変換効率28.5%の化合物フレキシブル太陽電池
asahi.com(5/28)の記事。紙のように薄い太陽電池、シャープが開発
シャープが、紙のように薄く、曲げたり筒状にしたりできる太陽電池を開発した。年内の量産開始を目指す。太陽光をどのくらい電気に変えるかを示す「変換効率」は28.5%。住宅に取りつける多結晶シリコンの太陽電池が14%程度とされるのに比べ、飛躍的に効率を上げた。携帯電話、衣類、自動車などに付け、移動しながら電化製品に電力を供給することが可能になるといい、太陽電池の普及を加速させそうだ。今のところ、他のニュースサイトには掲載されていないし、シャープからのリリースも見当たらないので、詳細は公式な発表を待たなくてはわからないが、このニュース、「紙のように薄い」ことよりも「変換効率が28.5%」であることの方が、よっぽどサプライズだと思える。シャープは6月4日、この新技術をパリで開かれる国際会議で発表する。
同社は変換効率が高いため、人工衛星などに使われる「単結晶化合物」の太陽電池技術を応用した。この「単結晶」だと通常、厚みは約200マイクロメートル(マイクロメートルは1000分の1ミリ)。だがシャープは、半導体の配線部品や土台を組み込まなくても、いったん取りつけてはがすだけで半導体の働きをする基板技術を開発、厚みを1~3マイクロメートルに抑えた。重さも100分の1。「化合物フレキシブル太陽電池」と名づけている。 (後略)
シャープのサイトで太陽光電池の説明をしている太陽光発電の基礎知識を見ると、太陽電池として、単結晶・多結晶・アモルファスの各シリコン系と単結晶・多結晶の化合物系に分けられるとあるが、新聞記事の太陽電池は「単結晶化合物」となっており、とすると、GaAs系のような化合物半導体のようだが、「化合物フレキシブル太陽電池」というキーワードでインターネットを検索してもヒットしないので、正に新技術だと思われる。
最近の太陽電池技術動向については、財団法人光産業技術振興協会がまとめた、平成15年度光技術動向調査結果(太陽光エネルギ)(pdf)が非常に良くまとまっている。これを見ると、化合物半導体薄膜系としては、19/44ページ以降に載っているが、最近注目されている系としてCIS(CuInSe2)が紹介されているが、これでも効率は最大18.6%となっているし、開発企業の中にシャープの名前が出てこない。
原子力百科事典の太陽電池の原理も参考になる。ここに掲載されている 各種太陽電池の変換効率 を見ると、確かに化合物系(III-V族化合物系)は効率がずば抜けているようだから、シャープの新技術はこれの応用だろうか?
ちなみに、他の太陽電池の変換効率を見てみると、量産世界最高 18.5%とか、ハイブリッド太陽電池 研究レベル 21.0%、量産レベル 19.5%などとなっており、研究レベルではあっても28.5%は相当なレベルだとわかる。(コストが大問題だろうけど。)
それにしても、「半導体の配線部品や土台を組み込まなくても、いったん取りつけてはがすだけで半導体の働きをする基板技術を開発」って、この朝日の記者さんは理解して書いているのだろうか? 少なくとも、僕はこの表現を読んでも全くこの技術をイメージできないんだけど。。 詳細情報が出てくるのを楽しみに待ってみよう。
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