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2004/06/15

飛行船と水素

asahi.comの6/13の記事。世界一周飛行のツェッペリン号、ドイツから日本に

 ドイツ・ツェッペリン社製の飛行船「ツェッペリンNT」が13日、ドイツから日本に向けて出発する。12日にはドイツ南部のフリードリヒスハーフェンで式典が行われ、格納庫内で日独の関係者らが記念撮影をしていた。旅の間は「YOKOSO! JAPAN」号と呼ばれ、パリでは日本への観光誘致キャンペーンなどに一役買う。同船は有人飛行船を使って日本での事業を計画している「株式会社日本飛行船」(本社・名古屋市)が購入。全長75メートル、最高速度125キロ、定員14人は世界最大級だという。
ということで、愛知万博の宣伝を兼ねての飛行のようだ。

この飛行船、世界最大級と書かれているが、あくまでも現時点で、ということだ。75年前のツェッペリン伯号やヒンデンブルク号はこれに比べればとてつもなく大きく、世界最大の気球と格納庫によると、ツェッペリン伯号は全長236.53m、直径30.48m、ヒンデンブルク号は全長は245.06m、直系は41.15mで、人類が現在までに作った最大の空飛ぶ船とある。今回のツェッペリンNT号の全長75m、直径17m程度とは比べ物にならない大きさだが、昨年日本の空を飛んでいたグッドイヤー社の飛行船「ブリンプ号」は全長39mとのことだから、それに比べれば倍近い大きさということになるのだが。

過去にも、さまざまな広告を描いた飛行船が日本中を飛び回っていた時代があった。調べてみると、日立キドカラー号とかグッドイヤー号などが飛んでいたようだ。今回のツェッペリンNT号を日本に持ってくる会社(日本飛行船)の社長さんも、このキドカラー号を見てあこがれたのだそうだ。(asahi.com:Be on Saturday)僕も随分前に飛行船をボーっと見送った記憶があるけど、あれは何の宣伝だったろうか?

ところで、最近水素が燃料電池の絡みで注目を集めているが、その関連でヒンデンブルク号の悲劇の原因は実は水素ではなかった、という話を聞くことがある。調べてみるとここには、近年NASAの研究者の研究により、アルミ塗料が原因であることが解明されたとある。

手元にある、ちくま新書「燃料電池」(槌谷治紀著)(bk1amazon)によると、

 1997年になって、NASAのケネディ・スペース・センターの水素計画マネジャーであったアディソン・ベインは、ヒンデンブルク号の爆発は水素が原因ではないという論文を発表した。彼は事故の様子を詳しく調査し、水素が原因ではなく、犯人は飛行船の表面に使用された燃えやすい材料であるという説を立てた。
 ヒンデンブルク号の残った破片を分析してみると、その表面はコットン(木綿)をベースにしたものであった。コットン繊維を処理した工程には、アルミニウムを含むセルロース・アセテート・ブチレンと酸化鉄が使われて染み込んでいた。これはスペースシャトルのロケットブースターに使用される、燃焼制御触媒であるアルミニウムと酸化鉄と同じであった。
 事故の直前には飛行船の上部に青い火花が見えたという証言もあった。空気中の静電気が引き金になったと考えられた。飛行船の船体が燃えやすい材料であったので、水素は爆発していない。もし使用されたガスがヘリウムのような不活性ガスであっても、本体が燃えたであろうとしている。(p.45-46)
とある。どうやら現時点では最も真相に近い説と考えられているようだ。それにしても何でそんなに危ない材料を表面に塗ったのか? ヒンデンブルク号の場合には、外骨格を持つ硬式飛行船だから、外表面のガス気密性はさほど重要ではなかったと思われる。The Hindenburug Disasterによると、熱対策に加え、空力性能や強度を考えたもののようだ。

*水素でも確かに十分に対策をとって安全に取り扱えば簡単に爆発はしないだろうし、ヘリウムに比べれば大きな浮力が得られるな、と思ってよく考えてみたら、ヘリウムを水素に代えても浮力はわずか8%程度しか増えないんだ。これだと敢えて水素を使う気にはならなそうだな。

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コメント

 水と電気さえあれば作れる水素と不活性ガスのヘリウムでは、コストは全然違うと思います。
 実際、低温実験で使う液体水素は、余れば学生のおもちゃですが、更に低温にできる液体ヘリウムは、全て回収します。

投稿: satoshis | 2004/06/16 14:07

satoshisさん、コメントありがとうございます。

価格については、ご指摘の通りですね。液体水素・液体ヘリウムについてはよくわかりませんが、圧縮水素・圧縮ヘリウムについては、以下のようなサイトに値段が載ってました。全然違うとも言えますが、取り扱いやすさを考えると、意外とヘリウムは安いな、という印象でもありますが。

http://www.nal.go.jp/jpn/procurement/r125.html">航空宇宙技術研究所
http://www.geocities.co.jp/Playtown-Dice/2996/airship2.html">Aircraft Archive

ちなみに、風船に詰めるヘリウムについては、http://www.event-ya.com/event171.html">イベント屋などで扱ってますね。

ツェッペリンNT号の場合、Heガスを 8225m3使うとのことだから、1800円/m3として、約1500万円ですね。水素だと 450円/m3として 370万円か。初期充填費用としてはこの程度として、消費量はどの程度なのだろうか?

投稿: tf2 | 2004/06/16 22:16

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