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2004/07/31

撥水性 or 親水性?

水滴で車のガラスやミラーの視界が悪くなることへの対策として各種カー用品が売られている。ところがどうやら、これらには撥水性処理をするものと親水性処理をするものがあるようだ。全く正反対の性質を持つものが、同じ目的に使われるというのも面白いが、果たしてどちらが良いのだろう?

たまたま、ホームセンターに出かけた時に撥水性と親水性の両者が置いてあったので両方を買って比較してみることにした。肝心の車へのテスト結果はまた後日ということにして、とりあえず浴室の鏡でテストしてみることにした。最近、鏡の曇りがひどいので何とかしたかったのだ。

今回買ってきたのは、撥水系は SOFT99 の ガラコ ミラーコートで親水系は TOTO の 親水ミラースプレー ミラーバズーカ。ガラコはフッ素系の微粒子(粒径 7nmって本当?)が主成分。親水ミラースプレーは水溶性高分子が主成分らしい。 ミラー用を選んだのは、フロントガラス用だと時速40km以上で効果発揮!みたいに風の力で水滴を吹き飛ばすものが多く、ミラー用なら浴室でも使用できるかな、と思ったため。

とりあえず、浴室の鏡を中性洗剤とスポンジで洗浄し、その後ガラスクリーナーできれいにして空拭きをした後、左側1/3に撥水性、右側1/3に親水性をそれぞれスプレー。しばらく放置して乾燥した後に、シャワーからお湯を出して曇り具合をチェック。しかし、あまり曇り具合には差がなかったので、今度はシャワーのお湯を掛けてみて様子をチェック。下の写真はその時のもの。

20040731_1.jpg

写真を見てもわかりにくいかもしれないが、撥水系は水をはじくことははじくようだけど、細かな水玉にはならず、未処理の部分とあまり区別がつかない。いずれにしてもこの写り具合は浴室の鏡としては失格だ。それに対して親水系は均一の膜厚の水膜ができているようで、とてもきれいな写り具合。どう見ても、この勝負は親水性のTOTOミラーバズーカの勝ちだ。。

後は、持続性がどの程度あるかだが、説明書をよくよく読むと、もともとこれの製品の効果はそんなに長続きするものではないらしい。車に常備しておいて、雨の日にサッとスプレーして使うものらしい。まあ当然のことながら、浴室の鏡の視界確保の目的には、やっぱりそれ専用の製品の方が良さそうだ。 どうやら浴室の鏡用には撥水性処理という製品はなかなか見当たらない。 撥水性処理というのは、やっぱり車のように風がある所でないと効果がないのかもしれない。。

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2004/07/30

一部河川でダイオキシン濃度が増加?

EICネットニュース(7/29)の記事。4地点で水質環境基準超過 全国一級河川15年度ダイオキシン類調査結果

  国土交通省は平成16年7月29日までに、全国一級河川の同省直轄管理区間などでの15年度ダイオキシン類調査結果をまとめ、公表した。
 15年度は(1)全国一級河川109水系で水質(調査地点:238地点)、底質(調査地点:236地点)のダイオキシン類濃度の実態調査を秋期に実施するとともに、(2)過去の調査で高濃度のダイオキシン類が検出された重点監視地点(水質35地点、底質1地点)付近では秋期調査のほかに春期、夏期、冬期にも調査を実施した。
 その結果では、水質観測地点計4地点で環境基準(注1)を超えるダイオキシン類が検出され、このうち2地点は重点監視地点(注2)。底質の観測地点でダイオキシン類の環境基準を超えた地点はなかった。(後略)
という内容だが、実は平成14年度の同調査では、環境基準を超える地点は全く無かったようで、素直に受け取ると、1年前よりも悪化したということになる。

この調査は環境省ではなくて国土交通省が行っているというのも、何だかややこしいのだが、国土交通省の発表資料はこちら。細かな数値がpdfで並んでいるのだが、良く見ると結構面白いというか、とんでもなくバラツキが大きいことが分かる。

例えば年度毎の推移を見ると、今回環境基準を超えた、愛媛県の重信川は、平成13年度までは 0.07~0.09pg-TEQ/Lだったのが今回急に 1.2に跳ね上がっているし、香川県の土器川でも、平成14年度まで 0.2~0.5pg-TEQ/Lで推移していたのが平成15年度は 1.1に急増している。

また、平成15年度の重点監視地点の分析値の季節変動を見ても、新潟県の信濃川では、春に 0.34pg-TEQ/Lだったのが夏には1.9と急増しているし、香川県の土器川でも、秋に 2.1pg-TEQ/Lだったのが冬には 0.12と急減している。代表値として、単純に平均値を採用しているけど、いくらなんでもバラツキが大きすぎるように思える。おまけに、信濃川の数値では PCDD+PCDF と Co-PCB の比率が他の地点に比べてやけに大きいように見えるけど、原因は何なのだろう?

この測定を、誰がどのように実施しているかについては、河川・湖沼 ダイオキシン類常時監視マニュアルがそうかと思ったが、これは今後の取り進め案で、現状は不明。しかし、公表された数値は、ダイオキシン類精度管理委員会がきちんとチェックしているとのことだから、この数値は自信を持って出したものらしいのだが、本当か?

地図で見ると、新潟県の信濃川と関川、埼玉県の綾瀬川、奈良県の大和川あたりに高濃度の地点が集中しているようで、何か特定の汚染源があるのか、それとも分析側の問題なのか、気にならなくもない。少なくとも基準を上回った地点については、何らかのコメントがあってもよさそうだけど、何もないし。。

幸か不幸か、今やダイオキシンはニュースにはならないようで、少なくともネット上のニュースサイトでは、調べた範囲で(地元も含めて)どこも取り上げている所はないようだ。

*ダイオキシンの毒性については、K.SATOH's official website の中の ダイオキシンは猛毒なのか が、バランスの良い説明で、とてもお勧め。

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2004/07/29

地球温暖化実験装置?

Yahoo! News(7/29)地球温暖化、見て感じて 仙台測器社が教材模型製作

 地球温暖化のメカニズムを子どもたちに分かりやすく伝えようと、仙台市若林区卸町にある計測器販売「仙台測器社」が、「地球温暖化模型」を作った。環境問題の啓発に取り組む財団法人省エネルギーセンターを通じて、全国の教育現場への普及を目指している。

 模型は、大気圏に見立てた透明なアクリルボール(直径約30センチ)の中に地球儀を入れたものが、二つ一組からなる。
 一方には空気、一方には温室効果ガスの一つの二酸化炭素(CO2)を入れ、太陽の代わりとなる付属のライトを当てると、二酸化炭素が多く入った方が温度が高くなる仕組み。同社の実験では5分ほどで温度上昇に違いが出始め、30分ほどで約4度の違いが出たという。

 学んだ成果を日々の実践につなげることが大切な環境教育では、行動と環境に与える影響との因果関係を、よりリアルに感じることが重要。同様の模型は一時、大手事務機器メーカーが作っていたが、十数万円と高価だった上に、現在は販売中止。学校現場からは、温暖化の仕組みを分かりやすく伝える教材が求められていた。

 そうした声を受け、経済産業省の外郭団体として環境教育にも取り組む省エネルギーセンター東北支部(仙台市)が仙台測器社に模型製作を依頼。完成品は既に「省エネモデル校」になっている葛巻中(岩手県葛巻町)や喜多方二中(喜多方市)など3校で活用されている。

 仙台測器社の高橋栄一社長は「言葉で説明するよりも、見て感じた方がよく分かる。模型が少しでも環境教育に役立てばうれしい」。省エネセンター東北支部の佐々木正行さんは「二酸化炭素の排出を抑えることがどれだけ大切か、イメージしやすい模型になった。今後は全国の出先機関を通じて、より多くの子どもたちが学べるようにしたい」と、“仙台発”の教材普及に力を入れる。模型は受注生産で、価格は一式6万5000円。

何となく、こんな実験で温室効果が実証できるんだろうか?という疑問が。。 調べてみると、東北電力新潟支店(財)省エネルギーセンターなどがみつかるが、恐らく冒頭の記事の装置も似たようなものと思われる。

装置を見ての第一印象は、二酸化炭素と空気だと比熱が明らかに異なる(低圧モル比熱:空気 29.2 J/K・mol、二酸化炭素 37.5 J/K・mol)から、その影響を受けてしまいそう、というか、むしろ、この実験で測定しているのは比熱の違いなのではないか? という点と、容器としては共にアクリル樹脂を使っているようだけど、これの赤外吸収(問題となる波長は 10μm以上か)はどの程度なのか? という点。

調べてみたら理科教育メーリングリストに、同様の実験をした結果が upされていた。確かに温度差が確認できるようだ。これについての様々なコメントは、考慮すべき要素容器の影響等々。実際の地球温暖化の計算も、非常に複雑な多数の要素を組み込んだモデルで計算しているようだし、予想通り、この実験でも色々と考慮すべき要素がありそうだ。

アクリル樹脂の赤外吸収データはChemExperデータベースでも見られるが、化学工業材料トピックスによると、3μm以上の遠赤外線は通さないので保温性に優れた材料だ、と書かれている。これだと、中のガスの微妙な温室効果の違いをアクリル樹脂がすべて消してしまいかねないけど、どうなんだろう?

