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2004/06/30

サントリーの青いバラ

ITmediaニュース(6/30)「青いバラ」の開発に成功 サントリー

 サントリーは6月30日、世界で初めて青いバラの開発に成功した、と発表した。不可能の代名詞とされてきたBlue Rose。“青っぽい”バラはあったが、これはバイオテクノロジーでバラ自身が青色色素を作り出すことに成功。不可能を可能にした。

 青いバラを夢見て古くから交配が繰り返されてきたが、そもそもバラには青色色素「デルフィニジン」を作るために必要な酵素を生む遺伝子が機能していないことが分かっている。

 サントリーはオーストラリアのバイオベンチャー・カルジーンパシフィックと共同研究を進め、1995年には青いカーネーションの開発に成功。1997年から「ムーンダスト」として日本で販売している。

 青いバラは、パンジーから青色色素に関わる遺伝子を取り出し、バラに組み込むことで開発した。従来も、色素はないながら青味がかかって見える「青系統」のバラはあったが、新開発のバラは花びらにデルフィニジンをほぼ100%含んでいるため、今までにない青さのバラになっているという。さらに赤いバラなどと交配させることで、多彩な色も可能になるという。

 商品化は、「遺伝子組換え生物等の使用等の規制による生物の多様性の確保に関する法律」に基づく評価と承認を受けた上で検討するとしている。

ということで、確かに辞書を見ると、"blue rose" は、「ありえないもの」という意味がある。サントリーのニュースリリースは、こちら。この写真を見てもあまり青くみえないけど。。 サントリーが同じ手法で既に商品化ている、青いカーネーション、ムーンダストも、青というより紫だな。

従来から「青いバラ」は非常に多くの人の興味をひいてきたようで、今開催中の浜名湖花博でも「ブルーヘブン」や「青龍」という品種が展示されているし、個人サイトでも青薔薇の部屋や、Blue Gardenのように種々の品種の写真が紹介されているが、確かに「青」というのは無理があるような気がする。本当の青ってのは相当に難しいらしい。

一方、青いバラをインターネットで探してみると、楽天のサンフラワー青い花束や、花の店ガレージの blue rose 等で売っているのがみつかるが、不思議なことに、これらはまた怪しい程に青い。 (どうなっているんだか?)

ちなみに、バラではないが、見た目はバラにそっくりということで、サカタのタネが青いトルコギキョウなんてものを発売したりしている。

今回のサントリーの遺伝子組み換え技術に関する基礎知識、特にデルフィニジンやアントシアニンの働きについては、中国新聞のブルーの遺伝子という記事や、先に紹介したBlue Gardenというサイトの青い薔薇についてが参考になる。

サントリーはこの青いバラの開発に十数年を費やしたようだが、より詳しく知りたい時は、この技術を取材した「青いバラ」(最相葉月 著 bk1(単行本)bk1(文庫)amazon(単行本)amazon(文庫))という本もあるようだ。

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2004/06/29

リチウム系水素貯蔵化合物

Yahoo!ニュース(6/28)の記事。従来より多量の水素を貯蔵 東北大が新材料を開発

 東北大金属材料研究所(仙台市)の折茂慎一助教授らが28日、環境負荷が小さく、再生可能な新エネルギーとして注目されている水素を、従来より多量に貯蔵できる新材料を開発したと発表した。
 現在主流の合金系の材料より、3-5倍の水素が貯蔵ができる。燃料タンクの小型化が可能になり、燃料電池自動車への応用が期待されている。
 折茂助教授の研究グループによると、新材料はマグネシウム窒化物とリチウム窒化物を、水素ガスが入った容器中で熱処理して合成。貯蔵できる水素は材料100グラムあたり9グラムで欧米各国の開発目標値(6グラム程度)を超えることに成功した。
 しかし、貯蔵した水素を取り出すには、材料を高温(ピーク時約400度)で加熱する必要があるため、実用化に向けては課題が残っているという。研究グループは「今後、ピーク時を150度以下に抑えたい」としている。(共同)
ということで、高性能の水素貯蔵材料が開発されたようだ。同じ Yahoo!ニュースで、6/29の河北新報の記事、水素貯蔵量3―5倍に向上 東北大金研が新素材開発が読めるが、こちらはやや詳しい内容にも突っ込んでおり、
 マグネシウムとアミノ基を結合したマグネシウムアミドに、リチウム水素化物を合成。100グラム当たり9グラムの水素を貯蔵でき、国際エネルギー機関の目標値である100グラム当たり5.5―6グラムの貯蔵量を大幅に上回った。
 水素の貯蔵には従来、ランタンなどの合金系材料が使われてきたが、重量がある上、貯蔵可能な水素量も100グラム当たり1.2―3グラム程度のため、新素材の開発が競われていた。
 また、マグネシウムアミドは、熱すると燃料電池を劣化させるアンモニアを発生させるため、その抑制も課題だった。
 今回、マグネシウムアミド「1」に対して、リチウム水素化物「4」の割合で合成して、アンモニアの発生を抑制した。
 新素材は、水素の放出のために、これまで300度以上必要だった加熱を130度まで低下。安全性も大幅に向上した。
 研究グループは「近い将来、他の金属の触媒を使うことなどによって、水素の放出ピークが100度以下でもできるようにしたい」としている。
 燃料電池自動車が400キロ走るには、4キロの水素が必要とされる。現在、試作されている燃料電池には、高圧水素ガスや液体水素などが使われているが、重量などがネックとなっていた。
とある。この解説を読んでもどんな化合物なのかさっぱりイメージできないし、先の記事とは操作温度が随分違うぞ。

この材料については東北大学金属材料研究所の環境材料工学研究分野の情報を見るのが手っ取り早い。トヨタとの共同研究として進めているようで、この1年、活発に新聞発表等を行ってきている。新着情報のページから報道発表記事が読めるし、最近の講演資料(pdf)も見られる。(pdf資料がうまく見られないときは、このページの右上の「最近の講演内容」のリンクから、ファイルを一旦PCにダウンロードするとうまく見られるようだ。)

どうやら材料としては、LiNH2系とLiBH4系の2種類を検討しているようで、それぞれLiを他の元素で置換することで性能向上を狙っているようだが、今回の材料は LiNH2 と Mg(NH2)2 の 4:1 の固溶体?らしい。

科学技術政策研究所の科学技術動向 2003年11月号の中に解説記事があるが、こちらは昨年の時点で既に放出温度を100℃以下にできたと書かれているし、水素貯蔵能力や他の特性と操作温度との最適化を進めているのかもしれないが、最初の記事の「400℃を150℃以下にしたい」というのは間違いじゃないか?

燃料電池と組み合わせる水素の貯蔵方法としては、圧縮ガス、液化ガス、貯蔵化合物のどれが最終的に使われるか、まだまだ混沌といったところのようだ(水素以外の燃料を供給して、オンサイトで水素を製造する方法もある)が、山口大学の公開講座資料に、こんな比較図がある。今回の材料はこの図の「ケミカルハイドライド」に該当するようだ。確かになかなか有望みたいだ。 (ガソリンには負けているけど。)

水素貯蔵材料としては、ニッケル水素電池が実用化されていることもあって水素吸蔵合金が有名だけど、カーボンナノチューブ等の炭素材料やヘキサン等の有機化合物を始めとする様々な水素化物等が検討されているようだ。最終的に何が使われるのか? まだまだ先が見えない激しい開発競争が続きそうだ。

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2004/06/28

「DNAブック」とは?

YOMIURI ON-LINE(6/28)の記事。魚の病気を素早く診断!DNA染み込ませたブック完成

 魚の病気や耐病性などを迅速に診断できる、遺伝子DNAを染みこませた“本”「アクアDNAブック」を理化学研究所、神奈川県、東京海洋大学が共同で作製した。

 30日から全国の水産試験所に試験配布するが、昨年、気温の上昇とともに、全国に拡大したコイヘルペスの早期発見など対策にも威力を発揮しそうだ。

 ブックはB5判、約100ページ。コイヘルペスなど病原体17種のDNAの断片と、ヒラメやマダイなどの耐病性の判定に利用できるDNA217種類の合計234種類が収められている。

 ブックから、調べたい病気のDNAを切り取って水に溶かし、魚から採取した試料と反応させれば、約2時間ほどで病気の有無などが診断できる。専門機関に試料を運ぶ手間が省けるのが大きな強みだ。DNAは通常、冷凍保存しなくてはならないが、DNAブックは本のように持ち運びができ、約1年間は、常温で保管できるという。

ということで、DNAを紙に染み込ませたライブラリーが実用化されたようだ。調べてみると、神奈川県のプレスリリースがあったが、これを読んでもさっぱり内容が理解できない。このリリースは4/22で、日経新聞には4/23に今回の記事と似た内容が載ったようだ(すいさんWatch)が、今回の方がページ数が倍になっているみたいだし、バージョンアップしたのかもしれないな?

理研のサイトには関連情報として、リリースがみつかった。(これは1年以上前の記事だけど。)「DNAブック」という名前は理研が商標登録出願中のようで、この記事によると、従来は-80℃に冷却した凍結大腸菌の形で配布するしかなかったDNAサンプルを、

(1) 雑誌のページに、DNAを固相化することで、論文と同時に遺伝子DNAを読者に届けることができます。
(2) 読者は、PCRなどにより容易にDNAを回収できます。ここではcDNAプラスミド溶液を水溶紙にスポットし乾燥させたDNAシートから、DNAがスポットされた部分を切りだしPCRチューブに移し、そこへPCR溶液(酵素、プライマー、基質、塩)を加え、そのままPCR反応を行うことにより、cDNAを容易に回収することができます。

 DNAブックは、さまざまな長さのcDNA(インサート長;732~4,896ベース)、書籍の出版、輸送、保管のときにさらされる低温から高温(-40度/14時間から140度/5秒)、高圧(17メガパスカル)、長期保存(3ヶ月以上)に対応することができます。そして、固相化されたDNAは、高い割合で(95~100%)回収できます。
 DNAブックは、全世界に広がるクローンユーザーにとって、極めて便利なものになります。-80度の冷蔵庫の中に入れたDNAバンクと同じDNAクローンを、常温で研究者の本棚に設置できます。使用する必要性が生じたら、2時間のPCRでDNAを入手できます。

とのこと。これだけだと実感が湧かないので探してみたら、理研の英語版リリース(MS-Word文書)に、DNAブックを開いたページの写真が載っている。また日本科学未来館のサイトには、こちらに解説記事があり、こちらにはDNAスポットの拡大写真が載っている。このページをそのまま切り取ってPCR溶液に溶かして使うようだ。

DNAというと生命の源みたいなイメージで「生もの」という印象があるけれど、こんな風に固定化されて、無造作に本の形で普通の条件で保存できるってのは、何だか既成概念を覆されてしまう。

*冒頭の記事については、従来のDNAチップを使った診断技術との相違、優位性はよくわからないけど。。

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2004/06/25

満腹での献血は危険?

