アメリカのCO2排出削減訴訟
CNN.co.jp(7/22)の記事。NYなど8州、CO2削減のため電力大手を提訴
ニューヨーク――米国のニューヨーク、カリフォルニアなど8州とニューヨーク市は21日、電力大手5社を相手に、二酸化炭素(CO2)排出量の削減を求める訴訟をニューヨーク連邦地裁に起こした。ニューヨーク州のスピッツァー司法長官ら各州長官らが同日、ニューヨーク市内で発表した。カリフォルニア州が自動車からの温室効果ガスの排出を削減する規制を打ち出している(6/11のブログ参考)かと思うと、今度は電力会社が訴えられるという具合に、アメリカは京都議定書から離脱している一方で全く逆の動きが出てくるところが面白い。もっとも、YOMIURI ON-LINEの記事によるとスピッツァー長官は記者会見で、「他の民間企業は、温室効果ガスの排出量削減のため、負担を請け負っているのに、この5企業は努力していない」と述べ、5社は米全体のCO2排出量の約10%に相当する年間計6億5000万トンものCO2ガスを放出しており、全米最大の温暖化「公害」企業だと批判した。
訴えられたのは、アメリカン・エレクトリック、サザンカンパニー、テネシー渓谷開発公社、エクセル・エナジー、シナジーの5社。原告は、ニューヨーク、コネチカット、カリフォルニア、アイオワ、ニュージャージー、ロードアイランド、バーモント、ウィスコンシンの8州とニューヨーク市。
原告は訴えで、5社の計174カ所の火力発電所で、年間CO2排出量を最低3%、今後10年にわたり毎年削減し続けるよう、裁判所命令を求めている。
コネチカット州のブルーメンソール司法長官は、今回の提訴は州政府がタバコ会社を相手取った医療費払い戻し訴訟と同様のものだと指摘。「タバコの時と同じで、連邦政府が責任を放棄したから、州レベルで行動を起こした」と述べ、京都議定書を離脱するなど温暖化対策にきわめて冷淡なブッシュ政権を批判した。
訴えられた5社のひとつ、エクセル・エナジーの広報はCNNに対して、「訴える前に、当社のウエブサイトに目を通して欲しかった。われわれは今年4月、2009年までにCO2排出量を1200万トン削減する自主計画を発表したばかりだ」と説明し、「われわれは風力発電で全米2位。環境配慮に誇りをもっている企業だ」と訴訟に反論した。
電力会社で作る電力安定調整協議会は、訴訟について「原告らは、電力事情にばかり注目して環境配慮への関心がないくせに、大統領選の年なので訴訟を起こした」とする声明を出し、政治的行動であると批判した。米国の州司法長官は選挙で選ばれ、原告8州の司法長官はいずれも民主党支持者。という見かたもされているようだが。
興味があるのは、一体どういう法的な根拠で訴訟を起こしたかだ。事業者にCO2排出削減を義務付けているのならば、法律違反も問えるだろうが、どうも状況は違いそうだ。向こうのニュースを見てみると、例えば REUTERS には、
The lawsuit is expected to be filed in federal district court in Manhattan under the law of public nuisance, which allows a right of action to curb air and water pollution emanating from other states, according to the draft statement.とあり、どうやら「他の州からやってくる大気や水の汚染をやめさせる権利」を定めた法律、the law of public nuisance、を根拠としているようだ。カリフォルニアのケースでも同じだけど、果たしてCO2を pollution と認定できるのだろうか?
ところで、この機会にアメリカのエネルギー事情や電力事情をざっと見ておくのもよさそうだ。電気事業連合会のホームページから、エネルギー入門や地球温暖化への取組みを見ると、アメリカの電力構成は石炭火力への依存度が高いことや、一人当たりの電力消費量が日本の約2倍であること、結果として一人当たりのCO2排出量は日本の2倍以上となっていることがわかる。ちなみに、毎年3%ずつ10年間削減を続けると、0.97の10乗は0.74なので、26%の削減となる。 (まだまだ足りないぞ。。)
アメリカの電力業界の事情を調べていたら、ゲーム「SimCity」のための情報をまとめたサイト、SimCity研究報告 を見つけた。きちんとした資料に当たっているようで、それなりに信頼できそうだ。ゲームのためにここまでやれちゃうとは、立派だ。。
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