それと、地球模型の置かれた環境が、現実の地球の置かれている環境とあまりにも違うのが気になる。(地球と周囲の温度差が、モデルは数十℃、現実は300℃程度) これで、本当にガス組成の影響が放射熱量の差として表れるのだろうか? 先に示した実験方法を説明したサイトには、こういった理論的な解説が何も書かれていないけど。。

いずれにしても、うまく実験すれば温度差が生じるようだし、子どもたちへ直感的に理解しやすい形で見せてあげるのはいいけれど、本当に二酸化炭素による地球温暖化のモデル実験になっているのかは疑問が残るなあ。。

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2004/07/28

水銀フリーHIDランプ

nikkei.bp の7/28のニュース小糸とデンソー、水銀フリーディスチャージヘッドランプを開発

小糸製作所とデンソーは、トヨタ自動車と共同で水銀を使用しないディスチャージヘッドランプを開発したと発表した。

水銀代替物質を使用してバルブ形状を見直し、バラストにおいて投入電力の最適化・高精度化を図ることにより、水銀フリーでもヘッドランプに必要な明るい光を瞬時に発生する技術を確立した。

水銀フリーのディスチャージヘッドランプを開発したのは世界で初めてという。2004年7月26日に発売したトヨタ「ポルテ」に採用された。

ディスチャージヘッドランプと言えば、最近増えている水銀灯のような青白い光を出す、やたらと明るいヘッドランプだ。僕の車もそうだけど、すごく明るい。水銀灯みたいなと書いたけど、本当に水銀を使っていたんだ、知らなかった。

デンソーのニュースリリースは、こちら。ディスチャージヘッドランプについては、JAFのQ&Aに解説があるが、メーカーによって「HID」「キセノン」「ディスチャージ」と呼び方が異なるようだ。それにしても、キセノンランプって聞くと、クリプトンランプなんかのように、白熱ランプの一種かと思ってしまうけど、この場合は放電管だから全然異なるわけだ。まぎらわしいな。

ということで、KAMEでもわかる科学の話 ランプ雑学internet Lamp shop KANEDEN ON LINE電球豆知識はとても丁寧に説明されており、勉強になる。

同じフィラメント形式のランプでもいわゆる白熱灯やクリプトンランプハロゲンランプとの違いや、HIDランプ(水銀灯、Naランプ、メタルハライドランプ)の原理など、何となく名前は知ってそう、っていうものばかりだけど、中身は良く知らなかったりするものだ。「ハロゲンサイクル」って言葉も勉強できたし。。

HIDランプの水銀フリー化については、冒頭のデンソー/小糸製作所とは別に市光工業/ハリソン東芝ライティングでも開発(2001/6/15)しているようで、こちらもそろそろ実用化されそうだ。

一般の蛍光灯にしても少量の水銀が使われているので、世の流れとして、これらの放電ランプの水銀フリー化は、大きな研究開発テーマの一つとなっているようだけど、具体的に水銀代替としてどんな物質を使っているのかは不明だ。(よもや変な有害物質が使われてはいないと思うが。) デンソーのリリースにもあるように電気回路を大幅に変えているところから見て、相当に力づくで放電させていると思われる。

*自動車のランプなんかは、その辺に適当に廃棄される性格のものでもないし、一般の蛍光灯や水銀灯などに比べれば、水銀フリー化のメリットも小さそうだけどなあ。

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2004/07/27

アクロレインとピリジン

MSN-Mainichi INTERACTIVE (7/27)の記事。食用油:加熱で生じる2物質「健康へのリスク高い」環境省

 環境省は27日、食用油を加熱することなどで生じる有害化学物質、アクロレインとピリジンについて、「現在の環境中濃度は人の健康に影響を与える恐れがある」とする初期評価をまとめ、中央環境審議会の専門委員会に報告した。同省などはこれら2物質の毒性や日本人の摂取量を詳しく調べ、規制などの対策が必要かどうか検討する。

 同省は、人の健康や生態系に影響を与える恐れのある化学物質を探し出すプロジェクトを進めている。その過程で、2物質の毒性と環境中の濃度などを文献調査した。

 その結果、アクロレインは、食料や飲料水を通じ1日に体重1キロ当たり100万分の2.3グラム程度摂取されていると評価された。ラットの死亡率が増加する摂取量の約20分の1に相当した。

 同様に、ピリジンの摂取量は1日に体重1キロ当たり100万分の52グラム程度と評価された。肝臓の重量が増加するなどの異常がラットに現れる摂取量の半分に相当した。

 このため同省は、これら2物質が人の健康について「相対的にリスクが高い可能性がある」化学物質と判定した。

 アクロレイン、ピリジンとも溶剤などに使われる化学物質だが、古くなった食用油を加熱することでも生成される。ラットやマウスに対する毒性は研究されているが、人への発がん性についてはよく分かっていない。

 環境省環境リスク評価室は「食用油を使って調理をすれば、これらの物質も副産物としてできるが、人への影響はまだよく分からない。きちんと評価したい」と話している。【河内敏康】

という記事。まだ環境省のサイトには関連情報が載っていないので詳細はわからないが、えらくシンプルな物質が槍玉に上がったなあという第一印象だ。 一方、Yahoo!ニュースによると
 環境省は27日、人の健康への影響が懸念されるとしてリスク評価の対象とする化学物質に、食品から検出されることもあるアクロレイン、ピリジンと塩化ビニール樹脂の原料などに用いられる1、2-ジクロロエタンの3物質を選んだ。(中略)
 塩化ビニールの原料などに使われる1、2-ジクロロエタンは、ラットやマウスで発がん性を示す複数の実験報告が出ている。(共同通信)
となっており、アクロレインとピリジンに加え、ジクロロエタンも対象になっているようだ。

さて、アクロレインは単純な物質だし、炭化水素の酸化過程で生成してもおかしくない。国立医薬品食品衛生研究所の資料にも、成因や環境中濃度についての記述があるが、食品からの生成に加え、いわゆる通常の大気汚染源も含め、様々な要因で生成している様子が書かれている。

一方のピリジンについても、有名な悪臭物質だし、化学屋さんにとってはポピュラーな試薬の一つ(個人サイトだが、K.SATOH's official website はとても充実しており、ここの有機化学美術館にピリジンも紹介されている)だが、食品を加熱して生成するという話は検索したが意外とみつからない。唯一あったのは、炒りゴマの臭い成分の中に含まれるという記述

一方、ここ にあるように、アクロレインもピリジンもタバコの煙に含まれる成分である。この表によれば、タバコ1本の煙の中にアクロレイン、ピリジン共に 数十μg 含まれており、この記事で問題にしている濃度はタバコを毎日10本程度吸っただけでも同じオーダーとなりそうだ。

今回の評価は、従来から環境省が進めている「化学物質の環境リスク評価」とどういう関係にあるのかよくわからないけど、この評価では既にアクロレインの毒性ピリジンの毒性がまとめられている。このデータと毎日新聞の記事を比べると、何故かラットに異常が発生する濃度が、いずれも桁違いに異なっているみたいだ。。 もしかしたら新たな実験結果が出てきたのかもしれないけど本当かな?? 

*でも、食品の加熱で生成したり、タバコの煙に含まれているのならば、人間は千年単位で暴露されてきていることになるわけで、今さら問題にするのもどうかと思うけど。。 (それに調理で発生するような物質は規制しにくいだろうに。)

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2004/07/26

ポリ乳酸は処理が簡単?

MSN-Mainichi INTERACTIVE(7/26)の記事。トウモロコシ:でんぷん新素材「ポリ乳酸樹脂」で食品包装--今秋にも実用化

◇トウモロコシで食品包装--土に還元、環境配慮

 トウモロコシを原料にしたポリ乳酸というプラスチック材料が、肉や野菜などの食品包装材として今秋にも実用化される見通しになった。普及している石油原料のプラスチックに比べ原料が豊富で、使用後も土に埋めておけば微生物によって水と二酸化炭素に分解される。環境に優しい素材として注目されそうだ。

 ポリ乳酸は、トウモロコシから取り出したでんぷんを糖質に分解し、発酵させてつくる樹脂。主に米国のカーギル・ダウ社が製造している。

 この素材を使ったプラスチックは、欧米では食品包装材に幅広く利用されているが、日本ではビニールハウスに使う農業用シートなど食品以外の用途に限られている。

 そこで、ダウ社と提携している三井化学が、日本で食品包装に活用する準備を3年前から進めてきた。食品衛生法の基準は満たしたが、幅広く利用してもらうためには、加工、食品など関係企業が加盟する業界団体「ポリオレフィン等衛生協議会」(東京都)からの安全性などに関する「お墨付き」が必要だった。同協議会はプラスチック材料の食品包装利用に関し、衛生、安全面の基準を自主的に設けており、包装材を使う食品メーカーもそれを重視しているためだ。

 ダウ社と三井化学は今年初め、同協議会にポリ乳酸の利用登録を申請し、6月に承認を受けた。今後、三井化学、三菱樹脂などがダウ社からポリ乳酸の供給を受け、弁当容器や食品用フィルムなどに加工し、秋にも店頭に出す計画だ。

 ポリ乳酸から作ったプラスチックは、利用後の処理が簡単。利用が増え石油原料のプラスチックの代替にすれば、石油資源の節約にもつながる。

 ダウ社の日本法人の担当者は「消費者の環境に対する意識は高まっているので、ポリ乳酸を使った食品包装材は普及していくはずだ」と期待している。【小川直樹】

いつもの環境関係や科学関係の記者とは違う方のようだけど、一体何を考えて記事を書いているのだろう? 

特に問題としたいのは「ポリ乳酸から作ったプラスチックは、利用後の処理が簡単」という部分。一体、何がどう簡単なんだ? ポリ乳酸から作ったプラスチックを利用後に処理する際には、「燃えるゴミ」や「燃えないゴミ」ではなく、「土にかえるゴミ」としてその辺に適当に捨ててくれ、とでも言うのだろうか?? きちんと分別して土に埋めるとしたら、都会なんかではかえって結構面倒くさそうだし、それこそいろんな問題が発生しそうだけどね。

リユースとかリサイクルといった、時代の向かっている方向を念頭に置いて考えた時、一体このプラスチックがどういうメリットを持っているのだろうか? 毎日の記者はそんな難しいことは考えなくとも、ポリ乳酸だったら土に還るんだから、どんどん使い捨てしましょう、って言いたいのか? 

カーギルダウのプレスリリースや三井化学のプレスリリースには処理が簡単なんて書かれていないから、やっぱり毎日の記者の考えなのかな?

