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2004/08/31

ICのシリカ絶縁層を低温合成

asahi.com(8/30)の記事。ICカードもタグも印刷で 産総研など技術開発

 プラスチックの板やフィルムに薄膜の電子部品を直接、印刷できるようにするための基礎技術の開発に産業技術総合研究所(茨城県つくば市)や日立製作所(東京)などのチームが成功したと30日、発表した。将来は、ICカードやICタグの心臓部であるチップも印刷で作れるようになるという。

 LSIやICは、シリコンの板に金属原子を蒸着させた膜で部品を作っている。大掛かりな真空装置が必要で、千度近い高温にもなる。

 産総研の小笹健仁研究員らは、これまで印刷が困難とされてきた「絶縁層」と呼ばれる薄膜の印刷に挑戦。材料にシリコンの酸化物を使い、プラスチックが溶けない100度以下の温度でプラスチックに印刷し、トランジスタを作ると正しく動くことを確かめた。

 今回の成果を従来技術とうまく組み合わせると、すべての部品・回路を印刷で作ることが可能。心臓部として小さなシリコンチップが組み込まれたICカードやICタグなども、薄いプラスチック板にできるといい、チームは「これで印刷で作れる部品がそろった。作製技術の確立を急ぎたい」としている。

ICを100℃以下で製造できるプロセスを開発したということらしい。記事ではSiO2の絶縁層を作る工程が今回のキーポイントのように書かれているが、そもそもの半導体はどうするんだろう?

産総研のプレスリリースによると、半導体層については既に有機薄膜トランジスタが使えるので、ネックとなっていたのは信頼性のある絶縁層だったようだ。従来印刷可能な絶縁層を作る方法としては、有機高分子材料を塗布する方法があったが、純度、耐溶剤性、耐久性などに難があったとのこと。一方、信頼性のある絶縁層はシリコン基板を熱酸化する方法に頼らざるを得なかったらしい。

今回の絶縁層は、シラザンを溶媒に溶かして薄膜状に塗布し、これをオゾンで酸化する方法で作成したとのこと。反応時の雰囲気と温度の制御がキーポイントらしい。

さて、シラザンとは何かを調べてみると、クラリアントカタログのように、化合物のグループ名であり、Si-N結合を持つ、ケイ素と窒素と水素等からなる一連の化合物をシラザン類と呼ぶ。

例えば、ヘキサメチルジシラザン((CH3)3Si)2NH の性質は、関東化学のMSDSによると、常温で液体の有害性の可燃物のようだし、有機溶媒に可溶と書かれている。

オゾン酸化でシリカになるのか?(NがNOx、CH3がCO2とH2Oまで常温で酸化されるのか?) という疑問と、100℃以下の温度で厚さ 200nmの緻密な酸化物膜ができるだろうか? というのが何だか不思議な気はする。

ということで、もう少し探してみると、ポリシラザンによるシリカコーティングという技術が見つかった。例えば、エクスシアという会社のクォーツガラスコーティングという製品は、加水分解・熱分解して緻密なシリカ層を作るものだ。アミン系等の触媒を使って常温でも加水分解による緻密な膜ができると書かれている。これは、産総研のリリースに書かれている、有機高分子材料を用いる従来技術なのかな? うーむ、消化不良気味だ。。

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2004/08/30

ジルコニア製コーヒーカップ

日刊工業新聞社 ビジネスライン(8/30)の記事。宮川化成、ジルコニア製高級食器の量産技術確立-主力事業に育成

 宮川化成工業(大阪市東淀川区、宮川征四郎社長、06・6381・5952)は、射出成形法を用いたジルコニア製のコーヒーカップなど、高級食器類の量産技術を確立した。自社ブランドで販売するほか、内外の高級ブランドメーカーを対象にOEM(相手先ブランド)供給も検討する。これにより03年9月期に8億円のファインセラミックス事業部の売上高を、5年後に20億円に引き上げる計画。

 ジルコニア製のファインセラミックスは合成宝石などに使われている高級素材。素材を削り出してコーヒーカップなどを製造するメーカーはあるが、コストが高く付いている。これに対し、同社はシリンダー内で加熱したセラミックス材料を金型に注入し成形する射出成形による成形を研究。約3500万円を投じて、型締め力1000キロニュートンの射出成形機や遠心バレル研磨機やなどを導入し、量産技術を確立した。

実は、以前ジルコニア系のファインセラミックスに関する仕事をしたことがあるので、気になる記事だ。ジルコニアの高級食器とは、ちょっと意外な組み合わせに思えるので。。

ジルコニアは、確かに単結晶が人造宝石(キュービックジルコニア)として使われていて、それなりに有名だろうけど、セラミックスとしては一時期ブームになって流行った、セラミックス包丁やセラミックスはさみにも使われているもの。ウィキペディアの記述も今一で、酸素センサーや燃料電池にも使われる、安定化ジルコニアの固体電解質としての用途を外すわけにはいかないだろう。

それはともかく、ジルコニア製のコーヒーカップとはどんな物だろう? 宮川化成工業のサイトには、これに関連する情報は載っていない。この会社は射出成形が専門で、ジルコニアを含むセラミックスの射出成形製品も色々と手がけているようだ。

冒頭の記事だと、従来から削り出しによるジルコニア製のコーヒーカップや食器があるとのことだが、これに関連する記事や写真は、残念ながら色々検索しても見つからなかった。本当に削り出しなんて手間と金の掛かる方法まで使って生産しているのだろうか? 何を売り物にしているんだろう?

アルミナ製の食器については、フィジオという食器が見つかったが、良く見るとこれはアルミナを配合した磁器のようで、給食用食器などに使われる強化磁器と呼ばれる種類のものの親戚だろうか。

特性としてキーとなるのは、ジルコニアの比重と熱伝導率だろう。ジルコニアの比重は約 6と通常の磁器や陶器の2~3 と比べると倍以上と重い。まあ、重いほうが高級感があるのかもしれないし、陶磁器製のものよりも肉薄に作ることで、ますます高級感が出せる可能性はある。しかも、強度面では確かに陶磁器よりは強いだろうから、肉薄化も可能かもしれない。

ジルコニアの熱伝導率は、特性比較表によると、2.1(W/mK)で、アルミナ等の他のセラミックスと比べると圧倒的に小さい。一方、リンアンティークラブの資料などによると、陶磁器は熱伝導率 1~1.6(W/mK)程度。 ということで、熱伝導率は意外にも陶磁器に結構近いようだ。(アルミナ製の食器がないのは、熱伝導率が高すぎるためだろう。)

個人的には、以前ジルコニアの仕事をしていた時に、自作した部分安定化ジルコニア製のるつぼに熱湯を入れたら、熱くて到底持てなかったような記憶があるのだが。 これは肉厚が 0.5mm程度と非常に薄かったために、熱伝導率が小さめでも熱かったということだろうか?

とすると、ジルコニア製のコーヒーカップ、比重と強度から考えるとかなり肉薄なのではないかと思われるが、薄くした分と素材の違いから、熱伝導は磁器製のものの2~3倍となりそうだ。うーん、どんなものか一度実物を見てみたいな。。(射出成形となれば、相当に手の込んだデザインでも可能だろうと思われるし。)

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2004/08/27

カナダ閣僚の「バカ」発言

CNN.co.jp(8/27)の記事。カナダ女性閣僚、米国を「バカ」と、イラク問題等で

オタワ(ロイター) カナダの女性閣僚が25日、米国人を「バカで、大嫌い」と発言していたことが分かり、メディアを騒がせている。

問題の発言をしたのは自由党のキャロリン・パリッシュ氏。米国のミサイル防衛システムについての議論で、「くそったれ米国人は大嫌い」と発言。イラク戦争における米政権の行動についても「うすのろ」とののしった。

また、「私たちはバカ(米国人)の集まりに同調するんじゃない。頭のいい人についていくんだ」とも述べた。

パリッシュ氏は、報道陣に対し、そのような発言はしていないと述べたものの、テープに録音された発言の一部始終を聞くやいなや、「米国人をバカと言ったのではない」と弁明。さらには、「お願い。それを公表しないで。私、前にも同じ事で問題になっているんだから。お願い、お願い。トラブルはもうたくさんなの」と、テープをメディアに流さないよう懇願した。

パリッシュ氏は昨年にも、同様の発言をし、謝罪している。

だが、それから数時間後、パリッシュ氏は「『うすのろ』という言葉に対しては、不適切だったと思っている。けれど、『バカ』は日常生活でよく使う言葉だから」と釈明した。さらに、「米国人は、イラク国民を虐待している。(イラクは)大量破壊兵器も持っていないというのに。誰か、米国人はバカなのか、それとも天才なのか、教えてくれない?」と強気な発言をした。 (後略)

日本にも、威勢が良くて口の悪い女性大臣がいたような気がするが、このパリッシュさんってのも相当に威勢が良さそうな人らしい。この記事、英語の悪口の微妙なニュアンスを知る教材になりそうなので、英語の記事を探してみた。CNNの本家の記事が、Canadian MP calls U.S. 'idiots'で、先の日本語記事は、この英語記事の直訳らしい。ということで、対応させながら読むと中々面白い。結局

damned Americans → くそったれ米国人
bastard → うすのろ
idiot → バカ

という対応をさせているようだ。で、idiot は日常的に使う言葉で許されるが、bastard は不適切な悪口という位置づけらしい。「うすのろ」っていうのも今一ニュアンスが不明の単語だな。英辞郎だと、もっと下品な印象かな。

カナダでは2002年にもブッシュ大統領を "moron"(能無し)と呼んで辞めたスポークスウーマンがいるそうで、パリッシュさんも大統領から 発現 発言をたしなめられたけど、撤回する気はないらしい。