たまには献血ネタ。NIKKEI NET(6/25)の記事。満腹時の献血、リスク7倍・めまいや意識喪失

 満腹時の献血は食後5―6時間と比べ、めまいや意識消失などの副作用「血管迷走神経反射(VVR)」を起こすリスクが約7倍も高いことが、献血者約32万9000人を対象にした大阪府赤十字血液センターの調査で25日分かった。献血者の大規模な調査で食事時間とVVRの関係を明らかにしたのは初めて。

 VVRを起こす献血者は全国で毎年数万人に上り、転倒してけがをするなどのケースが少なくない。同センターは年齢や献血回数などほかの要因も合わせてデータベース化し、事故防止のため危険度を判定するシステム開発を目指している。

 調査は昨年6月から今年2月にかけ、同センターで献血した32万9005人に食事時間や睡眠時間などを尋ねた。VVRを起こしたのは1055人だった。

 食事時間別にVVR発生率をみると、食後2時間未満のグループが0・85%と最も高く、続いて2―3時間が0.36%、3―4時間が0.35%。最も低かった5―6時間の0.12%と比べ、食後2時間未満の発生率は7.08倍と高かった。〔共同〕

夕刊紙面にはもう少し詳しく載っているので、補足すると
 食事6時間以上になると発生率は上昇に転じて、8時間以上のグループでは0.27%となった。

 睡眠時間はVVRの発生率に影響せず、ほかに (1)年齢が若い (2)血液の体内循環量が少ない (3)献血回数が少なく慣れていない--などの要因が発生率を高めていた。

 血管迷走神経反射(VVR) 血液の体内循環動態の変化や心理的緊張が原因で起こる採血副作用の一つ。症状はめまいや嘔吐、意識消失、けいれんなど。(中略)2002年度は全献血者約5765000人のうち、約43500人に発生。献血時の採血副作用の72%を占めている。

ということ。血管迷走神経反射というのは知らなかったので調べてみると、ここここなどが参考になる。どうやら、一般的に貧血と呼んでいる症状のようだ。(VVRは、Vaso Vagal Reflexの略:英和辞典を見ると、血管・迷走神経・反射という意味そのもの)

さて、赤十字のページでは、VVRの発生率は0.7%となっている。一方、富山県の例では、0.42%から1.22%となっており、意外なことに成分献血の方が発生率が高いことがわかる。夕刊の数値から計算すると、2002年度の全国でのVVR発生率は0.75%となるから、これらを比べると、どうも今回の大阪の統計は全体的に発生率が小さすぎるような気がするなあ。大丈夫かな、この統計。。

もう一つ気になるのは、献血する際に食後5~6時間てのは結構レアケースのように思えること。献血の受付時間を考えると、大抵の人は食後数時間以内じゃないだろうか? 献血しようとする人が、昼食を抜いて夕方に献血するとはあまり思えないし(ダイエット狙いの人は別か?)。

それにしても、現状はここにあるように、むしろ問診時に「食事は済まされましたか?」と聞かれ、空腹時には献血を差し控えてくれという傾向があるように思えるのだが、ということは今回のデータは、従来の常識に反する結果ということか?

夕刊には大阪府赤十字血液センターの谷慶彦副所長のコメントとして「満腹時は消化活動のため血液が腹部に集まり、脳の血流が減少してVVRを起こしやすくなると考えられる。食後すぐを避け、ある程度時間がたってから献血するのが望ましい。」と載っている。

今度献血に行くときは、わざと食後6時間ぐらいしてから行ってみようか?

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2004/06/24

ヨーロッパの子どもの死亡原因

nikkeibp.jp(6/24)の記事から。WHO、欧州では子どもの3人に1人が環境汚染などにより死亡と報告

WHO(世界保健機関)は6月19日に、欧州では子どもの3人に1人が環境汚染などにより死亡しているという調査結果を発表した。死亡原因は屋内外の大気の汚染、水の衛生状態の悪さ、鉛中毒、事故など。
 (中略)
WHOの調査によれば、欧州では毎年、19歳以下の未成年10万人が環境汚染などにより死亡している。19歳以下の死亡原因の34%を占めるという。また、年間約1万3000人の0~4歳児が粒子状物質による大気汚染が原因で死亡。同約1万人が室内での固形燃料の使用が原因で死亡していることがわかった。水などの衛生状態の悪さが原因で死亡する0~13歳の子どもは1万3000人にのぼる。

WHOは調査結果に基づき、子どもの環境と健康に関する行動計画の採択を呼びかける予定。例えば、ガソリンに含まれる鉛の廃止は、血中の鉛濃度上昇による脳障害の削減につながる。行動計画には、このような具体的対策のほか、教育、立法、研究といった部門横断的な取り組みも盛り込む予定だ。(日経エコロジー)

ということで、ヨーロッパの話とは言え、やけにセンセーショナルな見出し。この記事の元となった WHO のリリースは、One in three child deaths in Europe due to environment。これを読むと、ヨーロッパの子どもの3人に1人が環境が原因で死亡するわけではなく、死亡する子どもの1/3が環境要因や事故が原因ということだ。随分違うと思うけど。。(これらの原因で死亡する子どもはトータルで、10000人に6.5~8.5人とある。)

それにしても、ヨーロッパの大気や水の汚染がそんなにひどいのは意外。更に元のデータは、Study on environmental burden of disease in childrenで得られる。これによると、ヨーロッパを3つの地域に分けて分析されている。すなわち、イギリス、フランス、イタリア、ドイツ、スイス、スペイン、ポルトガル、北欧各国等のいわゆる先進国からなる EURO-A に対し、アルバニア、アルメニア、アゼルバイジャン、ボスニア・ヘルツェゴビナ、ブルガリア、キルギスタン、ポーランド、スロバキア、タジキスタン等からなる EURO-B、ベラルーシ、エストニア、ハンガリー、ラトビア、リトアニア、ロシア、ウクライナ等からなる EURO-C の3つのグループだ。

もちろん EURO-A の地域はいずれの要因による被害も他の地域に比べて最も小さいのだが、面白いことに、大気汚染や不衛生な水による被害は、EURO-B が最も大きく、鉛の害と事故の被害は EURO-C が大きいという意外な結果が出ている。社会インフラの整備状況や生活水準等について、これらの国々をまとめて議論できるのかどうか不明だが、少なくともヨーロッパは広いなあ、ということはよくわかる。(ヨーロッパは先進国だけからなるグループではないという認識は重要だろう。)

*日本の年齢別死亡原因のグラフはこちらで見られるが、19歳までの年齢層だと、事故、自殺が圧倒的に多い。

こうやって、実際に子どもたちの死因を分析して、その結果を予算配分を含めて様々な判断に活かしていこうという動きは評価できる。一方、同じ6/24の MSN-Mainichi INTERACTIVEには、環境ホルモン:子どもを守ろう 千葉大が指導者を養成という記事が載っている。

 最近の子どもにはアレルギ-疾患が目立ったり、出生時に低体重の傾向が見られたりする。へその緒からはダイオキシンやDDT(殺虫剤)、PCB(ポリ塩化ビフェニール)など有害な化学物質がごく微量ながら検出される。

 そうした化学物質がどの程度影響しているかは分かっていないが、子宮内の化学物質を減らすことは必要だ。また、同じ化学物質にさらされた場合の個人差を知る研究の意義は大きい。(後略)

とあるが、何を今さら? という印象だ。 DDTやPCBなんてとっくに日本で使用禁止になった物質の影響を、次世代の問題と位置づけるセンスがわからない。念のため、千葉大学大学院 環境生命医学へリンクしておく。環境ホルモンについては、中西さんの千手観音が現状をよく表していると思うのだが。。

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2004/06/23

日米のエネルギースター制度

EICネット(6/23)の記事。 冷房の効率性向上に向けた「クール・チェンジ」キャンペーンを展開

 EPAは今年の夏、エネルギー・スターの「クール・チェンジ」キャンペーンを実施する。
 一般的な家庭では、エネルギー代に、年間1400ドル(16万8000円)が費やされているが、このうちの半分近くは冷暖房に関するものである。適切な規模の、エネルギー効率的な冷暖房機器を選択すれば、年間、約20%のエネルギー代を節約することができる。また、10件に1件の家庭がエネルギー・スターの冷暖房機器を使用すれば、170億ポンドの大気汚染物質の排出を抑制することができる。
 今回のキャンペーンは、一般家庭に対し、経済的および環境上の節約を認識するための情報を提供するものである。旧式の冷房機器を効率性の高いエネルギー・スターの機器に交換すること、ダクトの点検・締め直し、エアフィルターの交換などに関する勧告がなされている。【EPA】
EPAのリリースは、こちら。このキャンペーンは、省エネのための様々な呼びかけをするもので、特別の特典(割引や賞品等、何らかのインセンティブなど)は用意されていないようだ。どの程度の効果が見込めるものなのだろう? パンフレットには省エネのための各種tipsも載っているけど、キャンペーン名にもあるように、買い替え推進運動がメインだし、何だかメーカーの利益が透けて見えるみたいだなあ。。(それにしてもアメリカではこんなに文字ばかりのパンフレットはまじめに読まれるのだろうか?)

ところで、エネルギースターと言えば、日本でもパソコン等でよく見るけれど、冷暖房機器では見たことがない。調べてみると、日本では国際エネルギースター☆プログラムという制度で管理されているようだが、ここ には「このロゴが世界の省エネルギー型OA機器のマークです。」と書かれており、日本ではOA機器(コンピュータ、ディスプレイ、プリンタ、ファクシミリ、複写機、スキャナ、複合機)に限定している制度のようだ。

一方、本家アメリカでは、

EPA established ENERGY STAR in 1992 as a voluntary, market-based partnership to reduce air pollution by giving consumers simple energy-efficient choices. Today, with assistance from the U.S. Department of Energy, the ENERGY STAR is featured on more than 40 types of products, from light bulbs to major appliances to new homes and buildings. More than 9,000 organizations have become ENERGY STAR partners and are committed to improving the energy efficiency of products, homes and businesses.
とあるように、EPAとDOEが一緒に推進する運動となっており、OA機器どころか、洗濯機、冷蔵庫、蛍光灯、エアコン、暖房機器、電話機、DVDを始め、信号機や自販機なんてものまでが対象となっている。(一覧

エネルギースターは、日本ではいわゆる「環境ラベル」の一種という位置づけのようだが、その環境ラベル、環境省の環境ラベル等データベースで見ると、こんなに沢山あるとは知らなかった。地方自治体特有のもの、個別企業独自のもの、海外のもの等も含まれているようだが、それにしても一体いくつ知ってるだろう?

