ヤマメからニジマスが誕生
ヤマメからニジマスを誕生させたという話が、珍しく新聞各紙に一斉に取り上げられた。最近は様々なバイオテクノロジーが出てくるので、あまり驚かされないが、基本は抑えておかないと。。
各紙少しずつ違う内容が書かれているので、全部目を通すのも悪くない。下のリンク先の記事の中で一番詳しいのは FujiSankei Business i だが、他の新聞記事もそれぞれ特徴がある。
asahi.com ヤマメに精子つくらせニジマス誕生 東京海洋大が成功
YOMIURI ON-LINE ヤマメからニジマス!?“借り腹”に成功…東京海洋大
MSN-Mainichi INTERACTIVE 東京海洋大:ヤマメの体でニジマスの精子 魚養殖に新技術
Sankei Web ヤマメがニジマス産む 東京海洋大成功 5年後、アジからマグロも!?
FujiSankei Business i サバやアジがマグロ産む?借り腹で異種の次世代、東京海洋大が新技術
読売の記事で特徴的なのは、
細胞を移植されたオスのヤマメが成長すると、自分の精子に混じって、ニジマスの精子も作られた。さらに、このニジマスの精子をニジマスの卵に受精させると、本物のニジマスが誕生した。こうした技術は、マグロなど他の魚だけでなく、原理的にはマウスなどの哺乳(ほにゅう)類にも応用できるという。という部分。「本物のニジマス」という表現がユニーク。しかし、マウスなどの哺乳類にも応用可能というのは本当か? 読売以外にはこんな記載はないぞ。ちょっと過激な記述に思えるが。。 一方、毎日の記事では、
研究チームは、ふ化直後のニジマスから始原生殖細胞を10個採取し、同じサケ属であるヤマメの稚魚の腹こう内に移植した。成長したヤマメから精子を取り出し、通常のニジマスの卵子と受精させたところ、全体の卵の0.4%に当たる10匹がニジマスになった。遺伝子を調べたところ、同細胞を取り出したニジマス由来の子どもだった。残りの卵はニジマスとヤマメの雑種で、ふ化しなかった。とあり、移植した細胞が意外と数が少ないことや、生まれたニジマス10匹が0.4%ということは、全部で卵は2500個ということがわかる。 産経の記事には、
吉崎助教授は「試験的にアジがマグロを産むまで五年、実用化までは十年かかりそう」と話す。また、“幻の魚”といわれるイトウやタイワンマスなど絶滅の恐れがある魚を、別の魚種を借りて繁殖させる研究プロジェクトも、北海道大や台湾海洋大と共同で始動している。と、今後の計画が書かれている。 朝日の記事では、
ヤマメとニジマスは同じサケ属の仲間。吉崎さんたちは、ニジマスの稚魚から精子や卵子のもとになる始原生殖細胞を取り出し、ヤマメの稚魚の腹部に10~20粒入れた。始原生殖細胞はヤマメの精巣や卵巣に移動し、増殖分化した。と、ヤマメとニジマスが同じサケ属であるという、たぶん重要なことが書かれている。また移植した始原生殖細胞の数は、毎日では10個と書かれていたが、こちらでは10~20粒と違いがある。(1粒・2粒という数え方はおかしくないか?)
ということで、新聞それぞれで微妙に違う内容が書かれているので、全部読むと補完される。もう少し詳しい情報を探してみたら、吉崎さん自身が2年前に書かれた資料を日本農学会のサイトで見つけた。この資料によると、ヤマメはニジマスと同属であることがキーで、当然ながら、属や科が異なると難易度がアップしそうだ。
この研究の成功率が随分と低いのは、複数の種の精子が混ざった状態から、片方だけを分離するのが困難なためなのかもしれない。しかし精子はともかく、卵となると魚でも種によって全然大きさも異なってくるので、また違った難しさがあるような気もする。(数の子とイクラみたいに) 将来が期待されているマグロとサバにしても、近縁種ということらしいし。 まあ、読売の記事のように哺乳類となると、これはまた難易度が違いすぎるような気がするけど。。
そういえば、最近似た話があったなと思ったら、ニジマスからウナギ誕生? 北大「借り腹」養殖研究へというニュースで、こちらはニジマスがウナギを生むという研究だが、内容的にはほとんど同じに見える。このテーマは、今年の21世紀COEプログラムに選ばれているが、今回他の研究者によって同等技術が実現してしまったとなると、革新的研究と言えるかどうか?
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