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2004/08/26

環境化学物質と心の病

MSN-Mainichi INTERACTIVE(8/25)の記事。環境ホルモン:脳発達に影響 産総研などが動物実験で確認

 内分泌かく乱物質(環境ホルモン)などの環境化学物質の一部が、脳神経の発達に影響を与えることを動物実験で突き止めたと、産業技術総合研究所と国立環境研究所の研究グループが25日発表した。「環境化学物質の脳への直接影響が確かめられたのは初めて」だとしている。

 研究グループは、自発運動に重要な役割を果たす脳内のドーパミン神経の発達に注目。生まれたばかりのマウスの脳にさまざまな環境化学物質を直接注入し、正常なマウスとの違いを比較した。

 プラスチックに多用されるフタル酸エステル類や樹脂類のビスフェノールAなどをそれぞれ少量注入されたマウスは、成長とともに行動に落ち着きがなくなり、人間の学童期に当たる4~5週目では正常なマウスに比べて1.5~1.6倍の多動性を示した。脳を調べたところ、ドーパミン神経の発達が阻害されていることが分かった。

 ドーパミン神経の発達障害は注意欠陥多動性障害(ADHD)などの原因とする見方もあり、産総研の増尾好則研究員は「あくまで動物実験の段階だが、環境化学物質が脳内の神経発達を阻害し、ADHDなどに関与する可能性があることが分かった」としている。

ということだが、いくつか気になる点がある。まず、Yahoo!ニュースで見た、脳に影響する化学物質特定 ラット使った新手法開発とは、タイトルからしてニュアンスが随分異なる。

産総研のプレスリリースを見ると、タイトルは「心の病を引き起こす環境化学物質を特定する新しい技術の確立」となっており、毎日の記事とはやっぱり印象が異なる。

このリリース、専門的でなかなか難しいが、やったことは、対象となる化学物質を生まれたばかりのラットの脳に直接注入し、ラットの活動を観察したということらしい。しかし、これで人間の子どもの「注意欠陥性多動性障害」と関連する結果が得られるものなのか? このページの用語解説によると、

広汎性発達障害(PDD):脳の発達障害の一つで、自閉症やその近縁の障害を含む。その特徴は、その場にふさわしくない多動性、衝動性、不注意、コミュニケーションの困難さなどである。言語の獲得も悪いケースが多い。特に幼児期~学童期に多動性障害を示し、成人してからも社会適応は難しい場合が多いといわれている。

注意欠陥多動性障害(ADHD):広汎性発達障害に近縁の障害で、学習障害(LD)などを含む。通常、言語の獲得には異常がない場合が多いが、PDDにみられる行動異常を伴う。

とあり、ラットの行動が変化したとしても、これらの障害との関連を読み取るのは無理がありそうに思うけど、どういう論理なんだろう?

そもそも、脳の内部に化学物質を注入すれば何らかの影響があっても不思議はないが、その時の脳の局所領域における化学物質の濃度は、果たして人間が通常の生活環境から同じ物質を摂取した場合の、脳の同じ領域における濃度とはどんな関係にあるのだろう? この実験では 0.2μgの注入で影響が見られたらしいが、脳内のこの量は経口摂取だと、どれだけの量の摂取に相当するのだろう?

まあ、そんなことがあるからか、産総研のリリースでも

 当スクリーニング技術を用いた研究で環境化学物質に神経毒性が認められたからといって、短絡的にその化学物質をヒトの疾患の原因であるとはいえない。今後、環境化学物質の脳への移行性を含めた詳細な検討を行う必要がある。しかしながら、当技術は実験動物の行動異常を指標にしていることから、神経毒性を有する環境化学物質を見いだすための有効なスクリーニング技術として期待される。
と控えめに書かれている訳で、毎日の記事にはウソは書いてないけど、ミスリードを誘う書き方だと思うな。

それにしても、同じ産総研の中西さんは環境ホルモン問題に対して非常に醒めた見方をしている一方で、こういうリリースが出るのは、産総研という組織の面白いところだ。(今回の研究を行ったのはヒューマンストレスシグナル研究センターで、大阪とつくばにあるらしい。)

ところで「環境化学物質」という用語も、良く聞くような、余り見かけないような気がする言葉だ。このリリースでは「環境中に存在する化学物質で、その多くは工業製品及びその製造過程に由来する。」と定義しているようだが、意味不明だぞ。 環境中? 化学物質? すべてじゃん?!

*この用語を調べていて気付いたけど、いつのまにか google.com と google.co.jp で若干違う検索結果が返ってくるようになったみたい、要注意。

*全く無関係なおまけ
Googleのロゴがアテネオリンピック期間中は毎日のように変わるので楽しんでいるけど、今日(8/26)のロゴは空手に見える。空手はオリンピック競技になってないみたいだけど。。
Google Holiday Logos
Google Athens 2004

*8/31 一部に不適切な表現や間違いがあることをメールで指摘していただきましたので、修正しました。

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2004/08/25

冷蔵庫内で光合成

FujiSankei Business i(8/25)の記事。世界初、ビタミンC増やす冷蔵庫 三菱電機が来月発売

 三菱電機(東京都千代田区)は24日、収納するだけで野菜のビタミンCが増える野菜室を組み入れた世界初の家庭用冷蔵庫を9月25日から順次発売すると発表した。
 作物をハウス内で栽培する際にLED(発光ダイオード)の光を活用する点に着目し、野菜室内をLEDの光で照らし、野菜の光合成を促し含有するビタミンCを増量させる。
 ブロッコリーを用いた実験で、3日間に含有量が約10%増量したことを確認した。これまでの冷蔵庫が食品鮮度を保つ点にとどまっていたのに対し、これを一歩進め、栄養素増という既成概念を変えた商品となる。
 従来型は収納した野菜の含有ビタミンCは日を追って減少し、ブロッコリーを例に取ると、3日間で約25%減少する。新型は逆に約10%増え、3日を過ぎた時点でビタミンCの量は新型が約1.5倍になる。
 このほか、製氷室に用いる水の含有鉛の量を低減する浄水機能、抗酸化性能を持つビタミンCを配合したフィルターを庫内に配置し、食品の酸化を従来型から約40%抑制する酸化防止機能などを備えた。
ということで、冷蔵庫内で野菜に光合成をさせるらしい。最近の家電製品は色んな機能をつけてくるけど、これまたすごいな。

三菱電機のニュースリリースには、あまり詳しい話が載っていないが、付属のpdf版リリースを見ると、その他の機能についても解説が読める。うーむ。この冷蔵庫に搭載されている機能を見ると、もはや「おまけ機能」というよりもこれを売りにしているらしい、ということがわかる。

「うまさビタミン増量 光パワー野菜室」
世界初の光合成LEDを搭載しているということで、ブロッコリーのビタミンCが増えたというデータとキャベツの見た目が青々としている写真が載っている。確かに、冷蔵庫内でも野菜が成長することは経験するけど、光を当てると光合成するのは知らなかった。それなら、既に業務用に同様の技術の実績があるのかと思って探してみたが、収穫した野菜に光合成をさせるという話は見つからなかった。

普通は冷暗所に保存するというのが常識のように思うが、逆転の発想なのかな? 関連情報が見当たらないのでよくわからないけど、ビタミンが増える代わりに味が落ちるというような副作用はないのだろうか? 


「うまさ透明 鉛クリーン光清氷」
自動製氷機に供給する水道水中に微量含まれる鉛イオンを、イオン交換繊維によってカルシウムイオンと交換するらしい。三菱電機の冷蔵庫の他の製品の機能を見ると、光清氷システムというのは、光触媒を使った除菌機能で、カルキカットや除菌までしてくれるらしい。

何とも至れり尽くせりだが、ほとんどの家庭では水道水中の鉛が健康に悪影響を及ぼすレベルとは思えない。これって消費者に間違った知識を普及させることになりはしないのか? しかも下手なフィルターは却って雑菌を増やすだけのような気もするが、これは光触媒で除菌するから大丈夫なのだろうか?


「うまさ新鮮 新・前から冷やそ」
冷気の通り道に、除菌・脱臭・抗酸化処理をするフィルターを設置したもの。このフィルターはビタミンCを配合したもので、冷気がこのフィルターを通過すると、抗酸化処理されて、食品の鮮度を保持するとあるが、本当か?? 実験データとして、保存期間9日後の過酸化物価値比較、従来品 1.0meq/kg に対して、0.6meq/kg という結果が載っているが、こんな1点データだけではよくわからない。

そもそも、ビタミンCを通過させた空気で食品の酸化が抑えられるってのはどういう理屈なんだか? もしも庫内の空気中に酸化を加速する成分が含まれるのが問題で、ビタミンCがその成分をつぶしてくれるのだとすると、当然ビタミンCはどんどん酸化されるから、交換が必要そうだし。

しかし、食品が酸化するのは、ほとんどが空気中の酸素によるのではないかと思うのだが? (これに関する分析結果等は見当たらない)というより、冷蔵庫内での食品の劣化って酸化劣化なのだろうか?(参考

そういえば、ビタミンCを放出する空気清浄機なんてのもあった。ここでも空気中の活性酸素の正体が何者なのかが不明なのだが。


家電製品の高機能化(グリコのおまけ現象?)は、エアコンがマイナスイオンや除菌だので先行していたかと思うと、冷蔵庫も中々あなどれない。エアコンに比べると冷蔵庫は、庫内の食品の鮮度を保つという究極の目的(?)があるので、冷却以外の様々な機能が入り込みやすいわけだ。しかし、現時点ではどれも微妙にポイントをはずしているというか、いらんおせっかい機能に見えるのだが。

