「情報検索のスキル」
今の時代、インターネットを如何にうまく活用するか、が様々な物事の成否の鍵を握り始めているように思う。本書の帯にも「検索には戦略が必要だ!」と大きく書かれており、興味のある分野であるし、今までまとまった形でみたことがなかったので読んでみた。
中公新書 1714
情報検索のスキル -未知の問題をどう解くか
三輪 眞木子 著 bk1、amazon
著者は、情報学の専門家で、サーチャーとしての仕事をされていたこともあるようだ。本書は、内容が身近なせいか、思った以上にサクサクと読み進むことができ、あっと言う間に読み終えてしまった。
本書では、実はそれほど目新しい戦略や技術が紹介されているわけではなく、ある程度の経験のある人ならば無意識に漠然と行っている行動を、整理し直して理論的に構築したような内容が主となっている。その点では、頭の中で漠然としていたイメージが、かなり論理的な形で整理されることで、情報学の一端を垣間見ることができると言えるだろう。
一般の個人が興味のある内容について調べる際の戦略や方法というよりも、教育者の立場から、児童・生徒・学生に対する情報教育の重要性に重点を置いて書かれているようだ。従来の情報教育では、情報検索の個々のスキルだとか、得られた情報の処理方法といった個別の技術の習得が中心となっているようだが、いざ自分で問題を解決しようとした時、実際に応用できないようでは意味がない。では、実際に使えるスキルを身に付けるにはどうするか? ということがテーマとなっているわけだ。
本書の第3章では「自己効力感(self-efficacy)」について語られている。あまりなじみのないこの概念、「自分がその分野で成果を上げる能力をどの程度あると自覚しているか」と定義されている。人生の様々な場面で、人がどう行動するのかを規定しているのが、個々人の自己効力感なのだ、という論が展開される。まあ、そうかもしれないけど、それと情報検索とどうつながるのか?
ここで著者は、高い情報スキルを身に付けるためには、情報に関しての自己効力感の養成が必要だ、という立場をとる。しかし、高い自己効力感がなければ高いスキルが身に付かない、というのは、何だかトートロジーのような気もする。スキルを身に付けたから自己効力感が高まるとも言える面もあるような?? (情報スキルに限らず、あらゆることに当てはまるけどね。)
実際には、本を読んで知っているのとやるのとは大違いなわけで、例えば「集めた情報を評価して判断する」って言われても、正にそれをどうやって実現するんだ? という点こそが、情報スキルなのだろうけど、これについての具体的な説明は残念ながら書かれていない。
結局は、具体的な多くの問題の解決を、各自が情報検索を通じて経験していく、という実践を積み重ねて身に付けていくしかない、という至極当然の結論になるようだが。。
ということで本書は「情報検索のスキル」そのものが手に入る本ではなかったようだ。ちと欲求不満。
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