ところで、ポリ乳酸を食品包装材に加工する際に何も添加剤等は使われていないのだろうか? この情報だけでは、その辺の事情が何も伝わってこない。まあ、食品包装材としての使用が認められたのだから、有害成分が溶出したりする恐れはないのだろうが、メーカー側としても、その点を明確にしておいた方が良いと思うのだけどな。

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「核兵器のしくみ」

以前からネットで本書を高く評価する内容の話を何か所かで見ていたので、書店で見つけた時は迷わず購入、早速読んでみた。タイトルはマニアックな話を連想させなくもないが、難しい話は全然出てこないし、もちろん核兵器の具体的な作り方が書かれているわけがない。

講談社現代新書 1700
 核兵器のしくみ
 山田 克哉 著 bk1amazon

帯には「原爆から原発までゼロからわかる決定版!」とあるが、「わかる」ということはどういうことか? にもよるが、さすがに言いすぎだと思うな。

さて、本書は講談社の現代新書であり、著者が同じ講談社のブルーバックスで「原子爆弾-その理論と歴史」(bk1amazon)なんて本を出していることを気づかったのか、この本については、読者対象を、思いっきり初心者向けとしており、高校の物理や化学の知識を全く持たない人を前提として書かれているようだ。そういう対象を相手に、核分裂や核融合の原理や応用を説明しようと努力しているわけで、原子とは何か? から説き起こす記述にはとても苦労のあとが見える。

そんな超基礎的なところから説明しつつ、二百数十ページに収めるのだから、話がアバウトになってしまうのも仕方ないとは思うのだが、さすがに僕が読んでいても、とてもまわりくどかったり、不正確だったり、大雑把だったり、という記述が目立つのである。それと、どこがどう、と具体的に指摘できないのだが、何となく全体を通してみると、著者の科学技術に対するスタンスに対して違和感を覚えさせられる点もある。

確かに核兵器、原子力発電、核融合といった技術についての基礎知識を軽く解説してくれており、読者それぞれのレベルに応じて、それなりに役立つ内容だと思う。だけどあまりにも初心者向けにしてしまったためか、特に、定量的な話がスッポリと抜けていて、結局わかったようなわからないような話で終わっている点が気になる。

核兵器であれば破壊力、発電であればそのエネルギー、放射能に関してはその影響の大きさ、それぞれ全て定量的に議論しなければいけないものばかり。さすがに、これらを避けて通ってはいけないのではなかろうか? 何しろ、E=mc2さえも出てこないのだ。

特に放射線の影響についての定量的な記載が一切なかったのは、著者が意図していないとしても問題だと思うのだが。(例えば、半減期は○○年なので、こんなに長期間影響が残ります、のような記述。) 劣化ウラン弾についても、238Uがα崩壊するから核兵器だ、と断定しているけど、その前には 238Uの半減期は45億年だと書かれているわけで、一体どの程度α線が出るのだろう? それってどの程度人体に影響するんだろう? という疑問が当然出てくると思うし、放射線の量と人体への影響の関係の話はやっぱり欠かせないだろうに。

ところで、著者は現在はアメリカの大学教授をされているようで、実は、日本語の専門用語の部分にも若干問題がありそうだ。例えば、「使用済み核燃料からのプルトニウムの摘出」というような使い方で「摘出」という用語が何度も出てくるが、これはやっぱり「抽出」でしょう? また、元素「Xe」のことを「キセノン」ではなく「クセノン」と書いているのも目についてしまう。編集者がきちんとチェックして欲しいところだ。。

さて、本書を読んで「もっときちんと知りたいな」と思って、同じ著者のブルーバックス「原子爆弾-その理論と歴史」でも買ってみようか? と考えちゃうのは、完全に講談社と著者の思惑にはまってしまっているのかもしれない。。

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2004/07/23

グリーンレーザーポインター

FujiSankei Business i の7/22の記事。通常より8倍明るい緑色のレーザーポインター

通常の赤色よりも約8倍明るく見える緑色レーザーのポインター。色の識別が困難な人の不自由さを無くす「色覚バリアフリー」を実現した。約5時間の連続使用可能。携帯に便利なペンタイプ。価格は3万5700円。8月1日発売。
コクヨのニュースリリースによると、従来の赤色レーザーに比べて、緑色は人間の目の感度が高いので、視覚の不自由な人にも識別しやすいということらしい。今やレーザーポインターは珍しくもなくなったけど、緑色はまだまだ珍しい。何といっても、この値段だ。ネット上で検索してみると、緑色のレーザーポインターは結構出回っているようだけど、どれも似たような値段みたいで、赤色の5倍から10倍以上という感じか。(今はどうか知らないが、一時は100円ショップでも赤色レーザーポインターは売っていた。)

実は、アメリカでは随分前から使われていたようで、こんなレポートが見つかった。確かにこれは、相当に明るくて見やすそうだ。

さて、緑色レーザーと言うと、例の日亜化学の青色レーザーダイオードの話が有名になったこともあり、緑色の光を発するレーザーダイオードを使っているものと思ったけど、調べてみると、どうやら波長変換をして緑色を作っているようだ。調べてみないとわからないものだ。。

(株)ダウのサイトは専門的な情報が満載だが、固体レーザーの図を見ると、波長808nmの赤外域のレーザー光を Nd:YVO4結晶で1064nmに変換し、更にこれをKTP(チタン酸リン酸カリウム KTiOPO4)で532nmにしているようだ。そして、この Nd:YVO4 と KTP は張り合わせて一体構造にされており、DPM(Diode Pumped Microchip)結晶と呼ばれている。 なお、半導体レーザーの基礎については、この辺 で勉強できるかな。

マニアの人は、こうやって、安いレーザーモジュールを買ってきて遊んだりしているようだけど、ここにも書かれているように、レーザー機器には安全上の規格があるし、市販されているポインターは消費生活用製品安全法で規制されているので、自己責任で。。

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2004/07/22

アメリカのCO2排出削減訴訟

CNN.co.jp(7/22)の記事。NYなど8州、CO2削減のため電力大手を提訴

ニューヨーク――米国のニューヨーク、カリフォルニアなど8州とニューヨーク市は21日、電力大手5社を相手に、二酸化炭素(CO2)排出量の削減を求める訴訟をニューヨーク連邦地裁に起こした。ニューヨーク州のスピッツァー司法長官ら各州長官らが同日、ニューヨーク市内で発表した。

スピッツァー長官は記者会見で、「他の民間企業は、温室効果ガスの排出量削減のため、負担を請け負っているのに、この5企業は努力していない」と述べ、5社は米全体のCO2排出量の約10%に相当する年間計6億5000万トンものCO2ガスを放出しており、全米最大の温暖化「公害」企業だと批判した。

訴えられたのは、アメリカン・エレクトリック、サザンカンパニー、テネシー渓谷開発公社、エクセル・エナジー、シナジーの5社。原告は、ニューヨーク、コネチカット、カリフォルニア、アイオワ、ニュージャージー、ロードアイランド、バーモント、ウィスコンシンの8州とニューヨーク市。

原告は訴えで、5社の計174カ所の火力発電所で、年間CO2排出量を最低3%、今後10年にわたり毎年削減し続けるよう、裁判所命令を求めている。

コネチカット州のブルーメンソール司法長官は、今回の提訴は州政府がタバコ会社を相手取った医療費払い戻し訴訟と同様のものだと指摘。「タバコの時と同じで、連邦政府が責任を放棄したから、州レベルで行動を起こした」と述べ、京都議定書を離脱するなど温暖化対策にきわめて冷淡なブッシュ政権を批判した。

訴えられた5社のひとつ、エクセル・エナジーの広報はCNNに対して、「訴える前に、当社のウエブサイトに目を通して欲しかった。われわれは今年4月、2009年までにCO2排出量を1200万トン削減する自主計画を発表したばかりだ」と説明し、「われわれは風力発電で全米2位。環境配慮に誇りをもっている企業だ」と訴訟に反論した。

カリフォルニア州が自動車からの温室効果ガスの排出を削減する規制を打ち出している(6/11のブログ参考)かと思うと、今度は電力会社が訴えられるという具合に、アメリカは京都議定書から離脱している一方で全く逆の動きが出てくるところが面白い。もっとも、YOMIURI ON-LINEの記事によると
 電力会社で作る電力安定調整協議会は、訴訟について「原告らは、電力事情にばかり注目して環境配慮への関心がないくせに、大統領選の年なので訴訟を起こした」とする声明を出し、政治的行動であると批判した。米国の州司法長官は選挙で選ばれ、原告8州の司法長官はいずれも民主党支持者。
という見かたもされているようだが。

興味があるのは、一体どういう法的な根拠で訴訟を起こしたかだ。事業者にCO2排出削減を義務付けているのならば、法律違反も問えるだろうが、どうも状況は違いそうだ。向こうのニュースを見てみると、例えば REUTERS には、

The lawsuit is expected to be filed in federal district court in Manhattan under the law of public nuisance, which allows a right of action to curb air and water pollution emanating from other states, according to the draft statement.
とあり、どうやら「他の州からやってくる大気や水の汚染をやめさせる権利」を定めた法律、the law of public nuisance、を根拠としているようだ。カリフォルニアのケースでも同じだけど、果たしてCO2を pollution と認定できるのだろうか? 

ところで、この機会にアメリカのエネルギー事情や電力事情をざっと見ておくのもよさそうだ。電気事業連合会のホームページから、エネルギー入門地球温暖化への取組みを見ると、アメリカの電力構成は石炭火力への依存度が高いことや、一人当たりの電力消費量が日本の約2倍であること、結果として一人当たりのCO2排出量は日本の2倍以上となっていることがわかる。ちなみに、毎年3%ずつ10年間削減を続けると、0.97の10乗は0.74なので、26%の削減となる。 (まだまだ足りないぞ。。)

アメリカの電力業界の事情を調べていたら、ゲーム「SimCity」のための情報をまとめたサイト、SimCity研究報告 を見つけた。きちんとした資料に当たっているようで、それなりに信頼できそうだ。ゲームのためにここまでやれちゃうとは、立派だ。。

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2004/07/21

頭を冷やす帽子

なんとも暑い毎日だが、日経新聞7/21の夕刊に「頭を冷やす帽子」というコラムが載っていた。その中で、帽子の後ろに吸水パッドが取り付けられる「クールビット」という製品が紹介されている。

 帽子を被る前に、水にひたして軽く絞ったパッドを取り付けておくと、気化熱で後頭部が冷やされる仕組み。首筋に冷たいお絞りをあてると、たいへん気持ちよいがあの感覚に近い。後頭部には、運動を司る神経が集中しているので、そこを冷やすと一気にしゃんとした気分になる。

 そのパッドに使われているのが、カネボウが開発した「ベルオアシス」という高吸水性繊維。水を含むと元の何倍にも膨らむ繊維を使っているので保水力が高く、何度洗っても吸水性能の劣化が少ないなどの特性がある。また、ぬれているのにベタつき感がほとんどなく、繊維は柔らかな感触なので、帽子に取り付けても違和感は少ない。

