ヨーロッパの子どもの死亡原因
nikkeibp.jp(6/24)の記事から。WHO、欧州では子どもの3人に1人が環境汚染などにより死亡と報告
WHO(世界保健機関)は6月19日に、欧州では子どもの3人に1人が環境汚染などにより死亡しているという調査結果を発表した。死亡原因は屋内外の大気の汚染、水の衛生状態の悪さ、鉛中毒、事故など。ということで、ヨーロッパの話とは言え、やけにセンセーショナルな見出し。この記事の元となった WHO のリリースは、One in three child deaths in Europe due to environment。これを読むと、ヨーロッパの子どもの3人に1人が環境が原因で死亡するわけではなく、死亡する子どもの1/3が環境要因や事故が原因ということだ。随分違うと思うけど。。(これらの原因で死亡する子どもはトータルで、10000人に6.5~8.5人とある。)
(中略)
WHOの調査によれば、欧州では毎年、19歳以下の未成年10万人が環境汚染などにより死亡している。19歳以下の死亡原因の34%を占めるという。また、年間約1万3000人の0~4歳児が粒子状物質による大気汚染が原因で死亡。同約1万人が室内での固形燃料の使用が原因で死亡していることがわかった。水などの衛生状態の悪さが原因で死亡する0~13歳の子どもは1万3000人にのぼる。WHOは調査結果に基づき、子どもの環境と健康に関する行動計画の採択を呼びかける予定。例えば、ガソリンに含まれる鉛の廃止は、血中の鉛濃度上昇による脳障害の削減につながる。行動計画には、このような具体的対策のほか、教育、立法、研究といった部門横断的な取り組みも盛り込む予定だ。(日経エコロジー)
それにしても、ヨーロッパの大気や水の汚染がそんなにひどいのは意外。更に元のデータは、Study on environmental burden of disease in childrenで得られる。これによると、ヨーロッパを3つの地域に分けて分析されている。すなわち、イギリス、フランス、イタリア、ドイツ、スイス、スペイン、ポルトガル、北欧各国等のいわゆる先進国からなる EURO-A に対し、アルバニア、アルメニア、アゼルバイジャン、ボスニア・ヘルツェゴビナ、ブルガリア、キルギスタン、ポーランド、スロバキア、タジキスタン等からなる EURO-B、ベラルーシ、エストニア、ハンガリー、ラトビア、リトアニア、ロシア、ウクライナ等からなる EURO-C の3つのグループだ。
もちろん EURO-A の地域はいずれの要因による被害も他の地域に比べて最も小さいのだが、面白いことに、大気汚染や不衛生な水による被害は、EURO-B が最も大きく、鉛の害と事故の被害は EURO-C が大きいという意外な結果が出ている。社会インフラの整備状況や生活水準等について、これらの国々をまとめて議論できるのかどうか不明だが、少なくともヨーロッパは広いなあ、ということはよくわかる。(ヨーロッパは先進国だけからなるグループではないという認識は重要だろう。)
*日本の年齢別死亡原因のグラフはこちらで見られるが、19歳までの年齢層だと、事故、自殺が圧倒的に多い。
こうやって、実際に子どもたちの死因を分析して、その結果を予算配分を含めて様々な判断に活かしていこうという動きは評価できる。一方、同じ6/24の MSN-Mainichi INTERACTIVEには、環境ホルモン:子どもを守ろう 千葉大が指導者を養成という記事が載っている。
最近の子どもにはアレルギ-疾患が目立ったり、出生時に低体重の傾向が見られたりする。へその緒からはダイオキシンやDDT(殺虫剤)、PCB(ポリ塩化ビフェニール)など有害な化学物質がごく微量ながら検出される。とあるが、何を今さら? という印象だ。 DDTやPCBなんてとっくに日本で使用禁止になった物質の影響を、次世代の問題と位置づけるセンスがわからない。念のため、千葉大学大学院 環境生命医学へリンクしておく。環境ホルモンについては、中西さんの千手観音が現状をよく表していると思うのだが。。そうした化学物質がどの程度影響しているかは分かっていないが、子宮内の化学物質を減らすことは必要だ。また、同じ化学物質にさらされた場合の個人差を知る研究の意義は大きい。(後略)
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