「社説の大研究」
今日からしばらく夏休みモード、更新も滞る予定。。
昨日も各新聞社の社説の比較について書いたし、5/5のブログでは、産経新聞の「社説の研究」という企画を紹介したが、それを本にしたものが文庫化されて出版された。
扶桑社文庫
社説の大研究 新聞はこんなに違う!
産経新聞論説委員室 編・著 bk1、amazon
取り扱っている社説は1991年の湾岸戦争から2001年の米同時テロまで。今となっては、やや冷静に見られる事件を題材としているだけに、直近の歴史を振り返る意味でも、非常に面白く読めた。
本書は、日本の政治を巡る種々の話題に関して、主として「朝日」「毎日」「読売」「産経」の4紙の社説を並べて比較することで、それぞれの新聞の立場を明らかとし、その主張が如何に異なっているのかを、明快に示したものである。それぞれの社説から一部を抜粋しているので、その抜粋の際に著者(産経新聞論説委員室)の意図が入り込んでいる可能性もあるのだが、それにしても、これだけ多数のテーマを並べると、さすがに各新聞社の立場があまりにも違っていて、それがまた各紙できちんと統一された確固たるものがあって、十分知っていたつもりだったのに、それでも唖然とさせられるものがある。
各紙があまりにも自分たちの「らしい」主張を守り続けていることに、ほほえましいというか、何かお約束のようなものを感じてしまう部分もある。いわゆる右と左だとか、保守と革新だとか言うけど、実際の政治の場(例えば国会)では、その勢力分布や各党の主張は時代と共に大きく変わってきているのに、新聞社の主張することの変わらなさに違和感を覚えるし、日本の全国紙はどうしてこうも両極端な意見を主張するのだろうかと思うけどねぇ??
また、これだけ多数のテーマについての各紙の主張を見比べると、大体各紙の論法が見えてくるのも面白い。法案の問題点を指摘する手法、それに対抗する手法、それぞれ特徴的な方法を使っていることがわかる。まあ、だからこそ、熱いディベートというよりは、お約束の論争、のような印象を抱くんだろうけど。これはこれでいろんな意味で勉強になる。
もちろん、社説というのは、個人の意見ではなくて新聞社の意見だし、各紙それぞれ議論をして内容を決めているようだ。そういえば少し前に、朝日新聞のサイトに社説の裏側を垣間見せるコラムが載っていて、興味深かった。
もっとも、新聞を取っている人のうち、社説をいつも読んでいる人がどれだけいるんだろうか? という疑問もある。各紙の社説がこれだけ異なっているからといって、読者は必ずしもその新聞の主張に同意して購入しているわけでもないだろうし。
それにしても、これだけ主張が異なることは、常識として知っておくべきだと思うし、学校でも教えておいた方が良いと思うけど、どうだろう? おまけに、とても便利なことに、今や各紙の社説は別に購入しなくたってネットで簡単に読めるわけで、まあ、両極端の朝日と産経の二つを見比べておけば、自分の位置付けを確かめる役に立ちそうだ。(Sankei Webの主張(社説)のページには他紙の社説へのリンクがある。)
欲を言えば、それぞれのトピックは既に時間が経過し、今となれば、ある程度客観的に評価することができるわけで、その視点からの「解説」が欲しかったと思う。もっとも、冷静に評価してしまうと、さんざん大騒ぎした論争だったけど、歴史的には大した意味のない話でした、ってなことになってしまう恐れもあるけど。。
読んでいないけど、似たような本として、読売新聞論説委員会が編集した、「読売vs朝日 社説対決 50年」(bk1、amazon)と「読売vs朝日 社説対決 北朝鮮問題」(bk1、amazon)が出ている。朝日新聞は何故か自らは書いていないようだ。
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