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2004/06/22

羊のげっぷ対策

cnn.co.jp(6/22)の記事。羊の「げっぷ」、温室効果ガス減らす血清開発と

- CNN/REUTERS

ベルリン――羊や牛などの反芻(はんすう)動物のげっぷやおならに含まれるメタンガスが、強力な温室効果を持つことが指摘されている問題で、オーストラリアの専門家が、げっぷに含まれるガス排出量を減少させる血清を開発した、と述べた。ドイツを拠点とする科学誌「テクノロジー・レビュー」が21日明らかにした。

豪州の連邦科学産業研究機構(CSIRO)の分子生物学者アンドレ・デニス・ライト氏が、羊のげっぷなどに含まれるメタンガスを8%減らすことが可能なワクチンを開発したと主張しているもので、同誌7月号に論文を発表する。

同誌によると、専門家らはその数値をさらに上げることが可能として、実験を重ねる予定だという。

メタンガスは、二酸化炭素より約21倍の温室効果を持ち、その大部分が家畜の排泄(はいせつ)物やげっぷなどから出る。羊は1日当たり20グラム弱、1年では計7キログラム、牛は1年で113.4キログラムのメタンガスを排出するとして、以前より温暖化への影響が懸念されていた。

そのため、畜産大国のニュージーランドなどでは、家畜の消化器内でメタンを生成するバクテリアを抑制したり、消化される時にメタン生成の少ない牧草を開発したりする研究が進められていた。

本件の元ネタはREUTERSだが、CNNの記事がほぼ全文を翻訳しているので、あまり読む価値なし。

羊や牛から排出されるメタンが問題になっている話は以前に聞いたような気がする。調べてみると、昨年9月にニュージーランドが「げっぷ税」について検討しているという朝日新聞の記事がみつかった。これに関する解説としては、北海道経済産業局の番組記事など。

さて、今回のオーストラリアの研究だが、CSIROのサイトで関連記事を見つけた。牛や羊の胃の中に住んでいるメタン細菌に働くワクチンを注射するということらしい。これとは別に、飼料への添加物によって細菌を殺してしまう方法も検討されているようだ。FAQ も充実しているし、かなり本気でやっているように見える。

少し古いが、2004年の HOT WIRED JAPAN WIRED NEWS に温室効果ガス「羊のげっぷ」を減らすにはという記事が載っている。フランスの研究によると、メタン細菌が全くいない羊を育てた結果、何も問題もないらしいことが確認されている。むしろ細菌が消費するエネルギー分だけムダに飼料を食べているのが現状で、いなくなるとそれだけ効率アップの効果もあるようだ。

ふーむ、牛や羊とメタン細菌の関係は共生かと思いきや、単なる寄生だったのだろうか? でも、九州沖縄農業研究センターニュースには、「牛の反すう胃の中で餌の繊維を消化する微生物は、同時に水素も作り出します。水素は微生物自身にとって有害なため、この水素を材料にしてメタンガスに変えてくれるメタン菌と共生しています。この微生物とメタン菌の共同作用によってメタンが発生します。」と書かれているな。。 わからない。

今回のワクチンの効果はメタンの生成量を8%程度削減するらしいが、全世界の羊や牛の量を考えるとバカにできない効果だろう。もっとも、メタン細菌は人類なんかよりも何億年も前から地球に存在しているようだし、地球環境のためと称して彼らの生活の場を奪うのも、結局人間本位なのだ、という意味でシンボリックかもしれない。。

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2004/06/21

不快指数と空調服

台風の影響で、今日は蒸し暑い一日だった。こんな時、以前は「不快指数が高い」という表現をよく耳にしていたのだが、最近はあまり聞かなくなったような気がする。調べてみると、不快指数は1961年6月1日に気象庁が採用した指数のようだ。ところが、少なくとも現在は、気象庁のサイトを検索しても不快指数データは全く見つからないようだ。いつの間にか取りやめになっちゃったのかな?

ネット上の天気予報サイトを見ると、最近は洗濯指数を始めとしていろんな指数が載っている割には、不快指数は意外と載っていない。infoseekの天気予報では、こんな感じで不快指数は数字ではなく、絵と文字で表現している。

不快指数の算出方法は、温度と湿度から計算する方法と乾球温度と湿球温度から計算する方法の2種類が有名なようだが、この二つの式はどう見ても同じ数値を出しそうにない。その辺については無駄知識でしっかり検証してくれている。

人間の体感を数値化するには温度と湿度だけでは不十分で、風速だとか日射なども考慮する必要があるということで、不快指数があまり使われなくなったのも、そのせいかな、と思うのだが、その道のプロはもっと客観的な体感指標の検討を行っていて、例えば人間の温冷感を評価するというような資料が見つかる。

ところで、FujiSankei Business i(6/21)でこんな記事をみつけた。服に小型ファン セフト研究所が空調服を商品化なんて記事を見つけた。

 夏。外出先から戻るとワイシャツの中は汗と熱気。そんな不快感から解放される空調機能つきのワイシャツや作業着の販売が、始まった。
 服に付けた小型ファンを作動させれば、わずか数秒で涼しい空気が服の内側に入り込み、能率よく仕事に臨めるという。
 「空調服」を開発したのは、ディスプレー画質評価装置などの設計開発を手がける、セフト研究所(埼玉県戸田市)。
 小型ファンは、背中の左右両側に2つある。作動させると、衣服内の熱気を外に逃し、冷たい外気を取り込む。毎秒約5リットルの空気が衣服内を下から上に流れ、襟から出る。汗が蒸発して体温上昇を抑える。
このシャツ、一般向けに販売を開始しているとのことで、楽天市場 空調服 を見ると これ なんかは、半袖のYシャツ型で、電動ファンに、10時間連続使用できる充電池付きで 9,900円、充電器付きで14,100円というお値段。その冷却機能の効果の程は不明ながらも、外出先でも使えるというのが面白いし、ウケ狙いの効果はかなり期待できそうだ。デザインはとっても地味だけど結構お買い得かもしれない。

WBSのトレタマでも取り上げられたようで、動画 が見られる。 うーむ、ファンが回ると、シャツがパンパンに膨らんでしまってるな。。

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2004/06/18

ホルムアルデヒドの発がん性ランクアップ

goo ニュース(6/17)で見つけた記事。ホルムアルデヒドは発癌物質=WHOの研究機関が断定

【リヨン(フランス)16日】世界保健機関(WHO)の国際癌研究機関(IARC)は16日、ありふれた化学剤であるホルムアルデヒドは発癌物質だと断定した。欧州では労働者100万人以上がホルムアルデヒドにさらされているとされる。IARCは、ホルムアルデヒドが鼻と口の癌を引き起こす十分な証拠があると述べている。鼻と口の癌は先進国では比較的少ないという。

IARCは、ホルムアルデヒドが白血病も引き起こす可能性を示す証拠があると指摘した。しかし、その証拠は有力ではあるが十分ではないとIARCは言っている。ホルムアルデヒドは木材・製紙産業で接着剤に使われる樹脂の生産、プラスチックやコーティングの生産、工業用化学剤の製造に使われている。また消毒剤、防腐剤にも使われる。〔AFP=時事〕

これに関するWHO IARCのリリースは6/15付けで発行されている。

専門用語も多かったので、試しに altavistaで翻訳したらタイトル"International Agency for Research on Cancer Reseach"が、「蟹座の研究のための国際的な代理店」となっていて、しばし唖然。。一方 Exciteで翻訳では「癌についての研究のための国際作用」ということで、まあまあかな。本文もExciteの方が専門用語を翻訳してくれていて少しはわかりやすかったけど、翻訳文だけ読んでもちんぷんかんぷんなことには変わりないレベル。

The working group, convened by the IARC Monographs Programme, concluded that formaldehyde is carcinogenic to humans. Previous evaluations, based on the smaller number of studies available at that time, had concluded that formaldehyde was probably carcinogenic to humans, but new information from studies of persons exposed to formaldehyde has increased the overall weight of the evidence.
ということで、従来の評価ではランク「2A」となっており、動物実験では発がん性が認められるが、人に対しては恐らく(probably)発がん性あり、と分類されていた。ちなみにアメリカEPAのIRISデータベースでは分類 「B1, probable human carcinogen」となっている。

専門用語がわかりにくいけど、今回の結果を整理しておくと

・sufficient evidence for nasopharyngeal cancer:鼻咽頭がん
・limited evidence for cancer of nasal cavity and paranasal sinuses:鼻腔および副鼻腔がん
・strong but not sufficient evidence for leukaemia:白血病

という結論らしい。従来の評価についての日本語の文献としては、6/5のブログで紹介した化学物質ファクトシートやそこからのリンクが便利で、例えば環境省「化学物質の環境リスク評価第2巻」にはこの辺の事情がとても詳細に記載されている。

今回新たな実験結果が出てきたということではなく、最新のデータを加えて評価しなおしたということで、従来は発がん性について黒っぽいグレイだったのが、黒になったということだ。でもホルムアルデヒドはシックハウス関係で話題になる化合物でもあり、今後はこの発がん性が攻撃の的になることだろう。

実際には鼻咽頭がんは先進国ではあまり見られないとのことだから、少なくとも一般家庭環境の現状は、発がん性については問題ないレベルと考えられるのだが。。

ちなみに昨日(6/17)紹介した都道府県別の発がんリスク計算では、既にホルムアルデヒドによる発がん性を(ユニットリスクとして)計算に入れており、今回の報告の影響は受けないと思われる。

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2004/06/17

大都市は発がんリスクが高い?

