「牛肉の安全」資料
MSN-Mainichi INTERACTIVE(6/8)の記事。BSE:公開討論会の記録集、まとまる--50人に無料頒布
米国でのBSE(牛海綿状脳症)発生で牛肉の安全性が改めて問われているが、そもそも牛肉を食べて、人にBSEが感染するリスク(危険の可能性)はどの程度なのか。このテーマをめぐって開かれた日本学術会議主催の公開討論会の記録集「牛肉の安全を守るためには?」(A4判・55ページ)がまとまった。というもの。何で先着50人だけなの? と思いながら探してみると、東京大学大学院農学生命科学研究科の獣医学教育改善のページに、そのものずばり日本学術会議公開討論会 「牛肉の安全を守るためには?」(pdf版)(全56ページ)が公開されている。毎日の記事にURL書いておいてくれれば唐木さんも、事務処理でわずらわされずに済むだろうに。。討論会は今年4月に東京都内で開かれた。BSE研究で知られる山内一也・東京大学名誉教授、品川森一・動物衛生研究所プリオン病研究センター長ら10人が活発な討論を展開。国内はこれまでに約300万頭の牛が検査され、11頭がBSEと分かったが「人に感染するリスクは1人未満」(唐木英明・東京大学名誉教授)など専門家の分析や意見がたくさん出た。
注目度が高かったため、同会議は参加者の発表内容を記録集として作成した。説明に使われたスライドも収録されている。希望者は唐木さんにファクス(03・5841・8183)かメール(karaki@gakushikai.jp)で申し込む。無料。先着50人まで。
この資料、膨大だし、まだザッと目を通しただけだけど、結構多彩なメンバーが集まっており、なかなか面白そうだ。(というか、この討論会に出たかった。。)
この資料、何故か目次がないので、折角だから紹介しておこう。現時点ではBSEに関する資料としては、かなり充実したものと言えそうだ。(欲を言えば、参考資料やサイトへのリンクがあって、常にアップデートできたりするといいのだけど。)
公開討論会の趣旨 --- p.2
討論の基礎としてのリスク分析手法の概論 --- p.3
日本学術会議獣医学研究連絡委員会委員長 唐木 英明
牛肉の安全を守るためには?
科学と「リスク分析」の立場から --- p.5
東京大学名誉教授 日本学術会議会員 唐木 英明
定量的リスクからみたBSE --- p.9
東大農学生命科学研究科 吉川 泰弘
BSEの発生と英国及び日本の対応 --- p.14
動物衛生研究所 プリオン病研究センター 品川 森一
変異型クロイツフェルト・ヤコブ病 --- p.20
医薬品医療機器総合機構 池田 正行
各国における食肉の安全対策の経緯 --- p.25
東京大学名誉教授 山内 一也
サーベイランスの経緯と国際比較 --- p.31
国際獣疫事務局(OIE)名誉顧問 小澤 義博
BSE対策の「費用対効果」をどう考えるか --- p.39
放送大学客員教授、UFJ総合研究所顧問 嘉田 良平
BSE問題への消費者の視点 --- p.45
日本消費者連盟副代表運営委員・明治大学法学部兼任講師 山浦 康明
BSE問題をめぐる動向について-消費者の立場から- --- p.47
日本生活協同組合連合会 原 英二
BSE報道の誤解とねじれ現象はなぜ生じたか --- p.48
毎日新聞生活家庭部編集委員 小島 正美
全頭検査導入の経緯とその評価 --- p.52
東京大学教授 熊谷 進
討論のまとめと今後の課題 --- p.53
日本学術会議獣医学研究連絡委員会委員長 唐木 英明
公開討論会の紹介記事 --- p.54
*上記リンクは、tf2が各氏に関連していそうなURLを、参考のために勝手に付したもので、オリジナル資料とは無関係。
この問題を語るには、本当は政治的な視点が欠かせないと思えるのだが、今回の討論会には行政サイドや政府サイドの方は出てこられていないようだ。消費者代表は出ているけど、生産者側とか食品業界側の代表も出ていないし、まあ、政策を議論する場ではなく、あくまでも科学的な視点を中心にしたものなのだろう。
全部に目を通したわけではないが、毎日新聞の小島さんの資料がおもしろい。「BSEのメディア情報は、大いなるリスク・コミュニケーションの失敗」、「牛肉の輸入再開をめぐる日米交渉とその報道を見ていると、バッド(BAD)でなく、マッド(MAD)・コミュニケーションの感じさえしてくる。」等。毎日新聞さんが、この視点で、得意のキャンペーンをすればいいのに。現実問題として、ここのところ何の進捗も見られないんだし。。
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コメント
アリャリャなニュースがありました。
BSE問題:「安全」パンフを政府調査会座長代理が監修
http://www.mainichi-msn.co.jp/shakai/wadai/news/20051013k0000m040083000c.html
米国食肉輸出連合会が作った米牛肉の安全性を訴えるパンフレットを、政府の食品安全委員会(寺田雅昭委員長)リスクコミュニケーション専門調査会座長代理を務める唐木英明・東大名誉教授が監修していたことが分かった。12日の衆院内閣委員会で川内博史議員(民主)が「食品安全行政の中立・公正を疑わせる」と指摘した。寺田委員長は、唐木氏は牛肉輸入を審議する委員ではないとしたが、「もう少し気をつけたらいいのにと思う」と答え、問題があったとの認識を示した。
パンフレットは「知って安心BSEのホント」との題でA5判18ページ。連合会が昨年6月に約1万部を作った。唐木氏はパンフレットの中の対談にも登場し「アメリカの(脳などの)特定部位の除去は徹底していた」「(日本のような)全頭検査の必要はない」などと話している。経歴欄に「食品安全委員会専門委員」との記載がある。
安全委は、プリオン専門調査会で米国・カナダ産の牛肉の安全性を審議中。寺田委員長は「(監修は)委員会の立場としてではないので、まあしょうがない」と話した。一方で、唐木氏には以前に、発言の際は安全委の肩書を使わないよう注意していたことを明らかにした
投稿: ありゃりゃ | 2005/10/19 07:30
ありゃりゃさん、情報提供ありがとうございます。
唐木さんのお話(講演)を一度聴いたことがあるのですが、視点が明確で実におもしろいお話でした。BSE問題についての考え方も、極めて明快で、全頭検査は不要、現状でもリスクは極めて小さい、という立場です。
今回のパンフレット問題は、その主張の良し悪しは別として、自分の公的な立場を十分に認識していない軽率な行動と指摘されても仕方ないでしょう。こういうことで、かえって米国産牛肉の信頼性を落とすことにもなりかねないのですから。
でも、パンフレット発行元も、そのくらい気が付いても良さそうなものですけどね。
投稿: tf2 | 2005/10/19 20:02