チタンアパタイト光触媒
nikkeibp.jp(7/7)の記事。富士通研、東大と共同開発した光触媒チタンアパタイトを展示
富士通研究所(川崎市)は、2004年7月7日から9日までの3日間、東京都港区の東京国際フォーラムで開催される「富士通ソリューションフォーラム2004」の環境コーナーに、新しい光触媒であるチタンアパタイトを技術展示した。この中で近々、倉敷繊維加工(大阪市)がチタンアパタイトを組み込んだ不織布製マスクフィルターを発売することを明らかにした。チタンアパタイトは黄色ぶどう球菌(MRSA)などの細菌の毒素を分解する機能に優れている新材料。というもの。最近ではすっかり有名になった光触媒だが、ニ酸化チタン以外のものが実用化されるというのは知らなかった。富士通研究所のホームページには、とてもわかりやすい説明のページがある。研究段階の技術の説明をここまでしっかりと説明する姿勢はさすがだ。このチタンアパタイトは、富士通研究所と東京大学先端科学技術研究センターの渡部俊也教授の研究グループが実用化した光触媒である。これまで光触媒の代名詞だったチタン酸化物のチタニア(TiO2)とは異なる新しい物質。アパタイトは歯や骨の主成分であるリン酸カルシウム系化合物であり、富士通研究所がカルシウムの一部をチタンイオンに代替した化合物に、波長400nm以下の紫外光をあてると光触媒機能を発揮することを見いだした。アパタイト自身が有機物を吸着する能力が高いので、細菌を表面に吸着し、光触媒機能によって分解し無害化してしまう。
富士通研と東大先端研は2000年にチタンアパタイトの特許を出願済み。アパタイトメーカーの大洋化学産業(大阪市)は同特許の実施権のライセンスを受け、光触媒アパタイトの粉末の量産技術を確立し、製造・販売している。富士通自身はこのチタンアパタイトの抗菌性を、ノート型パソコンや携帯電話機のハウジングに利用する開発を進めているという。また、富士通ゼネラルがエアコンディショナーのフィルターに近々採用する見通しである。
なるほど、ニ酸化チタンの光触媒機能+吸着材料という組み合わせもありうるが、アパタイトのカルシウムの一部をチタンで置換することで生成するチタンアパタイトは、有機物の吸着機能と光触媒機能の両者を併せ持つ優れものということらしい。
なお、ニ酸化チタンをアパタイトで被覆する複合タイプの材料開発も産総研で行われているようで、これはこれでチタンアパタイトにはないメリット(周囲の材料を光分解しない等)もあるようだ。(リリース(2002/04/17)、リリース(2004/01/29)等)
冒頭の記事だと、チタンアパタイトのフィルターの実用化はこれからのように読めるが、東大、富士通と一緒に共同研究を行ってきたダイキン工業が空気清浄機やエアコンに既に組み込んでいる。(プレスリリース(2003/07/16)、プレスリリース(2003/12/18)、空気清浄機)富士通ゼネラルも既にエアコンにチタンアパタイトを採用しているが、こちらはフィルターではなく熱交換器の表面に塗布しているようだ。
チタンアパタイトという新たな機能性の材料を開発したことと同時に、これを実際の材料に実用化していく技術、今回の記事で言えば不織布にする技術等もなかなか大変だったと思うけど、これはノウハウの塊だろうからあまり表に出ることはないようだ。
*日本セラミックス協会の発行する「セラミックス」誌の最新号(第39巻、第7号)が「光触媒の応用最前線」という特集を組んでおり、この中にアパタイト被覆ニ酸化チタンの話とチタンドープカルシウムヒドロキシアパタイトの解説記事も載っている。
この記事を読んでも、アパタイトのCaの一部をTiで置換することで光触媒機能を持つことは、予め予想されていたと言うよりも、偶然発見したように読める。ニ酸化チタンとは構造も全く異なるわけで、何故アパタイトに光触媒機能を付与する元素がチタンなのだろうか? 偶然??
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コメント
「チタン」「アパタイト」「光」(光重合レジンとか)と歯科関係者だとつい目を惹かれてしまうキーワードが並んでいて「うっ」と思ったのですが、別に関係ないんですかね。文系なんでよくわからないでございます。
投稿: 石倉由 | 2004/07/07 23:18
石倉さん、コメントありがとうございます。
光触媒関係で、歯と関連するものとしては以下のような商品が一部で実用化されているようです。
・光触媒を利用した義歯洗浄剤(歯科医用と家庭用)
http://www.aist.go.jp/aist_j/press_release/pr2003/pr20031105/pr20031105.html">産総研のリリース
http://www.nissin-dental.co.jp/dental/physio/physioclean/lineup.htm">ニッシンの洗浄剤「フィジオクリーン」
・光触媒を利用した歯の漂白剤(歯科診療室での漂白用)
http://www.aist.go.jp/aist_j/press_release/pr20011119/pr20011119.html">産総研のリリース
こんなのもあるけど、こちらの効果は疑問が一杯だったりする。。。
http://www.moris-pc.com/soladey3/">光触媒歯ブラシ
投稿: tf2 | 2004/07/08 00:04
光触媒歯ブラシって意外と歴史が古いのだ
20年以上前からあるのだ
総産研の先生が鼻をたらしている(失礼!)ころから
製品化していたなんてすばらしいではないか
ここを見るべし
http://www.kk-shiken.co.jp/">http://www.kk-shiken.co.jp/
決して疑ってはいけない
投稿: おっちゃん | 2004/08/11 12:25
おっちゃんさん、コメントありがとうございます。
おぉっ! ソラデーの開発元ですね、見つけていただいて感謝です。ソラデー3は、太陽電池と光触媒という流行物を単純に組み合わせただけのトンデモ系かと思ったけど、意外にも地道な研究を積み重ねた成果だったんですね。失礼しました m(__)m
それにしても、研究内容の割に取り扱っている製品が「何だかなぁ」なのは、どうしてでしょう? これでは研究開発費もペイできないように思えてきますが。。 頑張ってください >(株)シケン さん
投稿: tf2 | 2004/08/11 20:22