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2004/05/18

形状記憶バイオプラスチック

ASCII24ニュース(5/17)から、NEC、リサイクル可能な形状記憶性バイオプラスチックを開発

日本電気(株)は17日、熱と外力で変形したプラスチックを元の形状に戻すことができる形状記憶性と、リサイクル性を持つ植物原料のバイオプラスチックを開発したと発表した。

今回開発したバイオプラスチックは、いったん成形した後、熱と外力で変形しても摂氏60度程度で約30秒間過熱すれば元の形状に戻せるのが特徴。使用済みとなったバイオプラスチックは160度程度の成形温度で過熱すると、分子間の結合部が解離して溶かすことができるため、再利用が可能という。素材に代表的なバイオプラスチック素材のポリ乳酸を採用し、高温での解離と冷却時の最結合を繰り返して行なえる“熱可逆結合”持たせることで、形状記憶性とリサイクル性を両立させたとしている。

というニュース。NECのプレスリリースが読める。形状記憶のバイオプラスチックということで、また新たな材料が出てきたのかと思ったら、ベースとなる樹脂は最近はやりのポリ乳酸(PLA)だ。(1/26の記事2/14の記事

確かにいろいろな使い方の可能性がある材料に思える。使用していて変形しても60℃の温風を当てると元の形に戻るし、使用後は160度まで加熱すると再溶融して別の形状に成形しての再利用もできるという訳だ。5/17の日経新聞朝刊には

薄型化するパソコンや太陽電池、電子ペーパーなど電子機器の部材として幅広い応用が見込めると期待している。5年後をめどに実用化を目指す。(中略)加熱するとネジ山が消えて外れやすくなるネジなどの開発も目指す。将来は自動車の内装材などにも使えるとみている。
とある。このプラスチックは、たまたまポリ乳酸をベースとしたバイオプラスチックだけど、生分解性や植物原料であることを前面に出している訳ではなく、あくまでも樹脂の機能で勝負している印象だ。(というか生分解性については全く触れられていない。)

形状記憶ポリマーは以前から知られていて、例えば「やさしいプラスチックの話」の 形状記憶樹脂 などに詳しい。実用化例としては、三菱重工の形状記憶ネジ形状記憶食器具(手の不自由な人向け)Nikonのメガネフレームなどが見つかった。他にも「形状記憶ポリマーの新しい応用展開」というような本の目次を見ると、いろいろな用途の可能性に想像が膨らむ。

回収したプラスチックの溶融再利用が可能という、リサイクル性がもう一つの売りのようだが、基本的には熱可塑性樹脂であれば同様に再利用可能だろうから、熱可塑性のポリ乳酸としては当然の性質と思える。しかし、社会的にリサイクルシステムが出来上がってきている製品(家電リサイクル対象品目やパソコン、車等)については、部品の再利用(リユースよりはマテリアルリサイクルか?)が今後ますます重要になっていくのは間違いないだろうから、狙いは悪くないと思う。

それにしても、こういった新しい展開の考えられる機能性プラスチックの開発が、NECや三菱重工などの会社によって行われているというのも考えてみると不思議。化学メーカーや樹脂メーカーに、これを開発する技術のシーズがなかったとは思えない。理由は色々と考えられるけど、何だかなあ。。

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