YOMIURI ON-LINE(6/17)の記事。大気中の化学物質で発がん、大都市ほど高リスク

 大気中の化学物質による発がんリスクは、大阪府など大都市とその周辺ほど高く、最も低い鳥取県に比べると5倍以上も違うことが、国立環境研究所の松本理(みち)主任研究員らの調査でわかった。

 大気への排出量が多く、発がん性が確認されているベンゼンやホルムアルデヒドなど5物質について、大気中の濃度をもとに試算したもので、各都道府県別の総合的な発がんリスクは初めて。都内で23日開かれる同研究所の公開シンポジウムで発表する。

 リスクが高かったのは、〈1〉大阪府〈2〉栃木県〈3〉香川県〈4〉埼玉県〈4〉神奈川県、逆に低かったのは〈1〉鳥取県〈2〉石川県〈3〉富山県〈4〉島根県〈5〉宮崎県(ホルムアルデヒドの測定値がない秋田と山梨、長野、福井の4県を除く)の順。

 リスク自体は、空気を一生吸い続けた場合に10万人当たり、大阪府で9・2人、鳥取県で1・6人のがん発症が増えるとの試算で、たばこを毎日吸う場合の約1000分の1程度にとどまる。

 松本主任研究員は「2001年度と比べると、34都道府県で発がんリスクは下がっており、排ガス規制などの効果も出ている」と話している。

少し探してみたら、環境研究所の資料から、化学物質の複合曝露による発がんリスクの評価が見つかった。著者やその内容からすると、今回の読売新聞の記事と同じもののようだ。

この研究は、全国約400カ所の有害大気汚染物質モニタリング調査結果を元に、ジクロロメタン、ベンゼン、ホルムアルデヒド、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレンの5物質についての発がんリスクを計算したもの。特にベンゼンとホルムアルデヒドの寄与が大きいとのことだ。しかし、PRTRで排出量の上位を占めるトルエンとキシレンについては、発がん性が確認されていないため今回のリスク計算には含まれていない。(「環境リスクを計算する」(bk1amazon(p.208)によると、トルエンのリスク(損失余命 0.31日)はベンゼン(0.16日)よりも大きいとされているし、それよりもディーゼル粒子(14日)の方がはるかに影響が大きいのだが。)

大都市でリスクが大きいといっても、他のリスクと比べると大きなものではなさそうだが、この数値(10万人当たり1.6~9.2人)は、産総研の中西さん等が別の方法で推定しているベンゼンによるリスクが平均で1.5×10-5程度(「環境リスクを計算する」p.34)だから、ホルムアルデヒド他の物質の影響を考えると、やや数値が大きいようだが、まあ妥当なレベルだろう。(日本全体でのがんによる死亡率は 240人/10万人とのことなので、その数%が大気汚染起因ということになる。。)

この手のリスク計算においては、結局、それぞれの場所における各有害成分の大気濃度をどのように見積もるか、が重要なポイントだ。今回の環境研は、そのものずばり分析結果を用いたのに対し、産総研の中西さんらは、PRTRデータを基にして推定する方法を提案し、そのための大気濃度推算ソフト開発まで行ったりしている点が異なる。(分析値が得られるのは、所詮限られた物質・場所の数値だけとなる。でもPRTRデータから環境中の濃度を推定するのは非常にチャレンジングと言えるだろう。詳細は詳細リスク評価書解説等を参照。)

ところで、それじゃあ、実際に大都市で大気汚染起因と思われる発がんが多いのか? というと、4/29の記事でも紹介した、都道府県別の死因分析結果と比べて見ると、少なくとも死亡原因で見たときには、大都市でがんによる死亡が目立って多いというような傾向は見られないようだ。

なお、市町村別の死亡率データ等については、健康ネットの全国市町村別健康マップで見ることができる。

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2004/06/16

無料水道水質検査

ローカルネタだけど、Kanagawa Shimbun WEBの6/14の記事から。電話1本で無料水質検査

 横浜市水道局は六月から、電話一本で無料の水質検査に出向き、結果を診断書として発行する取り組みを始めた。汚れた水が出た場合だけでなく、「普段の水道水の水質を知りたい」という要望にもこたえる。すべての〝お客さま〟に診断書を出すのは全国初という。同局は「横浜の水は安心して飲めるおいしい水道水」とPRしており、水道経営改革の一環。
 同局は一九七三年度から水質検査を行っており、二〇〇三年度は百四十件の利用があった。
 これまでは、検査後に口頭やメモで検査結果を伝えていたが、新たに発行する「水質診断書」では、異常の有無、「赤水の原因は水道管の鉄さび」といった原因などの概要に加え、大腸菌の有無や塩化物イオン濃度、硬度、残留塩素濃度など十三項目の検査結果が記される。水道法に基づく水質基準と比較でき、診断書は各区の営業所から職員が利用者の自宅に持参する。
昨今、水に対する要求が厳しくなっているというか、飲料水としてミネラルウォーターを購入するのはもはや普通だし、スーパー等で "おいしい水" の自販機もよく見るようになったが、意外と自分が普段飲んでいる水道水の質については知らなかったりするのではなかろうか? 

横浜市水道局のプレスリリースによると、蛇口の水質検査結果を数値で報告する「水質診断書」を無料で発行するサービスに加えて、蛇口の水道水から水源までの情報を全国で初めて紹介する「横浜水道水質白書」の発行を行うとのこと。

自分の家の水道の水質を無料で調べてくれるとは、従来の常識からすると随分と頑張ったサービスだ。ちょっと調べてみたら、兵庫県の尼崎市はお客様サービスとして、条件付きながら無料水質検査を引き受けてくれるようだから、調べてみると同様のサービスは他にもあるかもしれない。

横浜市の水道水質白書はPDF版がネットで見られるが、結構詳しく情報が載っていて好感が持てる。高い水を買ってきて飲むのも、水道水を飲むのも、それぞれの自己責任だろうけど、その前提として、こういう資料で自分の飲んでいる水がどういう水なのかを知っておくことが基本のような気がする。

ちなみに東京都の水道局のホームページを見ると、東京の水道水源と浄水場別給水区域なんて資料が載っていて、水源からの水の流れについても公開されているみたいだ。(横浜は全国初と書いていたけど) 水道局のホームページなんて、あまり普段は訪れる機会もないけれど、こうやって見てみると意外と有用な情報が何気なく公開されているんだな、と再認識。

水関連企業でも、ここのように無料で水質検査してくれる所もあるようだけど、この場合にはタダは逆にちょっと怖いかも。

*横浜の無料水質検査の話は、横浜に住んでいるけど全然知らなかった。でも、あまり知れ渡って、皆が気軽に検査を依頼したら大変なことになるのではなかろうか? これが原因で水道料金が値上げになったりしないだろうな?

もっとも水質検査の結果を見ても、「水質基準を満たしているので、飲んでも危険ではありません」ということ以上のことはわからないだろうと思うけど、それでも安心できるのはいいことかもしれない。

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2004/06/15

飛行船と水素

asahi.comの6/13の記事。世界一周飛行のツェッペリン号、ドイツから日本に

 ドイツ・ツェッペリン社製の飛行船「ツェッペリンNT」が13日、ドイツから日本に向けて出発する。12日にはドイツ南部のフリードリヒスハーフェンで式典が行われ、格納庫内で日独の関係者らが記念撮影をしていた。旅の間は「YOKOSO! JAPAN」号と呼ばれ、パリでは日本への観光誘致キャンペーンなどに一役買う。同船は有人飛行船を使って日本での事業を計画している「株式会社日本飛行船」(本社・名古屋市)が購入。全長75メートル、最高速度125キロ、定員14人は世界最大級だという。
ということで、愛知万博の宣伝を兼ねての飛行のようだ。

この飛行船、世界最大級と書かれているが、あくまでも現時点で、ということだ。75年前のツェッペリン伯号やヒンデンブルク号はこれに比べればとてつもなく大きく、世界最大の気球と格納庫によると、ツェッペリン伯号は全長236.53m、直径30.48m、ヒンデンブルク号は全長は245.06m、直系は41.15mで、人類が現在までに作った最大の空飛ぶ船とある。今回のツェッペリンNT号の全長75m、直径17m程度とは比べ物にならない大きさだが、昨年日本の空を飛んでいたグッドイヤー社の飛行船「ブリンプ号」は全長39mとのことだから、それに比べれば倍近い大きさということになるのだが。

過去にも、さまざまな広告を描いた飛行船が日本中を飛び回っていた時代があった。調べてみると、日立キドカラー号とかグッドイヤー号などが飛んでいたようだ。今回のツェッペリンNT号を日本に持ってくる会社(日本飛行船)の社長さんも、このキドカラー号を見てあこがれたのだそうだ。(asahi.com:Be on Saturday)僕も随分前に飛行船をボーっと見送った記憶があるけど、あれは何の宣伝だったろうか?

ところで、最近水素が燃料電池の絡みで注目を集めているが、その関連でヒンデンブルク号の悲劇の原因は実は水素ではなかった、という話を聞くことがある。調べてみるとここには、近年NASAの研究者の研究により、アルミ塗料が原因であることが解明されたとある。

手元にある、ちくま新書「燃料電池」(槌谷治紀著)(bk1amazon)によると、

 1997年になって、NASAのケネディ・スペース・センターの水素計画マネジャーであったアディソン・ベインは、ヒンデンブルク号の爆発は水素が原因ではないという論文を発表した。彼は事故の様子を詳しく調査し、水素が原因ではなく、犯人は飛行船の表面に使用された燃えやすい材料であるという説を立てた。
 ヒンデンブルク号の残った破片を分析してみると、その表面はコットン(木綿)をベースにしたものであった。コットン繊維を処理した工程には、アルミニウムを含むセルロース・アセテート・ブチレンと酸化鉄が使われて染み込んでいた。これはスペースシャトルのロケットブースターに使用される、燃焼制御触媒であるアルミニウムと酸化鉄と同じであった。
 事故の直前には飛行船の上部に青い火花が見えたという証言もあった。空気中の静電気が引き金になったと考えられた。飛行船の船体が燃えやすい材料であったので、水素は爆発していない。もし使用されたガスがヘリウムのような不活性ガスであっても、本体が燃えたであろうとしている。(p.45-46)
とある。どうやら現時点では最も真相に近い説と考えられているようだ。それにしても何でそんなに危ない材料を表面に塗ったのか? ヒンデンブルク号の場合には、外骨格を持つ硬式飛行船だから、外表面のガス気密性はさほど重要ではなかったと思われる。The Hindenburug Disasterによると、熱対策に加え、空力性能や強度を考えたもののようだ。