ということで、問い合わせは日曜発明ギャラリーとなっている。日曜発明ギャラリーのホームページはこちら。確かに、ここで「クールビット」を売っている。なんと、シリーズ化されており、充実のラインナップだ。実験データもしっかりと載っていて、これを見ると、冷却効果が数時間程度は持続するみたいだから、結構優れものと言えそうだ。

素材の繊維、ベルオアシスは、カネボウの繊維紹介によると、ポリアクリル酸ナトリウム系の繊維で、いわゆる紙オムツ等の吸水性ポリマーに使われている樹脂を繊維状にしたもののようだ。この樹脂の吸水性のメカニズムについては、高吸水性ポリマーの原理等で勉強できる。それにしても可逆的に水の出し入れを何度も繰り返して使えるとは思わなかった。

さて、この商品を扱っている、日曜発明ギャラリーは、このクールビットの発明者でもある小林さんが8年位前に始めたサイト。商品化してみたい面白いアイデアを持っている人からアイデアを募集して、商品化する企業との仲介等も行っているようだ。ちょっと見てみると、商品化されたもの、募集中のもの、合わせて200件以上が並んでいる。その中でも、このクールビットは一番のヒット商品のようだが、今年のこの暑さをうまく味方につけると、結構売れそうだ。

そう言えば、6/21のブログで取り上げた「空調服」が結構話題になっているようだ。

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2004/07/20

時計遺伝子とDNAチップ

asahi.com(7/20)の記事。DNAチップで体内時刻の乱れ測定 山之内製薬研究所

 遺伝子の働きぶりを調べるDNAチップを用いて、体内時計の時刻(体内時刻)や体内時計の乱れであるリズム障害を調べる方法を山之内製薬が開発した。将来、リズム障害の不眠症や時差ぼけ、リズム障害を伴ううつ病などの治療や予防に役立てたいという。近く米科学アカデミー紀要電子版で発表する。

 研究にあたったのは同社創薬研究本部分子医学研究所の上田泰己研究員(現理化学研究所)ら。

 マウスの肝臓組織から体内時刻に関連する時刻表示遺伝子168個を特定し、新たに作ったDNAチップでその働きぶりをみて、体内時刻を測定した。正常なマウスは、実生活上の時刻とのずれが1~2時間以内の誤差でほぼ正確に測れた。このため、体内時刻のずれは、どの時刻表示遺伝子が働いているかを見れば、測定できるという。

 これまで、体内時刻を測定するには2日間にわたって4時間おきに血中の神経伝達物質メラトニンを測定する必要があったが、この方法なら1度の測定で済む。

 研究グループは、ヒトへの応用も可能だとしており、わずかな血液や口の中の粘膜などを採取すればいいという。上田さんは「遺伝子は60個程度選べば、ほぼ正確に体内時刻を測れる」と話している。

 DNAチップは、数センチ四方のガラスなどの基板上に、調べたい遺伝子の鋳型のDNAを張り合わせて作る。

というもの。どんな仕組みになっているんだか、読んでもよくわからない。DNA配列が時刻に応じて変わるわけはないので、ここで調べるのは、「遺伝子の働きぶり」らしい。そんなものがDNAチップで測定できるのか?

山之内製薬のサイトにこのニュースのリリースが早速掲載されている。さすがに新聞記事よりはやや詳しく

同発表によると、数万個の遺伝子の発現状態を一度に解析することができるDNAチップを用いて体内時刻やリズム障害を一回の測定で正確に診断する方法を開発した。まず、DNAチップを利用して体内時計をつかさどる器官等において昼夜リズムを刻んで周期的に変動する遺伝子(「時刻表示遺伝子」)を包括的に抽出。これらの時刻表示遺伝子の遺伝子発現状態から体内時刻やリズム障害を正確に診断する方法を発明し、その原理を動物実験によって実証した。
と書かれている。周期的に変動する遺伝子というのも変な表現だが、論文要旨には
我々はこのような夢を達成するため、100個を超える「時刻表示遺伝子」からなる「分子時刻表」を作成し、これらの「時刻表示遺伝子」の一時点における遺伝子発現プロファイルから正確に体内時刻を診断する新しい方法「分子時刻法」を発明した。
とある。5/23のブログで紹介した「時間の分子生物学」は、正にこれに関連した内容が書かれていたはず。ちょっと掘り起こしてみると、生物時計のメカニズムとしては、特定の遺伝子からmRNAが転写され、それにより特定のタンパク質が生成するが、このタンパク質が一定以上生成すると今度はmRNAへの転写を止めるフィードバックが掛かり、タンパク質の生成が止まり、タンパク質濃度が低くなると再びmRNAの転写が行われる、というサイクルにより、特定のタンパク質の量が周期的に増減する機構で説明されるようで、関連する遺伝子・タンパク質がいくつかみつかっているとのこと。

ということで、確かに、ある瞬間の時刻表示遺伝子の発現状態を調べ、それらのパターンを比較することで時刻を特定できそうだけど、その遺伝子の発現状態をDNAチップでどうやって調べるのだろう? と思って調べてみると、DNAチップにはDNA配列を解析する目的のものと、遺伝子の発現状況を調べる目的に使われるものの2種類があって、後者は、ここにあるように、DNAとmRNAの反応で遺伝子の発現状態を見るものらしい。従って、今回の場合には、サンプルがDNAチップ上のどのDNAと反応するかを調べることで、サンプル中にどのmRNAがあるかが判明し、それにより遺伝子の発現状態が明らかとなる、ということかな。

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2004/07/19

「電気はだいじょうぶか?」

帯には『新聞では分からない電力事情最前線 「原子力の安全と安心」から「世界一の水素技術」まで、資源なきニッポンの活路を探る』とある。エネルギー問題は、なかなか明快な答えが見えてこないけど、とても重要なのは間違いのないテーマ。

小学館文庫
 電気はだいじょうぶか? 新・ニッポンエネルギー事情
 プロジェクト2004 著 bk1amazon

世界一、安定的で良質な電気を供給している日本の電力エネルギー体制だが、内部には様々なネックを抱えている。国の根幹に関わる重大な課題にもかかわらず、政治家もマスコミも不勉強で、現実が人々に認識されていないのが実情だ。人気先行で実力のない風力や太陽光などの自然エネルギー、環境問題と原子力の関係、電力自由化の落とし穴、脆弱な日本のエネルギー安全保障……などの直面する緊急テーマを、国内外の現場取材から抉り出した、ビジネスマン・生活者必読のレポート。
という紹介文が裏表紙に書かれている。「週刊ポスト」に連載された内容を手直しして出版されたということで、何と言っても読みやすい。全16章からなる本書は、内容的にも発電所の現場取材からアメリカのエネルギー戦略取材までとてもバラエティに富んでいて、興味深く読める。

週刊誌ネタということもあって、どちらかというと「裏事情」をレポートするという面が強いように思える。逆に言うと、もしかしたら一般的な知識を十分に持った上で読まないと誤解する恐れもあるのかもしれない。最近脚光を浴びている風力発電や太陽光発電については弱点を明らかとすることで批判的であるのに対し、原子力発電や高速増殖炉、更には高温ガス炉の重要性や可能性にはポジティブな記述も目立つ。

また、日本の石油依存の高さに警鐘を鳴らすと共に、エネルギー安全保障という考え方についてもいくつかの考え方が紹介されている。そして最後は、それぞれのエネルギー源の長所短所をあげて、読者各自に判断を委ねるという形で終わっている。結局、そんなにわかりやすい答えはないのだが、無理やり何か答えを出すよりも、こういう形の方が好感が持てる。

もっとも、ここで紹介された考え方が全てではないし、色々なものの見方が世の中にはあるので、その一端でも紹介してくれた方が、読者としてもより深く考えられたのだろうけど。。

本書に欠けている視点としては、地球環境問題をどう認識して、どう対処するかという点と、技術は進歩するという点だろうか。日本のエネルギー問題だけを考えても答えは見つからないと思うし、自然エネルギーを始めとする再生可能エネルギーも含めて、コストや能力は技術の進歩と共に変わるものだし、変わらなければいけないはず。

いずれにしても、確かに新聞を読んでいるだけでは見落とすことも多く書かれており、エネルギー問題を考える上では目を通しておいても損はない本と言えるだろう。

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2004/07/16

人工筋肉製冷却ポンプ

asahi.com(7/16)人工筋肉をPC冷却用のポンプに 産総研ベンチャー開発

 産業技術総合研究所の研究者らによるベンチャー企業・イーメックス(大阪府吹田市)は15日、人工筋肉に使われる、電気を通すプラスチックを利用して、ノートパソコンの冷却用ポンプを開発したと発表した。

 ポンプは人工筋肉と同様の原理で、導電性の高分子の膜が電気で伸縮し、パソコン内に組み込んだ細い管に液体を循環させて中央演算処理装置(CPU)の発熱を効率よく逃がす。既存のパソコンと比べ、熱の伝達量が3倍で、コストも低いという。部品メーカーと共同で数年以内の実用化をめざす。

面白そうな話だ。イーメックスのホームページを見ると、今回のパソコンの冷却装置開発についてのリリースも載っていて、動画まで掲載されているのだが(あまりおもしろい動画ではないけど)、それよりも、この原理に興味がある。このページの一番上から読んでみると、導電性高分子のポリピロールをダイアフラムに使ったポンプが基本となっているようだ。通常のダイアフラムポンプはダイアフラムが直接・間接にモーターで駆動されるのだが、こいつはダイアフラム自身が収縮することで駆動するという優れものだ。ポリピロールがアクチュエータとして動く原理や、その他の応用については、ここにも簡単に書かれている。

イーメックスは、導電性高分子タイプのアクチュエータイオン伝導アクチュエータの2種類を開発している。後者は人工観賞魚として話題になったようで、人工筋魚で動画も見られるが、こちら では内部構造が見られる。

イーメックスは、産総研から出たベンチャーで、2001年8月設立だからまだ3年だが、このラインナップと応用分野の広さは相当にすごい。いわゆる人工筋肉という用途はもちろんだが、生体の動きを模した様々な機械・装置への応用は確かに夢が広がる。

よくわからないのが耐久性(寿命)。おもちゃの魚ぐらいだったら「死んじゃった」で済むけど、工業用途や民生用途に対してはどうなのだろう? 化学構造を電場で無理やり伸縮させているのだから、いずれ壊れてしまいそうな気もするが。1Hz程度で駆動するということは、結構なサイクル数になってしまうし。。

人工筋肉に関しては、個人ページだが Harry's Webhub for Artifical Muscles in Japan が非常に充実した情報を整理してあり勉強になる。動作原理や基本素材として非常にバラエティに富んでいるが、ここに載っていないものとして金属系のアクチュエータ、バイオメタルというのもあるようだ。

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2004/07/15

にがりダイエットに喝!

