飛行機雲と温暖化
asahi.com(4/28)の記事。
飛行機雲が地球温暖化を「加速」 NASA研究結果発表NASAのニュースリリースは、こちら。オリジナルの論文は、Jounal of Climate の4/15号に載っているが、この論文を見るのは有料のようだ。
青空に映える飛行機雲が地球温暖化を加速している。米航空宇宙局(NASA)は27日、過去20年間の北米の気温上昇の主な原因は旅客機だった、という研究結果を発表した。「化石燃料の消費増に伴う二酸化炭素(CO2)の増加が温暖化の元凶」とみる環境保護団体などの反発も招きそうだ。NASAラングレー研究センターのチームは、75~94年の米国上空の天候や雲の観測データを分析。航空機の増加と比例して、巻雲(絹雲)の量が増えていたことを突き止めた。
ジェットエンジンの排気中の水蒸気が凍ると飛行機雲ができ、時間とともに上空に広がって巻雲になることがある。巻雲は地表を温める太陽光を通す一方で、地表からの熱の放射は遮る「温室効果」があるという。
計算の結果、巻雲の増加による気温上昇は10年で0.2~0.3度と推定された。問題の20年間に米国では平均気温が約0.3度上昇しており、ほとんどが飛行機雲による巻雲の温室効果で説明できるという。
研究チームは「飛行機雲の温室効果はCO2などの効果に加算される。温暖化シナリオに組み込んで考えるべきだ」と主張している。
朝日の記事では地球温暖化への影響を調べたかのように読めるが、原文だとあくまでもアメリカへの影響について述べており、他の地域ではそれぞれ影響が異なると書かれている。(さらに朝日の記事では「この20年間に平均気温が約0.3℃上昇」と書かれており、観測された上昇の半分じゃないかと思ったけど、元記事では「この20年間の平均気温の上昇速度が約0.28℃/10年間」と書かれている。結構大きな間違いだ。)
さて、どこかで以前聞いたことがある話だと思ったので探してみると、岐阜大若井研のサイトで 1999/6/23のニュースとして載っているが、今回の発表では、飛行機雲の温暖化効果への寄与が従来よりも格段に大きくなっているようだ。比べてみると、今回のポイントは、飛行機雲が巻雲の形成を促進し、巻雲が温室効果を持つというところにあるようだ。元のニュースだとかなり控えめのニュアンスだけど、この数値だけが一人歩きすると、確かにアメリカの地球温暖化対策に影響を与えかねないかも。。
NASAのラングレー研究センターで探すと、飛行機雲の研究をしているグループがあり、パワーポイント版の、写真がとてもきれいな資料が載っている。(元々は軍事目的で、敵に飛行機雲で見つけられるのを防ぐための研究らしい。) Contrails(飛行機雲)1.1MB 、GLOBE SCIENCE Clouds and Contails 4.2MB。
関連する話として面白いところでは、例の9.11テロの直後の飛行機がほとんど飛ばなかったアメリカの気候を観測した結果、飛行機の気候への影響が判明したなんて HOTWIREDニュース もある。
他にも、航空機の地球大気への影響についてのIPCCのシンポジウム資料が見つかった。これによると、飛行機雲と巻雲の関係やその温暖化への影響に加えて、飛行機の排ガスがオゾン層へ与える影響等、相当に複雑な話のようだ。
それにしても、地球の大きさに対して、飛んでいる飛行機の数を想像すると、地球全体の気候に%オーダーで影響を与えるなんて、予想外の複雑な話ではある。
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