やっぱり、「冷やし系」恐るべしだな。。

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2004/08/24

PPARデルタとマラソンマウス

YOMIURI ON-LINE(8/24)の記事。疲れない、太らない…遺伝子操作で「マラソンマウス」

遺伝子操作によって、長時間走り続けることができ、食べても太らないという究極の「マラソンマウス」を作ることに、米ソーク研究所や韓国のソウル国立大などのチームが成功した。

 この遺伝子の仕組みを応用すれば、スポーツ訓練やダイエット用の効果的な薬が期待できる一方、将来は遺伝子工学で強力なスポーツ選手を作り出す「遺伝子ドーピング」に悪用される恐れもあるという。米科学公共図書館のオンライン専門誌に発表された。

 研究チームは、マウスの実験で「遅筋」という筋肉を増やし、新陳代謝を大幅に高めるPPARデルタ遺伝子を操作。通常よりこの遺伝子の働きが強いマウスを作り出した。遅筋は持久力にかかわる筋肉で、トレーニングを積んだマラソン選手の筋肉の9割は遅筋。

 このマウスを電気で刺激しながら走行器具上を走らせ、疲れ果てて走るのをやめるまでの時間を測定したところ、マラソンマウスの走行時間は、通常マウスの約1・7倍の約2時間半に伸びた。走行距離もほぼ2倍の約1・8キロに達した。しかも脂肪燃焼に効果的な遅筋が発達したおかげで、どんなに食べても太らない体になったという。

 ソーク研究所のロナルド・エバンズ博士は「糖尿病や肥満などの治療にも役立つ」としている。

これはなかなか画期的な研究成果のような気がするのだが。あちらのニュースを探してみると、オリンピックやドーピングとの関連でタイミングが良いのか、随分沢山の関連ニュースが見つかった。代表して、Reuters を読んでみた。読売の記事よりも詳細な内容が書かれているようだ。面白かった点としては、遺伝子操作したマウスの話とは別に、同じPPARデルタ遺伝子に働きかける人間用の薬を開発中ということ。
While Evans and colleagues used genetic manipulation, they said using a pill to create a similar effect is already possible.

They gave normal mice an experimental drug called GW501516 that also activates PPAR-delta. The drug is being developed by GlaxoSmithKline to treat people with fat metabolism disorders.

Normal mice given the drug could eat a high-fat diet without gaining weight, Evans said.

Evans said he is a consultant to Ligand Pharmaceuticals, which developed the drug and licensed it to Glaxo.

ということで、マウスに薬を与えると、脂肪の多い食事を与えても太らなかったとのこと。この薬は相当に需要がありそうだし、この研究も、しっかりと大手製薬会社と組んで行われたものらしい。

大元の論文を探したら、PLos(Public Library of Science) のサイトで Synopsis と、このページのリンクからフルペーパーも読める。このSynopsisは特に前半は素人向けで比較的わかりやすい感じだ(英語だけど)。遺伝子操作したマラソンマウスの成績については、読売新聞の記事にも書かれているが、

But what about performance? Remarkably, the marathon mice ran about an hour longer than controls, showing dramatic improvement in both running time and distance increases of 67% and 92%, respectively.
とあり、走る時間が67%、距離が92%増加したということは、速度も15%増加したということか? これは確かにすごい成果だ。これが遺伝子操作ではなく、薬で可能となるのであれば、試してみたくなる人が出てくるだろうなあ。

しかし、この効果って筋肉細胞の代謝を直接操作しているわけで、沢山食べても太らないのかもしれないけど、基礎代謝が増えるということだろうから、何にもしてなくても沢山食べないとどんどん痩せてしまうんじゃなかろうか??

調べてみると、この PPARデルタの効果については、類似の実験が東大でも行われているようで、昨年末のニュースになっている。(やくねっと) ということで、今後ともこの周辺の研究には要注目だろう。

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2004/08/23

DNAエクスプローラー・キット

FujiSankei Business i(8/23)の記事。ディスカバリー・チャンネル、サイエンス玩具発売で注目

自然科学系のテレビ番組を放映する米ケーブルテレビネットワークで、日本でも人気の「ディスカバリー・チャンネル」が、ユニークなサイエンス玩具を発売して話題を集めている。人間や野菜のDNA(デオキシリボ核酸)を取り出し、DNAマップが作れるキットや指紋採取キット、3D(立体画像)の映写装置といったプロの研究者も驚くような商品で、子供より夢中になる大人たちも少なくないという。

 最も注目を集めているのが、DNAエクスプローラー・キット(79ドル95セント=約8700円)と、フィンガープリント(指紋)ラボ(29ドル95セント=約3300円)。

ということで、どんなものか様子を見てみた。ディスカバリー・チャンネルは日本にもサイトがあるが、ここではこれらの商品は扱っていないようだ。

さて、本家 Discovery Channel に行ってみると、Discovery Channle Store があり、この中で Discovery Exclusives のページにこの記事で紹介されている商品が並んでいる。

  DNA Explorer Kit
    $79.95のキットで、遠心分離機やマグネティックスターラー、電気泳動装置までついている?!
  Fingerprint Lab

などなど。他にも、

  Whodunit? Forensics Lab $79.95
    * Whodunit? は Who done it? の略で、こいつは犯罪捜査キットらしい。
  Night Spy Binocular $19.95
  Real Metal Detector $79.95

なんてのもあって、面白そうではある。

でも残念ながら、このショップは、日本からのオーダーは基本的には受け付けていないみたいだ。新聞記事にもアメリカ旅行のおみやげで人気が出そう、とあった。日本で似たようなものを探すとなると、王様のアイデアとか、学研 大人の科学シリーズあたりか。

それでも、DNA分析キットみたいな物は他では見当たらないようだし、この DNA Explorer Kit は値段を考えても面白そうだ。

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2004/08/20

多重即発ガンマ線分析

化学工業日報(8/20)の記事。原研、コメのカドミウム濃度の迅速な分析法開発

 日本原子力研究所は、米に含まれるカドミウム濃度を多重即発ガンマ線により分析する手法を開発した。即発ガンマ線分析法は高感度で迅速な非破壊分析法として期待されているが、米に含まれるカドミウムを測定する際には、共存する水素が妨害元素となる。ただ、水素が即発ガンマ線を1本しか放出しないのに対し、カドミウムは2本以上を同時放出することから、即発ガンマ線分析に多重ガンマ線検出法を適用することで水素の影響を抑えた。
「多重即発ガンマ線分析法」と言われても、全然ピンと来ない。原子力の平和利用ということで、調べてみた。原子力百科事典 ATOMICA で調べてみると、即発ガンマ線分析は放射化分析法の一つで、中性子放射化分析による宇宙物質の分析という項目の中に、
 即発ガンマ線とは、原子核が中性子を捕獲したときに極短時間(10-14秒以内)に放出されるガンマ線で、その測定は試料に中性子を照射しながら行う必要がある。日本では日本原子力研究所のJRR-3Mを用いて実施することができる。分析には冷中性子と熱中性子を選ぶことが可能である。即発ガンマ線分析では物理的に完全なる非破壊のままで元素組成を求めることができる。また、試料を照射する位置における中性子束は原子炉内で行う通常の中性子照射の場合に比べて6桁程度低いために中性子照射によって誘起される放射能レベルが低く、適当時間冷却すれば自然放射能のレベルまで下がるので、試料の再利用が可能である。
と説明されている。他にも、犯罪捜査における放射線利用では、例の Spring-8 による蛍光X線分析などと並んで説明されている。

日本原子力研究所のサイトで探すと、微量元素放射化分析というページで詳しく説明されている。即発ガンマ線分析を改良したのが、今回の多重ガンマ線分析法ということで、

多くの放射性核種は同時に複数のガンマ線(多重ガンマ線)を放出することが知られている。これらを多重ガンマ線検出装置の2台以上の検出器で同時に検出し、得られた2個のガンマ線エネルギー値を縦軸と横軸とする2次元マトリクス上に事象毎に加算すると、その上では同時計数するガンマ線のペアに相当するガンマ線ピークが現れる。この2次元ガンマ線ピークを解析することにより、従来の千倍である百万分の1の高分解能が得られ、数千の核種が同時に存在しても全て完全に分離できる。また、1次元スペクトルのバックグラウンドは2次元平面状では線上に局在するために、それを除いた大部分の領域では数カウント以下に押さえられ、微弱なピークの検出が可能になり、 1次元法に比べて1000倍の分解能が達成できる。
と説明されている。うーむ、むずかしいな。このページのリンク先の微量元素の新たな高感度・高精度定量法を開発というニュースリリース(1999/12/16)にも説明がある。こちらの方がわかりやすいかな。

今回の米のカドミウム分析については、分析化学会の分析討論会要旨が読める。なるほど、こういうバックグランドを持ってから読むと、大体内容は理解できるな。

ということで、この分析法は原子炉に直結した装置で行うものなので、気軽に行えるようなものではなさそうだが、最先端分野や犯罪捜査などでは今後ちょくちょく耳にする方法となるかもしれない。

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2004/08/19

土壌からテトラクロロエチレン

YOMIURI ON-LINE(8/18)の記事。HOYA跡地、発がん性指摘物質が環境基準の7千倍

 東京都羽村市神明台のHOYA羽村工場跡地で、発がん性が指摘されているテトラクロロエチレンが最大で環境基準の7700倍の値で検出されたことが18日、分かった。

 同社によると、土壌を1月から8月にかけて検査したところ、最大で水1リットル当たり77ミリ・グラムのテトラクロロエチレンを検出した。また、発がん性が指摘されるトリクロロエチレンも基準値の40倍だった。同工場では1965年から眼鏡レンズなどを製造し、昨年、操業を中止した。これらの物質は製造過程で使われた。同社は「地下水汚染の心配はない」としている。

ということで、テトラクロロエチレンは過去に多量に使われており、各種工場関係の土壌から検出されることも多い。この記事で注目するのは、「発がん性が指摘されている」という控えめな表現と、「水1リットル当たり77ミリ・グラム」と土壌汚染なのか地下水汚染なのかが不明な点。(地下水汚染の心配がないということは、どこの水から検出したんだ?)

