『問題解決のための「社会技術」』
帯には
問題を解決するには、まず問題を把握しなくてはならない。だが現代社会において、問題の全体像はきわめて見えにくい。狂牛病やSARSをめぐる騒動、原発トラブルや医療ミスの隠蔽疑惑などを見ても、特定分野の専門家だけでは十分に対処できないことが明らかである。本書は、複雑化する社会問題を解決し、社会を円滑に運営する「社会技術」の概念を提唱。学問分野の枠を超えた、新たな取り組みを紹介する。とあり、なかなか魅力的に感ずる。ということで読んでみた。
中公新書 1740
問題解決のための「社会技術」 分野を超えた知の協働
堀井 秀之 著 bk1、amazon
社会技術とは何か? については、
社会技術とは、社会問題を解決し、社会を円滑に運営するための「技術」である。ここで「技術」とは、広い意味での技術であり、工学的技術だけではなく、法制度や経済制度、教育、社会規範などを含んでいる。と説明されているが、わかったようなわからないような。印象としては何でもありみたいだ。
読んでみると、決して目新しい画期的な「技術」が紹介されているわけではなく、一つ一つのアプローチは言ってみれば当たり前のことに見える。だけど、非常に複雑な問題にどう対処するのか?という観点で、システマティックに整理された方法論や学問てのが従来なかなか見当たらなかったので、著者らは、それを新たな学問領域として取り組んだということらしい。
昔から問題解決や新たな発想のための様々な技術、方法論が紹介されてきたし、実践されてきている。(各種のQC手法やKJ法だとか、その他いろいろ。) けれども、この本で紹介されているのは、もっと大掛かりな、組織や集団や社会全体の問題に対して、既存の様々な技術をうまく組み合わせたり、新たな手法を開発したり、という方法で解決しようとするもののようだ。(個人や小さな集団の問題を解決するのにも使えるのだろうけど。)
本書で書かれている内容は、実はristex 社会技術研究システムという所で取り組んでいる内容の紹介ということらしい。著者は元々の専門が土木工学のようで、civil engineering というくらいだから社会問題へのつながりも深いのかもしれないが、やや土木分野に重心が置かれているのは仕方ないのかもしれない。本書で実際に取り扱っている例としては、東京都で直下型大地震が起きる事を想定した防災技術、診療ナビゲーションシステム、交通安全性向上システム、企業のコンプライアンス経営などである。
本書を読んで一番面白そうに思ったのは、ヘルシンキ工科大学のT.コホネン教授が提唱したという、自己組織化マップという、情報解析・可視化ツール。本書ではそのマップの作り方やその解析方法については触れられていないので、ちょっと探してみた。ニューラルネットの応用の一つとして紹介されている。例えば、金沢工業大学のサイトや、鳥取大学自己組織化研究所のサイトなど。Mindwaveという会社では自己組織化マップ作成ソフトを販売しているようだ。
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