« ポリ乳酸は処理が簡単? | トップページ | 水銀フリーHIDランプ »

2004/07/27

アクロレインとピリジン

MSN-Mainichi INTERACTIVE (7/27)の記事。食用油:加熱で生じる2物質「健康へのリスク高い」環境省

 環境省は27日、食用油を加熱することなどで生じる有害化学物質、アクロレインとピリジンについて、「現在の環境中濃度は人の健康に影響を与える恐れがある」とする初期評価をまとめ、中央環境審議会の専門委員会に報告した。同省などはこれら2物質の毒性や日本人の摂取量を詳しく調べ、規制などの対策が必要かどうか検討する。

 同省は、人の健康や生態系に影響を与える恐れのある化学物質を探し出すプロジェクトを進めている。その過程で、2物質の毒性と環境中の濃度などを文献調査した。

 その結果、アクロレインは、食料や飲料水を通じ1日に体重1キロ当たり100万分の2.3グラム程度摂取されていると評価された。ラットの死亡率が増加する摂取量の約20分の1に相当した。

 同様に、ピリジンの摂取量は1日に体重1キロ当たり100万分の52グラム程度と評価された。肝臓の重量が増加するなどの異常がラットに現れる摂取量の半分に相当した。

 このため同省は、これら2物質が人の健康について「相対的にリスクが高い可能性がある」化学物質と判定した。

 アクロレイン、ピリジンとも溶剤などに使われる化学物質だが、古くなった食用油を加熱することでも生成される。ラットやマウスに対する毒性は研究されているが、人への発がん性についてはよく分かっていない。

 環境省環境リスク評価室は「食用油を使って調理をすれば、これらの物質も副産物としてできるが、人への影響はまだよく分からない。きちんと評価したい」と話している。【河内敏康】

という記事。まだ環境省のサイトには関連情報が載っていないので詳細はわからないが、えらくシンプルな物質が槍玉に上がったなあという第一印象だ。 一方、Yahoo!ニュースによると
 環境省は27日、人の健康への影響が懸念されるとしてリスク評価の対象とする化学物質に、食品から検出されることもあるアクロレイン、ピリジンと塩化ビニール樹脂の原料などに用いられる1、2-ジクロロエタンの3物質を選んだ。(中略)
 塩化ビニールの原料などに使われる1、2-ジクロロエタンは、ラットやマウスで発がん性を示す複数の実験報告が出ている。(共同通信)
となっており、アクロレインとピリジンに加え、ジクロロエタンも対象になっているようだ。

さて、アクロレインは単純な物質だし、炭化水素の酸化過程で生成してもおかしくない。国立医薬品食品衛生研究所の資料にも、成因や環境中濃度についての記述があるが、食品からの生成に加え、いわゆる通常の大気汚染源も含め、様々な要因で生成している様子が書かれている。

一方のピリジンについても、有名な悪臭物質だし、化学屋さんにとってはポピュラーな試薬の一つ(個人サイトだが、K.SATOH's official website はとても充実しており、ここの有機化学美術館にピリジンも紹介されている)だが、食品を加熱して生成するという話は検索したが意外とみつからない。唯一あったのは、炒りゴマの臭い成分の中に含まれるという記述

一方、ここ にあるように、アクロレインもピリジンもタバコの煙に含まれる成分である。この表によれば、タバコ1本の煙の中にアクロレイン、ピリジン共に 数十μg 含まれており、この記事で問題にしている濃度はタバコを毎日10本程度吸っただけでも同じオーダーとなりそうだ。

今回の評価は、従来から環境省が進めている「化学物質の環境リスク評価」とどういう関係にあるのかよくわからないけど、この評価では既にアクロレインの毒性ピリジンの毒性がまとめられている。このデータと毎日新聞の記事を比べると、何故かラットに異常が発生する濃度が、いずれも桁違いに異なっているみたいだ。。 もしかしたら新たな実験結果が出てきたのかもしれないけど本当かな?? 

*でも、食品の加熱で生成したり、タバコの煙に含まれているのならば、人間は千年単位で暴露されてきていることになるわけで、今さら問題にするのもどうかと思うけど。。 (それに調理で発生するような物質は規制しにくいだろうに。)

|

« ポリ乳酸は処理が簡単? | トップページ | 水銀フリーHIDランプ »

コメント

環境省のサイトにデータが掲載された。
 http://www.env.go.jp/press/press.php3?serial=5143">化学物質の環境リスク初期評価等(第3次とりまとめ)の結果について

このページに掲載されている一覧表によると、アクロレインの無毒性量(NOAEL)を0.05mg/kg/day、ピリジンのNOAELを0.1mg/kg/dayとして、種々の物質を評価している。

アクロレインについては、http://www.env.go.jp/chemi/report/h15-01/pdf/chap02/02-2/02/04.pdf">昨年の第2次とりまとめの数値そのものだが、ピリジンについては、http://www.env.go.jp/chemi/report/h15-01/pdf/chap02/02-2/02/37.pdf">昨年の第2次とりまとめでは NOAEL 1mg/kg/dayとなっており、やっぱり丁度 1桁異なっているようだ。

アクロレインについても、実験は、0, 0.05, 0.5, 2.5mg/kg/dayで行われ、0.5で異常が見られたことから NOAELは 0.05となったようだけど、なんだかなあ。

なお、今後の対応には

 アクロレイン及びピリジンについては、食物からの暴露が多いと見積もられ、経口暴露について詳細な評価を行う候補とされた。これらの物質は生物濃縮性が低く、環境に由来した食物経由で暴露される可能性は低いと考えられるが、食品の加熱等により生成するとの情報もあるため、まず食物からの暴露の可能性に関する情報の収集を行うこととする。
とあり、やっぱり、これ以上の検討はあまり必要性を感じられないけどなあ。

投稿: tf2 | 2004/07/28 19:59

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: アクロレインとピリジン:

« ポリ乳酸は処理が簡単? | トップページ | 水銀フリーHIDランプ »