「のぞみ」の失敗原因?
日本の火星探査機「のぞみ」が昨年火星周回軌道への投入に失敗したトラブルは、もうほとんどの人が忘れていたと思うけど、その原因をめぐる、お互いに正反対(?)の報道が今日の朝日と読売のサイトに載った。
asahi.com(5/21)探査機「のぞみ」失敗は「偶発的故障」 原因特定は困難
YOMIURI ON-LINE(5/21)火星探査機「のぞみ」の失敗、米国製バルブが原因
さて、タイトルを見ただけだと、両者は全く異なることを報道しているように見えるのだが。。なんで?? もう少し詳しく見ると、asahi.com では、
日本初の惑星探査機「のぞみ」が火星探査に失敗する原因となったトラブルについて、宇宙開発委員会・調査部会は21日、電気回路の偶発的な故障によって起きた、とする報告書をまとめた。故障した部品は特定できず、原因究明には限界もあった。一時、故障の引き金となった可能性が指摘された太陽表面の爆発(フレア)による影響については、因果関係を否定した。とあるのに対し、もう一方の YOMIURI ON-LINE では、「のぞみ」は02年4月に電気回路が故障、主エンジンが動かなくなった。復旧を試みたが成功せず、昨年12月に火星周回軌道への投入が断念された。
昨年12月に任務を断念した火星探査機「のぞみ」について、文部科学省宇宙開発委員会調査部会は21日、燃料供給システムで使われた米国製バルブの設計変更が失敗の根本原因とする報告書をまとめた。とある。同じ委員会の同じ報告書についての記事なのに、この両者の違いが何に由来するものかわかっただろうか? 「のぞみ」の経緯について詳しい人ならば、ピンと来たかもしれない。
(中略)
1998年7月に打ち上げられた「のぞみ」は、同12月に地球重力圏から脱出を図った際、バルブの故障で推力が足りず、失敗につながった。
この両者の違い、よく記事を比べてみると、朝日が 2002/4 の電気系の故障について触れているのに対し、読売は 1998/12 のバルブ故障について触れている、というのがポイント。要するに、「のぞみ」のプロジェクトでは、大きなトラブルが二つあって、その一つの原因は米国製バルブと特定され、もう一つのトラブルの原因は特定できなかった、というのが真相のようだ。
ということで、どちらの記事にも間違いはないようだが、片方だけしか読まないと、随分と印象が違ってくる。どちらにしても、舌足らずの記事と言わざるを得ないと思うけど。もしかしたら何か意図的なものがあるのかな??
正式には、文部科学省の宇宙開発委員会の報告書を見ないといけないが、今のところ、審議会情報(宇宙開発委員会)には、まだアップされていないようだ。
「のぞみ」プロジェクトの詳細については、JAXA(宇宙航空研究開発機構)の火星探査機「のぞみ(PLANET-B)」がまとまっているし、詳しい。
実際には1998年のトラブルで当初計画していた軌道を取れなくなり、苦難の末にようやく計画全体を大きく見直して、火星到着も1999/10から2003/12に変更してたのだが、その最後の最後に、もう一つの大きなトラブルが起きてしまったということだ。この辺の事情は火星探査機「のぞみ」の火星周回軌道への投入断念についてに書かれているが、このページの後半のQ&Aは読み応えがある。(というか、やけに饒舌でドラマチックなので楽しいと言うべきかな。)
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