「DNAブック」とは?
YOMIURI ON-LINE(6/28)の記事。魚の病気を素早く診断!DNA染み込ませたブック完成
魚の病気や耐病性などを迅速に診断できる、遺伝子DNAを染みこませた“本”「アクアDNAブック」を理化学研究所、神奈川県、東京海洋大学が共同で作製した。ということで、DNAを紙に染み込ませたライブラリーが実用化されたようだ。調べてみると、神奈川県のプレスリリースがあったが、これを読んでもさっぱり内容が理解できない。このリリースは4/22で、日経新聞には4/23に今回の記事と似た内容が載ったようだ(すいさんWatch)が、今回の方がページ数が倍になっているみたいだし、バージョンアップしたのかもしれないな?30日から全国の水産試験所に試験配布するが、昨年、気温の上昇とともに、全国に拡大したコイヘルペスの早期発見など対策にも威力を発揮しそうだ。
ブックはB5判、約100ページ。コイヘルペスなど病原体17種のDNAの断片と、ヒラメやマダイなどの耐病性の判定に利用できるDNA217種類の合計234種類が収められている。
ブックから、調べたい病気のDNAを切り取って水に溶かし、魚から採取した試料と反応させれば、約2時間ほどで病気の有無などが診断できる。専門機関に試料を運ぶ手間が省けるのが大きな強みだ。DNAは通常、冷凍保存しなくてはならないが、DNAブックは本のように持ち運びができ、約1年間は、常温で保管できるという。
理研のサイトには関連情報として、リリースがみつかった。(これは1年以上前の記事だけど。)「DNAブック」という名前は理研が商標登録出願中のようで、この記事によると、従来は-80℃に冷却した凍結大腸菌の形で配布するしかなかったDNAサンプルを、
(1) 雑誌のページに、DNAを固相化することで、論文と同時に遺伝子DNAを読者に届けることができます。とのこと。これだけだと実感が湧かないので探してみたら、理研の英語版リリース(MS-Word文書)に、DNAブックを開いたページの写真が載っている。また日本科学未来館のサイトには、こちらに解説記事があり、こちらにはDNAスポットの拡大写真が載っている。このページをそのまま切り取ってPCR溶液に溶かして使うようだ。
(2) 読者は、PCRなどにより容易にDNAを回収できます。ここではcDNAプラスミド溶液を水溶紙にスポットし乾燥させたDNAシートから、DNAがスポットされた部分を切りだしPCRチューブに移し、そこへPCR溶液(酵素、プライマー、基質、塩)を加え、そのままPCR反応を行うことにより、cDNAを容易に回収することができます。DNAブックは、さまざまな長さのcDNA(インサート長;732~4,896ベース)、書籍の出版、輸送、保管のときにさらされる低温から高温(-40度/14時間から140度/5秒)、高圧(17メガパスカル)、長期保存(3ヶ月以上)に対応することができます。そして、固相化されたDNAは、高い割合で(95~100%)回収できます。
DNAブックは、全世界に広がるクローンユーザーにとって、極めて便利なものになります。-80度の冷蔵庫の中に入れたDNAバンクと同じDNAクローンを、常温で研究者の本棚に設置できます。使用する必要性が生じたら、2時間のPCRでDNAを入手できます。
DNAというと生命の源みたいなイメージで「生もの」という印象があるけれど、こんな風に固定化されて、無造作に本の形で普通の条件で保存できるってのは、何だか既成概念を覆されてしまう。
*冒頭の記事については、従来のDNAチップを使った診断技術との相違、優位性はよくわからないけど。。
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