Yahoo!ニュース(7/14)、「にがり」取りすぎ注意 ブーム過熱で国立栄養研

 ダイエット効果があるとテレビや雑誌などで紹介され、健康食品としてブームになっている「にがり」について、独立行政法人国立健康・栄養研究所(東京)は14日、ダイエット効果の根拠がないとして、取りすぎに注意するようホームページで呼び掛けを始めた。
 にがりは濃縮した海水から塩を除いた後の残留物で、主成分は塩化マグネシウム。これまで豆腐を作る凝固剤として使われてきた。
 研究所によると、主成分の塩化マグネシウムが「糖の吸収を遅らせる」「脂肪の吸収をブロックする」「糖質代謝を促進する」などとして、ダイエット効果を紹介する例が目立つが、どれも確実な根拠や文献はない。
 マグネシウムは医薬品の世界では下剤に使われており、食品としても過剰に摂取すると下痢する可能性がある。下痢による一時的な体重減少は見かけの変化にすぎず、ビタミン、ミネラルの吸収を妨げることもある。
というもの。国立健康・栄養研究所のサイトに、「健康食品」の安全性・有効性情報が公開されている。

インターネット上では、にがりを売っていて、その宣伝をしているサイトが山ほど見つかるが、例えば ここ ではお医者さんが体験談へコメント付けているし、ここ では、がんに対して効果があるという学会発表の話が出てたりして、結構信憑性があるようにも見える。

ところがにがりの効果の科学的根拠について書かれている内容はそのほとんどが、All About で紹介されている、熊本県立大学の 奥田教授 の研究成果?にたどり着くようだ。 ん?さっきの「がんへの効果」も同じ奥田先生だな。と言うか、どうやら奥田先生が「にがりブーム」の仕掛け人の一人のようだ。

この先生、天然にがり研究会の会長だし、キチン・キトサン協会にも顔を出し、著書もこんなに色々あるけど、「天然にがりで病気が治る、美しくなる」なんて本を出版しても大丈夫なのかな? 具体的な研究成果については、ここに少し書かれているが、ちょっと読んだだけでも説得力ないな。。

他には真島先生関先生なども、にがりのミラクル効果本を書いているようだ。

これらの先生方には、国立健康・栄養研究所の見解

 最近、にがりやマグネシウムに「痩身効果」があるという情報が流されています。例えば、「糖の吸収を遅らせる」「脂肪の吸収をブロックする」「糖質代謝を促進する」「エネルギー代謝を促進する」といったメカニズムから、ダイエット効果を論証するような情報がありますが、いずれについても確実な根拠・文献等はありません。
に対する「科学的」な反論を是非ともお願いしたいものだ。何だかマイナスイオンなんかと良く似た構図だが、その意味では国立健康・栄養研究所は今回随分頑張ったと言えるだろう。でも、にがりを宣伝・販売するサイトにこの情報が載ることはないのだろうな。。

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2004/07/14

間葉系幹細胞と再生医療

YOMIURI ON-LINE(7/14)の記事、拡張型心筋症、心筋・血管の同時再生めざす手術実施

 拡張型心筋症の患者の心臓に、本人の骨髄から取り出した「間葉系幹細胞」と呼ばれる細胞を移植し、心筋と血管の同時再生を目指す治療を実施したと14日、国立循環器病センター(大阪府吹田市)が発表した。

 移植後2か月で心臓から血液を送り出す能力が治療前より約10%上昇、息苦しさが改善したという。

 間葉系幹細胞は、心筋にも血管にも変化する能力を持ち、これを使った心臓の再生治療は初めて。

 永谷憲歳・再生医療部室長らのチームが5月、心不全状態だった女性患者(61)の骨盤から骨髄を採取。その中にあるわずかな間葉系幹細胞を培養し、約100万倍に増殖して、心臓全体の44か所に管を使って注入した。

 心筋や血管の再生を直接確認する検査はまだだが、副作用も見られず順調で、今月下旬からは2人目の患者に治療を始める。

 この方法は、自分の細胞を使うので、心臓移植のような拒絶反応の心配がない。ブタの実験では心筋、血管とも再生して心機能が1―2割回復しており、昨年10月に同センターの倫理委員会で実施が承認された。

 心臓に細胞を移植する再生治療は、関西医大が狭心症の患者に、血管の元になる単核球を移植して効果を上げたほか、京都府立医大、奈良県立医大も、心筋こうそくの患者に実施。大阪大も筋肉の元になる細胞を移植する計画を進めている。

調べてみると、各紙大きく扱っているけど、「間葉系幹細胞」という初めて聞く言葉の説明がどこにも書かれていないので、今一よくわからない。asahi.com に至っては、この用語が出てこない。他にはNIKKEI NET など。

ここ の情報などを読むと、身体を構成している一般的な体細胞に対して、幅広い分化能力と増殖能力を持つ特殊な細胞が幹細胞で、これは更に胚性幹細胞と体性幹細胞に分類される。胚性幹細胞はクローン技術で話題になる、一般にES細胞と呼ばれている奴だ。一方、体性幹細胞は更に造血性幹細胞、神経幹細胞や間葉系幹細胞などに分けられるのだそうだ。さて、今回話題の間葉系幹細胞だが、再生医療とはでES細胞とも比較して詳しく説明されているが、

現在、再生医療を実施するうえでの細胞供給源の一つとして、「間葉系幹細胞」が注目されています。間葉系幹細胞は骨髄中に存在すると考えられており、未分化な細胞なので骨、軟骨、筋、靭帯、脂肪など間葉系に属する細胞に分化する能力を備えています。現在のところ、成人の体内に間葉系幹細胞の存在が証明された報告はないので、厳密には「骨髄間葉系細胞」、「骨髄間質細胞」あるいは「間葉系前駆細胞」などと呼ばれていますばれていますが、このサイトでは「間葉系幹細胞」と統一させていただきます。

未分化な間葉系幹細胞は増殖能力が高く、生体外の細胞培養環境でも容易に数を増やすことが出来ます。そのため、患者の骨髄より分離した間葉系幹細胞を培養し、必要な数に増殖させた後に患部へ移植するという治療が可能です。

と書かれており、厳密に言うとややこしいらしい。骨髄から間葉系幹細胞を採取して100万倍に増殖した段階では、どんな状態になっているんだろう? まだ特定の細胞に分化していない幹細胞のままで増殖するみたいだが。それを心臓に移植すると、ちゃんと心筋や血管に分化したってことは、周囲の環境に応じて必要とされる細胞になったわけだ。この分化のメカニズムはきちんと解明されているのだろうか?

つい最近、ヒトクローン胚研究の倫理問題で、研究目的に限定して認める方向という記事が載ったが、今回のような間葉系幹細胞移植であれば、もともとは自分の細胞だけだから、ES細胞で必要な受精卵も不要だし、クローン人間とは無関係だし、ということで、生命倫理のややこしい問題とは無縁というメリットがあると言えそうだ。(参考:体性幹細胞にも全能性が

これと関連した、心臓の幹細胞発見ES細胞から心筋細胞なんてニュースもある。先端分野は似たようで微妙に違う話が沢山出てくるので、なかなか理解するのも大変だ。。

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2004/07/13

防刃防護服

YOMIURI ON-LINE(7/13)の記事。わが子守る「一着」登場、刃物防ぐ素材で4万円

 刃物を使った犯罪から子供を守ろうと、カッターやハサミで切れにくい生地を使った子供向けの防護服が発売された。

 生地は米国製の特殊繊維で、米国の警察官が使用している携帯用の防弾パネルに使われているものと同じ材質。子供専門の警護会社「マードレ」(福岡市)が、「子供の体を直接守れる服は出来ないか」との顧客の要望を受け開発。受注生産で価格は4万950円から。

こんな製品が話題になって、シャレじゃなくて売れるような物騒な世の中になってしまったのだろうけど、一体どの程度の効果があるのだろうか? ケブラー繊維製の軍手(保護手袋)を使っていたけど、カッターナイフで手を切ったという話を聞いたことがあるし。。

記事で紹介されているのは、切創防護服メーカー マードレセキュリティ社。もともとはプロ用の製品を扱ってきたようで、防刃手袋から、防刃ベスト、切創防護服等に加えて、新たに児童用をラインナップに加えたようだ。

材質はアメリカのハネウェル社製の「スペクトラ」という繊維を採用していて、これはケブラーよりも強靭で、国際防刃規格NIJの切創性能で最高水準を示したとある。(ケブラー繊維は防弾チョッキ等に使われたことで有名だ。銃弾とか防弾素材の基礎知識は、日本防弾工学研究所など。)

さて、ケブラーやスペクトラについての化学的な知識については、日本の石油化学の現状という素晴らしい個人サイトから、防弾素材(アラミド繊維、高強度ポリエチレン、PBO)に必要十分な情報が載っている。

「ケブラー(KEVLAR)」はデュポンの商標で、一般にはアラミド繊維と言われる芳香族系のポリアミド。一方の「スペクトラ(Spectra)」はハネウェルの商品名(旧アライドシグナル)でDSM社の「ダイニーマ(Dyneema)」と同一物質で、超高分子量のポリエチレン繊維。

東洋紡のダイニーマについての 技術資料(pdf) に、この繊維の特徴や他の素材との比較が書かれている。銘柄にもよるが確かにアラミド繊維よりも強そうだ。

ちょっと検索してみると、防弾チョッキはインターネットでも簡単に購入できるようだけど、例えばここなどを見ると、防弾・防刃チョッキ等は結構高価だ。日本ではさすがに銃で撃たれる日常は考えにくいし、冒頭で紹介された防刃機能だけの防護服はリーズナブルなのかも。もっとも、値段はリーズナブルでも、子どもにこんな防護服を普通に着せるかというと疑問だが。。

それにしても、インターネットのショップで防弾チョッキが多数扱われているのには驚いた。一体どういう人がどういう用途で購入するんだろう??
 