他の新聞を探してみたら、Sankei Webで基準7700倍の有害物質 HOYA工場の敷地土壌という記事をみつけた。

 光学ガラス専門メーカーHOYAの羽村工場(東京都羽村市神明台4丁目)敷地内の土壌から、環境基準の7700倍に当たる1リットル当たり77ミリグラムの化学物質テトラクロロエチレンが検出されたことが18日、分かった。

 テトラクロロエチレンは機械の油汚れを落とす洗浄液などとして使われ、肝障害を起こす恐れがあるとされている。

 都有害化学物質対策課によると、羽村工場の閉鎖に伴う土壌検査で判明した。ほかにも環境基準の47倍の鉛など6物質が基準よりも高い数値を示したという。

となっており、この記事からは土壌から検出されたと読めるし、こちらは発がん性うんぬんには触れずに、肝障害の恐れがあるとだけ書かれている。

さて、このニュース、東京都環境局には掲載されていないし、HOYA株式会社にも何も情報がない。これから掲載されるのかもしれないが、日本ガイシのように、きちんと公開してくれると印象が良いと思うのだが。。
 
さて、テトラクロロエチレンの性質や環境基準は、化学物質ファクトシートに詳しいが、発がん性については「人に対して恐らく発がん性がある(2A)」に該当するようだ。また環境基準は、水質:0.01mg/L、地下水:0.01mg/L、土壌:0.01mg/L となっていて、土壌と地下水の基準は同じだ。

ということで、読売新聞の「発がん性が指摘されている」は、必ずしも適切な表現とは思わないが、発がん性物質と断定するよりはましかな?

考えてみると、土壌の環境基準の単位が mg/L と体積当たりの数値になっているのも何だか不思議だ。そこで、環境省の環境基準を見てみると、テトラクロロエチレンの土壌の環境基準は「検液 1Lにつき0.01mg以下であること」とあり、更に、この検液は付表の方法で作成するとある。これを読むと、テトラクロロエチレンの場合には、試料土壌を希塩酸と混合して10wt%の懸濁液として、これを攪拌、ろ過した液を検液とするようだ。ふーん。。

ということは、読売新聞の記事中の「水1リットル当たり」は、この検液のことなのだろうか??

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2004/08/18

世界人口予測再び

NIKKEI NET(8/18)の記事。2050年世界人口93億人に、国別1位はインド・米団体予測

【ワシントン17日共同】人口問題の調査に定評がある米国の団体PRBは17日、世界人口が2050年に93億人に達するとの予測を発表した。

 国別では、現在世界2位のインドが16億2800万人で、中国(14億3700万人)を追い抜き、トップになる。現在、10位の日本は少子高齢化の影響が深刻で、現在よりも2700万人少ない1億人になる見込み。

 先進国の中では、米国だけが人口増加を続け、現在の40%増の4億2000万人となるが、インド、中国に次ぐ3位にとどまると予測される。

このブログでは、3/25に世界人口増加が減速?という記事を書いたが、これはアメリカの the US Census Bureau(米国勢調査局)の資料を元にしたものであるのに対し、今回のデータはPRB(Population Reference Bureau:人口調査局)によるもので、国別の人口動態統計をそろえたものとなっており、少し切り口が異なっている。

USA TODAY等にもう少し詳しいニュースが載っているが、先進国の人口は日本、ロシア、ドイツ、イタリアなどで減少し、中国でも2025年をピークに人口が減少に転じると予想されている。

PRB(The Population Reference Bureau)に、この調査の概要詳細資料(pdf)が掲載されている。このpdf資料には、世界各国の人口を始めとする色々な数値が一覧表となっており役に立ちそうだ。

ちなみに、日本の総務省統計局には、やや古いが同様の資料が載っていて、全体の傾向はほぼ同じだが、2050年の世界人口予測が、総務省資料は89億人なのに対して、今回のPRB資料では93億人となっており、世界人口増加ペースは途上国を中心に、減速どころかむしろ加速しているみたいだ。。

今回のPRB資料でもHIVや乳児死亡率が途上国の発展を阻害する要因としてクローズアップされているが、現状を前提としてなお、2050年までの人口増加率が150%なんて国々が、これらの問題を克服したら一体どんなことになるのやら、という気もする。いわゆる健康で文化的な生活ができるようになれば、徐々に人口増加が収まってくるのは間違いないだろうが、そうなる前に食糧問題や各種資源の奪い合いのような種々の争いが起こる可能性がありそうだ。

それにしても、アメリカだけは依然として人口増加が堅調に続くのだそうで、これは海外からの流入(移民)が毎年130万人のペースで続くのに加え、女性1人が約2.0人の子どもを産むペースが維持されるためとのことで、日本とは対照的だ。アメリカってのは本当に先進国なのかわからなくなることが多い不思議な国だな。。

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2004/08/17

銅メダルはブロンズ?

オリンピックにちなんで、メダルの話。メダルといえば、金・銀・銅は周期表の11族に縦に並んだ元素の組み合わせとなっており、某所では「将来は金メダルより上に Uuu(Rg:レントゲニウム?)メダルができるのでは」と言われているらしい?

金メダルは実は銀メダルに金メッキをしたものだ、ということは比較的知られているが、読売新聞の記事 によると、今回のアテネオリンピックの金メダルは直径 6cm、質量 140gの銀メダルに金をメッキしたもので、重さは 148gらしい。金と銀の密度、それぞれ 19.3g/cm3と 10.5g/cm3から計算すると、銀メダルの厚みは約 4.7mm、金メダルの金メッキの厚みは約 55μmとなる。金の重さ 8gというと結構な量に思えるが、さすがに金は重いので、思った以上に薄い。

ところで、英語では Gold、Silver、Bronze と言うようだが、気になるのは、銅メダルが何故ブロンズメダルになるのかだ。 ちなみに、中国は人民網あたりを見ても、日本と同様に、金・銀・銅という表記になっている。一方、イタリア語(di bronzo)やフランス語(le bronze)では、英語と同様にブロンズに相当する単語を使っているようだ。

さて、Bronzeとは何か? 辞書を見ると、狭義には青銅(銅とスズの合金)のことだが、より広義には、黄銅(銅と亜鉛の合金=真鍮)以外の銅合金を意味する場合もあるし、更に広い意味では銅合金全般を指すこともあるらしい。

ちなみに銅合金というのは古くから身近に色々と使われており、日本のコインもアルミの1円玉以外は全て銅合金だ。

さて「銅メダルは青銅メダルなのか」問題?は気になる人が結構いるようで、fiptips.comの2003/5/31の日記帳でも参考になる考察がなされている。

実は、オリンピック憲章を見ると、金メダルと銀メダルについては、大きさや純度の規定が書かれているが、銅メダルについては特に何も触れられていない。

色々探してみると、シドニーオリンピック(2000)の銅メダルは、シドニー2000によると、銅に少量の銀が混ぜられた合金が使われたとある。

また、ソルトレークシティの冬季オリンピック(2002)の銅メダルはThe New York Timesによると "bronze is an alloy of 90 percent copper and 10 percent zinc over a silver base"と書かれており、これは銀メダルに真鍮メッキなのかな?

ということで、銅メダルは銅合金製のメダルであって、その組成は様々のようだ。従って、銅メダルは確かに bronze medal だが、青銅メダルとは限らない、といったところだろうか? 肝心のアテネオリンピックの銅メダルの組成は残念ながら不明。。

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2004/08/16

「化学兵器犯罪」

別に8/15にちなんで、過去の戦争について考えてみようというわけではないが、今でも中国や日本のあちこちで旧日本軍が廃棄した化学兵器による被害が起こっているように、戦後処理は完全には終わっていないと言えるわけで、化学兵器とは具体的にどんなものだったのかを知っておくのも悪くない、ということで読んでみた。

講談社新書 1698
 化学兵器犯罪
 常石 敬一 著 bk1amazon

本書は、もちろん化学兵器の作り方や使い方を説明したものではなく、過去にどんなものがどのように使われたのか、そしてその後処理をどう進めようとしているのか、ということについて、歴史的な流れをたどりながら説明したものである。

著者は、サリン事件やイラク戦争などで時々TV番組に出てくる、あの人だ。何となく「化学者」という雰囲気の人だけど、専門は科学史らしい。ということで、本書も化学兵器の歴史をひもとくことによって、当時の状況を理解するところから考えてみようという趣旨であり、なかなか勉強になる。

そもそもの化学兵器は、第1次世界大戦時にドイツが積極的に開発を進めたということで、その中心にいたのが、あのハーバー(アンモニア合成で有名な)を始め、後にノーベル化学賞を受賞した、そうそうたるメンバー達や著名な化学企業だったことに驚かされる。核兵器の開発に貢献した科学者もすごいメンバーだったが、この時代の科学が戦争と密接に結びついていたことを改めて考えさせられる。

本書を読み進めてみると、日本軍の化学兵器の実力は、実戦の場で決定的な威力を持つようなものではなかったようで、その兵器としての威力に対し、極めて使いにくかったり、廃棄後に後々まで被害や汚染を与え続けてしまうという点で、ジュネーブ協定違反の兵器であることをはずして考えても、所詮割に合わない物という評価ができそうに思う。

化学に関連する仕事をしてきた身としては、読んでいて何とも言えない重苦しい気分にさせられる話が続く。それは、化学の進歩がネガティブなものに使われた、ということと同時に、科学者がその開発を、必ずしも上から強制されて嫌々進めたのではなく、強力な化学兵器を作ることに特に疑問を持っていなかったらしい点にある。

