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2004/05/11

日本は不安全な国?

YOMIURI ON-LINE(5/11)の社説。[安全・安心]「科学技術はどう貢献できるか」

「自分の国は十年前より、安心な場所ではなくなった」

 日本人の十人に九人が、そう感じているというデータを、今春、スイスの民間財団「世界経済フォーラム」が発表した。

 調査した五十一か国の平均は、十人に六人だ。日本は突出している。

 災害や事故の多発、新たな感染症、テロの脅威、治安悪化など、不安材料が急増した。安全神話が崩壊して久しい。

 安心と、そのおおもとになる安全を取り戻すために、科学技術はどう貢献できるのか。災害や治安の専門家たちからなる文部科学省の懇談会が、そのための政策を網羅した報告書をまとめた。

 安全・安心を確保するには、行政や法律などの制度も重要だが、今回、科学技術の活用に光を当てた意義は大きい。

 科学技術は、これまで、安全・安心を脅かす事態に後追いで対処してきた。問題が起きると、国が専門家を探し、相談しながら調査する。その後の研究や対策も、省庁間の壁が厚かった。

(後略)

安全と安心が確保された国を目指し、科学技術の側からの取り組みについて国が検討を進めていることの紹介。頑張ってやってくれ、というだけで、あまり社説らしい主張はされていない。

それはともかく、これを読んでまさか「日本は世界で最も不安全な国だ」と思う人はいないと思う。どんな調査なんだ?ということで探してみると、「世界経済フォーラム」の調査結果は、Global Survey Finds Ordinary People Feel “Unsafe, Powerless and Gloomy” About the Future Security and Prosperity of the World(詳細データへのリンクが切れている)で、文部科学省の報告は「安全・安心な社会の構築に資する科学技術政策に関する懇談会」報告書

*世界経済フォーラムの調査結果の詳細は、こちら

「次の世代は今より安全でない世界で暮らすと思う」にイエスと答えた割合も、日本が68%でトップ。でも、この数値が低い順に並べると、西アジア・東欧・アフリカ・中東・南北アメリカ・太平洋・西欧・日本となる。他の設問の答えも似たような順番に並んでいる。つまり、現時点で豊かでそれなりのレベルに到達している国の方が、将来を不安視する傾向が高く、現状も厳しく見ているのではないか?

現在、紛争の真っ只中の国や、蔓延するAIDSに苦しんでいる国の人々が、10年後に希望を持つのはある意味当然だし、日本や西欧諸国のような国では、ある種の到達感と共に将来不安があるのも理解しやすい。わからないのは、アメリカがなんで現状についても、将来に対しても比較的楽観的なのかだ? やっぱり国民性かなあ?

マズローの欲求段階説(1. 生存欲求、2.安全欲求、3.所属・愛欲求、4.承認欲求、5.自己実現欲求)というのがあったが、日本などの状況を見ると、自己実現の先に更なる「欲」(長生き・健康等)がありそうに思う。(人間の欲にはきりがない。) ということで、もしかしたら、実は日本は世界一安全な国ということなのかもしれない。

読売の社説で「科学技術は、これまで、安全・安心を脅かす事態に後追いで対処してきた。問題が起きると、国が専門家を探し、相談しながら調査する。」とあるが、ここも実は少し認識が違っていて、従来から科学技術は種々の安全・安心対策を構築してきているけれど、その網の目をくぐり抜けた事故、事件や災害が大きな問題となっているのではないだろうか?

現状が十分だとは思わないが、自分たちを必要以上に卑下することもない。我々が世界的に見て、どういうレベルにいて、何ができていないのか、といった客観的な現状認識が文部科学省の懇談会でも抜けているように思う。

この話をまともに議論すると相当に大変なので、この話はこれくらいにしておく。機会があれば、科学技術と安全・安心の話はまた考えてみたい。

なお、懇談会資料の中に、安全と安心の定義があったので、引用しておく。

安全とは、人とその共同体への損傷、ならびに人、組織、公共の所有物に損害がないと客観的に判断されることである。ここでいう所有物には無形のものも含む。

安心については、個人の主観的な判断に大きく依存するものである。当懇談会では安心について、人が知識・経験を通じて予測している状況と大きく異なる状況にならないと信じていること、自分が予想していないことは起きないと信じ何かあったとしても受容できると信じていること、といった見方が挙げられた。

安心については以下のような、わかったようで良くわからない、ただし書きがついていて笑えた。

完全に安心した状態は逆に油断を招き、いざというときの危険性が高いと考えられる。よって、人々が完全に安心する状態ではなく、安全についてよく理解し、いざというときの心構えを忘れず、それが保たれている状態こそ、安心が実現しているといえる。

この懇談会で議論している科学技術には、自然科学に加えて社会科学も当然含まれていて、内容としては 5/3のブログ で紹介した『問題解決のための「社会技術」』で扱っている分野とかなり重なっている印象だ。

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