間葉系幹細胞と再生医療
YOMIURI ON-LINE(7/14)の記事、拡張型心筋症、心筋・血管の同時再生めざす手術実施
拡張型心筋症の患者の心臓に、本人の骨髄から取り出した「間葉系幹細胞」と呼ばれる細胞を移植し、心筋と血管の同時再生を目指す治療を実施したと14日、国立循環器病センター(大阪府吹田市)が発表した。調べてみると、各紙大きく扱っているけど、「間葉系幹細胞」という初めて聞く言葉の説明がどこにも書かれていないので、今一よくわからない。asahi.com に至っては、この用語が出てこない。他にはNIKKEI NET など。移植後2か月で心臓から血液を送り出す能力が治療前より約10%上昇、息苦しさが改善したという。
間葉系幹細胞は、心筋にも血管にも変化する能力を持ち、これを使った心臓の再生治療は初めて。
永谷憲歳・再生医療部室長らのチームが5月、心不全状態だった女性患者(61)の骨盤から骨髄を採取。その中にあるわずかな間葉系幹細胞を培養し、約100万倍に増殖して、心臓全体の44か所に管を使って注入した。
心筋や血管の再生を直接確認する検査はまだだが、副作用も見られず順調で、今月下旬からは2人目の患者に治療を始める。
この方法は、自分の細胞を使うので、心臓移植のような拒絶反応の心配がない。ブタの実験では心筋、血管とも再生して心機能が1―2割回復しており、昨年10月に同センターの倫理委員会で実施が承認された。
心臓に細胞を移植する再生治療は、関西医大が狭心症の患者に、血管の元になる単核球を移植して効果を上げたほか、京都府立医大、奈良県立医大も、心筋こうそくの患者に実施。大阪大も筋肉の元になる細胞を移植する計画を進めている。
ここ の情報などを読むと、身体を構成している一般的な体細胞に対して、幅広い分化能力と増殖能力を持つ特殊な細胞が幹細胞で、これは更に胚性幹細胞と体性幹細胞に分類される。胚性幹細胞はクローン技術で話題になる、一般にES細胞と呼ばれている奴だ。一方、体性幹細胞は更に造血性幹細胞、神経幹細胞や間葉系幹細胞などに分けられるのだそうだ。さて、今回話題の間葉系幹細胞だが、再生医療とはでES細胞とも比較して詳しく説明されているが、
現在、再生医療を実施するうえでの細胞供給源の一つとして、「間葉系幹細胞」が注目されています。間葉系幹細胞は骨髄中に存在すると考えられており、未分化な細胞なので骨、軟骨、筋、靭帯、脂肪など間葉系に属する細胞に分化する能力を備えています。現在のところ、成人の体内に間葉系幹細胞の存在が証明された報告はないので、厳密には「骨髄間葉系細胞」、「骨髄間質細胞」あるいは「間葉系前駆細胞」などと呼ばれていますばれていますが、このサイトでは「間葉系幹細胞」と統一させていただきます。と書かれており、厳密に言うとややこしいらしい。骨髄から間葉系幹細胞を採取して100万倍に増殖した段階では、どんな状態になっているんだろう? まだ特定の細胞に分化していない幹細胞のままで増殖するみたいだが。それを心臓に移植すると、ちゃんと心筋や血管に分化したってことは、周囲の環境に応じて必要とされる細胞になったわけだ。この分化のメカニズムはきちんと解明されているのだろうか?未分化な間葉系幹細胞は増殖能力が高く、生体外の細胞培養環境でも容易に数を増やすことが出来ます。そのため、患者の骨髄より分離した間葉系幹細胞を培養し、必要な数に増殖させた後に患部へ移植するという治療が可能です。
つい最近、ヒトクローン胚研究の倫理問題で、研究目的に限定して認める方向という記事が載ったが、今回のような間葉系幹細胞移植であれば、もともとは自分の細胞だけだから、ES細胞で必要な受精卵も不要だし、クローン人間とは無関係だし、ということで、生命倫理のややこしい問題とは無縁というメリットがあると言えそうだ。(参考:体性幹細胞にも全能性が)
これと関連した、心臓の幹細胞発見やES細胞から心筋細胞なんてニュースもある。先端分野は似たようで微妙に違う話が沢山出てくるので、なかなか理解するのも大変だ。。
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コメント
http://akimichi.homeunix.net/~emile/aki/medical/dermatology/node112.html">このあたりを読んでも分かるとおり中胚葉性の細胞であるようですね。中胚葉といえば消化器官と表皮と神経を除く大部分の起源ですから心臓ができてもおかしくはないですが。それにしても、生体でもちゃんと誘導(生物用語の)がかかるんですねぇ。
細胞培養はやったことがないので確かなことは言えませんが、「間葉系幹細胞は紡錘形あるいは不定形を示す付着系細胞」ですから、(多分コラーゲンなどの基底膜を塗ってある)シャーレに培養液を張って細胞を入れておくと器壁に薄い一層の膜状になると思います。どうやって注入したのかがちょっと分かりませんが。
投稿: ESD | 2004/07/15 12:44
ESDさん、毎度コメントありがとうございます。培養して100万倍に増殖した段階のイメージがクリアになりました。
きょうはhttp://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20040715-00000012-kyodo-soci">こんな記事がありました。こっちは Nature に載っているようです。(http://www.natureasia.com/japan/nature/updates/index.php?id=722&issue=6997">これかな?)
マウスの神経幹細胞をヒトの内皮細胞と一緒に培養したら内皮細胞に分化したが、それは「何らかのシグナルが幹細胞に与えられたためではないか」と書かれてますね。逆に言うと、まだ分化のメカニズムはわかってないってことですね。
投稿: tf2 | 2004/07/15 20:59