都道府県別死因分析
厚生労働省のサイトで、こんな記事を発見。都道府県別死因の分析結果について。(1)脳血管疾患(2)心疾患(3)糖尿病(4)胃がん(5)肺がん(6)大腸がん(7)子宮がん(8)乳がん(9)肝がん(10)前立腺がん(11)肺炎、の11の死因別の各都道府県の死亡率を(年齢構成分布を補正して)比較したもの。
各死因別に都道府県の死亡率ランキングが載っており、都道府県別に簡単なコメントも載っている。でもね、これって「分析結果」か?って突っ込みたくなるくらい、そっけないけどね。
でも、ざっと眺めただけでも、沖縄県は脳血管疾患、心疾患、肝がんでは日本一死亡率が低いのに、何故か肺がんと子宮がんの死亡率はトップクラスだとか、逆に秋田県は脳血管疾患や胃がんはトップなのに、肝がんや子宮がんの死亡率が低いなんてことがわかってそれなりに興味深い。他にも、糖尿病トップは徳島県だとか、肺がんの死亡率が最も低いのは長野県で、高いのは大阪府や兵庫県だとか、クイズの問題に出せそうなネタだけど、何故なのか解説があってもいいと思うのだが。。
それにしても、都道府県別に死因に傾向があるとしたら、それは何に起因しているんだろう? 気候や食事、生活習慣等の影響? 遺伝的な要因? でも、一生同じ都道府県で暮らす人ばかりではないので、僕のように秋田→東京→三重→神奈川→岡山→神奈川と移り住んできた人はどうなるんだ?(東京都の死因特性は比較的平均的なのは、そのせいだろうか?)
せっかくだから、都道府県別の死亡関係データを探してみると、同じ厚生労働省の統計で、都道府県別年齢調整死亡率年次推移なんて資料がみつかる。これは平成12年と昭和50年の主要な死因毎に都道府県の死亡率を比較したもの。こちらの統計だと、地方毎の特徴や死亡率の変化が見えてくる。分析している死因も、不慮の事故や自殺も扱っていて、眺めているといろんな仮説(単なる想像)が思い浮かんでくる。
全体の特徴をビジュアルに訴えようと工夫したのが、東京都健康安全研究センターの平均死亡率比行列。ここのサイトは死亡率の年次推移等についての解析結果も充実しているようだ。( SAGE(疾病動向予測システム) )
ちなみに、生のデータが欲しいときは、厚生労働省の統計DBから、人口動態などで、死亡率や死因別年次推移等の生データが得られる。
こうやって死因のネタにつっこんでいるのは、東嶋和子さんのブルーバックス B-1309 「死因事典」(bk1、amazon) を読んで考えさせられた影響だな。。
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コメント
肝がんに関しては、C型肝炎ウイルスの分布による影響が強いと思います。肝細胞癌の約7割がC型肝炎ウイルスが原因とされています。西日本に多いとは知っていましたが、ここまで偏っていることは初めて知りました。脳血管障害が東北に多いのは、塩分過多の食生活が原因だと、学生時代に習ったような気がします。雪国→保存食が必要→塩分過多という理論です。本当かどうかは知りませんが、まあありそうな話ではあります。他に、熱いお茶を飲む習慣のあるところでは食道がんの頻度が高いとかいう話もありました。
投稿: NATROM | 2004/04/29 22:07
たまたまその地域の中核病病院にいる医者のウデ、ってのもあるハズですよ(笑)
投稿: 石倉由 | 2004/04/29 23:35
NATROMさん、コメントありがとうございます。
私は出身が秋田ですから、「脳血管障害が多いのは塩分の多い食事のためだ」というのは昔から聞かされてました。随分改善されたみたいですが、食は文化ですから、変えるのは大変だと思います。秋田の脳血管研究センターのお医者さんから聞いた話として、患者さんの家族からお礼に漬物とかを貰うことがあるけど、これがたいてい塩辛くって食べられないってのがありました。
少し調べてみましたが、長野県で肺がんが少ない理由は、ほとんどNETでは議論されてないみたいですね。伊那地方は古くから嫌煙運動が盛んだという記述は見つかったのですけど。。他にも長野県は健康保険の医療費が一番低いらしいので、健康に対する意識が高いのが効いているのでしょうかね? 一方、徳島県で糖尿病が多い原因を語っているサイトは見つからなかったし。
まあ、それでも何らかの因果関係がありそうな場合はいいんですけど、統計を取れば何もなくても順位付けは可能なわけで、相当注意して取り扱わないと、それこそトンデモさんの餌食になる恐れがありそうです。(野沢菜を食べると肺がんにならない、とか。。)
死因別死亡率というのは、発病率、その病気の発見率、治療効果等が絡み合った結果だろうし、病気を治すために引っ越す人だっているだろうし、ある病気から逃れることができると、別の病気にやられちゃうっていうようなこともありそうだし。(所詮、人間最後は何かの原因で死ぬわけだから。。)
まあ、そういうことを全部ひっくるめた上で、せっかくのこういうデータを有効に使っていくべきだと思うので、お役所も単なるデータの開示ではなく、もっと積極的に解説を試みて欲しいものだと思うんですよね。
投稿: tf2 | 2004/04/30 02:06
石倉さん、どうも。
ご指摘のとおりかも。でもさすがに一人の医者の腕だけで、統計を動かすのは難しいと思いますけどね。
それでも確かに、この手の統計は要注意でしょうね。例えば、逆に腕のいい医者のいるところに、治すのが困難な病状の人が集まることもあるかもしれないし。
でも、こういうデータから意味のある情報を見つけだすのが、プロの仕事ってなものでしょうし。もしかしたら、結構重要な関係が埋もれているかもしれないと考えることもできるしね。
投稿: tf2 | 2004/04/30 02:18