*水素でも確かに十分に対策をとって安全に取り扱えば簡単に爆発はしないだろうし、ヘリウムに比べれば大きな浮力が得られるな、と思ってよく考えてみたら、ヘリウムを水素に代えても浮力はわずか8%程度しか増えないんだ。これだと敢えて水素を使う気にはならなそうだな。

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2004/06/14

中国の人工降雨

新聞休刊日の影響なのか、何だか興味をそそるネタが少ない気がする。この土日は更新をお休みしちゃったけど、当面はこんなペースで進みそう。

asahi.com(6/13)の記事。夏の猛暑、人工降雨で冷やせ 電力不足緩和で上海市計画

 夏は連日猛暑が続く中国・上海市は、エアコン使用などによる電力不足を緩和するため、人工的に雨を降らせて気温を下げる計画を立てている。商業や工業施設が集中する同市では、電力不足が社会問題化している。水不足対策などの人工降雨は例があるが、電力不足解消を目的にしたのは初めてという。今月中にも試験的に実施する予定だ。

 市当局によると、飛行機から冷却剤などを雲の中に散布することで温度を大きく下げ、水滴や氷の量を増やして人工的に雨を降らせる方法などが検討されている。天候条件に左右されるうえコストも高いが、電力を買うコストに比べれば採算が合うという。

 同市は夏場の電力消費量の約半分をエアコン使用が占める。ある地区では昨夏、突然大雨が降った時の電力需要が150万キロワット減少したといい、雨による気温低下でエアコン使用を抑える効果があるとみている。

 上海市経済委員会によると、今夏の最大電力需要は1670万キロワットにのぼり、これに対し供給は240万キロワット程度不足するとみられていた。

という記事だが、中国の電力事情が厳しいのは最近あちこちで聞く話で、最近も原発を多数作るというニュースもあった。(参考:原子力を問う

雨を降らすことで電力需要を引き下げようというアイデアは、日本では聞いたことがないが、上海の夏って蒸し暑そうだけど、それでも多少とも気温が低下する効果ってでかいのかな。

2001年の夏には東京でも人工降雨実験をしたようで、こんな資料が、東京都議会議員さんのページでみつかった。八つ場ダム

沃化銀、アセトン溶液を燃焼させまして、それを煙にして上昇気流に乗せて、そして待つ。その人工降雨というのは五年ぶりに降ったわけなんですけれども、そのときの人工降雨作戦の際、小河内貯水池周辺で最高四二・五ミリの大雨が降ったんです。石原慎太郎知事は、洪水になるかも、画期的だと賞賛されたそうでございます。そのときに大雨洪水警報も出たんです。
単に種をまけば良いというものではなく、事前の調査が重要のようだが。(国土環境株式会社人工降雨・降雪など。)

この技術、日本ではあまり知られていないけど、中国では相当に力を入れているようで、中国情報局ニュースによると、北京:水不足で人工降雨実施、五輪影響を懸念 なんて感じで日常的に人工降雨を実施しているようだ。他にも首都北京、人工増雪により潤うでは「増雪弾」を使っているし、【北京】ヨウ化銀を散布 「人工増雨」効果を期待では「ロケット弾」を使っているようで、なんだか物騒だな。

この辺の事情は、sankei ECONETの「現代版雨ごい」が経済救う 年490億円の効果 環境影響の懸念もにも、

中国では九五年ごろから本格的な研究と実践がはじまり、現在、全国で三十省・自治区・直轄市の千八百六十二県三百万平方キロの土地を対象に人工増雨計画が展開され、専門のヨウ化銀剤打ち上げ砲六千九百門、ロケット発射台三千八百台を備える。
とある。なるほど、日本とは違って、大砲やロケット弾のような飛び道具を使うようだ。

もう少し科学的な記事を探してみたら、気象研究所の村上さんの第8回WMO気象改変に関する科学会議出席報告(pdf)というレポートがみつかった。世界各国で人工降雨に代表される気象改変技術へのニーズが高いが、ともかく種を撒いて雨を降らせたというような報告ばかりで、全体として科学的なアプローチに欠けている、と手厳しい。

さてさて中国は大々的な予算を投入して、国家的に人工雨で水問題とエネルギー問題の両方への効果を狙っているようだけど、定量的な評価が極めて難しそうな現状で、どうその効果を評価するんだろうか?

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2004/06/11

カリフォルニアの温室効果ガス規制

Yahoo!ニュース(6/11)から、温室ガス15年までに3割減 米加州新車に義務付けへ

【ロサンゼルス11日共同】10日付米紙ロサンゼルス・タイムズによると、米カリフォルニア州は自動車メーカーに対し、新車から出る二酸化炭素(CO2)などの温室効果ガスを、2015年までに現在より29・2%減らすよう義務付ける新規制の検討を始め、近く詳細を発表する。
 温室効果ガスは地球温暖化の原因とされており、温暖化防止を直接の目的とする排ガス規制は初めてという。自動車メーカー側は、州政府にこうした規制を行う法的権限はないと反発しており、訴訟も辞さない構えだ。
 同州の素案によると、新規制は2009年型モデル以降の乗用車や小型トラックに適用され、排ガスを段階的に減らすことを義務付ける。カリフォルニア州の自動車販売台数は全米の約10%を占めており、これまでも全米で最も厳しい排ガス規制を適用してきた。
アメリカとしては京都議定書を批准する気はないけれど、カリフォルニア州は環境問題については先進的(?)だし、国の方針とは別に、独自に規制に乗り出すということのようだ。

この話は日本の自動車メーカーにも大きな影響があるし、日本の規制への影響も無視できない話だと思うけど、何故か日本ではほとんど取り上げられていないみたい。アメリカでは関連ニュースが沢山載っている。例えば、
The New York Times(要登録)
The Mercury News
REUTERS など。

調べてみると、既に2002年の7月にカリフォルニア州では自動車からの温室効果ガスの排出規制法案が可決されていて、今回はその具体的な規制値を決めたということのようだ。NEDOレポート日本政策投資銀行レポートなど。

興味があるのはカリフォルニアが温室効果ガスの規制をする根拠だ。カリフォルニアの主張は「温室効果ガスは大気汚染物質」であり、結果として自分たちの利益を害するのだ、というもののようだ。一方、アメリカの環境保護庁(EPA)は、それには反対しており、環境省の中央環境審議会地球環境部会(2003/11/12)の第10回資料によると、現在訴訟の真っ最中らしい。アメリカって国はこういう所がおもしろい。

まあ、大排気量車や悪(高)燃費車がかなり多く走っていそうなアメリカの話だから、今回の30%というCO2排出削減も、技術的にはそんなに大きなハードルではなさそうだ。もちろん経済的な影響は大きいだろうけど、むしろこの(CO2は有害ガスという)考え方が全米・世界へと広がることの影響の方が興味深い。まあ、それでも日本では到底こんな思い切った規制は無理そうだけど。。 (優遇税制ならあるが。)

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2004/06/10

合計特殊出生率が低下

各紙が大きく扱っているが、グラフもあってわかりやすいので、asahi.com(6/10)から。出生率1.29に低下 03年、政府想定下回る

 日本人女性1人が産む子どもの平均数を示す「合計特殊出生率」が、02年の1.32から03年に1.29へ低下し、戦後初めて1.2台に落ち込むことがわかった。近く厚生労働省が確定値を発表する。政府の基本的な想定を外れる水準で、このまま推移すれば、社会保障制度の設計や将来の経済活動などに大きな影響を及ぼす可能性が強い。今回の年金改革で政府・与党が公約した「現役世代に対する給付水準50%の維持」も前提が揺らぐことになり、論議を呼ぶのは必至だ。
といった具合で、年金問題で紛糾した国会が終了した直後にこういうデータが公表されたというタイミングも含めて、やけに政治的な色彩で語られている。こんな扱いをされるとなると、こういう数値を出す側も大変だ。

厚生労働省が発表したのは、平成15年人口動態統計月報年計(概数)の概況という資料。実は、出生率ばかりが話題になっているが、この資料には他にも、死亡率、死因、婚姻、離婚などが載っている。死因割合の年齢別グラフなんかは、初めて見る形式だったけど、なかなか考えさせるものがあって面白い。

それにしても、およそ人口統計ほどデータ数が多くて、頻繁に集計されている統計はないのではないだろうか? 統計的な様々な処理をするには持って来いのデータが毎年それこそ山ほど発生するわけだし。しかしその割には人口動態の予測精度が悪過ぎないだろうか? この朝日新聞の記事に載っているグラフをみても、全然予測になっていないと言ってよいレベルじゃないだろうか?

公式の推計は国立社会保障人口問題研究所というところでやられている。最新の2002年1月の推計は日本の将来推計人口(平成14年1月推計)に掲載されている。方法も説明されているが「予測」ではなく「推計」である、ということに留意すべきかもしれない。地球温暖化予測のように、ともかくも正しそうなモデルを作って計算するというのとは異なり、現状を解析して外挿しているという感じに近い。

一方で、Attractors Labという民間機関は、日本の総人口予測調査結果報告という資料をまとめているが、ここでは進学率や結婚率などを予測するモデルを作り、それを使って予測している。この結果によると合計特殊出生率は2025年頃まで漸減し続け、1.14程度になるとしており、人口問題研究所の予測よりも大幅に下回る。

ところで、この合計特殊出生率は一人の女性が生涯に産む子どもの平均数などと定義されている。今回の発表によると、一昨年はそれが 1.32人だったのが、昨年は 1.29人に減少したということらしい。ところが、特定の一人の女性が産む子どもの人数は経時的に増えることはあっても減ることはないから、この数値ってのは何を意味しているのか、考え出すとよくわからなくなってくる。

合計特殊出生率の算出方法は、例えば埼玉県のFAQに具体的に書かれているが、実は、ある年の出生数をその母親の年齢別人口で割った値を合計しただけなのだ。例えばある年の出生数が120万人で、15歳から49歳までの女性の人口が平均100万人ずつだとすると、合計特殊出生率は約 1.2となる。つまり、今母親である人が生涯に何人の子どもを持つのか、というような累積的な計算は一切されていない。でも結果的には一人の女性が生涯に産む子どもの平均数に相当するらしい。理解できるだろうか? うーん。わかったようなわからないような。。

ところで、日本が世界一の少子化国家のような言われ方がされているが、世界各国を見回してみると経済・社会データランキングなどで見る限り、東欧諸国やイタリアは日本よりも少子化が進んでいるようだ。

おりしも内閣府が少子化社会対策大綱なんてものを発表しているけど、いっそのこと、6/9の記事のコメントにあるように、省エネ運動を徹底的に進めるほうが出生数が増えるし、一石二鳥かも。。

