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2004/07/09

「ココがわかると科学ニュースは面白い」

久々の読書感想文。

このブログでは、科学系のニュースを取り上げて、その内容や背景についてネット上の情報を探し回り、今まで知らなかったことなどに少しでも触れられれば、と思いながら書いている記事が多いのだが、この本のタイトルはその意味で非常に興味深い。この本に書いてある内容そのものへの興味が半分、残り半分は科学ニュースに対する著者の突っ込みの姿勢への興味で読んでみた。

新潮文庫
 ココがわかると科学ニュースは面白い
 中野 不二男 著 bk1amazon

新潮社のサイトには、一部が立ち読みコーナーとして掲載されている。「火星探査」

著者はエンジニア出身で元・宇宙開発委員会特別委員を務めたとのことで、航空宇宙関係が専門ということになりそうだ。本書の内容も、ページ数で約1/3が航空宇宙関係、残りがエネルギー関係、医療技術関係、その他となっている。確かに幅広い分野の科学系のニュースをネタに、背景の基礎的な科学技術やその応用を蘊蓄も含めて色々と書いてあるし、結構軽いノリでサッと読めてしまう。

この本を読むことで、確かに知らなかったことが何がしか手に入るのは事実なのだが、それぞれの技術の核心の部分の基本がすっきりと理解できるか? と言われると、残念ながらそうではない。説明が舌足らずだったり、極端に模式化されてたりと、却ってわかりにくい部分もあるように思える。

結局は、この手の本の宿命かもしれないが、想定する読者のレベルや紙面の制約等からか、どうしても突っ込みが浅くならざるを得ないようだ。そのために、いわゆる理科系人間が読むと、新たな疑問が次々と出てくるのに、それに対する答えが用意されていなかったり、中途半端にごまかされたような気になってしまうのだろう。まあ、きちんと知りたかったら、その道の専門書を読んでね、ということだろうが、却ってフラストレーションが溜まってしまいそうだ。

本書のエピソードの中では、陸上競技の計時システムの話が面白かった。考えてみると当然だが、スタートの号砲音が競技者に届く時間差は第1レーンと第8レーンで約0.25秒にもなる。これでは1/1000秒を争う競技が全く成立しないので、各レーンのスターティングブロックに号砲を伝えるスピーカーが内蔵されているんだとか。水泳なんかも同様なんだろうな。

しかし、正直に言うと、著者得意の航空宇宙系の話以外はあまりお勧めできないかなと思う。(航空宇宙関係は、4/17のブログで紹介した、「メタルカラーの時代6 ロケットと深海艇の挑戦者」と内容がかぶっているので、合わせて読むとなお良いだろう。)バイオ分野などは進歩が早いので、本書の記述では(5年前に出版したものの文庫化なので)既に最新のニュースには付いていけてないような気がする。。

著者の姿勢については、単に科学技術の解説記事に徹しているかというとそうではなく、特に航空宇宙関係は相当に思い入れも強いようだ。ただ、それならばもっと夢を語ってくれないと、読者は置いてけぼりというか、著者が入れ込む分だけ逆に醒めてしまう恐れがある。

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