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2004/04/07

新手の化学兵器

CNN.co.jpの 4/7の記事

英国内で化学テロ計画を摘発
ロンドン(CNN) 英米の治安当局筋によると、両国当局は6日までに、英国をねらった化学爆弾テロを未然に摘発した。逮捕者の有無や計画の詳細は明らかにされていないが、テロ計画は四酸化オスミウムという物質を使った化学爆弾を作ろうとしていた模様。

消息筋によると、人混みで爆弾を爆発させて四酸化オスミウムを四散させることが目的だったとされる。四酸化オスミウムは化学工業で反応速度を速める触媒などとして使われる。人体に対する毒性が強く、ガス状のものは皮膚や粘膜、呼吸器を強く刺激する。

BBCは、化学爆弾テロは国際テロ組織アルカイダの支持者が計画したもので、ロンドンなど英国内で民間人の多く集まる場所を標的に想定していたと伝えている。英米情報機関による通信傍受で、計画が発覚したという。計画者が実際に、四酸化オスミウムを入手した形跡はないという。 (後略)

オスミウムとはまた珍しい物質を選んだものだ。オスミウムの基礎知識は、Wikipediaで見られる。同じニュースを扱った YOMIURI ON-LINE(4/7)の記事では、
 四酸化オスミウムは、研究目的で合法的に入手できるが、密室で拡散すると人の肺や皮膚に致命的な障害を引き起こすという。テロ計画はロンドン市内の地下鉄のほか、空港などが標的になっていたという。計画がいつ実行される予定だったかなどは明らかでない。

 ◆四酸化オスミウム=化学工業で反応速度を速める触媒としての用途がある。刺激臭があり、吸い込んだり皮膚に触れると危険。放射性物質と異なり、環境中にまき散らされても、除去はそれほど難しくない。

とあるが、確かに試薬で購入できるかもしれないが、日本だとこの手の試薬を買おうと思えば、結構面倒くさいはずだ。
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四酸化オスミウムは確かに試薬で手に入りそうだ。しかし、製品評価技術基盤機構のDBで調べた限りでは、何故か四酸化オスミウム(CAS No.=20816-12-0)は毒劇物取締法でも化学兵器禁止法でも特に規制対象になっていないみたいだけど大丈夫か?

性質は、国際化学物質安全性カードで見ると、常温で固体だけど、融点42℃で沸点130℃、非常に揮発しやすそうで、酸化物のくせしてかなり嫌らしい。毒性については、WebKis-Plusで検索できるが、マウス経口LD50が162mg/kgとなっている(劇物に相当する毒性レベル)。しかし皮膚についただけでも薬傷がひどそうだし、取り扱いも大変そうだ。致死量はそれ程でもないにしても、加熱して撒き散らすと容易に気化するから、確かに悲惨なことになりそうな物質だ。

化学兵器でインターネットを検索してみてもオスミウムなんて引っ掛かってこないので、このテロ組織が新たに思いついたのかもしれない、今後は世界的に規制が強化されるのかな? しかし、その気になって探せば、リストアップされていない候補物質なんかいくらでもありそうだし、所詮イタチゴッコということなのかも知れないな。

*読売新聞の四酸化オスミウムの説明部分は、Wikipediaの四酸化オスミウムの説明をそのまま転載したように見えるけど、「著作権にうるさい」読売新聞さんとしては問題ないと考えているのかな? Wikipediaの著作権の説明には

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とあるから、出所表示をすればOKのようだけど。。。

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