リチウム系水素貯蔵化合物
Yahoo!ニュース(6/28)の記事。従来より多量の水素を貯蔵 東北大が新材料を開発
東北大金属材料研究所(仙台市)の折茂慎一助教授らが28日、環境負荷が小さく、再生可能な新エネルギーとして注目されている水素を、従来より多量に貯蔵できる新材料を開発したと発表した。ということで、高性能の水素貯蔵材料が開発されたようだ。同じ Yahoo!ニュースで、6/29の河北新報の記事、水素貯蔵量3―5倍に向上 東北大金研が新素材開発が読めるが、こちらはやや詳しい内容にも突っ込んでおり、
現在主流の合金系の材料より、3-5倍の水素が貯蔵ができる。燃料タンクの小型化が可能になり、燃料電池自動車への応用が期待されている。
折茂助教授の研究グループによると、新材料はマグネシウム窒化物とリチウム窒化物を、水素ガスが入った容器中で熱処理して合成。貯蔵できる水素は材料100グラムあたり9グラムで欧米各国の開発目標値(6グラム程度)を超えることに成功した。
しかし、貯蔵した水素を取り出すには、材料を高温(ピーク時約400度)で加熱する必要があるため、実用化に向けては課題が残っているという。研究グループは「今後、ピーク時を150度以下に抑えたい」としている。(共同)
マグネシウムとアミノ基を結合したマグネシウムアミドに、リチウム水素化物を合成。100グラム当たり9グラムの水素を貯蔵でき、国際エネルギー機関の目標値である100グラム当たり5.5―6グラムの貯蔵量を大幅に上回った。とある。この解説を読んでもどんな化合物なのかさっぱりイメージできないし、先の記事とは操作温度が随分違うぞ。
水素の貯蔵には従来、ランタンなどの合金系材料が使われてきたが、重量がある上、貯蔵可能な水素量も100グラム当たり1.2―3グラム程度のため、新素材の開発が競われていた。
また、マグネシウムアミドは、熱すると燃料電池を劣化させるアンモニアを発生させるため、その抑制も課題だった。
今回、マグネシウムアミド「1」に対して、リチウム水素化物「4」の割合で合成して、アンモニアの発生を抑制した。
新素材は、水素の放出のために、これまで300度以上必要だった加熱を130度まで低下。安全性も大幅に向上した。
研究グループは「近い将来、他の金属の触媒を使うことなどによって、水素の放出ピークが100度以下でもできるようにしたい」としている。
燃料電池自動車が400キロ走るには、4キロの水素が必要とされる。現在、試作されている燃料電池には、高圧水素ガスや液体水素などが使われているが、重量などがネックとなっていた。
この材料については東北大学金属材料研究所の環境材料工学研究分野の情報を見るのが手っ取り早い。トヨタとの共同研究として進めているようで、この1年、活発に新聞発表等を行ってきている。新着情報のページから報道発表記事が読めるし、最近の講演資料(pdf)も見られる。(pdf資料がうまく見られないときは、このページの右上の「最近の講演内容」のリンクから、ファイルを一旦PCにダウンロードするとうまく見られるようだ。)
どうやら材料としては、LiNH2系とLiBH4系の2種類を検討しているようで、それぞれLiを他の元素で置換することで性能向上を狙っているようだが、今回の材料は LiNH2 と Mg(NH2)2 の 4:1 の固溶体?らしい。
科学技術政策研究所の科学技術動向 2003年11月号の中に解説記事があるが、こちらは昨年の時点で既に放出温度を100℃以下にできたと書かれているし、水素貯蔵能力や他の特性と操作温度との最適化を進めているのかもしれないが、最初の記事の「400℃を150℃以下にしたい」というのは間違いじゃないか?
燃料電池と組み合わせる水素の貯蔵方法としては、圧縮ガス、液化ガス、貯蔵化合物のどれが最終的に使われるか、まだまだ混沌といったところのようだ(水素以外の燃料を供給して、オンサイトで水素を製造する方法もある)が、山口大学の公開講座資料に、こんな比較図がある。今回の材料はこの図の「ケミカルハイドライド」に該当するようだ。確かになかなか有望みたいだ。 (ガソリンには負けているけど。)
水素貯蔵材料としては、ニッケル水素電池が実用化されていることもあって水素吸蔵合金が有名だけど、カーボンナノチューブ等の炭素材料やヘキサン等の有機化合物を始めとする様々な水素化物等が検討されているようだ。最終的に何が使われるのか? まだまだ先が見えない激しい開発競争が続きそうだ。
| 固定リンク
コメント