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2004/08/30

ジルコニア製コーヒーカップ

日刊工業新聞社 ビジネスライン(8/30)の記事。宮川化成、ジルコニア製高級食器の量産技術確立-主力事業に育成

 宮川化成工業(大阪市東淀川区、宮川征四郎社長、06・6381・5952)は、射出成形法を用いたジルコニア製のコーヒーカップなど、高級食器類の量産技術を確立した。自社ブランドで販売するほか、内外の高級ブランドメーカーを対象にOEM(相手先ブランド)供給も検討する。これにより03年9月期に8億円のファインセラミックス事業部の売上高を、5年後に20億円に引き上げる計画。

 ジルコニア製のファインセラミックスは合成宝石などに使われている高級素材。素材を削り出してコーヒーカップなどを製造するメーカーはあるが、コストが高く付いている。これに対し、同社はシリンダー内で加熱したセラミックス材料を金型に注入し成形する射出成形による成形を研究。約3500万円を投じて、型締め力1000キロニュートンの射出成形機や遠心バレル研磨機やなどを導入し、量産技術を確立した。

実は、以前ジルコニア系のファインセラミックスに関する仕事をしたことがあるので、気になる記事だ。ジルコニアの高級食器とは、ちょっと意外な組み合わせに思えるので。。

ジルコニアは、確かに単結晶が人造宝石(キュービックジルコニア)として使われていて、それなりに有名だろうけど、セラミックスとしては一時期ブームになって流行った、セラミックス包丁やセラミックスはさみにも使われているもの。ウィキペディアの記述も今一で、酸素センサーや燃料電池にも使われる、安定化ジルコニアの固体電解質としての用途を外すわけにはいかないだろう。

それはともかく、ジルコニア製のコーヒーカップとはどんな物だろう? 宮川化成工業のサイトには、これに関連する情報は載っていない。この会社は射出成形が専門で、ジルコニアを含むセラミックスの射出成形製品も色々と手がけているようだ。

冒頭の記事だと、従来から削り出しによるジルコニア製のコーヒーカップや食器があるとのことだが、これに関連する記事や写真は、残念ながら色々検索しても見つからなかった。本当に削り出しなんて手間と金の掛かる方法まで使って生産しているのだろうか? 何を売り物にしているんだろう?

アルミナ製の食器については、フィジオという食器が見つかったが、良く見るとこれはアルミナを配合した磁器のようで、給食用食器などに使われる強化磁器と呼ばれる種類のものの親戚だろうか。

特性としてキーとなるのは、ジルコニアの比重と熱伝導率だろう。ジルコニアの比重は約 6と通常の磁器や陶器の2~3 と比べると倍以上と重い。まあ、重いほうが高級感があるのかもしれないし、陶磁器製のものよりも肉薄に作ることで、ますます高級感が出せる可能性はある。しかも、強度面では確かに陶磁器よりは強いだろうから、肉薄化も可能かもしれない。

ジルコニアの熱伝導率は、特性比較表によると、2.1(W/mK)で、アルミナ等の他のセラミックスと比べると圧倒的に小さい。一方、リンアンティークラブの資料などによると、陶磁器は熱伝導率 1~1.6(W/mK)程度。 ということで、熱伝導率は意外にも陶磁器に結構近いようだ。(アルミナ製の食器がないのは、熱伝導率が高すぎるためだろう。)

個人的には、以前ジルコニアの仕事をしていた時に、自作した部分安定化ジルコニア製のるつぼに熱湯を入れたら、熱くて到底持てなかったような記憶があるのだが。 これは肉厚が 0.5mm程度と非常に薄かったために、熱伝導率が小さめでも熱かったということだろうか?

とすると、ジルコニア製のコーヒーカップ、比重と強度から考えるとかなり肉薄なのではないかと思われるが、薄くした分と素材の違いから、熱伝導は磁器製のものの2~3倍となりそうだ。うーん、どんなものか一度実物を見てみたいな。。(射出成形となれば、相当に手の込んだデザインでも可能だろうと思われるし。)

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