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2004/07/12

国産手術ロボット

NIKKEI NET(7/12)の記事。東大・日立など、国産初の汎用手術ロボ

 東京大学、九州大学、大阪大学と日立製作所などの産学チームは国内初の汎用手術ロボットを開発した。心臓や肺、腸など様々な臓器に対応し、出血を少なくするなど患者の負担を抑える設計。切るべき患部の正確な位置を案内するナビゲーション機能も付けた。産学協同でベンチャー企業を設立し、2年内の臨床試験を目指す。

 開発したのは内視鏡を使う手術用のロボット。熟練が必要な内視鏡手術は医師の巧拙の差が大きく、医療事故も相次ぎ発生した。手術の難しい部分をロボットに代行させて正確さを高める狙いだ。

夕刊にはイメージ図も含めてもう少し詳しく載っている。
 ロボットは4本の細長い腕をもち、患者の体に切開した小さな穴から中に差し込む。1本は内視鏡の役目をし、他の3本は特殊な鉗子など手術道具を備える。医師は立体画像を見ながら、手術台のわきで遠隔操作する。ロボットは操縦桿の動きの1/3から1/5に縮小されて動作するため、人間では難しい細かい作業もしやすい。

 また、手術前にCTなどで調べた欠陥や病変の位置情報を、手術中に内視鏡の画像と重ね合わせて表示するナビシステムも開発、安全性を高めた。

 臨床試験はこれからだが、将来は「開腹しなければならないがんなどの手術も、ロボットを使えば続々と内視鏡で手術できるようになる」と橋爪誠・九州大学教授は期待している。

という内容。医者はコンピュータの前に座って「操縦桿」を操作しながら手術が進むということらしい。医者にとってはTVゲームのようで、リアリティがなくなったりしないだろうか? 患者にとっても、機械に命を預けるのは結構勇気がいりそうだ。

「国産初」と書かれていたが、調べてみるとアメリカの企業が開発した「ダビンチ」と「ゼウス」というロボットが既に実用化されていて、2年前の読売新聞にも手術ロボット 外科医も脱帽という記事が載っている。ロボット技術は日本のお家芸かと思ったけど、経産省の資料でも、医学分野は災害対策分野などと合わせて、日本が遅れているロボット応用分野と位置づけられており、アメリカの方が何年も進んでいるらしい。

このダビンチについては、1999年のWIRED NEWSでも紹介されているし、 この記事 によると、既に遠隔手術も行われている。

ということで、手術(支援)ロボットで驚いているようでは相当に遅れているようだ。メリットが沢山あるのはわかるけど、微妙な触覚をフィードバックする技術や、三次元の情報をうまく伝える技術の開発が課題ではなかろうか? それと共に、この装置をうまく扱えるお医者さんの育成(?)もキーとなりそうだ。。

*既にロボット手術センターを持つ病院もある。

今回の国産ロボット開発関連としては、以下のあたりだろうか。
  東京大学 先端治療福祉工学研究室
  九州大学 大学院医学研究院 資料
  大阪大学関連

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2004/07/09

「ココがわかると科学ニュースは面白い」

久々の読書感想文。

このブログでは、科学系のニュースを取り上げて、その内容や背景についてネット上の情報を探し回り、今まで知らなかったことなどに少しでも触れられれば、と思いながら書いている記事が多いのだが、この本のタイトルはその意味で非常に興味深い。この本に書いてある内容そのものへの興味が半分、残り半分は科学ニュースに対する著者の突っ込みの姿勢への興味で読んでみた。

新潮文庫
 ココがわかると科学ニュースは面白い
 中野 不二男 著 bk1amazon

新潮社のサイトには、一部が立ち読みコーナーとして掲載されている。「火星探査」

著者はエンジニア出身で元・宇宙開発委員会特別委員を務めたとのことで、航空宇宙関係が専門ということになりそうだ。本書の内容も、ページ数で約1/3が航空宇宙関係、残りがエネルギー関係、医療技術関係、その他となっている。確かに幅広い分野の科学系のニュースをネタに、背景の基礎的な科学技術やその応用を蘊蓄も含めて色々と書いてあるし、結構軽いノリでサッと読めてしまう。

この本を読むことで、確かに知らなかったことが何がしか手に入るのは事実なのだが、それぞれの技術の核心の部分の基本がすっきりと理解できるか? と言われると、残念ながらそうではない。説明が舌足らずだったり、極端に模式化されてたりと、却ってわかりにくい部分もあるように思える。

結局は、この手の本の宿命かもしれないが、想定する読者のレベルや紙面の制約等からか、どうしても突っ込みが浅くならざるを得ないようだ。そのために、いわゆる理科系人間が読むと、新たな疑問が次々と出てくるのに、それに対する答えが用意されていなかったり、中途半端にごまかされたような気になってしまうのだろう。まあ、きちんと知りたかったら、その道の専門書を読んでね、ということだろうが、却ってフラストレーションが溜まってしまいそうだ。

本書のエピソードの中では、陸上競技の計時システムの話が面白かった。考えてみると当然だが、スタートの号砲音が競技者に届く時間差は第1レーンと第8レーンで約0.25秒にもなる。これでは1/1000秒を争う競技が全く成立しないので、各レーンのスターティングブロックに号砲を伝えるスピーカーが内蔵されているんだとか。水泳なんかも同様なんだろうな。

しかし、正直に言うと、著者得意の航空宇宙系の話以外はあまりお勧めできないかなと思う。(航空宇宙関係は、4/17のブログで紹介した、「メタルカラーの時代6 ロケットと深海艇の挑戦者」と内容がかぶっているので、合わせて読むとなお良いだろう。)バイオ分野などは進歩が早いので、本書の記述では(5年前に出版したものの文庫化なので)既に最新のニュースには付いていけてないような気がする。。

著者の姿勢については、単に科学技術の解説記事に徹しているかというとそうではなく、特に航空宇宙関係は相当に思い入れも強いようだ。ただ、それならばもっと夢を語ってくれないと、読者は置いてけぼりというか、著者が入れ込む分だけ逆に醒めてしまう恐れがある。

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2004/07/08

にんにく注射がオリンピックに

日経新聞の7/7夕刊の「からだのお話」という連載コラムに載っていた話、「にんにく注射 知られざる中身 ビタミン補給で競技力向上」とある。

 6月に通産2000本安打を達成した巨人・清原和博のパワーの源として、一躍クローズアップされたのが「にんにく注射」だ。有名人がこぞって愛用し、その名前は世間に浸透しつつあるが、中身は意外と知られていない。
 「実は、にんにく注射にはニンニク自体が入っているわけではありません」と開発者である平石クリニックの平石貴久院長。主成分はビタミンB群(B1やB2など)とグリコーゲン。ビタミンB1の構成成分の中には硫黄が含まれ、注射するとニンニクの香りが漂うためこの名が付けられた。使用する選手らが呼びやすく、元気が出るイメージとも合う。
 開発は12年前にさかのぼる。当時、中田英寿らの在籍したJリーグ、ベルマーレ平塚(現湘南ベルマーレ)のチームドクターだった平石先生が「選手の力を存分に発揮させる手段はないか」と頭をひねり、このビタミン注射を編み出した。試合前日や直前に試すと、パフォーマンスが著しく向上。ケガの予防にも効果があり、その年の天皇杯でチームは見事に優勝を飾った。
 昨年末の紅白歌合戦に出場した歌手62人中、48人が平石クリニックの患者で、NHK内には特設クリニックができたほど。(中略)今や多くの病院がにんにく注射の類似品を競う。もちろん、商標登録を済ませているが「まねされるのはありがたいこと」。
 (中略)
 8月には五輪の野球日本代表に帯同し、500人分のにんにく注射を持参する予定の平石先生。(後略)
という内容。何だか、平石クリニックの受け売りそのものの、まるっきり宣伝のようなコラムだな。寡聞にして、にんにく注射というのは初めて聞いた言葉なので、少しだけ調べてみた。

ビタミンB1については、食育大事典や、ウィキペディアからチアミン(ビタミンB1)でお勉強できる。確かに硫黄(S)を含んでいる。日本人は穀物から半分以上を摂取しているとのことだが、不足すると疲れやすくなるようだし、にんにく以外にもウナギやレバーなどに多く含まれているということで、確かにパワーの源という印象の成分だ。だけど、多ければ多いほど良いってものでもないだろうし、過剰摂取分は排泄されるようだから、これでそんなに顕著な効果が出るのだろうか? スポーツ選手はともかくも、紅白に出場した歌手が愛用しているからっていってもなあ。。

それにしても、インターネットで「にんにく注射」で検索すると、何故か美容関係のクリニックばかりが沢山出てきて、一般の病院は出てこない。検索して引っかかるサイトを見る限りは、その効果を科学的・医学的に検証したデータは全く見つからないし、その意味ではきちんとした療法とは思えない。(エステ関連の怪しい療法だって、何kgやせましたとか、前後の写真を使って、定量的(?)に効果を唄っているのに。。) 「非常に効く」という体験的な話が色々と見つかる一方で、まともなお医者さんが批判している内容もみつかる。そんなに効果があってドーピングにもならないなら、みんなが使うはずだし、オリンピック会場はさぞかしニンニク臭くなることだろうな。

ところで、にんにく注射をしてくれるクリニックのページ内には、平石クリニックのことは何も書かれていないし、何のための商標登録なんだろうか? と思って、特許庁の商標DBで検索してみた。「にんにく」で検索すると29件、「ニンニク」で検索すると7件、合計36件の登録および出願中の商標が見つかったが、その中にはそれらしいものは見当たらなかった。。。

で、この平石先生、こちらによると随分幅広くご活躍のようだ。(それにしても、お医者さんの場合は、自分で「発明」した注射を勝手に(?)患者に打ってもいいのか? 薬だったらきちんとした手続きを踏んで認可される必要あるだろうし、逆に毒でも薬でもないから良いってことだろうか? たぶん既に認可された成分ばかりだったら、その組み合わせは自由なのだろうな。。)

