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2004/07/19

「電気はだいじょうぶか?」

帯には『新聞では分からない電力事情最前線 「原子力の安全と安心」から「世界一の水素技術」まで、資源なきニッポンの活路を探る』とある。エネルギー問題は、なかなか明快な答えが見えてこないけど、とても重要なのは間違いのないテーマ。

小学館文庫
 電気はだいじょうぶか? 新・ニッポンエネルギー事情
 プロジェクト2004 著 bk1amazon

世界一、安定的で良質な電気を供給している日本の電力エネルギー体制だが、内部には様々なネックを抱えている。国の根幹に関わる重大な課題にもかかわらず、政治家もマスコミも不勉強で、現実が人々に認識されていないのが実情だ。人気先行で実力のない風力や太陽光などの自然エネルギー、環境問題と原子力の関係、電力自由化の落とし穴、脆弱な日本のエネルギー安全保障……などの直面する緊急テーマを、国内外の現場取材から抉り出した、ビジネスマン・生活者必読のレポート。
という紹介文が裏表紙に書かれている。「週刊ポスト」に連載された内容を手直しして出版されたということで、何と言っても読みやすい。全16章からなる本書は、内容的にも発電所の現場取材からアメリカのエネルギー戦略取材までとてもバラエティに富んでいて、興味深く読める。

週刊誌ネタということもあって、どちらかというと「裏事情」をレポートするという面が強いように思える。逆に言うと、もしかしたら一般的な知識を十分に持った上で読まないと誤解する恐れもあるのかもしれない。最近脚光を浴びている風力発電や太陽光発電については弱点を明らかとすることで批判的であるのに対し、原子力発電や高速増殖炉、更には高温ガス炉の重要性や可能性にはポジティブな記述も目立つ。

また、日本の石油依存の高さに警鐘を鳴らすと共に、エネルギー安全保障という考え方についてもいくつかの考え方が紹介されている。そして最後は、それぞれのエネルギー源の長所短所をあげて、読者各自に判断を委ねるという形で終わっている。結局、そんなにわかりやすい答えはないのだが、無理やり何か答えを出すよりも、こういう形の方が好感が持てる。

もっとも、ここで紹介された考え方が全てではないし、色々なものの見方が世の中にはあるので、その一端でも紹介してくれた方が、読者としてもより深く考えられたのだろうけど。。

本書に欠けている視点としては、地球環境問題をどう認識して、どう対処するかという点と、技術は進歩するという点だろうか。日本のエネルギー問題だけを考えても答えは見つからないと思うし、自然エネルギーを始めとする再生可能エネルギーも含めて、コストや能力は技術の進歩と共に変わるものだし、変わらなければいけないはず。

いずれにしても、確かに新聞を読んでいるだけでは見落とすことも多く書かれており、エネルギー問題を考える上では目を通しておいても損はない本と言えるだろう。

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