合計特殊出生率が低下
各紙が大きく扱っているが、グラフもあってわかりやすいので、asahi.com(6/10)から。出生率1.29に低下 03年、政府想定下回る
日本人女性1人が産む子どもの平均数を示す「合計特殊出生率」が、02年の1.32から03年に1.29へ低下し、戦後初めて1.2台に落ち込むことがわかった。近く厚生労働省が確定値を発表する。政府の基本的な想定を外れる水準で、このまま推移すれば、社会保障制度の設計や将来の経済活動などに大きな影響を及ぼす可能性が強い。今回の年金改革で政府・与党が公約した「現役世代に対する給付水準50%の維持」も前提が揺らぐことになり、論議を呼ぶのは必至だ。といった具合で、年金問題で紛糾した国会が終了した直後にこういうデータが公表されたというタイミングも含めて、やけに政治的な色彩で語られている。こんな扱いをされるとなると、こういう数値を出す側も大変だ。
厚生労働省が発表したのは、平成15年人口動態統計月報年計(概数)の概況という資料。実は、出生率ばかりが話題になっているが、この資料には他にも、死亡率、死因、婚姻、離婚などが載っている。死因割合の年齢別グラフなんかは、初めて見る形式だったけど、なかなか考えさせるものがあって面白い。
それにしても、およそ人口統計ほどデータ数が多くて、頻繁に集計されている統計はないのではないだろうか? 統計的な様々な処理をするには持って来いのデータが毎年それこそ山ほど発生するわけだし。しかしその割には人口動態の予測精度が悪過ぎないだろうか? この朝日新聞の記事に載っているグラフをみても、全然予測になっていないと言ってよいレベルじゃないだろうか?
公式の推計は国立社会保障人口問題研究所というところでやられている。最新の2002年1月の推計は日本の将来推計人口(平成14年1月推計)に掲載されている。方法も説明されているが「予測」ではなく「推計」である、ということに留意すべきかもしれない。地球温暖化予測のように、ともかくも正しそうなモデルを作って計算するというのとは異なり、現状を解析して外挿しているという感じに近い。
一方で、Attractors Labという民間機関は、日本の総人口予測調査結果報告という資料をまとめているが、ここでは進学率や結婚率などを予測するモデルを作り、それを使って予測している。この結果によると合計特殊出生率は2025年頃まで漸減し続け、1.14程度になるとしており、人口問題研究所の予測よりも大幅に下回る。
ところで、この合計特殊出生率は一人の女性が生涯に産む子どもの平均数などと定義されている。今回の発表によると、一昨年はそれが 1.32人だったのが、昨年は 1.29人に減少したということらしい。ところが、特定の一人の女性が産む子どもの人数は経時的に増えることはあっても減ることはないから、この数値ってのは何を意味しているのか、考え出すとよくわからなくなってくる。
合計特殊出生率の算出方法は、例えば埼玉県のFAQに具体的に書かれているが、実は、ある年の出生数をその母親の年齢別人口で割った値を合計しただけなのだ。例えばある年の出生数が120万人で、15歳から49歳までの女性の人口が平均100万人ずつだとすると、合計特殊出生率は約 1.2となる。つまり、今母親である人が生涯に何人の子どもを持つのか、というような累積的な計算は一切されていない。でも結果的には一人の女性が生涯に産む子どもの平均数に相当するらしい。理解できるだろうか? うーん。わかったようなわからないような。。
ところで、日本が世界一の少子化国家のような言われ方がされているが、世界各国を見回してみると経済・社会データランキングなどで見る限り、東欧諸国やイタリアは日本よりも少子化が進んでいるようだ。
おりしも内閣府が少子化社会対策大綱なんてものを発表しているけど、いっそのこと、6/9の記事のコメントにあるように、省エネ運動を徹底的に進めるほうが出生数が増えるし、一石二鳥かも。。
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