三種の神器:食器洗い乾燥機
一昨日、昨日に続き、白物家電・三種の神器の三つ目、食器洗い乾燥機について。
例によって、まずは松下電器産業のニュースリリースから。技術的に進歩した、という宣伝だけど、逆に言うとまだまだ発展途上の製品という印象もある。需要動向のところに
デフレ経済の中でさまざまな家電製品の需要が低迷していますが、食器洗い乾燥機は毎年2桁成長を遂げている数少ない家電製品のひとつです。それは有職主婦の増加や高齢社会の到来で、衛生志向・家事の合理化志向が高まっているとともに、手洗いに比べて大幅に節水できることが支持されている要因です。と書かれているが、今年の総需要は100万台を越え、普及率も16%という予想のようだ。家電の場合、一般的には普及率が10%を越えると急激に需要が拡大すると言われているから、そのレベルに来ているのか? でも、この表の普及率と台数の関係がおかしくないか? 日本の世帯数は4千数百万だから、10%普及すると4百万台以上の筈だが。。
さて、製品紹介を読むと、やはりメリットとしては、手洗いに比べて圧倒的な節水効果を強調している。1回の洗浄で、手洗いが約150Lの水を使うのに対し、機械では11Lで済むのだそうだ。構造や仕組みがよくわからなかったのが、Q&Aを読むと大体理解できる。洗浄・すすぎ(数回)・乾燥の各段階に分かれていて、洗濯乾燥機と動作イメージは似ている。効果については、ランニングコストが、手洗いで年間 112,700円に対して食器洗い乾燥機だと 31,700円と安いだけでなく、CO2発生量は55.3%削減されると書かれているが、計算前提や詳細データは見当たらない。
電機工業会の解説食器洗い乾燥機の上手な使い方だと、節水の程度は手洗いの1/5と書かれているが、省エネのために、ちょっとした工夫をすることを薦めている。
All About Japan でコスト徹底比較!食洗機vs手洗いという特集があるが、環境負荷では圧倒的に食器洗い機が有利という結果が出ている。
国民生活センターのテストは1998年と古いものしか見当たらなかった。コメントの中に「手洗いと比べた場合、食器洗い乾燥機は人手がかからないが洗浄性では劣っており、環境性という点では使用水量は少なく、炭酸ガス排出量は多めという特徴を持っていた。」という記述があるが、データは見当たらなかった。
LCAについては、伊藤健司さんのエコちゃんとトークのサイトにて詳細な調査結果が公表されている。結果は、水の使用量は確かに食器洗い乾燥機が優れているが、それ以外の環境負荷は手洗いが優れており、総合評価も手洗いが上。ただし、手洗い時の水の使用量や食器洗い乾燥機の進歩によって逆転の可能性あり、というもの。
それにしても、ここでの水使用量の前提は、手洗い:31L、食器洗い乾燥機:5L であり、冒頭の松下の広告の使用量(手洗い:140L、食器洗い乾燥機:11L)とは大違い。どうなってるんだ?? 伊藤さんのサイトでもこの点は気になったようで、わずか8人だけどアンケート結果に従って使用量を見積もっている。メーカーの採用している数値は、相当に自分たちに有利な前提となっているようだ。。
他にRUPISUの環境志向のページでも食器洗い機と手洗いを体験的に詳細に比較していて、大変面白い。結論はほぼ一緒だけど、ここでは少しでも効率的に洗浄するためのアイデアも紹介されている。
*こういうデータに対するメーカーからのきちんとした反論のようなものはみつからなかった。言われっぱなしということは、認めたってことになりかねないけど。。(少なくともメーカー側も、これと同等程度に詳細なデータを示す必要はあるのでは?)
*温風乾燥せずに、ただの送風乾燥とか自然乾燥にすれば、経済的になりそう(冒頭の製品はヒーター容量は900Wだ!)だけど、駄目なのだろうか?
さて、松下さんの提唱する白物家電の三種の神器だが、それぞれ改良を加えて魅力あるものになっていることは理解できる。しかしこれらは、やっぱり誰もが数年後に使用するのが当然、というようなものでもなく、個々のライフスタイルや置かれている状況に応じて選択されるべきもののように思える。
ただ、いずれの製品でもメーカーの宣伝だけを一方的に信じるわけにはいかない、という大きな問題がありそうだ。今はこうやって、インターネットから様々な情報が比較的容易に手に入るのだし、ユーザー側がきちんと情報を入手して判断することも可能ではある。でも、やっぱりメーカーがメリットもデメリットも正直に全部出して、その上で顧客の判断をあおぐような姿勢があってもいいと思うのだけど。
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