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2004/07/07

チタンアパタイト光触媒

nikkeibp.jp(7/7)の記事。富士通研、東大と共同開発した光触媒チタンアパタイトを展示

富士通研究所(川崎市)は、2004年7月7日から9日までの3日間、東京都港区の東京国際フォーラムで開催される「富士通ソリューションフォーラム2004」の環境コーナーに、新しい光触媒であるチタンアパタイトを技術展示した。この中で近々、倉敷繊維加工(大阪市)がチタンアパタイトを組み込んだ不織布製マスクフィルターを発売することを明らかにした。チタンアパタイトは黄色ぶどう球菌(MRSA)などの細菌の毒素を分解する機能に優れている新材料。

このチタンアパタイトは、富士通研究所と東京大学先端科学技術研究センターの渡部俊也教授の研究グループが実用化した光触媒である。これまで光触媒の代名詞だったチタン酸化物のチタニア(TiO2)とは異なる新しい物質。アパタイトは歯や骨の主成分であるリン酸カルシウム系化合物であり、富士通研究所がカルシウムの一部をチタンイオンに代替した化合物に、波長400nm以下の紫外光をあてると光触媒機能を発揮することを見いだした。アパタイト自身が有機物を吸着する能力が高いので、細菌を表面に吸着し、光触媒機能によって分解し無害化してしまう。

富士通研と東大先端研は2000年にチタンアパタイトの特許を出願済み。アパタイトメーカーの大洋化学産業(大阪市)は同特許の実施権のライセンスを受け、光触媒アパタイトの粉末の量産技術を確立し、製造・販売している。富士通自身はこのチタンアパタイトの抗菌性を、ノート型パソコンや携帯電話機のハウジングに利用する開発を進めているという。また、富士通ゼネラルがエアコンディショナーのフィルターに近々採用する見通しである。

というもの。最近ではすっかり有名になった光触媒だが、ニ酸化チタン以外のものが実用化されるというのは知らなかった。富士通研究所のホームページには、とてもわかりやすい説明のページがある。研究段階の技術の説明をここまでしっかりと説明する姿勢はさすがだ。

なるほど、ニ酸化チタンの光触媒機能+吸着材料という組み合わせもありうるが、アパタイトのカルシウムの一部をチタンで置換することで生成するチタンアパタイトは、有機物の吸着機能と光触媒機能の両者を併せ持つ優れものということらしい。

なお、ニ酸化チタンをアパタイトで被覆する複合タイプの材料開発も産総研で行われているようで、これはこれでチタンアパタイトにはないメリット(周囲の材料を光分解しない等)もあるようだ。(リリース(2002/04/17)リリース(2004/01/29)等)

冒頭の記事だと、チタンアパタイトのフィルターの実用化はこれからのように読めるが、東大、富士通と一緒に共同研究を行ってきたダイキン工業が空気清浄機やエアコンに既に組み込んでいる。(プレスリリース(2003/07/16)プレスリリース(2003/12/18)空気清浄機)富士通ゼネラルも既にエアコンにチタンアパタイトを採用しているが、こちらはフィルターではなく熱交換器の表面に塗布しているようだ。

チタンアパタイトという新たな機能性の材料を開発したことと同時に、これを実際の材料に実用化していく技術、今回の記事で言えば不織布にする技術等もなかなか大変だったと思うけど、これはノウハウの塊だろうからあまり表に出ることはないようだ。

*日本セラミックス協会の発行する「セラミックス」誌の最新号(第39巻、第7号)が「光触媒の応用最前線」という特集を組んでおり、この中にアパタイト被覆ニ酸化チタンの話とチタンドープカルシウムヒドロキシアパタイトの解説記事も載っている。

この記事を読んでも、アパタイトのCaの一部をTiで置換することで光触媒機能を持つことは、予め予想されていたと言うよりも、偶然発見したように読める。ニ酸化チタンとは構造も全く異なるわけで、何故アパタイトに光触媒機能を付与する元素がチタンなのだろうか? 偶然?? 

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ココログ始めて半年経過

ココログを始めて丁度半年経過です。

カウンターの伸びは、この1か月は11000強となり、前月よりややペースダウンしたけれど、これはヤフーの検索エンジン変更の影響なのか、それとも6月に入ってから土日の更新をお休みしている影響なのか?

 1か月目:900
 2か月目:4500
 3か月目:11700
 4か月目:19000
 5か月目:32300
 6か月目:43500

さて、この1ヶ月のアクセス解析結果の一部だが、Ninjaツールの集計によると

(1)リンク元
 1位 bookmark (お気に入りに入れてくれた方) 全体の18%(前回1位)
 2位 http://search.yahoo.co.jp (ご存知ヤフーサーチ) 全体の8%(前回2位)
 3位 http://www.google.co.jp(ご存知グーグル日本版) 全体の4%(前回3位)
 4位 http://newsch.net(ニュースチャンネル) 全体の4%(前回6位)
 5位 http://a.hatena.ne.jp 全体の2%(前回7位)
 6位 http://www.google.com(グーグルのアメリカ版) 全体の1%(前回9位)

はてなアンテナに当ブログを登録されて、定期的に訪れてくれる方も増えてきたようです。ブックマークしてくれている方も増えているようですし、本当にどうもありがとうございます。

(2)検索キーワード
 1位 空調服(初登場)
 2位 岩盤浴(前回2位)
 3位 合計特殊出生率(初登場)
 4位 テラヘルツ波(初登場)
 5位 アメリカ(前回4位)
 6位 肥満(前回5位)
 7位 グラフ(初登場)
 8位 レントゲニウム(初登場)
 9位 化合物フレキシブル太陽電池(前回13位)
10位 単為生殖(前回11位)

先月トップだった17年ゼミは季節物だったので、セミと共に選外に消えちゃいました。(実際にピーク時のアメリカの状況はどんなだったのだろう?) 6/21に取り上げた、空調服をキーワードに来られる方が多いのは、ここのところの暑さのせいでしょうか? 岩盤浴は 5/10 に取り上げて以来、コンスタントに人気の衰えないキーワードみたいです。

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2004/07/06

何故三菱の車ばかりが燃える?

毎日のように、三菱自動車や三菱ふそうの車が走行中に燃えたという事故の報道が続いている。リコール隠しの件も含めて、三菱の車は根本的に出来が悪いのではないか?と思ってしまうが、果たして実態はどうなのか?YOMIURI ON-LINE(7/6)がその疑問の一部に答える記事を書いている。三菱車の火災次々…大半は欠陥と無関係?

 全国で三菱車の車両火災が後を絶たない。三菱自動車と、三菱ふそうトラック・バス両社の把握分だけでも、先月15日からの半月で発生件数は10件。うち1件は、リコール届け出を検討している欠陥が出火原因とされる。

(中略)

 国土交通省などのまとめでは、全国の車両火災の発生件数は、2002年で8617件(放火事件も含む)。例年1万件近くが発生している。14社ある国内自動車メーカーで単純に割ると、1社当たりの年間発生件数は600件以上。ある三菱自関係者は「こういう状況下では言いにくいが」と前置きした上で、「三菱車が1日1台燃えていたとしても、統計上はおかしくない」と指摘する。

 クラッチ部品や車軸周辺部品のハブなど、これまで明らかになった三菱欠陥車は、その大半が設計ミス。しかし、車両火災の原因は、潤滑油切れなどの整備不良、電気配線や後付け部品装着などの改造といった、ユーザー側に責任があるケースが少なくない、と言われる。

 三菱自が調査した先月の車両火災でも、出火原因は特定されていないものの、バッテリーの接続が誤っていたり、電気配線を改造していたケースもあったという。事態の沈静化を図りたい三菱側に対し、国交省も立場上、「三菱車で急に車両火災が相次いでいるわけではない」と擁護する。(後略)

ということで、平均すると日本全国では毎日24件の車両火災事故が起きているが、たまたま三菱の車の事故だけが報道されているのが実態のようだ。この記事だけでは詳細(メーカー別の事故件数等)は不明だが、少なくとも三菱以外の車も毎日のように燃えているようだ。ニュースを読む時はこういうことも注意しなくてはね。こういう記事を載せてくれた読売さんに感謝。

一方、三菱はリコール隠しをしていた訳だが、そのリコール件数は各社どの程度あったのか? これは、国土交通省の リコール等情報 のページで検索できる。

1993/4/15~2004/2/26の間の各社の、リコール、改善対策件数を調べてみると、

 トヨタ 198件、ニッサン 164件、ホンダ 192件、マツダ 114件、三菱 243件

となった。生産台数に対する割合で考えるのか、車種数に対する割合で考えるのか、どちらが適当なのかよくわからないが、いずれにしても三菱のリコールの割合は多いと言えそうだ。(三菱自工と三菱ふそうの合計) しかも、これは最近になってまとめて届け出た分はカウントしていないから、隠していた分を除いても、元から欠陥が多かったということになりそうだ。(元からリコールが多かったのも、新たに届けにくい雰囲気を作り出したのかもしれないな。。)

*本当はリコール該当台数やリコール内容の軽重で議論するべきかと思われ、もっと詳細な検討が必要だろうが。

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2004/07/05

トキサフェンとPOPs条約

MSN-Mainichi INTERACTIVE(7/5)の記事。母乳:国内未使用の農薬が微量検出 愛媛大など

 国内で製造・輸入実績のない有機塩素系農薬「トキサフェン」が日本人の母乳に含まれていることが、愛媛大沿岸環境科学研究センターの田辺信介教授の研究室と住化分析センター(本社・大阪市)の共同調査で分かった。厚生労働省や環境省によると、日本人からの検出例は初めて。田辺教授は「トキサフェンは、環境ホルモン(内分泌かく乱物質)の疑いがある。すぐに人体に悪影響があるとは言えない濃度だが、経路の特定が必要だ」と話している。7日から静岡市で開かれる環境化学討論会(日本環境化学会主催)で発表する。

 環境省によると、トキサフェンはトウモロコシやジャガイモなどの殺虫剤として、70年代に米国などで使われたが、その後は使用されている国・地域は確認されていないという。発がん性などの健康被害の恐れがあるとして、ポリ塩化ビフェニール(PCB)など有害化学物質12種類を規制する「残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約」(今年5月発効)で製造・使用が原則的に禁止された。