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2004/06/09

フード・マイレージと地産地消

EICネット(6/8)のニュース。夏至の夜、電気を消して身近でとれた食材を食べよう! NPOらキャンペーン実施へ

 全国で一斉に電気を消すことを呼びかける「100万人のキャンドルナイト」が2004年6月19日から21日の夏至の日まで3日間実施されることにあわせ、「当日はろうそくを灯しながら、身近でとれた食材を食べよう!」と呼びかける「身近な食で地球を冷ませ!キャンペーン」が同時に行われることになった。
(中略)
 今回の「身近な食で地球を冷ませ!キャンペーン」は「100万人のキャンドルナイト」の呼びかけ団体となっている、大地を守る会が全国農業協同組合中央会などと一緒に実行委員会を結成して実施するもの。
 多くの人が身近でとれた食材を食べるように心がけると、食材の輸送距離が短縮され、ひいては省エネ・CO2の削減につながり、地球温暖化対策に貢献することができる。
というもの。環境省主導で昨年から始まった「CO2削減・百万人の環」キャンペーンの一環として、今年は「身近な食で地球を冷ませ!キャンペーン」というのを、相乗りの形で農林水産省が旗振り役でやることになったようだ。

農水省の資料には、食糧自給率、地産地消、フード・マイレージというキーワードが並んでいる。

この食糧自給率だが、日本のそれが40%程度というのはよく聞く話だけど、フランスの104~142%ってのはどうなっているんだろう? この資料の定義からして、個々の食料品の自給率が100%以上ということになるのだが。。。 よくわからん。

そして、最近耳にするようになってきたのが、フード・マイレージという考え方で、今回のキャンペーンでも大きく扱われている。

フード・マイレージは、輸入相手国別の食糧輸入量×輸出国から日本までの輸送距離と定義されており、単位はトン・キロメートルとなるようだ。日本のフード・マイレージは5000億ton・kmで、一人当たりにすると約4000ton・km(2000年)。

ということは、一人一日当たりで、11ton・kmとなる。一日一人が食べる食料の重さを 1kg程度とすると、平均して 11000km 移動してきたものを食べてるってことか? ちなみに、東京とニューヨーク間の距離は(JALのマイレージ6737マイルを換算すると)丁度 11000kmとなるから、日本人が食べている物の移動距離は、全てをニューヨークから空輸して運んだことに相当するということか?? 何だか納得しにくい数字だけどなあ。(正しくは、国民一人当たりの年間輸入食品量が420kgであり、平均輸送距離は1万km弱となるとのこと。)

このフード・マイレージという概念は農水省の発案のようで、元ネタは全て「フード・マイレージの試算について」という農林水産政策研究所の中田さんのレポートのようだ。(調べた範囲では出てくる数字が皆同じなので、他に計算した人はいないようだ。)

しかもこの定義、食料品の輸入に着目しただけで、実は日本の食卓に欠かせない、魚が抜けていたりする。魚の多くは地球上のあらゆる場所から捕って運ばれてくるわけで、このマイレージも加算したら、すごいことになりそうだけど、何故か加算しないのね。

改めて日本の食糧事情を考えて、変えていこうと言うのはいいんだけど、農水省主導の「身近でとれた食材を食べるように心がけることで地球を救おう!」といったキャンペーンは、何だか薄っぺらで、裏側の利害関係が透けて見えるようでイヤな感じもするなあ。

いろんな意味で、この問題の解決はそんなに簡単な事じゃないと思うんだけど。。

*で、「電気を消し、ろうそくを灯して大切な人々と語らいあう際には、できるだけ身近でとれたものを食しながら語らいましょう」って何を食べればいいんだろう?? (ごはんと漬物ぐらいか? 大豆は自給率低そうだし。)

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2004/06/08

「牛肉の安全」資料

MSN-Mainichi INTERACTIVE(6/8)の記事。BSE:公開討論会の記録集、まとまる--50人に無料頒布

 米国でのBSE(牛海綿状脳症)発生で牛肉の安全性が改めて問われているが、そもそも牛肉を食べて、人にBSEが感染するリスク(危険の可能性)はどの程度なのか。このテーマをめぐって開かれた日本学術会議主催の公開討論会の記録集「牛肉の安全を守るためには?」(A4判・55ページ)がまとまった。

 討論会は今年4月に東京都内で開かれた。BSE研究で知られる山内一也・東京大学名誉教授、品川森一・動物衛生研究所プリオン病研究センター長ら10人が活発な討論を展開。国内はこれまでに約300万頭の牛が検査され、11頭がBSEと分かったが「人に感染するリスクは1人未満」(唐木英明・東京大学名誉教授)など専門家の分析や意見がたくさん出た。

 注目度が高かったため、同会議は参加者の発表内容を記録集として作成した。説明に使われたスライドも収録されている。希望者は唐木さんにファクス(03・5841・8183)かメール(karaki@gakushikai.jp)で申し込む。無料。先着50人まで。

というもの。何で先着50人だけなの? と思いながら探してみると、東京大学大学院農学生命科学研究科の獣医学教育改善のページに、そのものずばり日本学術会議公開討論会 「牛肉の安全を守るためには?」(pdf版)(全56ページ)が公開されている。毎日の記事にURL書いておいてくれれば唐木さんも、事務処理でわずらわされずに済むだろうに。。

この資料、膨大だし、まだザッと目を通しただけだけど、結構多彩なメンバーが集まっており、なかなか面白そうだ。(というか、この討論会に出たかった。。)

この資料、何故か目次がないので、折角だから紹介しておこう。現時点ではBSEに関する資料としては、かなり充実したものと言えそうだ。(欲を言えば、参考資料やサイトへのリンクがあって、常にアップデートできたりするといいのだけど。)


公開討論会の趣旨 --- p.2

討論の基礎としてのリスク分析手法の概論 --- p.3
  日本学術会議獣医学研究連絡委員会委員長 唐木 英明

牛肉の安全を守るためには?
 科学と「リスク分析」の立場から --- p.5
  東京大学名誉教授 日本学術会議会員 唐木 英明

定量的リスクからみたBSE --- p.9
  東大農学生命科学研究科 吉川 泰弘

BSEの発生と英国及び日本の対応 --- p.14
  動物衛生研究所 プリオン病研究センター 品川 森一

変異型クロイツフェルト・ヤコブ病 --- p.20
  医薬品医療機器総合機構 池田 正行

各国における食肉の安全対策の経緯 --- p.25
  東京大学名誉教授 山内 一也

サーベイランスの経緯と国際比較 --- p.31
  国際獣疫事務局(OIE)名誉顧問 小澤 義博

BSE対策の「費用対効果」をどう考えるか --- p.39
  放送大学客員教授、UFJ総合研究所顧問 嘉田 良平

BSE問題への消費者の視点 --- p.45
  日本消費者連盟副代表運営委員・明治大学法学部兼任講師 山浦 康明

BSE問題をめぐる動向について-消費者の立場から- --- p.47
  日本生活協同組合連合会 原 英二

BSE報道の誤解とねじれ現象はなぜ生じたか --- p.48
  毎日新聞生活家庭部編集委員 小島 正美

全頭検査導入の経緯とその評価 --- p.52
  東京大学教授 熊谷 進

討論のまとめと今後の課題 --- p.53
  日本学術会議獣医学研究連絡委員会委員長 唐木 英明

公開討論会の紹介記事 --- p.54

*上記リンクは、tf2が各氏に関連していそうなURLを、参考のために勝手に付したもので、オリジナル資料とは無関係。

この問題を語るには、本当は政治的な視点が欠かせないと思えるのだが、今回の討論会には行政サイドや政府サイドの方は出てこられていないようだ。消費者代表は出ているけど、生産者側とか食品業界側の代表も出ていないし、まあ、政策を議論する場ではなく、あくまでも科学的な視点を中心にしたものなのだろう。

全部に目を通したわけではないが、毎日新聞の小島さんの資料がおもしろい。「BSEのメディア情報は、大いなるリスク・コミュニケーションの失敗」、「牛肉の輸入再開をめぐる日米交渉とその報道を見ていると、バッド(BAD)でなく、マッド(MAD)・コミュニケーションの感じさえしてくる。」等。毎日新聞さんが、この視点で、得意のキャンペーンをすればいいのに。現実問題として、ここのところ何の進捗も見られないんだし。。

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2004/06/07

回転しないホイールカバー広告

FujiSankei Business i の 6/7の記事。タイヤホイールに広告、横浜市が今秋にも公用車4000台で

 横浜市は、新しい広告媒体として注目されている「車のホイールカバー広告」を導入する。安全性や広告としての利用価値を検討するテストを実施後、この結果を踏まえて、ごみ収集車(9000台)、市営バス車両(路線バス1000台)などの公用車のうち、約4000台を対象に広告のスポンサーを募集、9月から本格導入する計画だ。

 「ホイールカバー広告」は、愛知万博のPR車や民間のタクシー、バスの車両に一部導入されているが、自治体が導入するのは初めてという。市営バスのラッピング広告やバス停留所の広告ボードに続き、「一連の広告事業で財政確保の一助に」という職員からの提案で実施する。

 「ホイールカバー広告」は、オオツカブラザーズカンパニーが販売権を持つ「パスボード(PAS BOARD)」。世界15カ国で特許を取得しており、「タイヤは回るが、広告のホイールは回らない」のが最大の特徴となる。

 低速時は「重りで回転を止める」、高速時は「噴射口から流れる気流により静止状態を保つ」-という独自の機構をもつ。 (後略)

ということで、不幸にしてまだ実物を見たことがないが、なかなかおもしろそうな話だ。調べてみると、オオツカブラザーズカンパニーのホームページには関連情報は見つからなかったが、横浜市が報道発表資料を載せていた。

この資料で、回転しないホイールカバー広告の発明者は岡本好晃さんという方だとわかったので、調べてみると、確かに関連特許が何件か出願されていて、その中で特許3170592(特開平10-329501)と特許3162673(特開2000-062401)の2件が登録となっている。後者はアメリカでも登録(US 6045195)されており、ヨーロッパでは公開(EP 982154)段階。(ただし後者の特許は発電機能付きであり、今回横浜で採用されたのは恐らく前者だ。)

このホイールカバーは岡本さん自身が関与している神戸エコカーパスカル研究所から2002年頃に市販されたみたいで、e-monの記事には、仕組みもわかりやすく載っている。また、びんご経済レポート2002/2/10号には、期待の新技術として紹介されている。

