110番元素「ダームスタチウム」
日本化学会の雑誌「化学と工業」の最新(6月)号から。「110番元素の命名と115、113番元素の合成」永田目諭一郎(原研先端基礎)化学と工業, Vol.57,(6),p624 (2004)
元素の名前は、これまで原子番号109のマイトネリウム(Mt)までつけられていたが、2003年8月の国際純正応用化学連合(IUPAC)総会において、110番元素の名称を darmstadtium(元素記号 Ds)とすることが了承された。これはドイツのダルムシュタット(Darmstadt)にある重イオン科学研究所(GSI)で発見されたので、研究所のある町の名前にちなんで命名された。とある。110番元素 Ds は鉛にニッケル粒子を衝突させて合成されたもの。ちなみに、同じ研究所がビスマスにニッケルを照射して111番元素を合成しており、近く新元素の名前が提案される見通しとか。
一方、ロシアの研究グループは、アメリシウムにカルシウムを照射して115番元素を合成し、その壊変過程で113番元素も確認したとされているが、これらについては今後の追試や再現性の確認実験が必要としている。
永田目さんは、
いったい自然界に元素はいくつ存在するのか。周期表はどこまで続くのか。究極を追い求める研究である。と結んでいるが、この辺の元素は既に自然界に存在すると言えないようにも思えるんだけど。(人間の活動も大きな意味で自然の一部という立場を取るなら別だが。。)
さて、この110番元素の名前だが、同じ「化学と工業」の2004年4月号に掲載された「原子量表(2003)」には「ダームスタチウム」と書かれている。一方、丸善の発行している理科年表の最新版では「ダルムスタチウム」と書かれているようだ。日本語表記は誰が決めているんだ?(104番も「ラザホージウム」と「ラザフォージウム」の二通りがあるようだ。)
本家IUPACのページでは110番元素についてのリリースは、こちら。この元素って周期表上はニッケル、パラジウム、白金の列の真下に位置しているから貴金属っぽいけど、寿命のはかない貴金属ってことなのかな。
103番のローレンシウム(Lr)までは割とポピュラーかと思うけど(個人的には一応全部暗記している)、104番以降は過去にロシアの研究グループとの競争の中で、元素名が二転三転したこともあり、何だか頭に入っていない。この辺の最新事情は、Wikipediaの超ウラン元素が良くまとまっているようだ。
ちなみに、、 WebElements では 111番元素は Rg(roentgenium レントゲニウム)となっていて、112番以降も表に掲載されているが、IUPACの最新の Periodic Table では、111番元素 Uuu(ウンウンウニウム)までとなっており、これが公式の最新版周期表ということだろう。
おまけ。中国語周期表を作成して公開されている方もいる。109番まで載っている。中国では、元素が見つかる度に新しい字を作るのかな? 化学同人ではTシャツを作って売っている。
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コメント
Yahoo!ニュース経由の時事通信(2004/09/28)。http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20040928-00000572-jij-soci">113番目の新元素発見=加速器で合成に成功-「リケニウム」に?・理研
本件については、http://www.riken.jp/r-world/info/release/press/2004/040928_2/index.html">理研のニュースリリースがとても親切丁寧だ。ウィキペディアでも早速この報道が反映されている。http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A6%E3%83%B3%E3%82%A6%E3%83%B3%E3%83%88%E3%83%AA%E3%82%A6%E3%83%A0">ウンウントリウム。
*ロシアが今年2月に113番元素を合成したとされているが、データが不十分のため、命名権を与えられていないらしい。今回の理研のデータは命名権を得られる可能性が高いようだ。Jで始まる元素がないから、Japoniumも悪くないけど、国名がついた元素って意外と少ない。
投稿: tf2 | 2004/09/28 19:31