 有機塩素系農薬は脂肪分によく溶け、生物の脂肪組織に蓄積されやすい。女性への影響が大きいとされていることから、母乳を調査した。99~04年、愛媛県内の28~36歳の女性6人と九州の27歳の女性1人の計7人の母乳を取り、汚染物質の濃度を調べた。その結果、全員から1グラム当たり7.6~1.8ナノグラム(ナノは10億分の1)のトキサフェンが検出された。

 トキサフェンが、どのような経路で日本人の体内に蓄積されたかは不明だが、田辺教授は「かつての使用国から輸入された乳製品や魚などに蓄積されていたか、軽くて飛散しやすい物質のため、大気に乗って降雨などで汚染が広がった可能性もある」と指摘する。

 田辺教授らの調査では、これまでに日本近海のイルカやクジラから微量のトキサフェンが検出されていた。

 ◇国立環境研究所化学環境研究領域・柴田康行領域長の話
 今回の研究は、世界中に飛散しやすいというトキサフェンの特質を改めて示したといえる。製造・輸入実績のない日本も無関心ではいられない。世界レベルでのモニタリングや対応が必要だ。

 ◇摂南大薬学部の宮田秀明教授(環境科学)の話
 トキサフェンは中枢神経を侵し震えやけいれんを起こしたり、肝臓障害の原因になることが動物実験で分かっている。蓄積量が多いと死亡する場合もある。中国では綿花栽培でトキサフェンが殺虫剤として使われており、大気の流れに乗って日本に入った可能性が一番高いと考えられる。

というもの。

「トキサフェン」という名称はほとんど聞くことがないが、それもそのはず、日本では使用されたことがないようだ。東京都の資料トキサフェン(カンフェクロル)参照。実は、POPs(残留性有機汚染物質)でもあり、環境ホルモンリスト(SPEED'98)にも載っている物質だ。

毒性については、神奈川県環境科学センターの化学物質データベース(kis-net)がわかりやすい。(CAS番号:8001-35-2)人の経口急性毒性、LD50 は 28mg/kgとある。他には、東京都立衛生研究所内分泌かく乱物質データベースなど。

記事中にある、田辺教授のこれまでの調査というのも、毎日新聞が2003/06/25に取り上げており、ここ で読める。イルカから検出された濃度に比べて、今回人間からみつかった濃度は2~3桁も小さいから、そもそも問題にすべき濃度かどうか? 

宮田さんのコメントはウソではないとしてもミスリード狙いか? 濃度レベルが全然違う話をするのもどうかと思うし、大気に乗って日本に入ったとして、どうやって人間の体内に入ったかも議論すべき。まるで日本周辺の大気中のトキサフェン濃度が結構高そうに読み取れるけど、本当に大気から直接取り込んだのか? それはまず考えられないだろう。それでは食物経由なのか? だとすると、それは中国から輸入した食品経由なのか、それとも日本の野菜や近海の魚などからなのか?等の議論が必要だろうに。。まあ、既に製造・使用が世界的に禁止されているので、これから悪化していくことは想定しにくいと思うのだが。。

POPsに関しては、エコケミストリー研究会のサイトから、日本POPsネットワークがまとまっている。うーむ、ここ を読むと、驚くことに、中国もアメリカもこの条約を批准していない。(ったく、アメリカは協調性のない変な国だな。) 中国に関しては、POPsの問題を真剣に議論してはいるようだが。。(参考:Sankei ECONETNEDOリリースなど。)

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2004/07/02

大豆ペプチド飲料

Business Line(日刊工業新聞)の7/2の記事、機能性素材、大豆ペプチド商品続々-飲料やゼリー猛暑で好調か

 新たな機能性素材「大豆ペプチド」を含んだ商品が相次ぎ登場してきた。カルピスや森永製菓などが機能性飲料やゼリー商品などを発売したのに続き、5日には日本コカ・コーラが新飲料を投入する。大豆ペプチドは大豆タンパクが分解される過程で生じる物質。筋肉疲労の回復や脳の活性化などに効果があるとされ、スポーツ選手や芸能人、さらには経営トップなどが愛飲している。この夏は猛暑が予想されており、一気にブレイクする可能性もある。

 大豆タンパクが酵素分解した大豆ペプチドは、さらに分解が進むとアミノ酸となるため、たんぱく質とアミノ酸の中間物質ともいわれる。アミノ酸より分子量が大きく、分子をまとめて体内に吸収するため、そのスピードはアミノ酸を上回るとされる。コカ・コーラでは「アミノ酸に代わる話題の成分」と銘打ち、大豆ペプチドを4000ミリグラム配合した機能性清涼飲料「パワーエイド」を投入する。

「大豆ペプチド」は日経トレンディ誌の2004年度ヒット予想商品のランキング第5位だそうで、今年になって色んな商品が登場しているようだ。もともと、大豆は健康イメージが高いし、アミノ酸ブームの次に来るものとして期待されているようだ。

コカコーラの「パワーエイド」は、こちら。大豆ペプチド含有量は350mL中に4000mg。(大豆ペプチドは、納豆1パックに400mg程度含まれているらしいから、その10倍だ。)

一方、カルピスの「もイチド」は、こちら。大豆ペプチド含有量は、500mL中に2000mg。より高濃度の「ペプチドパワー」もある。こちらは、100mL中に4000mg。

大豆ペプチドが多けりゃ良いんだったら、トーラクという会社の「ザ・ペプチド」は、300g中に8000mgも含まれているぞ。

この大豆ペプチドは不二製油という会社がほぼ独占的に生産しているようで、このブームを見込んで生産能力を大幅拡大したようだ。

さて、この大豆ペプチドって何ものか?ということに関しては、何とその名も大豆ペプチド健康フォーラムなんてのがあって、いろいろと広報資料が載っている。肉体の疲労だけでなく、精神の疲労にも効果がありそうな話になっている。(参考:毎日新聞(6/11)

たんぱく質が体内で吸収される際に、必ずしもアミノ酸まで分解されずなくとも、ジペプチドやトリペプチドの形態で吸収されるというのは事実らしい。しかし、「大豆ペプチド」といっても、大豆に含まれる種々のアミノ酸から構成されるペプチドって何種類も考えられるわけで、その中身(アミノ酸パターン)はどうなっているんだろう? 

アミノ酸については、具体的なアミノ酸の種類で議論が行われているのと比べると、「大豆ペプチドは身体に良い!」ってのは随分乱暴な話に聞こえるんだけど。リジンとイソロイシンのジペプチドが効く、みたいな話だったらもう少し信憑性がありそうなものだが。。

*昨年、阪神タイガースのトレーナーが大豆ペプチドを使った飲料を使ったのが、ヒットの伏線になっているらしいが、今年は別のキャッチフレーズが必要じゃなかろうか? (冒頭の記事で「経営トップなどが愛飲している」とあるけど、自社製品を飲んでるだけだったりして。。)

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2004/07/01

「新書マップ」を使ってみた

asahi.com(6/27)に載った記事、新書・選書をネットで検索 7千冊を千のテーマに分類

 あるテーマに関連した新書・選書をすぐに探せるネット上の検索システム「新書マップ」が完成し、30日から無料公開される。書名や著者名が分からなくても、「連想検索」によって狙いの本を絞り込むことができる。

 「新書マップ」は、国立情報学研究所の高野明彦教授らが作った。検索の際、キーワードと書名などが一致しなくても、その言葉と関連する言葉や内容を含む本を拾い出す「連想検索」法を使った実験として、新書・選書をデータベース化した。主要出版社の近刊を中心にした約7千冊を、研究者、編集者ら20人が協力して、約千のテーマに分類、登録した。 (後略)

ということで、興味があったので様子を見てみた。

さて、この 新書マップ というサイト、なかなかデザインやインターフェースが凝っている。試しに検索ワードを入れて検索してみると、何やらアニメーション付きで結果が華麗に表示される。

それにしても、使い方の解説やヘルプだとか、どういう仕組みで作られているのか? といった説明が今のところ一切どこにも書かれていないので、使い方については使う側が想像するしかない、という不思議なサイトだ。直感的に使ってください、ということだと思うけど、データベースの収録範囲だとか、運用責任者や連絡先等も何も表示されていないというのもどうかと思うぞ。

それはともかく、実際に使ってみると何となく使い方はわかってくる。円の外側に表示される12の単語が「関連キーワード」というもので、円の中に表示されるのが「関連テーマ」ということらしい。この円の中に表示される「関連テーマ」をクリックすると、そのテーマで検索された新書リストが表示されるという仕組みで、この表示もかなり凝っていて、本の背表紙のイメージが本棚に並んだように見せるようになっている。円の外側の「関連キーワード」をクリックすると、そのキーワードをベースにした再検索が行われるようだ。

いろいろと遊んでみると結構楽しい。自分の読んだ本の周辺だとか、思いもかけない内容の本が出てくるので、確かに面白い。ここで見つかった本の内容をインターネット上で色々と検索することで書評を見たり、オンラインで購入したり、なんてこともできそうだ。(ここの検索結果から直接そういうサイトにリンクできるといいけど、そうもいかないだろうな。)

実際、書籍に関しては、既にアマゾン等の商用サイトに膨大なデータベースが完成されているし、他にも国会図書館を始めとした各種図書サイトも多い。しかし、何か知りたい内容だけが漠然としてて、それに関する書籍を探す際には、こうした従来型の検索では不十分だったわけで、この連想型の検索はかなり役に立ちそうだ。最近は図書館とか大きな書店では、各自がコンピュータで検索できる所も多いが、そういう場所にもこの種の検索は有用な気がする。

今回の新書マップの連想型検索は、どうやら同じ国立情報学研究所の開発したWebcat Plusをベースにしているようだ。(どこにも説明が書かれていないのだが。。) こちらは新書以外の非常に多くの書籍を対象としているので、こちらの方が実質的には有用かもしれない。仕組みや使い方についてもに説明があるし。

開発した国立情報学研究所には、この背景になる情報(冒頭の朝日新聞の記事のソースだとか)があるかと思いきや、ここでも何もみつからなかった。代わりに、GeNii NII学術コンテンツ・ポータルというページを見つけた。研究に関わる人にとっては、なかなか有用そうなデータベースやツールが公開されているようだ。(実際にいくつか試してみると、意外と使えないような気もするが。。)

*結構面白くて、役に立つ、いいものを作ってくれていると思うのだけど、使う人のことを今ひとつ考えていないというか、どうしてこう無愛想なんだろう?(見た目はとてもきれいだけどね。)

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