ところが、神戸新聞ニュースによると、この会社は2002年4月に自己破産してしまっているようだ。。 ということで、面白い技術があるだけでは儲からなかったということか? そこで今回はオオツカブラザーズカンパニーという会社からの再デビューなんだろうな。結構目を惹くと思うし、マーケティング次第ではヒットすると思うんだが。。

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ココログ始めて5か月

ココログを始めて丁度5か月経過です。

カウンターは恐ろしいほど快調に伸びている。この1か月は13000以上と前月までの倍近いペース。
 1か月目:900
 2か月目:4500
 3か月目:11700
 4か月目:19000
 5か月目:32300

さて、この1ヶ月のアクセス解析結果の一部は、

(1)リンク元
 1位 bookmark (お気に入りに入れてくれた方) 全体の14%(前回2位)
 2位 http://search.yahoo.co.jp (ご存知ヤフーサーチ) 全体の11%(前回1位)
 3位 http://www.google.co.jp(ご存知グーグル日本版) 全体の4%(前回3位)
 4位 http://www.search.goo.ne.jp(グーサーチ) 全体の3%
 5位 http://ytsumura.cocolog-niftyl.com(津村ゆかりさんのココログ) 全体の3%
 6位 http://newsch.net(ニュースチャンネル) 全体の2%

津村さんの技術系サラリーマンの交差点で、当ブログを紹介していただいて以来、非常に多くの方に来ていただいているみたいです。どうもありがとうございます。

chboxさんのニュースちゃんねるでは、当ブログの記事を沢山ピックアップしていただいております、感謝です。

他にも、はてなアンテナに登録していただいたり、ブログのブックマークに登録された方も徐々に増えているようで、お気に入りから来ていただいている方とも合わせて、定期的に見ていただいている皆さん、本当にありがとうございます。

それにしても、この統計結果は何だか腑に落ちない点も多い。使っているNinjaツールの標準機能だけど、調べてみると、週単位の結果と月単位の結果の整合性がないのが明らかだ。ということで、上の結果はあくまでも参考程度。

(2)検索キーワード
 1位 17年ゼミ(初登場)
 2位 岩盤浴(初登場)
 3位 青色発光ダイオード(初登場)
 4位 アメリカ(前回3位)
 5位 肥満(前回4位)
 6位 世界人口(前回1位)
 7位 マウス(初登場)
 8位 かぐや(初登場)
 9位 屋久島(前回5位)
10位 三種の神器(前回13位)

この1か月はアメリカの周期ゼミがニュースに何度か取り上げられたこともあり、断トツでトップ。やっぱり、タイムリーな話題はそれだけニーズが高く、多くの人が検索をすることと合わせて、まだ十分な情報源も少ないので、引っかかりやすくなるということかな。

ヤフーの検索が従来の Google から独自のものに変わった(5/31~)ので、来月は少し傾向に変化が見られるかもしれない。。

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2004/06/06

「全地球凍結」

NHKスペシャル 地球大進化の第2回(5/15放送)で全球凍結が放送された。最近、書店でスノーボールアースとか全地球凍結という本を目にしていたけど、一体いつの間に、そんな仮説がメインストリームに出てきたんだ? と半信半疑で眺めた。この放送では、迷子石と呼ばれる氷河の痕跡が、当時赤道直下だった場所から見つかったことを証拠に、当時地球は完全に凍結していたんだ、という話を展開させてくれた。確かに、NHKの番組らしくCGはとてもきれいだったけど、肝心のストーリーが何だか怪しかった印象あり。そこで、改めて本を買ってきて読んでみた。

集英社新書 0209G
 全地球凍結
 川上 紳一 著 bk1amazon

実は、本書のタイトルは「全地球凍結」となっているけど、本書の中では一貫して「全球凍結仮説」と表現されている。要するに、まだ、あくまでも「仮説」だよ、と強調している本なのである。

著者の川上さん自身が、理科教育メーリングリストでこのNHKの番組に関して発言してる。本書を読むとわかるけど、全球凍結仮説はとても魅力的で、かなりの確率で正しそうだけど、まだまだ様々な議論が巻き起こっている最中であり、NHKの番組のニュアンスとは大きく異なるのが実態のようである。

本書では、本当に全球凍結が起こったのか? を明らかにするために、様々な証拠をひとつひとつ丁寧に検証していく、正にその過程を研究者と一緒にたどることができる。同じ証拠を相手にしても、複数の対立する仮説が共に成立しうることを説明し、さらに他の証拠とも突き合わせながら、本当は何が起こっていたのかを解き明かしていくプロセスを楽しめる。

ただし、個々の証拠を検証する際には、それなりに専門的な内容(縞状炭酸塩、キャップカーボネート、古地磁気データ、等々)がポンポンと細かな説明なしに出てくるし、そもそも実際の地層を読み解く訓練をしたことがない我々普通の人々にとっては、正直言って全てを理解することは難しいけれど、現場の雰囲気が伝わってきていると感じさせられる。

欲を言えば、地層から化石が出てくる話だと素人でも何となく理解できる部分も多いけど、今回の話は岩石の様子や同位体比率のような地味なデータばかりなので、写真や図表をもっと充実させてくれると、より楽しめると同時に理解も深いものになったかもしれない。

いずれにしても、対立する仮説同士の議論が活発に行われたり、いくつかの仮説のぶつかり合いの中から新たな仮説が生まれたり、というように、科学が決して既成の固定概念のようなものではなく、常にダイナミックな動きの中にあるんだ、ということを垣間見せてくれる点でも本書は楽しめる。(そもそも謎がなければ研究対象にはならないし。)

もっとも、短気な読者の一人としては、「で、結局どうなのよ?」とついつい答えを要求してしまいたくなるのも本音だろう。本書では、様々な観点から多くの仮説の長所・短所を紹介してくれるのだが、できることならそれらを総合的に見て、著者が考える、現時点で最も確からしい全体像について語って欲しかった、というのは贅沢だろうか?

そして、全球凍結とカンブリアの生物の大爆発との間には何らかの関係がありそうだし(NHKの番組では相当に断定的に扱っていたけれど)、この時代は地球と生命について考える時に、やっぱりとても注目に値する時代だと再認識させられる。

ちなみに、著者の川上さんは岐阜大学教育学部の助教授。ここはインターネットを教育に活用することに熱心で、地学教室からのリンクでたどれる「Web教材」は、非常に充実した理科(教育)資料集となっていて素晴らしい。

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2004/06/05

一般人向けの化学物質解説

EICネット(6/4)のニュースから。排出量が多いPRTR法対象物質の説明データ集への意見募集開始

 環境省は、PRTR法の対象となっている有害化学物質のうち環境中への排出量が多い物質の性質を、一般の人向けにわかりやすく解説した「化学物質ファクトシート(暫定版)」を作成し、平成16年7月2日まで内容について意見募集を行うことにした。
 ファクトシート完全版には13年度PRTR集計結果で排出量が多かった上位50物質(注1)を掲載予定だが、今回公表された暫定版では、うち20物質の内容を公表した。
 各物質の用途、排出量の動向、環境中での動き、人の健康への影響度、他の生物への影響度をわかりやすい言葉で説明しているほか、性状、排出量・移動量などのPRTRデータ、環境中の濃度データ、リスク評価値、適用法令などの具体的な情報も掲載している
というもの。「一般の人にわかりやすく解説したもの」らしいが、果たしてどんなものか? 環境省の報道発表は、「化学物質ファクトシート(暫定版)」の公表及び御意見等の募集について。確かに、
 このため、環境省は平成15年度より、(社)環境情報科学センターによる請負事業として、様々な分野の専門家からなる作成委員会を設置して、専門的で分かりにくい化学物質の情報を分かりやすく整理し、専門家以外の方にもよく理解していただけるよう簡潔にまとめた「化学物質ファクトシート」の作成を開始し、この度20物質について暫定版を取りまとめました。
とある。その「化学物質ファクトシート」のサイトがこちら

このファクトシートに掲載されているのは、PRTR対象物質のうち排出量の多い50種類のうちの20種類ということで、比較的おなじみの物質ばかり。実はこれらの物質の性状は調べる気になれば、いろんなサイトから比較的簡単に調べられるものだ。

それでは果たして今回のデータがどう役に立つのか? 実際に見てみると、PRTRの排出量データが載っているところが目新しいのと、環境省お墨付きということで、健康影響や生態影響についての現時点での公式見解が得られるということだろうか。データもきちんと元データにリンクされているようだから、その気になれば詳しく調べられるし、とてもコンパクトで、これはこれでよくまとまっていると思うけど。。

結局、この「ファクトシート」、一体どの辺が一般向けのわかりやすい点なのか? 文章が多くて、わかったようなわからないような、という中途半端な資料になっているようにも見えるけど。。(専門用語の解説も今ひとつ紋切り型で不親切だし。) せっかくだから「ご意見」を書いて送ってみようかな。

詳細な毒性データとか取り扱い方法などは、いわゆるMSDS(物質安全データシート)等、以下に示すようなサイトの方が圧倒的に充実していて、多くの物質をカバーしているけれど、確かにこれらのサイトはプロ向けと言えるかも知れない。実際にインターネットで、ある化学物質の性質を調べようとすると、いろんな機関がそれぞれデータベースを公開してくれているので、逆に全貌を理解するのが大変だったりもする。そういう意味では、むしろ、こういう既存のデータベースの上手な使いこなし方みたいな解説が欲しい気もする。

公的機関関係
 厚生労働省 化学物質に関する情報
 製品評価技術基盤機構 化学物質総合情報提供システム
 国立医薬品食品衛生研究所 国際化学物質安全性カード
 安全衛生情報センター 化学物質情報
 化学物質環境リスクセンター 化学物質データベース WebKis-Plus
 神奈川県環境科学センター 化学物質安全情報提供システム kis-net
薬品会社
 昭和化学 試薬ケミカルデータベース
個人サイト
 Funaのホームページ

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2004/06/04

110番元素「ダームスタチウム」

日本化学会の雑誌「化学と工業」の最新(6月)号から。「110番元素の命名と115、113番元素の合成」永田目諭一郎(原研先端基礎)化学と工業, Vol.57,(6),p624 (2004)