化学兵器というのは、開発側の論理からすると、超強力な殺虫剤みたいなものだと言えなくも無いし、随分やっかいな兵器だと思っていたのだけど、実際の戦場で使おうとすると、もっと色々と考えるべきファクターが多くて、とても使えるものではない、というのが実情だったようだ。

それじゃあ、理想的な兵器というのはどんな条件を満たすものかを考えてみると、そもそも人道的な兵器なんかあるのか? という点で良くわからなくなるけれど。。

それはともかく、本書のもう一つの重要なポイントは、日本が製造した化学兵器の多くの行方が不明となっていることだ。終戦時に中国や日本で中途半端に埋設や遺棄したようだが、相当数がその場所も量も不明となっているようで、人知れずどこかに眠っている可能性が高い。当然、記録にも残っていないし、知っている人も徐々に少なくなっていく。化学物質が時と共に自然に無害化してしまうものであれば良いのだが、どうやらそうでもないようだし。。

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2004/08/12

「社説の大研究」

今日からしばらく夏休みモード、更新も滞る予定。。

昨日も各新聞社の社説の比較について書いたし、5/5のブログでは、産経新聞の「社説の研究」という企画を紹介したが、それを本にしたものが文庫化されて出版された。

扶桑社文庫
 社説の大研究 新聞はこんなに違う!
 産経新聞論説委員室 編・著 bk1amazon

取り扱っている社説は1991年の湾岸戦争から2001年の米同時テロまで。今となっては、やや冷静に見られる事件を題材としているだけに、直近の歴史を振り返る意味でも、非常に面白く読めた。

本書は、日本の政治を巡る種々の話題に関して、主として「朝日」「毎日」「読売」「産経」の4紙の社説を並べて比較することで、それぞれの新聞の立場を明らかとし、その主張が如何に異なっているのかを、明快に示したものである。それぞれの社説から一部を抜粋しているので、その抜粋の際に著者(産経新聞論説委員室)の意図が入り込んでいる可能性もあるのだが、それにしても、これだけ多数のテーマを並べると、さすがに各新聞社の立場があまりにも違っていて、それがまた各紙できちんと統一された確固たるものがあって、十分知っていたつもりだったのに、それでも唖然とさせられるものがある。

各紙があまりにも自分たちの「らしい」主張を守り続けていることに、ほほえましいというか、何かお約束のようなものを感じてしまう部分もある。いわゆる右と左だとか、保守と革新だとか言うけど、実際の政治の場(例えば国会)では、その勢力分布や各党の主張は時代と共に大きく変わってきているのに、新聞社の主張することの変わらなさに違和感を覚えるし、日本の全国紙はどうしてこうも両極端な意見を主張するのだろうかと思うけどねぇ??

また、これだけ多数のテーマについての各紙の主張を見比べると、大体各紙の論法が見えてくるのも面白い。法案の問題点を指摘する手法、それに対抗する手法、それぞれ特徴的な方法を使っていることがわかる。まあ、だからこそ、熱いディベートというよりは、お約束の論争、のような印象を抱くんだろうけど。これはこれでいろんな意味で勉強になる。

もちろん、社説というのは、個人の意見ではなくて新聞社の意見だし、各紙それぞれ議論をして内容を決めているようだ。そういえば少し前に、朝日新聞のサイトに社説の裏側を垣間見せるコラムが載っていて、興味深かった。

もっとも、新聞を取っている人のうち、社説をいつも読んでいる人がどれだけいるんだろうか? という疑問もある。各紙の社説がこれだけ異なっているからといって、読者は必ずしもその新聞の主張に同意して購入しているわけでもないだろうし。

それにしても、これだけ主張が異なることは、常識として知っておくべきだと思うし、学校でも教えておいた方が良いと思うけど、どうだろう? おまけに、とても便利なことに、今や各紙の社説は別に購入しなくたってネットで簡単に読めるわけで、まあ、両極端の朝日と産経の二つを見比べておけば、自分の位置付けを確かめる役に立ちそうだ。(Sankei Webの主張(社説)のページには他紙の社説へのリンクがある。)

欲を言えば、それぞれのトピックは既に時間が経過し、今となれば、ある程度客観的に評価することができるわけで、その視点からの「解説」が欲しかったと思う。もっとも、冷静に評価してしまうと、さんざん大騒ぎした論争だったけど、歴史的には大した意味のない話でした、ってなことになってしまう恐れもあるけど。。

読んでいないけど、似たような本として、読売新聞論説委員会が編集した、「読売vs朝日 社説対決 50年」(bk1amazon)と「読売vs朝日 社説対決 北朝鮮問題」(bk1amazon)が出ている。朝日新聞は何故か自らは書いていないようだ。

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2004/08/11

美浜原発事故の社説比較

8/9 の美浜原発事故については、関西電力の発表は現時点では8/10 8:00現在が最も詳しいようだが、それにしても、もう少し一般向けのわかりやすい発表はできないものかな? 

当事者がきちんとした情報発信をしない限りは、我々はマスコミを始めとする各種メディアが流し続ける、推測も含めた様々な情報から真実を読み取るしかない。今までの原子力を巡る各種の不祥事や、三菱自動車を始めとする企業不祥事の顛末を見れば、積極的な情報公開が如何に重要となっているかわかりそうなものだが。

まあ、それはともかくとして、この事故についての全国紙の社説を読み比べてみて、各紙の科学技術や原子力についてのスタンスを知る機会としてみたいと思う。

朝日新聞(8/10)。 つまみ食い的になるけど、特徴的な記述を列挙すると

 日本の原発では、史上最悪の事故となった。
 日本の原子力関係者は「原発そのものでは大事故は起きない」といっていたが、その信頼も崩れた。これからの原子力の開発にも大きな影響を与えるだろう。
 関電によれば、直径56センチの配管に穴があいているのが発見されたが、その原因は分かっていない。関電や原子力安全・保安院は原因究明を徹底して、再発防止に全力をあげなければならない。
 高温高圧の蒸気がタービンを回して発電するタービン建屋の構造は、一般の火力発電所と同じである。原発事故といえば放射能に注目しがちだが、他の炉型や火力発電所にも共通する技術的な弱点があるとすれば、根は深い。
 日本では、原発の新設はほとんどできない時代になっている。原発の老朽化はますます進み、配管の腐食や弁の不調、炉心内の機器のトラブルなどがいっそう増えることが心配だ。
 死者を出した事故はきわめて重い。日本はエネルギー政策の中心に原子力を据えているが、すべては安全な運転があってのことである。
ということで、原発のみならず火力発電所にも共通する弱点かと捉えており、更に今後の原因究明が重要と言いながら、一方では老朽化によるトラブルが「いっそう」増えるのが心配というロジック。今回の事故の位置付けだが、確かに死者数は最悪だが、原発事故の重大性という視点で見たら、(朝日得意の)放射能漏れ事故の方が重大ではないのか?

毎日新聞(8/10)

 原発が稼働中である以上、高温蒸気の配管があるタービン建屋に危険があることは十分、認識されていたはずだ。作業員が入る際の安全対策は万全だったのか。
 美浜原発2号機では91年に蒸気発生器の細管が破断し、放射能に汚染された1次冷却水が漏れる事故が起きている。01年には中部電力浜岡原発1号機で水素爆発による配管破断事故が起きている。
 系統は異なるが、配管は原発施設の弱点のひとつであるとの認識は、関係者の間で共有されていたのではないのか。
 2次系配管の損傷による水や蒸気の漏れが、1次系に影響を与える場合があることも否定できない。最悪の場合は炉心溶融につながりうる事故として、甘くみてはならない。
 発電用のタービンは原発だけでなく火力などにも共通の施設だ。今回の事故が原発施設に特有のものかどうかの調査も、原因究明に欠かせない。原因次第では、他のすべての原発施設の点検が必要になってくる。
 この事故は原因によっては、今後の日本の原子力政策の行方を左右しかねない。それを十分に認識し、関電はもちろん、国も一体となって徹底した検証で再発防止策を立てなくてはならない。
と、二次系配管の事故でも炉心溶融につながる事故だ、と大きく捉え、原子力政策全体への影響まで言及。各紙の中で最も重大視しているようだ。火力発電にも共通の施設だ、という話と他のすべての原発施設の点検が必要という話のつながりはよくわからないが。それにしても、高圧配管のある建屋に作業員が入る際の安全対策が万全かという認識には、唖然としてしまう。 (この建屋は一般見学コースになっているらしいので、せいぜい軍手とヘルメット着用程度で誰もが入室してたんだろうし、どこの工場でもそうだろうに。。)

読売新聞(8/10)

 運転中の原発で複数の死者が出た事故は、わが国で初めてだ。
 しかし、美浜原発では一九九一年に、2号機の一次系で伝熱細管の破断事故を起こしている。冷却系の保守管理が一次系、二次系ともに極めて重要、という教訓は生かされていたのか。
 ただ、事故が起きた二次系の復水配管は火力発電所にも類似の装置があり、原発特有のものではない。加圧水型は関電のほか北海道、四国、九州の各電力と日本原電で稼働している。
 今回の事故をもって、原発の危険性をあおり立てたり、過剰反応して他の原発の操業に支障が出るようなことがあってはならない。
と、老朽化には触れず、危険性をあおり立てたり、過剰反応してはいけない、と毎日とは逆に自制を求めているのが特徴か。

産経新聞(8/10)

 熱源が違うということで今回の美浜原発の事故も、結果は最悪だが原発事故というよりも一般の労災事故と同じといえる。
  しかし、使用済み核燃料を再処理して使う核燃料サイクルの論議が盛んな微妙な時期の事故だけに、この事故を利用して世論をサイクル反対に導こうとする学者がいないとも限らない。関電は二次系とはいえ配管から蒸気が漏れた原因を徹底究明しなくてはならないのはいうまでもない。
と、こちらも相当に抑制的で、原発事故というよりも普通の労災事故だとまで書いているのは、相当に勇気がある記載だ。「世論をサイクル反対に導こうとする学者」というのには笑ってしまったが誰のこと? 

