ICのシリカ絶縁層を低温合成
asahi.com(8/30)の記事。ICカードもタグも印刷で 産総研など技術開発
プラスチックの板やフィルムに薄膜の電子部品を直接、印刷できるようにするための基礎技術の開発に産業技術総合研究所(茨城県つくば市)や日立製作所(東京)などのチームが成功したと30日、発表した。将来は、ICカードやICタグの心臓部であるチップも印刷で作れるようになるという。ICを100℃以下で製造できるプロセスを開発したということらしい。記事ではSiO2の絶縁層を作る工程が今回のキーポイントのように書かれているが、そもそもの半導体はどうするんだろう?LSIやICは、シリコンの板に金属原子を蒸着させた膜で部品を作っている。大掛かりな真空装置が必要で、千度近い高温にもなる。
産総研の小笹健仁研究員らは、これまで印刷が困難とされてきた「絶縁層」と呼ばれる薄膜の印刷に挑戦。材料にシリコンの酸化物を使い、プラスチックが溶けない100度以下の温度でプラスチックに印刷し、トランジスタを作ると正しく動くことを確かめた。
今回の成果を従来技術とうまく組み合わせると、すべての部品・回路を印刷で作ることが可能。心臓部として小さなシリコンチップが組み込まれたICカードやICタグなども、薄いプラスチック板にできるといい、チームは「これで印刷で作れる部品がそろった。作製技術の確立を急ぎたい」としている。
産総研のプレスリリースによると、半導体層については既に有機薄膜トランジスタが使えるので、ネックとなっていたのは信頼性のある絶縁層だったようだ。従来印刷可能な絶縁層を作る方法としては、有機高分子材料を塗布する方法があったが、純度、耐溶剤性、耐久性などに難があったとのこと。一方、信頼性のある絶縁層はシリコン基板を熱酸化する方法に頼らざるを得なかったらしい。
今回の絶縁層は、シラザンを溶媒に溶かして薄膜状に塗布し、これをオゾンで酸化する方法で作成したとのこと。反応時の雰囲気と温度の制御がキーポイントらしい。
さて、シラザンとは何かを調べてみると、クラリアントカタログのように、化合物のグループ名であり、Si-N結合を持つ、ケイ素と窒素と水素等からなる一連の化合物をシラザン類と呼ぶ。
例えば、ヘキサメチルジシラザン((CH3)3Si)2NH の性質は、関東化学のMSDSによると、常温で液体の有害性の可燃物のようだし、有機溶媒に可溶と書かれている。
オゾン酸化でシリカになるのか?(NがNOx、CH3がCO2とH2Oまで常温で酸化されるのか?) という疑問と、100℃以下の温度で厚さ 200nmの緻密な酸化物膜ができるだろうか? というのが何だか不思議な気はする。
ということで、もう少し探してみると、ポリシラザンによるシリカコーティングという技術が見つかった。例えば、エクスシアという会社のクォーツガラスコーティングという製品は、加水分解・熱分解して緻密なシリカ層を作るものだ。アミン系等の触媒を使って常温でも加水分解による緻密な膜ができると書かれている。これは、産総研のリリースに書かれている、有機高分子材料を用いる従来技術なのかな? うーむ、消化不良気味だ。。
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