勝手は気になるところ。

日経新聞の運営するNIKKEI NETは、見た目の印象もだいぶ変わったけれど、何よりもニュースを探しやすくなった。従来は、直近の数本の記事のタイトルしか表示されておらず、それ以前の記事はどんどん消えていってしまうので、当日のものであっても検索して探す必要があった。今回のリニューアルで、当日分を含め過去1週間分の記事のリストが見られるので、非常に探しやすい。これは今のところ他の新聞にはない機能で、なかなか便利だと思う。

従来の欠点を解消し、逆に他社よりも使いやすくしたということで、今回の変更を高く評価したい。もっとも、ニュースカテゴリーがかなり細分化されているので、逆に記事を探す際には、何処にあるのか見つけるのが大変だったりするが。

毎日新聞の Mainichi INTERACTIVE は、今日(4/5)から、MSN-Mainichi INTERACTIVEに生まれ変わった。どうもMSNのサイトの一部に、ニュースページとして組み込まれたみたいな感じだ。この新しい画面は、文字サイズが小さく、IE6の文字サイズ「小」で見ると、非常に読みづらい。画面の上部と右側の広告スペースがやたらとでかくて、記事スペースを圧迫しているためか。今まで文字サイズ「小」にしていて、ほとんど不便を感じたことがなかったのになあ。

毎日新聞は従来 Webに載せるニュースの量を少し限定していたような印象があるが、今回の変更で、記事の量は圧倒的に増えたようだ。ただし、例えば「社会」というカテゴリーの記事を探してみると、普通の記事の他に、社説や特集記事も一緒に時間順に並んでいるので、やや探しづらいように感じる。数日前の記事まで一覧で見られるのはいいのだけど、記事の配信時刻しか表示されていないと、何日前の記事かわからないのは、愛嬌か?

実は Mainichi INTERACTIVE では、科学関係ニュースについては過去数年分がカテゴリー毎(環境、物理・化学、医療、原子力等)に保存されていた。今度のリニューアルでどうやら過去分は無料で見られるのは2か月分に限定されてしまったようだ。おまけにURLが全面的に変わってしまったため、過去の記事へのリンクも切れてしまっているし、二重に残念。

本当は、各社ともに、記事へのリンクをもっと長く生かしておいてくれると大変助かるのだけど。すぐにリンクが切れちゃうから、このブログでも記事への直リンクは極力避けて、引用しているけど、これはこれで著作権法上の許される引用に当たるかどうか微妙だし、困ったものではある。

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2004/04/04

「情報検索のスキル」

今の時代、インターネットを如何にうまく活用するか、が様々な物事の成否の鍵を握り始めているように思う。本書の帯にも「検索には戦略が必要だ!」と大きく書かれており、興味のある分野であるし、今までまとまった形でみたことがなかったので読んでみた。

中公新書 1714
 情報検索のスキル -未知の問題をどう解くか
 三輪 眞木子 著 bk1amazon

著者は、情報学の専門家で、サーチャーとしての仕事をされていたこともあるようだ。本書は、内容が身近なせいか、思った以上にサクサクと読み進むことができ、あっと言う間に読み終えてしまった。

本書では、実はそれほど目新しい戦略や技術が紹介されているわけではなく、ある程度の経験のある人ならば無意識に漠然と行っている行動を、整理し直して理論的に構築したような内容が主となっている。その点では、頭の中で漠然としていたイメージが、かなり論理的な形で整理されることで、情報学の一端を垣間見ることができると言えるだろう。

一般の個人が興味のある内容について調べる際の戦略や方法というよりも、教育者の立場から、児童・生徒・学生に対する情報教育の重要性に重点を置いて書かれているようだ。従来の情報教育では、情報検索の個々のスキルだとか、得られた情報の処理方法といった個別の技術の習得が中心となっているようだが、いざ自分で問題を解決しようとした時、実際に応用できないようでは意味がない。では、実際に使えるスキルを身に付けるにはどうするか? ということがテーマとなっているわけだ。

本書の第3章では「自己効力感(self-efficacy)」について語られている。あまりなじみのないこの概念、「自分がその分野で成果を上げる能力をどの程度あると自覚しているか」と定義されている。人生の様々な場面で、人がどう行動するのかを規定しているのが、個々人の自己効力感なのだ、という論が展開される。まあ、そうかもしれないけど、それと情報検索とどうつながるのか? 