これらはいずれも事故翌日の朝刊に載ったもので、情報も必ずしも十分でない状況で書かれたものだが、逆にそのために各社の視点が大きく異なっており面白い。(今なら各紙共に、安全管理体制の不備を指摘せざるを得ない点で似た論調になりかねない。)

ところで、4人もの方が亡くなったこの事故が非常に不幸な事故で二度とあってはならないのはもちろんだが、それでも、この事故を放射能漏れがなかった点である意味で幸運だったと考えるのか、それとも単なる蒸気漏れがたまたま多くの人を直撃した点で非常に不運だったと考えるのかで、捉え方が大きく異なってくると思う。

個人的には、完璧を求めても無理だ(リスクはゼロにならない)と考えているので、起こった時に大きな被害(ハザード)が予想されるイベントに対する対策を優先すべきであり、今回の二次冷却水配管に対する優先度が低かったとしても、ある意味で理解できる点もあると思っている。(では重要な部分には十分な配慮がなされているのか? というと必ずしもそうは信じられないのが大問題なのだが。。)

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2004/08/10

世界最小のタンパク質

Yahoo!ニュース(8/10)の記事。世界最小のたんぱく質合成=生命起源解明や薬品開発に期待-産総研

 アミノ酸10個で構成される世界最小のたんぱく質の合成に成功したと、産業技術総合研究所の本田真也主任研究員らが10日付の米科学誌ストラクチャーに発表した。自然に存在するたんぱく質はアミノ酸50個以上で構成されており、たんぱく質の概念を変える成果。
 地球に生命が誕生し、さまざまなたんぱく質ができた際に、基礎となったたんぱく質に近いと考えられ、生命の起源の解明のほか、医薬品開発に役立つと期待される。
さて、世界最小のタンパク質とはどういうことだろう? アミノ酸が2分子縮合したジペプチドはタンパク質とは呼ばないみたいだし、タンパク質と呼ばれるためには、単にアミノ酸が多数縮合している以外に何か条件があるのかな? 

産総研のリリースを読むと、

タンパク質とペプチドは化学的には同種の物質で、その鎖長(分子量)の長短のみで区別される。両者を区別する厳密な定義は存在しないが、自然界のタンパク質のアミノ酸数は概ね50~1500の範囲であることから、一般的にはアミノ酸数50以上のものをタンパク質と呼ぶことが多い。以下に説明する立体構造と協同性は、タンパク質の機能に欠くことのできない属性であることから、これらの性質の有無をペプチドとの区別に用いる場合もある。
とあり、立体構造と協同性がポイントと説明されている。タンパク質全体の基礎知識については Wikipedia を参照。タンパク質の立体構造については、生物学のお部屋の絵がわかりやすい。一方、協同性については産総研のページにある以下の説明がわかりやすそうだ。
タンパク質が機能するには固有の立体構造が不可欠であるが、立体構造が可逆的に変性/再生する能力を持っていることもきわめて重要である。例えば、分泌タンパク質の膜透過や輸送、過剰発現タンパク質や中古タンパク質の分解管理は、タンパク質が変性/再生能力を有するからこそ効果的に進めることができている。大部分のタンパク質の変性/再生は、分子全体が同期して構造が変化する。この変化を協同的な構造転移と呼び、この性質を協同性という。その結果、1つのタンパク質分子は完全に変性した状態と完全に再生した状態のどちらか一方になる。このことから二状態性とも呼ばれる。
結局、今回の研究では予めコンピュータシミュレーションで予想したアミノ酸配列を実際に合成することに成功し、これが立体構造と協同性を持つことが確かめられたということらしい。この「シニョリン(chignolin)」と命名されたタンパク質?は、アミノ酸の数が 10個、分子量は約 1000ということで、自然界のタンパク質がアミノ酸 50~1500個、分子量 5000~150000であるのと比べると圧倒的に小さいということになるようだ。

この研究が何の役に立つのか? というと、現在の種々のタンパク質がどのように自然界で生成してきたのか?という化学進化の問題と共に、狙ったタンパク質を人工合成する技術の医療等への応用が期待されるようだ。今回のニュースはあまり大きく扱われていないけど、思惑通りにタンパク質を合成できたという点で、もしかしたら結構すごい技術かもしれない。

なお、シニョリン(chignolin)という名前の由来だが、シニョン(chignon)から来ているのだろうか?(髪型用語集

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2004/08/09

血液事業白書を見てみた

最近も色々と献血や輸血を巡るトラブルが報道されているが、献血に興味ある者として関連情報を見てきた者としては、献血を含めた血液事業に関しての情報公開が相当に遅れているように思える。

今回、初めて「血液白書」とも呼べる 平成16年版血液事業報告献血事業の情報ページ に公表された。

実は7/14のYahoo!ニュース

検査すり抜け、図解で説明 厚労省が初の「血液白書」

 厚生労働省は14日、献血血液の安全対策や輸血による副作用・感染症報告数など、血液にまつわる情報を初めて1冊にまとめた「2004年版血液事業報告」を公表した。
 昨年問題化した、エイズウイルス(HIV)などが日赤の高感度検査をすり抜けてしまう現状も図解入りで説明し「感染症検査のために献血をするのはやめましょう」と呼び掛けている。
 A4判で55ページ。今後、5000部を都道府県などに配布するほか、厚労省ホームページでも公表する。「血液の白書」として年1回、内容を更新するという。
 事業報告は、献血された血液が製剤に加工される流れなどを解説。HIVや肝炎ウイルスに感染した直後に献血すると、高感度検査でも検出できない「空白期間」があることをグラフ付きで説明している。
 献血時のHIV検査で陽性だった人数は02年が82人と5年前の1・5倍に増えており、検査目的の献血が「血液製剤の安全性に支障を来しかねない」と警告した。(共同通信)

と報道されていたのだが、ホームページに載ったのが8/4だったようだ。従来、あまりまとまった資料はなかっただけに、今回の白書はそれなりに頑張ったな、という印象。

日本全体の血液フローシートを改めてみてみると、献血申込者延べ 695万人に対して、106万人が採血基準不適や問診等で門前払いされている。何と15%強にもなる。更に血液検査でウィルス等を検知して不適とされたのは 37万人で、こちらは全体の5%強。献血ルームで見てるとリピーターは結構多いのに、結局献血希望者全体の20%以上が採血できない、もしくは採血しても使えないという状況になっているのは驚きだ。

特に採血基準不適等で門前払いされた人についてはに男女別の最近の推移がグラフになっているが、女性の血液比重・血色素量不足というのが非常に多く、しかも最近ずーっと増加傾向であることがわかる。過剰ダイエットが原因と推定されているようだが、本人は献血しようという意思があるのだから、自分は健康という意識があるのだろうに。基準が厳しすぎるのか、それとも本当に不健康な身体となっているのだろうか? 

今問題となっている、感染症が検査をすり抜ける問題については、各種ウィルス毎に検査の感度と感染後のウィルスの増大の関係など、感染症報告とウインドウ期 にかなり専門的な説明もされている。

この問題については、報道の印象からして最近増えていると思っていたが、この資料を見るとそれほど単純ではなく、血液検査で陽性となって不適とされる本数はむしろ継続的に減少しており、より高感度のNAT(核酸増幅検査)で不適となる本数が増加傾向にあるようだ。その意味では検査技術の向上(感度アップ)の影響もありそうだ。

ただし HIV については、献血者当たりの陽性件数が明らかに増加(1997年の0.9から2002年の1.4件/10万人)しており、検査の感度アップだけでは所詮焼け石に水となりかねず、ソフト・ハード両面での別の対策が急がれる所以。

まあ、とかく印象の悪い血液がらみの事業だが、この厚生労働省の情報公開に負けず、日本赤十字にも積極的に情報発信をしてもらい、安全であると同時にまずは健全な事業を進めていって欲しいものだ。

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2004/08/06

ココログ7か月

ココログを始めて7か月が経過です。(本当は明日だけど都合により1日前倒しです。)

カウンターの伸びは、この1か月も11000程度となり、ほぼ安定したアクセス数に落ち着いたみたいですね。

 1か月目:900
 2か月目:4500
 3か月目:11700
 4か月目:19000
 5か月目:32300
 6か月目:43500
 7か月目:54500

さて、この1ヶ月のアクセス解析結果の一部ですが、Ninjaツールの集計によると

(1)リンク元
 1位 bookmark (お気に入りに入れてくれた方) 全体の17%(前回1位)
 2位 http://search.yahoo.co.jp (ご存知ヤフーサーチ) 全体の8%(前回2位)
 3位 http://www.google.co.jp(ご存知グーグル日本版) 全体の5%(前回3位)
 4位 http://a.hatena.ne.jp 全体の2%(前回5位)
 5位 http://newsch.net(ニュースチャンネル) 全体の1%(前回4位)
 6位 http://www.google.com(グーグルのアメリカ版) 全体の1%(前回6位)

この順位も変動が小さくなってきており、Yahoo! と Google の割合も一定しています。6月からYahoo!は独自エンジンでの検索に変わりましたが、Googleとは微妙に異なる検索のクセがあるみたいです。どちらの検索でこのブログが上位にランキングされるかは、キーワードによって変わるようです。個人的には今まで Googleをメインに使ってきたけど、そろそろ Yahoo!との併用も検討する必要を感じます。

