無毒のトラフグを養殖
MSN-Mainichi INTERACTIVE(5/7)の記事。
トラフグ:養殖を工夫すると肝も食用に 長崎大研究者フグの毒(テトロドトキシン)が、フグ自体が作り出したものではなく、バクテリア起因だって話は以前どこかで読んだと思うのだけど、この話はどこが新しいのだろう?
猛毒を持つトラフグが養殖方法の工夫で無毒化できることを、長崎大の野口玉雄客員教授(食品衛生学)と同大水産学部が実証した。フグ毒が餌を通して内臓などに蓄積されるという仮説を科学的に裏付けた初の成果で、12日から東京で開かれる日本食品衛生学会で発表する。フグ毒のテトロドトキシン(TTX)は1グラムで約500人を死なせるほどの猛毒で、肝臓や卵巣に多い。
研究グループは01~03年、熊本県天草町や長崎県鷹島町、愛媛県宇和島市など7カ所の主要生産地で養殖された1~3年もののトラフグ計4833匹の肝臓を調べた。マウスを使った試験法で、すべてが人間に無毒だと判定された。
この7カ所では、TTXを持つボウシュウボラなどの貝類を餌に混ぜないほか、4~10ミリの細かい網を使ったり、いけすの底が海底から10~20メートル離れているか陸上に設置されているなど、自然界のTTXを取り込まないよう工夫されていた。
フグの食用について、厚生省(当時)は83年、食べられるフグの種類や部位(筋肉、精巣など)を明示した局長通知を出した。肝臓は有害部位とされたが、食用を規制するかどうかは自治体によって異なっている。
野口さんは「市場のトラフグの8割が養殖ものだ。無毒化の技術が確立できれば、こわごわ食べて命を落とす心配がなくなる」と、無毒養殖法の普及に期待を寄せる。
養殖業者でつくる全国かん水養魚協会の稲垣光雄専務は「フグの消費拡大につながる成果だが、網目に付いた有毒な貝をフグが食べるなどの心配は捨てきれない。100%の安全を確保できるのか、今後の研究に注目したい」と話している。
調べてみると、正にこの長崎大学の研究グループと共同研究(?)したふぐ料理屋さんが既に応用(?)していて、特許出願中とのこと。そもそも、この新聞に出てくる野口玉雄さんが既に本に書いているようだし。。(「フグはなぜ毒をもつのか」amazon)
さて、フグ毒の正体については、crystalaqua.com というサイトの海洋有毒生物を知るや、「有機って面白いよね!!」というサイトで見つけた、河豚の説明を読むと、やはりバクテリア起因と考えられており、そのバクテリアも特定されているようだ。(後者のサイトでは、テトロドトキシンの化学構造や合成法も載っている。)結局、この研究は多くの実証例を積み重ねました、ということに意義があるのかな?
一方、フグ毒についてを読むと、無毒のトラフグは共食いをする習性があるとのことで、無毒のフグの養殖は大変なのかもしれない。そもそも、毒のない(養殖)フグがおいしいのかどうかという問題もあるし、無毒であることをどうやって保証するのか、という問題もある。中途半端に無毒のフグと有毒のフグが混じってしまうと却って混乱するわけだし。(毎年何人かがフグ中毒で死亡している現状を前にして、「100%の安全を確保できるのか、今後の研究に注目したい」なんてコメントは、変なゼロリスク症候群だけど。)
そう言えば、トラフグの養殖でホルマリンを使う問題もあったな。これはエラへの寄生虫を駆除する目的で使用したらしい。毎日新聞の記事はこちら。中西さんの2003/9/16の雑感によると、ホルマリンを経口摂取する場合には発がん性はないとのことだが。
それでもやっぱり、フグの肝は何だか食べてみたい気にさせられる。
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