ここで著者は、高い情報スキルを身に付けるためには、情報に関しての自己効力感の養成が必要だ、という立場をとる。しかし、高い自己効力感がなければ高いスキルが身に付かない、というのは、何だかトートロジーのような気もする。スキルを身に付けたから自己効力感が高まるとも言える面もあるような?? (情報スキルに限らず、あらゆることに当てはまるけどね。)

実際には、本を読んで知っているのとやるのとは大違いなわけで、例えば「集めた情報を評価して判断する」って言われても、正にそれをどうやって実現するんだ? という点こそが、情報スキルなのだろうけど、これについての具体的な説明は残念ながら書かれていない。

結局は、具体的な多くの問題の解決を、各自が情報検索を通じて経験していく、という実践を積み重ねて身に付けていくしかない、という至極当然の結論になるようだが。。

ということで本書は「情報検索のスキル」そのものが手に入る本ではなかったようだ。ちと欲求不満。

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2004/04/03

「持続不可能性」

なかなか挑戦的なタイトルの本である。原題は "Fragile Dominion"、直訳すると「壊れやすい支配」とでもなるのか。ということで、翻訳本のタイトルをつけた人のセンスが光ると言えるだろう。サブタイトルも含めて、タイトルに魅かれて読んでみることにした。

文一総合出版
 持続不可能性 -環境保全のための複雑系理論入門
 サイモン・レヴィン 著、重定 南奈子、高須 夫悟 訳 bk1amazon

読み終わるのに一体何ケ月掛かったのだろう? この本はいわゆるハードカバーで大きく重い。普段出かける時に持ち歩くのは、どうしても新書や文庫ばかりになってしまうので、本書はもっぱら家で少しずつ読んでたのだけど、それにしても時間掛かったなあ。最初の方はもう忘れてしまってるし。。

とりあえず、Webで入手可能な、本書に対するコメントを紹介しておこう。関係者のものとしては、本書の訳者の高須さんのページや、文一総合出版のページがある。

そして、専門家の優れた書評もある。進化論の長谷川眞理子さんの書評や、環境学の松田裕之さんの書評は、それぞれの立場から、本書をかなり高く評価しているようだ。これだけ専門の方が薦めているのだから、きっと信頼できる本なのだろう。

敢えて僕の感想を少し述べると、確かにテーマはとても魅力的だし、読み進むにつれて新たな物の見方を手に入れたような喜びもある。でも、最初は興味深くそれなりに楽しく読んでたんだけど、途中から徐々に退屈になってきたのも事実。この厚い本の途中に、特に大きなドラマがあるわけでもなく、かと言って具体的にイメージできる実例がそれほど豊富にあるわけでもなく、最初から最後まで一貫したメッセージが淡々と続くんだもの。。

もっと複雑系のシミュレーション結果などがたくさん出てきて、地球の生態系を複雑系が解き明かすってな本なのか、と期待していたのだけど。(と、読み終えるのに時間が掛かった言い訳をしてみる。)

複雑系といえば、新潮文庫の「複雑系」bk1amazonという本を以前読んで、サンタフェ研究所で次から次へと巻き起こる、知のドラマや、複雑系という考え方、そしてその可能性に、驚きを伴ったある種の感動を覚えたものだ。今回の著者、サイモン・レヴィンも、同じサンタフェ研究所の経験者であり、考え方などは当然共通するものがあるわけで、なじみやすかったし、少し懐かしい感じもした。

本書を読んで、一番新鮮に思えたことは、地球の環境や生態系が、マクロに見て今この通りであるということが、ミクロの面から見ると、それぞれの生物がただひたすらに生きてきたことが、複雑に絡み合った結果として存在しているのだ、というようなイメージかな。それと、自然界というのは一般に想像されているような安定した世界ではなく、局所的には常に環境が変動しているし、むしろその変動によって生物の多様性を維持しているのだ、という事実。人間が何かを保護しようとして環境に手をいれることが、果たして生物多様性の維持に対して良いことと言い切れるのかどうかは、そんなに簡単ではない。

この本で書かれていることを、多少とも認識しているのといないのとでは、極端に言えば世の中の見え方が変わってくるような気がする。巷で環境問題を論ずる人々には、まずは、こういう本を読んで、「環境」というものの中身について、大局的に、そして多面的に、一度じっくりと考えてみて欲しいと思えたりもする。この本を読んだからといって、環境問題に対して如何に取り組むべきか? という問いへの答えが明確に示されるわけでもないのだけどね。

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2004/04/02

有機ラジカル電池

今朝(4/2)の日経新聞のテクノロジー面で大きく扱われているが、Webニュースでは今のところ見当たらない。

新電池30秒で充電、NECが開発
NECは短時間に充電できる新型の充電池を開発した。デジタルカメラや携帯型MDプレーヤーなどに使われているニッケル水素電池と同程度の電気を蓄えられるうえ、一時間前後かかっている充電時間を約30秒に短縮できる。家庭で使える充電器の開発を進め、早期の実用化を目指す。

開発した電池は「有機ラジカル電池」と呼ばれている。特殊な樹脂に電気を蓄積する。約2センチ角で厚さ4ミリのタイプや名刺サイズで厚さ5ミリのタイプを試作した。30秒の充電で、MDプレーヤーなら80時間の連続使用が可能な電気量をためることができた。

同じサイズなら、ニッケル水素電池とほぼ同等の性能になる。充電の待ち時間がほとんど不要で、ラジコンカーなどの玩具や電気ひげそり機など携帯用の電気製品も使いやすくなる。
 (中略)
新電池の原理は知られているが、実用化した例はない。NECの成果は研究段階だが、製造工程などを工夫して既存の電池生産設備を転用できるメドも付けている。高価な材料を使わないため、量産段階の価格もニッケル水素電池と同程度にできる見通し。