(2)検索キーワード
 1位 大豆ペプチド(初登場)
 2位 空調服(前回1位)
 3位 サントリー(前回20位)
 4位 青いバラ(前回35位)
 5位 岩盤浴(前回2位)
 6位 にんにく注射(初登場)
 7位 青色発光ダイオード(前回17位)
 8位 グラフ(前回7位)
 9位 パワーエイド(前回31位)
10位 コカコーラ(初登場)

ベスト10を見る限り、環境だとか化学といった専門分野の検索で来られる方よりも、サントリーの青いバラだとかコカコーラのパワーエイドといった、メジャーなキーワードで来られる方が多いみたいです。

ちなみに、この1か月の訪問者のうち、初めて訪れた方の割合が約80%です。逆に考えると、この1か月の11000カウントのうちの2割、2200カウントはリピーターということになりますか。(1日平均で70人程度?) 訪れていただいた方には、改めましてお礼申し上げます。

記事の数も220を越え、自分でも訳がわからなくなってきました。ココログだけではバックナンバー全体を見渡すことができないので、仕方なくインデックスを作りました。手書きのみっともないページですが、過去記事を見たい時があったら使ってみてください → バックナンバー

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水で消せるニャンペン

NIKKEI NET(8/5)の記事。プリモテック、文字を水で消せる「猫ペン」を商品化

 沖電気工業の事業再編を機に独立した開発型ベンチャーのプリモテック(群馬県高崎市、沢田稔社長)は、猫の脚の肉球や顔をイメージしたキャップが特徴の「ニャンペン」を商品化する。書いた文字を水や湿った布で消せる。実用的な癒やし系グッズとして販売する。

 プリモテックは用紙を数百回にわたり再生利用できるプリンターの機能向上を手がけている。ニャンペンの開発にもその技術を活用した。冷蔵庫に書きつける食品賞味期限、伝言などのメモや、子供の落書き用など幅広い使い方を想定する。

 肉球部分はほどよい弾力感を出すため、シリコン素材を採用。携帯電話のストラップやキーホルダーとして利用できるように金具も取り付けた。インターネットとOEM(相手先ブランドによる生産)で販売する考え。価格は未定。

プリモテックのホームページを見てみると、ニャンペンの説明が載っている。
書いた文字は水分に触れないと消えません。(手や服が触れても消えません)
水や湿った布、スポンジなどで拭くとサーッ!と消えます。
水洗いなどによっても消色します。手についても水で消えます。
※インクの染み込むものには書かないでください。

消しカス(ダスト)が出ないので、周囲を汚しません。
空気を汚すミクロの単位のホコリ、すなわち肺に有害な浮遊ダストを出しません。
安全無害です。また、フィルム・ガラスなども傷めることもありません。

肉球を模したプニュプニュ感が売りの商品みたいだけど、僕としては、水で完全に消えてしまうメカニズムが気になる。幸い、このホームページでは特許番号が記載されているので、特許 3329505 「白板用筆記具」を特許庁の電子図書館で調べてみた。
グループAから選択される1種以上の電子供与性呈色化合物と、サリチル酸亜鉛である電子受容性顕色化合物とを、エタノールを含む無水の溶剤内で混合した液状の有色インク剤を、容器体に収容してなり、かつ前記有色インク剤は前記電子供与性呈色化合物と電子受容性顕色化合物との呈色反応を減感する不揮発性の減感剤を含有しないとともに、白板への筆記を可能とし、しかも含水した白板消し具による拭き取り操作によって、水の塗布に伴い前記有色インク剤が消色されることにより、前記白板に再度筆記可能としたことを特徴としている。

【作用】前記グループAから選択される電子供与性呈色化合物は、サリチル酸亜鉛である電子受容性顕色化合物と分子接触することによって、無色から各呈色化合物固有の色に発色する。従って、これらの混合によって有色のインク剤を形成できる。このインク剤は、水の付着によって前記顕色化合物の効果を喪失せしめ、有色状態から無色状態に変化しうる。すなわちインク剤は水の付着のみによって消色し、筆記跡を消去できる。又水により顕色化合物の効果を喪失せしめるものであるため、乾燥後も消色状態が維持され、従って消色部分上に、該筆記具による新たな筆記が可能となり、文字等の訂正、修正作業を便宜に行いうる。

又衣服、壁、家具等への落書、誤操作による付着、汚れ等も、水の付着で簡易に消色、清浄化しうる。なお消色状態の筆記跡は、例えば前記顕色化合物の塗布によって再発色させることもでき、従ってこの消色を用いて重要機密を無色状に記録保管させることもできるなど新たな使用をも行いうる。

とあり、どうやら、共に無色のA成分とB成分を混合すると反応して有色のC成分となり、これをインクとして使用。このC成分は水と反応して無色の化合物Aに戻る、ということらしい。(なお、Aはクリスタルバイオレットラクトン、マラカイトグリーンラクトン、、、等の化合物、Bはサリチル酸亜鉛)

従って、このペンで書いた後で水で消しても、実は無色のインクが残っているので、また発色させることも可能ということだ。考えてみると、インク成分そのものが、水で濡らすだけでこの世から消え去ってしまう訳も無いのだけど、再発色可能というところが面白いというかミソかもしれない。(発明者も、一旦消してから再発色させる用途を想定して明細書に記載しているし。)

ホワイトボードなんかは、機密事項も書いたりするから、本当に消したい時には注意深く元の化合物Aがなくなるまで完全に拭き取る必要がありそうだ。逆に湿気の多い場所だと、自然に消えたりしないのだろうか? という心配もあるが。。

ちょっと面白そうだから、1本購入してみてもいいかも。

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2004/08/05

ヤマメからニジマスが誕生

ヤマメからニジマスを誕生させたという話が、珍しく新聞各紙に一斉に取り上げられた。最近は様々なバイオテクノロジーが出てくるので、あまり驚かされないが、基本は抑えておかないと。。

各紙少しずつ違う内容が書かれているので、全部目を通すのも悪くない。下のリンク先の記事の中で一番詳しいのは FujiSankei Business i だが、他の新聞記事もそれぞれ特徴がある。

asahi.com ヤマメに精子つくらせニジマス誕生 東京海洋大が成功
YOMIURI ON-LINE ヤマメからニジマス!?“借り腹”に成功…東京海洋大
MSN-Mainichi INTERACTIVE 東京海洋大:ヤマメの体でニジマスの精子 魚養殖に新技術
Sankei Web ヤマメがニジマス産む 東京海洋大成功 5年後、アジからマグロも!?
FujiSankei Business i サバやアジがマグロ産む?借り腹で異種の次世代、東京海洋大が新技術

読売の記事で特徴的なのは、

 細胞を移植されたオスのヤマメが成長すると、自分の精子に混じって、ニジマスの精子も作られた。さらに、このニジマスの精子をニジマスの卵に受精させると、本物のニジマスが誕生した。こうした技術は、マグロなど他の魚だけでなく、原理的にはマウスなどの哺乳(ほにゅう)類にも応用できるという。
という部分。「本物のニジマス」という表現がユニーク。しかし、マウスなどの哺乳類にも応用可能というのは本当か? 読売以外にはこんな記載はないぞ。ちょっと過激な記述に思えるが。。 一方、毎日の記事では、
 研究チームは、ふ化直後のニジマスから始原生殖細胞を10個採取し、同じサケ属であるヤマメの稚魚の腹こう内に移植した。成長したヤマメから精子を取り出し、通常のニジマスの卵子と受精させたところ、全体の卵の0.4%に当たる10匹がニジマスになった。遺伝子を調べたところ、同細胞を取り出したニジマス由来の子どもだった。残りの卵はニジマスとヤマメの雑種で、ふ化しなかった。
とあり、移植した細胞が意外と数が少ないことや、生まれたニジマス10匹が0.4%ということは、全部で卵は2500個ということがわかる。 産経の記事には、
吉崎助教授は「試験的にアジがマグロを産むまで五年、実用化までは十年かかりそう」と話す。また、“幻の魚”といわれるイトウやタイワンマスなど絶滅の恐れがある魚を、別の魚種を借りて繁殖させる研究プロジェクトも、北海道大や台湾海洋大と共同で始動している。
と、今後の計画が書かれている。 朝日の記事では、
 ヤマメとニジマスは同じサケ属の仲間。吉崎さんたちは、ニジマスの稚魚から精子や卵子のもとになる始原生殖細胞を取り出し、ヤマメの稚魚の腹部に10~20粒入れた。始原生殖細胞はヤマメの精巣や卵巣に移動し、増殖分化した。
と、ヤマメとニジマスが同じサケ属であるという、たぶん重要なことが書かれている。また移植した始原生殖細胞の数は、毎日では10個と書かれていたが、こちらでは10~20粒と違いがある。(1粒・2粒という数え方はおかしくないか?)

ということで、新聞それぞれで微妙に違う内容が書かれているので、全部読むと補完される。もう少し詳しい情報を探してみたら、吉崎さん自身が2年前に書かれた資料を日本農学会のサイトで見つけた。この資料によると、ヤマメはニジマスと同属であることがキーで、当然ながら、属や科が異なると難易度がアップしそうだ。

この研究の成功率が随分と低いのは、複数の種の精子が混ざった状態から、片方だけを分離するのが困難なためなのかもしれない。しかし精子はともかく、卵となると魚でも種によって全然大きさも異なってくるので、また違った難しさがあるような気もする。(数の子とイクラみたいに) 将来が期待されているマグロとサバにしても、近縁種ということらしいし。 まあ、読売の記事のように哺乳類となると、これはまた難易度が違いすぎるような気がするけど。。

そういえば、最近似た話があったなと思ったら、ニジマスからウナギ誕生? 北大「借り腹」養殖研究へというニュースで、こちらはニジマスがウナギを生むという研究だが、内容的にはほとんど同じに見える。このテーマは、今年の21世紀COEプログラムに選ばれているが、今回他の研究者によって同等技術が実現してしまったとなると、革新的研究と言えるかどうか?

