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2004/05/17

三宅島噴火とプランクトン

Yahoo!ニュースで拾った、共同通信の記事(5/17)。三宅島噴火、海にも影響 プランクトン20-30%増

 噴火で放出された火山ガス中のアンモニアが海に溶け、栄養分となって植物プランクトンが繁殖する-。そんな現象が2000年夏に始まった三宅島の噴火活動で起きたことを、東京大や東海大などの研究チームが17日までに突き止めた。
 噴火で海の生態系にまで影響が及ぶ現象が見つかったのは世界初。プランクトンは噴火前より20-30%多く、チームの植松光夫東大海洋研究所教授(地球環境化学)は「ほかの火山でも同様の現象が起きているかもしれない」と話している。
 植松教授らは01年5月、噴煙の下を横切るように無人観測艇を静岡市から八丈島まで航行させ、二酸化硫黄やアンモニアガス、それらが反応してできた粒子を検出した。
 アンモニアは植物の成長に必要な窒素を含み、粒子となって海に落ちるため、虎谷充浩東海大助教授(衛星海洋学)が米国の観測衛星のデータから、植物プランクトンへの影響を調べた。
日本近海の植物プランクトンの分布の変化を示す、衛星写真が載っている。これを見ると、太平洋ってのはプランクトンの量で見ると随分貧しい環境なんだな、という印象を持つ。

この記事、いつものように裏付けや参考となるような情報のあるサイトを探したが、それらしい記事は見当たらず。この記事で紹介されている写真も、web 上で見つけることができなかった。もう少し大きな写真で見てみたいものだが。。

東大の植松研究室に関連して、海の環境を測るというページはあり、上の記事で出てくる無人観測艇のデータが少し紹介されている。なお、この無人観測艇に関しては、かんちゃんというHPがある。

さて、この記事の疑問点はいくつかある。

まず、人工衛星から海中のプランクトンの量や分布がどうやってわかるのか? についてだが、地球観測利用研究センターの 海洋生物 で解説されていた。ここのサイトには衛星で捉えた様々なデータがデータベースとして公開されていて、画像も多いので、ちょっと眺めてみるのも楽しい。(もっと素人向けの解説があるとうれしいけど。)

次に、写真を見ると、三宅島周辺や下流側(東北方向?)だけでなく、西側も含めてかなり広範囲にわたってプランクトンが増えているように見えるのだけどなあ。そして、これが三宅島の噴火活動の影響であると、どうやって突き止めたのだろうか? という疑問。先の東大の「海の環境を測る」の絵を見ると、確かに噴煙は西側に流れていることから考えると、いろんな方向に拡散しているらしい。同じニュースを扱っている5/17の日経夕刊では、

三宅島付近を通る黒潮の南にあって栄養分が乏しく生物も少ない”海の砂漠”と呼ばれる海域では、01年7-8月にかけて植物プランクトンが噴火前の20-30%も増えていた。チームは三宅島噴火で放出され到達したアンモニアが原因と結論付けた。
とある。この近辺で採集したプランクトンから、三宅島起因と特定できるような何かの証拠が出る(微量元素パターンだとか同位体組成比とか)ならともかく、窒素源は三宅島からのアンモニア以外にも、中国起因の酸性雨だとか、他の海底火山だとか、いろいろありそうにも思える。更に火山ガスには、アンモニア以外にも栄養分となる元素としてリンだって含まれるし、鉄やその他のミネラルも豊富だ。これだけで「アンモニアが原因と突き止めた」ってのは言いすぎだと思うけど。。(せめて海水の分析結果ぐらいあるのだろうか?)

一方、現在の技術を総動員すれば、三宅島から噴出した各成分がどのように拡散して、海にどのように吸収され、海の中でどう拡散するのか、なんてシミュレーションもそこそこ可能なのじゃないだろうか? そういうのと合わせてみると面白いだろうけど。

でも、この結果そのものはありそうな話。自然界はかくも様々に関連しあっているシステムなのだという一例だろうけど、こうやってプランクトンが増えたなら、巡り巡って魚も増えて、我々の食卓にも影響が出てくるのだろうか? 

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コメント

そもそも、アンモニアがあるとプランクトンってふえるのですか?(なんで(?_?)

投稿: A(c | 2004/05/20 14:45

昔、植物の育成に必要な3元素として「窒素・リン・カリ」と習ったような。カリウムは海水には豊富そうだし。

で、例えば
http://lilac.ees.hokudai.ac.jp/people/aooki/RES_BACK%20ground.htm">http://lilac.ees.hokudai.ac.jp/people/aooki/RES_BACK%20ground.htm
http://dolphin.c.u-tokyo.ac.jp/~momoko7/Sys/kai_env.html">
http://dolphin.c.u-tokyo.ac.jp/~momoko7/Sys/kai_env.html
なんてどうでしょう?

投稿: tf2 | 2004/05/20 20:58

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