とある。なんだかすごい技術のようだ。少し調べてみると、NEC研究所が2001年の11月に有機ラジカル電池の動作確認の発表をしており、この際に一部では報道されてたようだが、僕は全く記憶にない。

この時の特徴を見ると「充電時間を6分間にできる」とあるので、それよりもまた格段に進歩したようだ。

さて、この有機ラジカル電池、もう少し調べてみたら、2003/11の電池討論会で発表された内容について、NE ONLINEで見ることができる。(無料・登録要) 構造については、

 正極活物質に用いる導電性プラスチックとして,安定ラジカル化合物の「PTMA(2,2,6,6-テトラメチルピペリジノキシル-4-イルメタクリレート)」を合成した。電極は,PTMAにアセチレンブラックとフッ素系樹脂を混合して,52mm×70mm×0.6mmの板状に成型した。この電極を6枚積層し,Li金属箔と対向させて厚さ5.7mmの電池セルとした。電解質液は,エチレンカーボネート/ジエチルカーボネート混合溶媒を用いた。
と紹介されている。また、この記事では、充放電サイクル特性に課題があるように書かれている。一方で急速充放電特性については特に触れられていない。ということは、この数ヶ月で大きなブレークスルーがあったのかもしれない? 

電池の世界の進歩は、今日の我々の日常生活に非常に大きな影響を与えるのは間違いない。当面は燃料電池とLi電池の争いかと思っていたのに、意外な伏兵が現れたってことだろうか? この電池は要注目だ。

日経の記事の最後には、

今後は充電器や過剰な放電を防ぐ利用技術を開発する。NECはまず、コンピューターの非常用電源となる無停電電源装置の実用化を検討する考え。
とあるが、記事の流れからすると、ちょっと違和感のある実用化第1号案件のような気がしないでもない。まだ色々と解決すべき課題があるってことだろうか??

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2004/04/01

エープリルネタ?

あのグーグル(Google)がメールサービス"Gmail"を始めるというニュースがあちこちに報道されている。日本語で詳しく書いてあるので、代表してCNN.or.jpのニュースを引用しよう。

グーグルが無料「Gメール」開始へ、容量1ギガバイト
カリフォルニア州マウンテンビュー――検索エンジン最大手の米グーグルは3月31日、1ギガバイトの容量を持つ無料ウェブメールサービス「Gメール」を近く開始すると発表した。現在は対象を一部ユーザーに限定しているが、2週間以内には全ユーザーに向けてサービスを開始する見込み。

競合するヤフーやマイクロソフトに対抗した新戦略。1ギガバイトの容量を持つ無料メールでは、ヤフーが展開する「ヤフーメール」の4メガバイト、マイクロソフトの「ホットメール」の2メガバイトをはるかに超え、画面1ページ分の電子メールが約50万件保存出来る。

また、送ったメールへの返信メールも一括表示することで、以前に何を書いたか分かるような「会話」方式を採用するほか、過去に自分が送受信したメールを検索出来るサービスも実施する。

広告は、バナーやポップアップ式ではなく、テキスト型を採用。ユーザーがやりとりしたメールの中に書かれた単語を機械が自動的に拾い、ユーザーの好みにより適した広告を表示する。例えば、機械がメール中の「コンサート」という単語を拾った場合、チケット会社から広告が来るような流れだ。

グーグルによれば、それらの作業はすべて機械の自動作業のため内部の人間にメールを読まれることはなく、メールの内容や個人情報が企業側に漏れることはないという。

グーグルのオリジナルニュースリリースは、きちんと書かれているし、おまけに GmailのQ&Aサイトまで、しっかりと用意されている。

しかし、いくら何でも無料のメールボックスに1GBはないのじゃないか? という違和感。しかも、メールの検索ってグーグルの技術を使ってどうのこうの、という程のニーズがあるのだろうか? やっぱり、これってエープリルフールっぽくない?? Googleは、正式リリースする前に Google Labs でしばらくテストするはずなのに、Gmail はここには公開されていないのも怪しい。

ところが、あの The NY TimesBBC News を始めとして、海外でも多くのニュースサイトが取り上げている。

日本では、NIKKEI NETSankei Webあたりが報じている。朝日、読売、毎日は、様子を見ているのだろうか?

コンピュータ系でもCNET JapanITmediaニュースなどが記事にしている。

一方、スラッシュドットでは、日本アメリカも、どうせエープリルフールネタだろう、という会話がなされているようだ。2chは、半信半疑ながらも信じている雰囲気か。。

何だか、今年はエープリルフールネタがやけに巧妙なもの(ex. パテントサロン)が多かったみたいで、騙されないためにはどうするのが良いのか、しばし考えてしまったが、やっぱり一番賢いのは、今日は判断を保留して、明日になるまで様子を見る、ということかな。。

さて、もしもこれがエープリルフールネタだとして、報道してしまった各社はどうフォローするのだろう、そちらの方が楽しみなのだが。。

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