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2004/08/04

麻薬探知犬が薬物中毒死

CNN.co.jp(8/4)の記事。麻薬探知犬が中毒死 英国

ロンドン──英国中部の都市プレストンで麻薬の捜査をしていた麻薬探知犬トッド(スプリンガー・スパニエルのオス、7歳)が薬物中毒で死亡した。英警察が2日、明らかにした。

警察によると、トッドの飼育担当者(ハンドラー)のムーア巡査が7月24日、トッドと一緒に薬物捜査を終えた後、トッドの様子がおかしいことに気づいた。すぐ獣医に見せたところ、ただちにリバプール大学の動物集中治療室へ運ばれたが、アンフェタミン中毒の症状でまもなく死亡した。アンフェタミンは覚せい剤の成分のひとつ。

ムーア巡査は、妻と子供2人の家族全員でトッドの世話をしていたため、トッドの突然の死に、とても落ち込んでいるという。

プレストンの警察犬部門を担当するクレイン巡査部長は英紙デイリー・ミラーに対し、「トッドに代わる犬を見つけるのは、非常に難しい。警察犬の仕事は危険で、不幸なことに、トッドはその犠牲になってしまった」と語った。

BBC NEWSには写真ものっている。これがスプリンガー・スパニエルか、ごく普通のペットみたいで、捜査に携わっている職業犬には見えないなあ。合掌。。 

それにしても、麻薬探知犬が中毒死というのも不思議な話だ。日本の麻薬探知犬については、東京税関のボク達麻薬探知犬コーナーが詳しいが、Q&Aにも

Q:麻薬中毒にはならないんですか?
A:麻薬の臭いは覚えますが、麻薬中毒になったりはしません。
と書かれており、当然だけど、普通は中毒にはならないように訓練されていると思われる。

覚せい剤を含めて、ドラッグ一般については、薬物乱用防止「ダメ。ゼッタイ。」ホームページの薬物データベースが詳しい。なるほど、覚せい剤には、その主成分がアンフェタミン、デキストロアンフェタミン、メタンフェタミンの3種類があるようだ。kis-netで検索すると、アンフェタミン (C6H5)CH2CH(NH2)CH3 (CAS No. 300-62-9)は沸点が 200℃の液体だ。てっきり白色結晶という先入観があったけど、液体だったのね。。(メタンフェタミン (C6H5)CH2CH(NHCH3)CH3 (CAS No. 7632-10-2)は詳しいデータ見つからず。)

アンフェタミンは、人の経口半数致死量 LD50が 135mg/kgで、純品はかなり強い毒性だ。実際にはどの程度希釈されているのか不明だが、犬にとっては、間違って飲み込んだら死んじゃう程度の毒性かもしれない。

BBCのニュースには、直前の捜査では何も薬物を見つけなかった、と書かれている。麻薬探知犬がハンドラーに知らせずに飲み込むというのも考えにくいし、まさか慢性中毒じゃないと思うけど、何だか良くわからない話だ。死因は検視して調べるとあるが、続報は今のところ見つからない。

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2004/08/03

セラミックス製高屈折率レンズ

PCウォッチ(8/2)の記事。カシオ、世界初の透過性セラミックスレンズを開発

 カシオ計算機株式会社は2日、世界初の透過性セラミックスを用いたレンズを開発したと発表した。

 村田製作所が開発した透過性セラミックス「ルミセラ」を用いたレンズ。ルミセラは、光学ガラスと同等の透過率を持ちつつ、光学ガラス(nD=1.5~1.85)より高い屈折率(nD=2.08)を実現。また、強度も優れているという。

 カシオは、短波長の光の透過率向上、気泡の除去など、デジタルカメラ用光学レンズに適した素材改善の提案を行なうとともに、研磨方法の確立、高屈折率に対応したコーティングなどにより精度の高いセラミックスレンズを開発した。

 同社では、同レンズを組み込むことで、ズームレンズを約20%薄型でき、スリムコンパクトデジタルカメラの一層の薄型化が実現できるとしている。

カシオのニュースリリースは こちら。興味があるのは、村田製作所が開発したという透光性セラミックス「ルミセラ」についてだが、
2001年2月に村田製作所が開発に成功した透光性多結晶セラミックス。マイクロ波・ミリ波用に用いられている誘電体共振器材料の一種で、優れた電気的特性と、高い透過率、屈折率を有しつつ、複屈折のない良好な光学特性を合わせ持った多結晶セラミックス。
とあり、調べてみると2002/4/4の日刊工業新聞などで記事になったようだが、詳細情報はWeb上では入手できなかった。村田製作所の平成14年の半期報告書の 14/57ページに、
(6)高屈折率透光性セラミックス
電子部品の軽薄短小化にともない、薄膜や微細加工プロセスに対応できる均質かつ緻密なセラミックスの必要性が高まっている。これに応えるため、マイクロ波・ミリ波向けの当社独自の誘電体共振器材料を用いて、透光性を有する多結晶セラミックスを開発した。

当セラミックスは、共振器材料としての優れた電気的特性と、高い透過率と屈折率を有しつつ、複屈折(入射した光波が2つに分かれて伝搬する現象)のみられない良好な光学的特性をあわせもつ多結晶セラミックスとなっている。

原料から混合粉砕、成形、焼成における各技術を結集し、高屈折率誘電体基板を作製して基板中の気孔(ポア)を大幅に低減させることで、可視光から赤外(λ=400~6,000nm)までの広い帯域でほぼ理論通りの透過率を実現した。更に、市販の光学ガラスでは高屈折率を得るため鉛を添加しているが、本材料は鉛を一切含まず、しかも市販光学ガラス以上の高屈折率2.074(波長632.8nm He-Neレーザーでの測定)を実現している。

という記載があった。誘電率と屈折率は密接に関連しているから、誘電材料の開発から高屈折材料が出てくるのも、考えてれば理解できなくはない。PLZTの透明セラミックスなんかは良く知られているし、今回の素材も似たようなペロブスカイト系の素材だろうか? それにしてもレンズに使えるためには、可視領域の透明性その他の光学特性が非常にシビアに要求されるだろうし、すごいレベルだ。

ちなみに、携帯電話内蔵カメラのレンズは今はプラスチック製が主流らしいが、高屈折率ということでメガネ用レンズで探してみると、確かにガラス製の最高屈折率は1.84だし、プラスチックは1.74が最高レベル。ということで、2.08という屈折率はやっぱりすごいし、コスト次第では携帯向けにもセラミックスが使われる可能性もあるな。。

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2004/08/02

JDream Petit & Daily

日経新聞8/2の朝刊から。

科学・医学分野 論文検索2000万件・科技振興機構ネットで提供

 科学技術振興機構は個人がインターネットを通じて国内外の科学・医学論文約2000万件を検索できるサービスを2日から始める。アトピー性皮膚炎など身近な病気について知りたい人や、環境団体や企業などに所属する研究者が欲しい情報を探すのに役立つ。個人向け学術情報サービスとしては国内最大級になる。

 新サービスは「ジェイドリームプチ」(ホームページは http://pr.jst.go.jp/jdreampetit)。料金は検索1回で200円。月額3000円の定額制もある。9月30日まではサービス周知期間として無料で提供する。

 機構のデータベースに収録した論文を検索し、世界約50カ国の科学技術や医学論文の抄録(要旨)を日本語訳で読める。アトピーやICタグといったテーマ別、著者名などで探せる。論文全体が欲しい場合は別料金でコピーを郵送する。

 通常のネット検索や書籍の情報では、病気に悩む患者や家族がたどり着くのに手間取り、正しいかどうかの判断が難しい。新サービスを利用すれば病気の知識を得られるだけでなく、著者などを手がかりにして治療先を選ぶ参考にもなる。

ということで、科学技術振興機構のホームページを見ると、JDream Petit という文献検索サービスの他に、JDream Dailyという、文献ウォッチング&メール配信サービスも始まるらしい。(こちらは8/16から無料テスト開始予定。)

そもそも JDream とは、JST Document REtrieval system for Academic and Medical fields の頭文字を取ったもので、これまでも教育・研究機関等の法人対象に提供してきたデータベースサービスで、今回これを一般向けに安価に開放するということらしい。

とりあえず、JDream Petit の中を覗いてみた。この文献検索サービスでは、国内外の科学技術全分野のデータベースである JST7580 と JSTPlus 、日本国内医学分野の JMEDPlus を対象として検索ができる。リストを見ると収録している雑誌数も多く、結構役に立ちそうだ。

試しに検索してみると、非常に検索が早くて気持ちいい。検索オプションは多くはないみたいだけど、ざっと触った感じではそれなりに使いやすい。結果として出てくるのは、日本語の書誌事項と抄録なので便利。(著者名は欧文誌の場合にアルファベット表記となるので、キーワード入力に注意が必要。)

まあ、今は無料だからいいけど、検索1回に200円は高いような。出力件数にも制限があるようだし。仕事で定期的に検索するならば月額3000円の定額制がいいのかもしれないが、個人だったらやっぱり1回200円かな? 何か調べたいなら今のうちかも。。

今はまだ詳細が見られないが、書誌情報速報メール配信サービス JDream Daily にも興味ある。でも1テーマ 1000円/月、1雑誌 250円/月という値段はどうかな? ただ、こういうサービスは申し込む時には色々と期待するんだけど、実際にメールが頻繁に送られてくると、段々わずらわしくなって、あまり見ないで捨てちゃうんだよね。 実は、Nature や Science から毎週送られてくる最新号の案内メールは英語だし、どうせ無料だし、ということでほとんど見ていない。

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