元素の名前は、これまで原子番号109のマイトネリウム(Mt)までつけられていたが、2003年8月の国際純正応用化学連合(IUPAC)総会において、110番元素の名称を darmstadtium(元素記号 Ds)とすることが了承された。これはドイツのダルムシュタット(Darmstadt)にある重イオン科学研究所(GSI)で発見されたので、研究所のある町の名前にちなんで命名された。
とある。110番元素 Ds は鉛にニッケル粒子を衝突させて合成されたもの。ちなみに、同じ研究所がビスマスにニッケルを照射して111番元素を合成しており、近く新元素の名前が提案される見通しとか。

一方、ロシアの研究グループは、アメリシウムにカルシウムを照射して115番元素を合成し、その壊変過程で113番元素も確認したとされているが、これらについては今後の追試や再現性の確認実験が必要としている。

永田目さんは、

いったい自然界に元素はいくつ存在するのか。周期表はどこまで続くのか。究極を追い求める研究である。
と結んでいるが、この辺の元素は既に自然界に存在すると言えないようにも思えるんだけど。(人間の活動も大きな意味で自然の一部という立場を取るなら別だが。。)

さて、この110番元素の名前だが、同じ「化学と工業」の2004年4月号に掲載された「原子量表(2003)」には「ダームスタチウム」と書かれている。一方、丸善の発行している理科年表の最新版では「ダルムスタチウム」と書かれているようだ。日本語表記は誰が決めているんだ?(104番も「ラザホージウム」と「ラザフォージウム」の二通りがあるようだ。)

本家IUPACのページでは110番元素についてのリリースは、こちら。この元素って周期表上はニッケル、パラジウム、白金の列の真下に位置しているから貴金属っぽいけど、寿命のはかない貴金属ってことなのかな。

103番のローレンシウム(Lr)までは割とポピュラーかと思うけど(個人的には一応全部暗記している)、104番以降は過去にロシアの研究グループとの競争の中で、元素名が二転三転したこともあり、何だか頭に入っていない。この辺の最新事情は、Wikipediaの超ウラン元素が良くまとまっているようだ。

ちなみに、、 WebElements では 111番元素は Rg(roentgenium レントゲニウム)となっていて、112番以降も表に掲載されているが、IUPACの最新の Periodic Table では、111番元素 Uuu(ウンウンウニウム)までとなっており、これが公式の最新版周期表ということだろう。

おまけ。中国語周期表を作成して公開されている方もいる。109番まで載っている。中国では、元素が見つかる度に新しい字を作るのかな? 化学同人ではTシャツを作って売っている。

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2004/06/03

ウンカ予報

YOMIURI ON-LINE(6/3)の記事。梅雨に多いイネの害虫ウンカ、今月からHPで飛来予報

 原発事故などで放出される放射性物質の大気への拡散予測技術を応用し、イネの害虫であるウンカの海外からの飛来を予測するシステムを、農業・生物系特定産業技術研究機構(茨城県つくば市)と日本原子力研究所(同県東海村)が開発し、今月からホームページ上で予報を始めた。

 ウンカは植物の汁を吸う昆虫で種類は多いが、中国南部から飛来するウンカはイネだけにつき、大きな被害をもたらすこともある。梅雨の時期、1000キロ以上も風に乗って1日半程度で主に西日本に飛来するが、いつ、どこから来るか正確には予測できなかった。

 研究チームは、旧ソ連のチェルノブイリ原発事故などを契機に原研が90年代に完成させた地球規模の放射性物質拡散予測モデルに、ウンカが飛び立つ朝夕の時刻や、羽ばたきの活発さと気温の関係などの要素を組み込んだ。

 これに、気象庁の天気予報で使う風向などのデータを加えた。昨年の予測テストでは、的中率は74%。

ということで、黄砂や大気汚染物質ばかりではなく、昆虫までが大陸から多量に飛散してくるようだ。

日本原子力研究所のニュースリリースは、ウンカの海外からの飛来を高精度に予測するシステムを開発。放射性物質の広域拡散シミュレーションモデルの有効利用らしいが、ウンカと単なる分子とでは大きさも重さも桁がまるで違うけど、簡単に適用できたのかな?

紹介されているホームページは、リアルタイムウンカ飛来予測。ここの解説によると、中国や台湾の水田で羽化したウンカは秒速10m以上の南西風に乗って、1~1.5日で西南日本に到着するらしい。この間ひたすら風まかせの旅をして、無事に餌のある陸地に到着できるのはごく一部なんだろうけどな。

ウンカによる被害については、島根県農業試験場のホームページにセジロウンカトビイロウンカの被害についての記載がある。

虫の世界もマニアが多いので、予想通り日本のウンカ・ヨコバイ・アワフキ・ツノゼミ類画像集のようなページが見つかった。リンク先を探すと世界中のウンカが見られる。

蘊蓄としては、ウンカは稲作には害虫だが、お茶の栽培には役立つこともあるようで、Wikipediaによると東方美人という台湾烏龍茶はウンカに茶葉を噛ませて作るらしい。でも日本茶ではうまくいかないようで、ウンカがもたらすものなんて記事がある。

*この記事で「雲霞の如し」という表現を思い浮かべたんだけど、実は「雲霞の如し」は文字通り、雲や霞が沸き起こるように人々が群がり集まる様のことらしい。そもそも虫のウンカは、漢字では「浮塵子」と書くなんて知らなかった。(goo辞書によるとウンカの語源が雲霞の如くから来ているということなのか? でも、ここによると、もっとややこしい話になってるし。。)

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2004/06/02

脳力トレーナー

NIKKEI NET(6/2)の記事。セガトイズと東北大、「脳力」鍛える携帯ゲーム機開発

 電子玩具のセガトイズは東北大学と組み、脳の働きを活発にする携帯ゲーム機を発売する。川島隆太同大教授の研究理論に基づいた設計で、単純な計算問題を繰り返し解く仕組み。アニメーションによる演出など玩具のノウハウを織り込む。

 9月上旬をめどに携帯ゲーム機「脳力トレーナー」を発売する。画面に表れる足し算やかけ算などを繰り返し解き正答率や回答時間を計る。過去1年間の計測データを保存し成績の推移も確認できる。40―50歳代のビジネスマンや高齢者らを対象に販売する。徐々に領地を広げていく戦国大名をなぞらえたアニメーションで目標達成度などを表現、ゲーム性を高める。価格は1台5000円前後。初年度は5000万円程度の売り上げを目指す。

最近、記憶力の低下を痛感しているし、ちょっと興味のある話かも。この記事に出てくる東北大の川島研究室のホームページを見ると、リンクも豊富なので、その「研究理論」の一端が垣間見える。(「未来新素材創製分野」と脳の研究の関係がよくわからないけど。。)

セガトイズのホームページでは本件は発表されていないけど、今度発売するゲーム機は、大人のドリルシリーズにあるような、単純な計算を繰り返すものらしい。まあ、確かにこの手の単純な繰り返し訓練は、本よりも、携帯ゲーム機向けかもしれない。

数年前に献血のご褒美に岡山県から貰った、カシオの電子辞書EX-word XD-E55のスペルゲームにはまってしまったことがあるけれど、新たな単語が覚えられるというメリットと得点を競うゲーム性がうまくマッチしていたように思う。それに比べると、単純な計算問題を如何に続ける気にさせるかが、セガの腕の見せ所という所だろうか? (どうせなら、脳力トレーナー機能単独ではなく、他の機能も搭載した方が良さそうに思えるけど。)

単純な計算能力が、使わないでいると錆び付いていくことは何となく実感できるけど、単純な計算問題の繰り返しだけで果たしてどの程度の効果があるのだろうか? 個人的には、単に目から入った情報を頭の中で処理して出力するような勉強は中々身に付かず、手を動かして紙に書いたりキーボードを叩いたりすることで、頭への定着が進むように思うのだけど。

それにしても、「脳力」が向上したかどうかは、どうやって判定できるんだろう? 是非自己診断してみたいものだが。

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2004/06/01

京都議定書を巡る最近の新聞報道

MSN-Mainichi INTERACTIVE(5/31)、京都議定書:ロシア批准で発効へ 温室効果ガス排出削減--環境税導入が焦点という記事が載っている。ここのところ、このままでは日本は京都議定書で約束した温室効果ガスの排出量の削減を達成できそうもないということと、このロシアの動向がらみで、関連報道が目に付くようになった。安井さんのサイトの5月27日の記事では、世の中がこの問題にあまりにも無関心だと嘆いているが、これは安井さんが朝日新聞をメインの情報源としているためなのではないか?

最近少し注目してみていたので、京都議定書を始めとした環境問題についての、単なるニュース記事ではなく、各紙の主張が垣間見えるような、コラムや社説等をリストアップしてみた。

読売新聞:社説(5/18)[CO2削減]「難しくてもあきらめるのは早い」(Googleのキャッシュ)
毎日新聞:記者の目(5/19)環境と経済
日経新聞:コラム(5/21)春秋
日経新聞:社説(5/27)ロシアは京都議定書批准を
産経新聞:主張(5/31)環境ビジネス 地球を守るあらたな市場
読売新聞:芸能・文化(6/1)環境省、米SF映画を異例の大宣伝…温暖化対策で便乗

この中では、日経新聞のコラムと社説が注目に値する。日経新聞は何といっても産業界が大スポンサーであり読者層であるのにも関わらず、このままでは駄目で、環境税等の導入を検討すべきという、積極的なシグナルを出したことに意味があるんじゃないかと思う。

毎日新聞は、環境問題については以前からとてもまじめに取り組んでいるという好印象。読売新聞の社説は、省エネ強化を実施すべきという内容で、残念ながらインパクトに欠ける。朝日新聞は、何故か環境問題についての主張がほとんど掲載されていない。

地球温暖化の問題に限らず、資源エネルギーの持続性等を考えてみても、我々はライフスタイルの大幅な変更を要請されているのは間違いないと思うのだけど、少なくとも新聞レベルでは、そうした大所高所の視点からの主張はまだまだ見られず、個々の対策についての細かな議論に終始している印象がある。

京都議定書の話に戻ると、約束を守ることのメリットとデメリットを考えた時、本当の意味でメリットを享受するのは将来世代の人々ということになるから、これを巡る現在の議論は本質的に利害関係者同士の議論となりにくく、どうしても空回りしがちだろう。(約束しちゃったから守らなくては、という単なるメンツ問題になりかねない。)

従って当然、産業界やら経済界からの環境税の導入に大反対の声ばかりが目立つわけだけど、日経新聞の主張に代表されるような、こうした一連の記事を読むと、実はそろそろ舞台裏では落とし所の調整段階に入っているのではないか? というのは穿ち過ぎた見方だろうか?

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